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Level.39 お祭りスタートです!

Level.39 お祭りスタートです!

収穫祭に喫茶レインが出店を出すという話はあっという間にピーゲルの街に広まり、喫茶店に訪れる常連客の皆さんはその出店のことで話題が持ちきりだったらしい。ホールを担当していたリトとナシュナから聞いた話だ。八百屋の店主のラルジュとカスミ夫妻が出店で使う野菜の発注について話があるとナシュナからレイニーに伝えられた時にはレイニーは苦笑いして皆気が早いな〜と思っていた。レイニーは呼ばれたからには行かなければと思って、厨房の仕事をキリのいいところで辞めてザルじいに頼んで八百屋の主人のラルジュの元へ向かった。

「ラルジュさん、カスミさん。こんにちは。」

「あら!レイニーちゃん、こんにちは!ごめんね、呼び立てて…。早く野菜の発注をかけたほうがいいってこの人が聞かないから…」

 レイニーが夫妻の元を訪れると奥さんであるカスミが先に気づいてレイニーに挨拶をしてくれた。主人であるラルジュはナポリタンで口の周りをケチャップで真っ赤にしながらレイニーに話をした。

「収穫祭で出店を出すんだろ?野菜の仕入れは早い方がいい。何が必要か教えてくれれば俺の目利きでいいものを卸すぜ!」

「あんた、口の周りを拭いてからそういうかっこいいことを言いなさいよ…」

 カスミに口の周りを拭かれてラルジュは恥ずかしそうにしていたが、口の周りが綺麗になると直ぐにレイニーに席に座るように勧めた。

 レイニーは焼きそばとじゃがバターで使う野菜をいくつかピックアップして、ラルジュに伝えた。

「また美味しそうな料理を出してくれるんだろ?俺楽しみにしてるからな!絶対買いに行くぜ!」

「私はレイニーちゃんが出るっていう料理対決が楽しみだよ。対戦相手はまだ決まっていないみたいだけど、レイニーちゃんが相手なら始まる前に決着が着きそうな気もするけどねぇ。」

 野菜の発注手続きを済ませると、2人はそれぞれ収穫祭で楽しみにしていることをレイニーに話してくれた。料理対決はまだ対戦相手が決まってないのか…と新たな情報を掴みつつ、レイニーは発注を頼んで席を離れた。

 レイニーはいったん家の2階に行って発注書をテーブルの上に置いてきて再び厨房に戻った。ザルじいに厨房の仕事を任せっきりにしてしまったので、その挽回をしようとレイニーも料理に精を出したのであった。

 ――――――

 それから数日後、レイニーのお店に八百屋のラルジュから発注していた野菜たちが届いた。キャベツなどの新鮮な野菜が沢山で、レイニーはこれで焼きそばとじゃがバターの試作が出来ると思った。

 数日の間にレイニーは果物屋さんにも向かい、リンゴ飴用の小さめのリンゴの品種が無いか、店主に頼み込んでいたのだった。それも野菜が届いたのと同日にレイニーの家にやってきたので、レイニーの家は野菜とリンゴのダンボールで溢れていた。焼きそばはザルじいが中華麺を作ってくれることになっていたので、焼きそばはザルじいに任せて、レイニーはじゃがバターとリンゴ飴の試作を始めた。

 じゃがいもは蒸し器で蒸して切り込みを入れた部分にバターを乗せるだけなので、試作と言っても味の確認だけで特に試行錯誤する必要はなかった。次にレイニーはリンゴ飴を作ることにした。小さなリンゴが真っ赤な飴でコーティングされていて食べるとパキッとした食感が面白いのをレイニーは思い出していた。あんな風なのを作りたい!と思ってレイニーは砂糖と水を少し加えて溶かすと食紅をチョンッと加えて色味を確認しながら飴を作った。そして飴を作っている間に綺麗に洗った小さめのリンゴを竹串に刺して準備をした。飴の用意ができたらリンゴを飴の中に潜らせて真っ赤なコーティングをしてバットに逆さにして並べて冷やした。レイニーは早速できた可愛らしい見た目のリンゴ飴にテンションが上がった。

