Level.36 スケルトンマスター戦
Level.36 スケルトンマスター戦
レイニーはリトと離れ離れになってしまい、そしてスケルトンマスターは秘策、骨のリヴァイアサンを操ってレイニーに襲いかかってきた。レイニーは骨であってもどこかに弱点は必ずあるはず!と思い、体をくねらせるリヴァイアサンの体に飛び乗ると、動く骨の上でバランスよくリヴァイアサンの目玉に向かって走った。レイニーはリヴァイアサンの弱点は目玉だと確信を持っていた。そのため、なんとかして目玉まで辿り着きたいのだが、リヴァイアサンの骨がくねくねと動き、近付いたかと思えば離されてしまう…というのを繰り返してしまった。イライラしてきたレイニーが仕方なく魔界の地上に降り立つとレイニーの周りには屈強な鎧を身に纏った上級スケルトンが囲んでいた。
レイニーは以前キュリアから戦闘で大人数に囲まれたときの戦い方をレクチャーしてもらったことがあった。それを頭の中で復唱しながら、レイニーは大群の上級スケルトンを相手していった。
――――――
そんなとき後方支援部隊の指揮官ジルビドの元に前線で戦っていたレイニーとリトが敵軍の上級スケルトンによって遠くまで吹き飛ばされてしまい、分断されました。との報告が入った。ジルビドはその報告を受けて、"まぁ、そう来るよな"と想定内の相手の反応に感心をしていた。そんなとき後方支援部隊のテントに1人の女性が現れた。
「遅くなってごめん、ジルビドさん。」
「キュリアくん!君がきてくれて助かるよ。今の戦況を説明すると、レイニーくんとリトくんの活躍によって、スケルトン軍団の初級、中級のスケルトンは壊滅、一番数の多い上級スケルトンが一番スケルトンたちを大量に屠ったとしてレイニーくんたちをマークして分断されてしまったんだ。これから俺とハルストでそれぞれレイニーくんとリトくんの元へ応援部隊として行ってくる。キュリアくんには親玉のスケルトンマスターを倒してもらいたい。できるかい?」
「そういうことね…、うん、分かった。任せて。」
「よし、じゃあ、よろしく頼んだよ。」
そこからキュリアはレイニーが作った雷の槍が通ったであろう道を通って分断された戦場をまっすぐに駆け抜けた。時折、キュリアに気付いたスケルトンが行手を阻むようにキュリアの目の前に現れるも、キュリアの高速突き技でスケルトンはあっという間に氷漬けにされて砕け散っていた。そんな一瞬の出来事が何度かあり、キュリアはスケルトンマスターを視認するところまで駆け抜けてきた。
――――――
一方レイニーの方ではジルビドからの作戦を聞いたハルストが援軍と共に到着し、皆で上級スケルトンと骨のリヴァイアサンを相手することにした。
レイニーは新しい魔法攻撃を使うタイミングだと思い、魔力を貯めている間、骨のリヴァイアサンの相手をハルストにお願いすることにした。ハルストは無言で頷くと走ってリヴァイアサンの骨の体に乗って行った。そんな様子を横目で確認したレイニーは魔力を貯め始めた。今回披露するのは全身に微弱な電流を流して使われるものであり、相手を撹乱するための術でもあった。
「《雷電闊歩》(らいでんかっぽ)!!」
ゆらゆらとレイニーの影が揺れたかと思えば次から次へとレイニーの影が現れて、全部で10人のレイニーの影が現れて上級スケルトンはあからさまに動揺をしていた。とあるスケルトンがレイニーの影を攻撃したが、それが微弱な電気で出来ているため、直ぐに痺れてぷすぷすと口から煙を吐いていた。そんな様子を見たスケルトンたちは攻撃することもできず、10人のレイニーの影に翻弄され、1箇所に集められた。そして後ろは崖。追い詰められたところで、レイニーの影たち全員が雷の槍を構え始め、ものすごい落雷の音が戦場に響き渡った。
雷電闊歩を解いたレイニーは雷の槍を受けた上級スケルトンたちが真っ黒焦げになってから光の粒子となって四散する瞬間を見てからハルストが骨のリヴァイアサンを倒してくれるのをポーションを飲みながら見守るしかなかった。
――――――
ハルストは普段表情が出ることはなく氷の補佐官などど悪名がつくこともしばしばで…。
そんなハルストが今、骨のリヴァイアサンを相手に笑っていた。
「ハルストさん、笑ってる…。」
