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Level.31 夫婦喧嘩

Level.31 夫婦喧嘩

 雷の音が鳴った瞬間、レイニーは新しい魔法の"雷鳴神速"を発動して光の速さで狼のホムンクルスの周りを走って翻弄させた。レイニーを目で追っているホムンクルスは直ぐに目を回したようで、ふらりと片方の足が浮いた。レイニーはその瞬間を見逃さず、すかさず浮いた足の下から槍で足裏を切って再び地面に足をついた時に痛むようにした。そして雷光神速の勢いのまま、レイニーはザシュザシュッと何度も浅い傷を狼のホムンクルスに付けて行った。

「ふん!そんな浅い傷じゃ私の体力お化けのホムンクルスが負けるわけ…っ!?」

 自信満々の狼の魔女だったが、レイニーの魔力が尽きるまでの数秒間レイニーはできるだけの速さを持ってして狼のホムンクルスに傷をつけていると、次第にホムンクルスの様子がおかしくなってきた。口から泡を吹き始めたのだった。その異変には狼の魔女も直ぐに気づいた。

 レイニーが魔力切れで雷光神速を発動し終わると同時に狼のホムンクルスはドシンという重い音を鳴らして、前に倒れた。

「ど、どうしちゃったの!?アンタ何したの!」

「私はただそのホムンクルスを倒すために傷口から少しずつ感電させていろんなものを焼き切っただけ。」

「そ、そんな…。私が丹精込めて作ったホムンクルスが…。」

「貴方は警備部に連れて行きますね。誘拐、違法なホムンクルスの研究…余罪はまだ出てきそうですけどね。大人しく牢屋にぶち込まれてろ、痴女が!」

 レイニーは自身も魔力切れで立っているのもやっとなのに、狼の魔女に向かって思っていたワードを捨て台詞で吐き出すと狼の魔女はシオシオと項垂れて地面に崩れ落ちた。

 レイニーが魔力回復のポーションを飲んでなんとか歩けるようになった頃を見計らってリトと共に狼の魔女をテレポート結晶を使って警備部まで連行し、お縄についてもらったのだった。

 ――――――

 後日。あの洋館から逃げ出した男性冒険者たちは自分たちの相棒やパーティーメンバーの元に戻れたようで、行方不明事件も解決することができたのだった。レイニーは今回の立役者ということで報酬金が2倍になり、レイニーは懐が暖かくなったことで、リトが喜びそうな料理をつくろうかな~と考えた。

 そんな風にルンルン気分で家に帰るとそこには玄関でザルじい相手にペコペコ頭を下げている大荷物を持った…ナシュナがいた。

「ナシュナさん!?どうしたの、こんなに大きな荷物を持って…。」

「レイニーさん…、私これからここに住んでもいいですか!?」

「え!?な、何があったの!?とりあえず中に入りなよ、ザルじい、コーヒー淹れてあげて。」

「あ、ああ…。」

 今にも泣き出しそうな顔でナシュナが家を訪ねてきたものだから、ザルじいも対応に困っていたらしい。とりあえずナシュナはレイニーの部屋に通して、レイニーとザルじいはお茶菓子とコーヒーの準備をし始めた。暑くなってきたこともあって、アイスコーヒーを抽出してくれたザルじいにお礼を言ってレイニーは自分の部屋に戻った。ナシュナはベッドにちょこんと座って鼻をぐすぐす言わせながら、レイニーの帰りを待っていた。

「ナシュナさん、何があったか話せますか?」

「はい…。私、ここ最近シリウスの帰りが遅いことを心配して尋ねてみたことがあるんです。"どうして最近そんなに夜遅くの帰宅なの?"と…。そしたら、"ナシュナには関係ないだろ、好きに仕事させてくれ"とため息と一緒にそう吐き捨てられて…。それを聞いて私ブチギレちゃいまして…。"ご飯を作って待っているこっちの身にもなったら?"と反論したところ、"ご飯を作れって頼んだ訳じゃない。お前が勝手にやったことだ"と言われる始末で…。どんどん口喧嘩が激化して、最終的に私が"こんな家出て行きます!"って宣言しちゃって…。あはは…、こんな痴話喧嘩で別居だなんて笑えますよね…。」

「ナシュナさん…。ナシュナさんはシリウスさんの帰りを待って一緒にご飯を食べたかったんですよね?」

「はい…。でもそれはシリウスには伝わらなかったみたいです…。」

 レイニーはナシュナが今回自分の家を頼ってくれたことが嬉しかった。レイニーはなぜ実家ではなくレイニーの家にしたのか尋ねた。

「実家でもいいんですけど、こう言った料理にまつわる話ならレイニーさんたちの方が頼りやすいと思いまして…。」

「そっかそっか、頼ってくれてありがとうね、ナシュナさん…いいえ、ナシュナ。これからはシリウスさんも早く帰ってきたくなるようなことをしない?」

「早く帰ってきたくなる…?」

レイニーはナシュナが復唱して首を傾げているのを見て不敵に笑った。

「ふっふっふー、シリウスさんはナシュナが料理の腕を上げていることには気付いていますか?」

「いえ、ご飯を食べないので気付いていないと思います…。」

「それじゃあ、この店にシリウスさんを呼んでナシュナが作った料理を出して、"実はこの料理はナシュナが作ったものでーす!"ってネタバラシする計画はどうかな、と思ったんだけど、どう?」