「ザルじい、見て!リンゴ飴が出来たよ!可愛いでしょ!」

「おお、これはまた可愛らしい見た目じゃのう。どれ味見してもいいかの?」

「うん、冷えてるし私も食べてみる!」

 2人でリンゴ飴を持ってガブリと齧り付いてみると、ちょっとコーティングした飴の層が分厚かったのか、硬くてリンゴまで到達することが出来なかった。

「これは硬すぎだわ…。もう少し飴の層を薄くしてみなくちゃダメね…。」

「年寄りの歯にはきついわい…」

 2人でガッチガチのリンゴ飴を持って落ち込んでいるとそこにリトが家を訪れた。2人が落ち込んでいるのとテーブルにある試作段階のリンゴ飴を見て、リトは直ぐに落ち込んでいる理由を悟ったらしく、レイニーたちを励まして、試作の続きをしようぜ!と言ってくれた。そんなリトに勇気づけられ、レイニーとザルじいは試作の続きを再開したのだった。

 レイニーは飴の色を付ける具合をメモしておき、もう一度飴を作り直すと今度は何度も付けずにクルッと薄く膜が張るくらいの塩梅になるようにリンゴを飴に潜らせた。次にリンゴ飴ができたときにはザルじいも焼きそば用の中華麺を作ることが出来たようで、野菜が入っていない麺のソース味を味見することになった。

 味見にはリトも参加して率直な感想をもらえるようにしてみた。2人でリトの反応を伺っていると、リトは食べづらいよ…と苦笑いしたので、レイニーたちは"それもそうか…"と思って自分たちも試作で作った料理を食べてみることにした。レイニーはまずザルじいが作った具なしの焼きそばを啜ってみた。

「うん!麺がもちもちでソースの味も屋台で食べた味にそっくり!」

「これ、食欲をそそられる匂いだよな!俺、これ好きだよ!」

「ほっほっ、大好評で良かったわい、中華麺の方は粉と水の配合をメモしておいたからこれで美味しい中華麺を作ることができるぞ。」

「さて、次はレイニーの作ったリンゴ飴だな。」

 ザルじいとリトは食後のデザートとして取っておいた、りんご飴を見た。リトは先ほどのカッチカチのりんご飴を知らなかったから、直ぐに齧り付いてみせた。その様子を見てレイニーたちも意を決してりんご飴に齧り付いた。

「ん!飴がパリパリでリンゴのシャリッとした食感と違って面白いな、これ!りんごも甘いし最高だな!」

「今度は飴の層が薄くできたみたいで良かったよ〜!さっきはガチガチだったからね…、りんごに飴の膜を張るのはなかなか難しいけど、これは練習あるのみだね!収穫祭までの期間中はみんなにリンゴ飴食べてもらいますからね!」

「こんなに美味しいものなら、いくらでも食べるよ!」

「言ったね!?言質取ったからね!?」

「うえっ!?そ、そこまで言われると…ごにょごにょ…」

 レイニーがリトに詰め寄ると、リトは語尾を小さくして何やらゴニョゴニョと言っていた。そんな2人のやり取りを見てザルじいは大きく笑っていた。

 ――――――

 そんなこともあり、レイニーたちの喫茶レインでは焼きそばとじゃがバターとリンゴ飴の準備が整い、収穫祭当日を迎えることとなった。

 レイニーは朝からピーゲルの街の大通りに構えた出店の方に向かい、鉄板や蒸し器などの準備をしていた。今回の出店で使う鉄板などはザルじいが個人的に作っていた調理器具を街の工場で業務用に新しく作ってもらうことが出来たのだった。ザルじいもそんなことができるようになって、嬉しくて涙が出るわいと冗談混じりで話していた。

 そしてお店の方ではザルじいが出店で使う野菜や調味料を出店のある大通りまで運ぶのに、台車を用意してもらって、運ぶ準備をしていた。台車で運ぶのはリトでナシュナはというとレイニーのお手伝いで大通りの方に来ていた。

「レイニー、おはようございます。」

「あ、ナシュナ、おはよう。今日は出店でリンゴ飴の販売をお願いね。ここにお金を管理しておいて。」

「はい、分かりました!」

 ナシュナは今日この日を楽しみにしていたようで、以前お祭り料理の試作会をしていた話をナシュナにしたら"どうして私も呼んでくれなかったんですか!"とぷりぷり怒ってしまったのは記憶に新しかった。そして、収穫祭が開かれる30分前にはザルじいやリトも集結し、鉄板を温め始めて出店の準備を進めた。レイニーとナシュナは出店にりんご飴を並べ、ザルじいは鉄板で焼きそばを作り始め、リトは蒸し器にじゃが芋を並べ始めていた。

「《それではこれよりピーゲルの収穫祭を開始します!》」

 街の野外放送で収穫祭のスタートが開始されると、レイニーとナシュナは元気な声で出店をアピールし始めた。

 

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