レイニーがハルストの様子を見て呟くと、他の休んでいた冒険者たちもハルストの戦い振りを見て"すげぇ…"と声を漏らしていた。ハルストは上手いようにリヴァイアサンの攻撃を避けつつ、一気に目玉までの距離を詰めた。レイニーたちが"いける!"と確信していると、ハルストがここでようやく鞘にしまっている剣を抜き放つ動作に入った。レイニーは今までハルストが戦闘でその鞘から剣を抜き取ったところを見たことがなかった。だから、どんな代物が出てくるのか気になっていた。
ハルストが鞘から刀身を出すとそれは眩い光を纏った純白の剣でその眩しさにリヴァイアサンの動きも止まった。その一瞬を狙ってハルストはその光の剣で目玉を一刀両断したのだった。直ぐにハルストが光り輝く刀身を鞘に戻すと光は止み、ハルストがシュタッとカッコよく地面に降り立つ奥の方で骨のリヴァイアサンがドスンという音を立てて地面に倒れ込むとサラサラと砂になってそして1箇所に集まったかと思えば光の粒子となって四散したのであった。こうして、レイニーはハルストからの援軍により、スケルトンマスターの秘策の骨のリヴァイアサンを倒すことが出来たのであった。
――――――
一方でレイニーとは反対方向に飛ばされてしまったリトも双子の片割れの骨のリヴァイアサンの相手に苦戦していた。
「くっ…、骨の癖にくねくねと~!!!」
リトのイラつきもピークになりそうなとき、リヴァイアサンが向いている方向とは90度違う地点から水の矢がリヴァイアサンの目玉に刺さると、それに引き寄せられるかのようにジルビドが現れその矢を目印にあっという間に骨のリヴァイアサンの目玉を一刀両断して見せた。
リトが苦労していたのを一瞬で片付けたその強さにリトはジルビドに尊敬の眼差しを向けた。
「ジルビドさん、助けてもらってありがとうございます!レイニーの方は大丈夫でしょうか…」
「向こうにはハルストが向かった、先ほど骨のリヴァイアサンを倒したとの連絡が入っている。問題はないだろう。」
「良かった~、さて、俺たちも親玉のところへ行きましょう!」
こうしてリトもジルビドと合流し、スケルトンマスターの元に集結した。
冒険者全員が上級スケルトンを倒し切り、スケルトンマスターの秘策であった骨のリヴァイアサンもあっけなく倒されてしまい、スケルトンマスターは焦っていた。このままでは倒されてしまう…と思った矢先に、彼は自分の額に輝いていた魔物の魔石を抉り取り、それをぐいっと飲んだ。レイニーたちはスケルトンマスターの中で蠢く禍々しい魔力に気付いた。
「あいつ、自分の魔石を食って自分を強化しようと…!?」
レイニーが目の前でスケルトンマスターの体がバキバキという音と共に骨格が変わっていく様を只々呆然と見上げていた。
スケルトンマスターは自身の魔石を飲み込み、骨でできたドラゴンのような…でもそれよりも禍々しいオーラに包まれた魔物が出来上がった。そいつは翼を持っているため、地上では強風が吹き荒れ、立っているのがやっとな状態だった。
ようやく止んだ風攻撃にレイニーたちは短い時間で作戦を伝え合った。まず、レイニーとキュリアの2人の魔法攻撃で活路を開き、目玉に向かってリト、ハルスト、ジルビドが目玉を切るという算段で攻撃を開始し始めた。
まずレイニーが地上で雷電闊歩により、スケルトンマスターの意識を撹乱させ、その間にキュリアの魔法攻撃で足元を氷で固めて身動きが取れないように…と思ったのだが、スケルトンマスターは力も増したようであっさりとキュリアの氷を粉砕し、地上にいたレイニーたちの影も破壊されてしまった。レイニーの雷電闊歩で生まれた幻影に触れると電撃が流れるはずなのに、スケルトンマスターには一切効いてない様子だった。そしてスケルトンマスターのドラゴンは翼が羽ばたかせて空を飛び出した。これではキュリアの氷による足止めも届くことはできない。状況は苦しいものに変わってしまった。だが、もとより冒険者たちは諦めてなどいなかった。
羽があるなら撃ち落とせばいいとレイニーが思い、低めの魔力操作で雷の槍を繰り出すスケルトンマスターのドラゴンの羽根目掛けて風穴を開けることに成功した。それを見たリトやジルビドたちがそれに倣ってスケルトンマスタードラゴンの羽根めがけて総攻撃をした。その甲斐あってかドラゴンはフラフラと地面に落ちると、ジルビドが
「今だ!攻撃開始!」
と叫んだことで冒険者たちはスケルトンマスタードラゴンを袋叩きして体力を削り取った。だが、スケルトンマスタードラゴンも一筋縄ではいかなかった。再び羽根が生えたかと思えば、その羽根は先ほどよりも強靭な鱗で出来た羽根で簡単には風穴が開きそうになかった。




