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Level.25 紅鳥の羽根

Level.25 紅鳥の羽根

妖精の粉を手に入れた翌日、レイニーとリトはイフェスティオに向かう馬車の中でうとうとしていた。レイニーは妖精の粉を手に入れた後、直ぐに家に戻って寝たのだが、妖精の粉を手に入れられたその興奮からかよく眠れなかったのだ。それでイフェスティオに向かう馬車の中で船を漕いでいたのだ。

「お嬢さん、お兄さんもう少しでイフェスティオだよ!」

「はっ!あ、ありがとうございます!」

 馬車を運転していたおじさんが声を掛けてくれたことでレイニーは乗り過ごすことなくイフェスティオに到着した。火山都市であるイフェスティオは街に入った途端、その熱波が頬を掠めた。

「あっつ…!」

「流石火山都市だな、お店で冷却効果のあるポーションを買っておこう。」

「うん、そうだね…。この暑さはきついよ…。」

 イフェスティオは火山が近い都市。だが火山だけで採れる鉱石や魔物が現れたりするため、冒険者ギルドや雑貨屋があった。そこで冷却効果のあるポーションを購入し、レイニーたちは街を訪れている人に紅鳥の目撃情報の聞き込みを開始した。

「紅鳥かぁ…、最近は火山の活動活発になってるから紅鳥を探しに来る人なんて珍しいんじゃないかな…?」

「そうですか…。」

 レイニーが最初に声を掛けた人からはそう言われてしまい、レイニーはがっくりと肩を落とした。

「(火山活動が活発なのと紅鳥が現れるのには比例してるのかしら…)」

 そんなことを考えながらレイニーはめげずに次の街の人に声を掛けた。だが、その人もその次の人からも有力な情報を得ることはできず、イフェスティオ唯一の宿屋の部屋でレイニーは机に突っ伏していた。

「こんなに紅鳥に関する情報が集まらないなんて…、予想外よ!図書館で見た情報は確かなの、リト!」

「俺に八つ当たりするなよ…。図書館で見たのは確かだ!ここと後隣国のグレンって街には紅鳥を守護神とするジンジャ?っていうのがあるって書いてあったけど、隣国まで行くとなると相当時間がかかるぞ…。」

「うーん、それじゃあ、目撃情報があるっていうこのイフェスティオで張り込み続けるしかないのかぁ…。」

 レイニーはそこまで話すと再び机に顔を伏せて"うーうー"と悶えた。建物の中にいるのと火が沈んだのもあって昼間よりは涼しくなったイフェスティオだが、人に聞き込み調査をするなら太陽が昇っている間ではないと危険だと情報収集をしている際に言われてしまったので、レイニーも危険を冒してまで情報収集をするつもりはなかった。

「とりあえず明日も冷却効果のポーションを使って聞き込みをしよう。明日こそ何か知ってる人に出会えるって!な?」

 リトが元気付けようとしてくれているのがわかるため、レイニーは小さくコクンと頷いて見せた。それを見たリトは"俺は部屋に戻るから。何かあったら呼べよ"と言ってレイニーの部屋を後にして行った。

 机からベッドの上に横になったレイニーはふと導き石を手に取った。リトと逸れることがあっても、これを使えばまた出会えると思って今回の外出にも肌見離さず持っていた。

「(これを使えば紅鳥に会えたりして…)んなわけないか…相手はレアな鳥だし…。」

 そんなことを思いながらレイニーはベッドから起き上がると部屋に備え付けられているシャワーで昼間にかいた汗を流すことにしたのだった。

 ――――――

 翌日。今日も暑くなりそうなので、宿屋から出た足でレイニーとリトは雑貨屋で冷却効果のあるポーションを2本ずつ購入し、直ぐに1本をぐいっと飲み干した。体の内側からじんわりと冷えていく感覚を覚えながらレイニーとリトは昨日と同様に街で紅鳥の聞き込みを開始した。

 太陽が段々と高くなるにつれて暑くなる気温にレイニーたちは水分補給をこまめにして熱中症にならないよう最新の注意を払いながら聞き込みをしていた。すると、火口付近から降りてきた軽装備の少女が気になり、レイニーはその子に声をかけた。