「いいかもしれません…!あの食に無関心のシリウスにも私の料理の腕を認めて欲しいですし!」

「そうそう、その意気だよ、ナシュナ!今回は私が簡単なアップルパイを教えてあげるね!」

「お願いします、レイニー!」

 そうこうして、レイニーはナシュナと共にシリウスに見直されるためにアップルパイ作りを開始した。ナシュナも喫茶店のメンバーとして働き始めて結構経つ。なので包丁の使い方も慣れた手つきでレイニーが指示した通りに切ったりしてくれていた。アップルパイの中に入れるリンゴジャムを作ると、簡単にできるカスタードクリームも作っておいて、さっそくパイ生地を…というところで、レイニーは冷蔵庫から食パンを取り出した。

「食パンでどうするんですか?」

「ふふふー、食パンではパイ生地代わりです!これなら簡単だし、パイ生地って感想にも重ねなきゃいけなくて手間がかかるからね、食パンを使っちゃえば楽だからね!」

「食パンでアップルパイを…!完成が楽しみですね!」

 ナシュナはメモをとりながらポイントを聞き、わからない場所は直ぐに質問し、あっという間に食パン生地のアップルパイをオーブンに入れる焼きの作業に入った。ここからは少しの休憩なので、レイニーはちょっとナシュナにオーブンのことお願いね!と頼み、レイニー自身はベーゲンブルグのナシュナの屋敷にやってきていた。

 ドアをノックすると、レイニーがやってきたことにメイドは慌てる様子もなく、"ご用件は?"と尋ねてきた。レイニーは直ぐに、

「私は喫茶レインの店長のレイニーです。シリウスさんと話がしたくてきました。今からでも会えますか?」

「はい、今のシリウス様は休憩を取られています。10~15分くらいならお話はできるかと。」

「ありがとうございます。シリアスさんの部屋って…?」

「私が案内しましょう。」

 メイドはそういって玄関の扉をレイニーが入りやすいように広く開けてくれた。それからレイニーはメイドの案内でシリウスの部屋へとやってきた。メイドがコンコンコンとノックをすると、中からシリウスが"入れ"と許可を出したので、メイドが部屋の扉を開けるとレイニーに中に入るように促してくれた。レイニーが部屋に入ってくると、シリウスは少し驚いた顔をしていた。

「レイニー様がお見えです。少し話をしたいとのことでしたので、お通ししました。」

「ああ、ありがとう。彼女のためにお茶を淹れてやってくれ。」

「はい。かしこまりました。」

 メイドはそういうと、すすっと部屋から出て行った。部屋の入り口で取り残されたレイニーはシリウスをじっと見つめた。

「レイニーさん、お久しぶりですね。どうぞ、そこの椅子に座ってください。」

「お久しぶりです、シリウスさん。テレポート結晶の件以来でしょうか。」

「あの時はお世話になりました。あれからナシュナもテレポート結晶を使って行き来をすることができるようになって、本当に感謝しています。」

 レイニーは仕事机から離れたシリウスに誘導されて広い部屋のテーブルと椅子のあるところまで連れてきてくれた。レイニーは椅子に座ると、ナシュナのことについて話し始めた。

「シリウスさん。ナシュナから聞きました。喧嘩したこと。」

「…ああ、彼女は今レイニーさんのお宅にいるのですね…。すみません、夫婦喧嘩に巻き込むようなこと…。」

「いえ、お気になさらず。私もナシュナが頼ってくれて嬉しいんで。それで…最近帰りが遅いシリウスさんのことをナシュナが心配しているようでしたが…。」

「…帰りが遅くなっているのは仕事で…。」

「本当に仕事ですか?」

「え…。」

 レイニーの鋭い視線がシリウスを貫いた。シリウスは冒険者の目をしているレイニーに少したじろいた。シリウスが少し言いにくそうにしているのを見て、レイニーは何か訳があることを察した。

「シリウスさん、ナシュナに何か隠していることがあるんじゃないですか?」

「………。」

 レイニーの質問にシリウスは眉を下げた。シリウスが言いたくないことなのかと思ってレイニーが話題を切り替えようと思ったと時、シリウスが重い口を開いた。

「これはナシュナには秘密にしていただきたいのですが…。」

 

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