「あのっ!今火口の方から来ましたよね!ちょっとお話を伺ってもいいですか?」

「……いいよ。」

「ありがとうございます!あの私たち紅鳥という鳥を探してるんですが、ここら辺で目撃情報があると聞きまして。何か紅鳥に関する情報とかありませんか…?」

「…火口付近に紅鳥を祀る祠があるの。そこに私は供物を置いてくる役を仰せつかってるわ。今日も供物を置いてきたばかりだから、今から行けば紅鳥が供物の元に来るのに遭遇できるかもしれないわ。」

「!!!それ本当ですか!い、行ってみます!情報ありがとうございました!これ、私が開いているお店の名刺です!是非ピーゲルという街に立ち寄ることがあればお店に来てください!美味しい料理をお出ししますから!それじゃ!」

 レイニーは軽装備だった不思議な少女から紅鳥を祀る祠の情報を貰うと、少女に喫茶レインの名刺を渡して直ぐに別の場所で聞き込みをしているリトの元へと向かった。

「リト~!有力な情報ゲットだよ~!」

「お、レイニー。有力な情報ってどんなのだ?」

「あのね、火口付近に紅鳥を祀る祠があって、そこに供物を捧げているらしくて。さっきその情報をくれた女の子が供物を置いてきたから供物を取りに紅鳥が来るかもしれないよって言われて…!火口付近に行って祠を見にいく価値はあると思うの!行ってみようよ、リト!」

「おお!それは有力な情報だな!でかしたぞ、レイニー!火口付近はここより暑いからな、もうちょっと効果の強いポーションを購入してから行こう。」

「了解!」

 レイニーとリトは雑貨屋で通常の冷却ポーションではなく、更に効果の高い凍結ポーションというものを購入した。それを持って火口付近に向かうこと数分。じんわりと暑くなってきたので、レイニーたちは雑貨屋で買った凍結ポーションを飲んだ。

 凍結ポーションというくらいだから体が凍ってしまいそうなほどの冷たさのポーションなのだが、火口付近の暑さと中和してちょうどいい温度になっていた。

「うん、これなら!」

「さあ!紅鳥を祀る祠を探そう!」

 2人はポーションの効果が切れる前に祠を見つけなければならないため、急いで捜索を開始した。

 すると5分ほどで山の斜面を下ったところにぽつんと祠があるのをレイニーが見つけた。

「リトー!あったよー!」

 レイニーが大声で少し離れた場所にいるリトを呼ぶと、レイニーは祠にある供物が無くなっていないか確認した。

「良かった。まだ供物を取りに来てはいないみたいね。」

「レイニー、これがその祠?」

「リト。そうみたい。供物はまだ残ってるからこれから紅鳥が来るんだと思う。」

 リトと合流したレイニーは祠の近くで紅鳥が来るのを待った。すると10分ほどで変化があった。どこからともなく鳥のような鳴き声が聞こえた。

「リト、聞いた?今の鳴き声…」

「ああ、聞いたよ。この鳴き声は…。」

「「紅鳥だ!」」

 2人が希望を込めた視線を送る先には太陽を背にしてバサバサと虹色の羽を広げて飛行する紅鳥がいた。

 《キュエー!!!!》

 紅鳥は祠の前にいるレイニーと視線を合わせた。たった数秒間だったが、レイニーは紅鳥に会いに来たその理由を頭の中で思い出していた。目的は紅鳥の羽根だ。それが取れなければここに来た意味がない。そんなことを思っていると、紅鳥は祠に捧げてある供物を嘴で突いて食べ、また《キュエ!》と一鳴きしてから羽ばたき始めた。

「あっ…!」

 レイニーが羽根のことを思い出して紅鳥に手を伸ばそうした瞬間、紅鳥が飛び立ち、その場に虹色に輝く紅鳥の羽根が残っていた。

「これが…紅鳥の羽根…。綺麗…。」

「やったな、レイニー!紅鳥が最後に羽根を残してくれたのはありがたかったな!」

「紅鳥には私たちがここに来た理由が筒抜けだったのかもね。」

「?そうなのかねー。さっ、こんな暑いところから離れてピーゲルの街に帰ろうぜ!これでテレポートアイテムを作る錬金術の素材は集まったんだろ?」

「そうだね、直ぐに家に戻って錬成してみよう!」

 そう言ってレイニーとリトは暑い暑いイフェスティオからピーゲルの街に帰ったのだった。

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