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Level.18 もどきの逆襲

Level.18 もどきの逆襲

 次にレイニーがレシピの考案に取り掛かったのはピザトーストだった。

「ピザトーストは簡単だよね。ザルじい、バジルとかある?」

「バジルならピーゲルの森で見つけてパントリーに取っておいてあると思うぞ。」

「流石ザルじい、抜かりはないね!」

 すでにバジルを見つけていたザルじいにレイニーは拍手を送り、先に食パンを作り始めた。レイニーは前にいた世界ではパンを作ったことはあるが、材料が揃うか不安だった。だが、そこはさまざまな料理を作ってきたザルじいの力も借りて粉類の準備をして早速パン作りがスタートした。パン作りに必要な材料はザルじいがこの世界に来てからの研究に研究を重ねた賜物で作り上げた酵母などを用意してくれた。

 粉類や酵母を混ぜ合わせ練り上げると台に擦り付けるように練っていく。きめ細やかになってきたら、バターを加えてツヤツヤになるまで練り上げる。そして一次発酵やベンチタイムなどを挟み、レイニーはようやくパンらしくなってきた生地を大事に型に入れて二次発酵をしてオーブンで30分程度焼いて完成だった。

 パンを焼いている間にレイニーはピザソースを作った。ケチャップとウスターソース、細かく刻んだバジルや玉ねぎを加えて味見をしながら他の調味料を加えつつ味を整えた。

「うん!バジルがあることでピザらしさが増すね!」

 レイニーは納得のいくピザソースを作り上げたところで、パンが焼き上がった。ミトンをはめてオーブンから取り出すとそこにはふっかふかに焼き上がった食パンが出来上がっていた。

「おお~!食パンだ!食パンだよ、ザルじい!」

「ほっほっ、パンが作ったのは久々じゃが上手く出来たようで良かったわい。」

 そこから熱いうちに型からパンを取り出して粗熱を取ってから包丁でパンを切って、まずはそのままで味見をした。

「うん!ふかふかで美味しい!これこそパンだよ!街で食べたのとは違うな~!」

「うむ、上手く出来ておるようじゃの。酵母を量産しておく必要があるな…」

 ザルじいは材料の確保でぶつぶつと言っていたようだが、レイニーは直ぐにトーストにピザソースを塗って細かく切ったチーズを乗せてオーブンで焼き目がつくまでこんがりと焼いた。

 様子を見ながらピザトーストを取り出すとバジルの香りが鼻腔をくすぐる美味しそうな香りがキッチンを満たした。

 そして早速熱いうちに味見をしてみるとレイニーはカッと目を見開いた。

「うん!これこそピザだよ!バジルがあることないのとじゃ全然違うね!チーズもとろとろだし美味し~!」

「トマトソースもいいが、ホワイトソースでも美味しそうじゃの。ピザトーストの種類を増やすのもいいじゃろう。」

「それいいね!ホワイトソースでも作ってみようっと!」

 レイニーはザルじいがつぶやいたアイディアを聞いて早速ホワイトソースを作り出した。小麦粉とバターを炒めて牛乳を少しずつ加えて伸ばし、ホワイトソースを作ると細かく刻んだ玉ねぎやベーコン、コーンなどを加えてピザトースト用ののホワイトソースを作り上げた。それをトーストに塗ってチーズをかけてオーブンで焼き目がつくまで焼くと見た目がとっても美味しそうなホワイトソースのピザトーストが完成した。

「これはどうかな…?」

 ふーふーとパンを冷ましてからパクリと一口食べてみるとあまりの熱さにはふはふと口の中の熱を逃したが、それでも熱くて飲み込むのが大変だった。だが、それよりもホワイトソースのクリーミーさとチーズの相性が最高だった。

「うーん!このホワイトソースのピザトーストも美味しいよ、ザルじい!ザルじいのアイディア採用だね!」

「ほっほっ、老ぼれのアイディアでも役に立ってよかったわい。」

 愉快そうに笑うザルじいもホワイトソースのピザトーストを食べて満足そうに頷いた。最初はトマトソースのピザトーストだけを作ろうと思っていたのだが、ザルじいの発言で思わぬ発見をしたレイニーはホワイトソースのピザトーストもメニューに追加しようと決意したのだった。

「さて、次は…。プリンアラモードか…。ザルじい、フルーツの仕入れの確認した?」

「いや、まだじゃよ。どれ今から果物屋に行って卸してもらう契約をしてこようかの。レイニーはプリンを作ってみなさい。」

「うん、分かった!あ、ザルじい、バニラビーンズとかバニラエッセンスとかって…。」

「それはまだ見つけたことがないんじゃよ…。森には生えておらんかったしのう…。」

「そっか…、私図書館に行って調べてくる!」

「あい、分かった。」

 レイニーは部屋着からいつもの冒険者用の服装に着替え、金属のアーマーなどは取り付けず、ラフな格好で図書館へと向かった。最近は図書館で調べ物をする機会が増えてきたので、もう図書館司書の人とは顔見知りで、図書館に入って軽く会釈をするとそのままレイニーは植物図鑑のあるエリアに向かった。

「(植物図鑑はっと…。)」

 指でつーっと本の背表紙を撫でていきお目当ての植物図鑑を見つけると共有スペースの机に移動して図鑑をパラパラとめくった。

「(バニラビーンズに似た甘い香りのする植物があればいいんだけど…)」

 レイニーは図鑑の説明文をよく読みながらバニラビーンズに似た植物を探した。すると似たような豆科の植物がピーゲルの森とは反対方向に向かう草原で植物が自生していることが分かった。

「(よし、善は急げ、早速草原エリアに行ってみよう!)」

 レイニーは腰のポーチからメモ帳を取り出して、その植物の外見などをメモして図鑑を元の場所に戻すとピーゲルの街を走った。いつもピーゲルの森の方ばかり向かっていたが、草原エリアに来るのは久々でレイニーは少しばかりワクワクとした気持ちでバニラビーンズもどきの捜索を開始した。

 草原エリアなどでどこまでも緑の草原が広がり、ところどころに木々が並んでいて、その広さの草原からバニラビーンズもどきの植物を探すのか…とめまいがしそうになったが、なんとか持ち堪え"プリンのため!"と鞭打ち、まずは植物が自生していそうな場所を探し始めた。

 それから2時間。ようやくバニラビーンズもどきの植物を発見することができた。2時間も掛かってしまって、もうへとへとだったレイニーはバニラビーンズもどきを腰のポーチに大事にしまって、"よっこいしょ"と草原に腰を下ろした。

「ぎゃっ!」

「!?な、なに!?」

 ちょうど自分のお尻の下から何かが潰されたような鳴き声が上がったので、慌てて退くとそこにはバニラビーンズもどきが頭に生えた植物型の魔物がプルプルと震えていた。

 レイニーはさあーっと血の気が引いていく感覚がした。まずい相手を怒らせてしまったかもしれないと思って少しずつ後退りをしてレイニーはその魔物から離れようとした。だが、魔物はそれを許さず、直ぐに地面から根っこのような足を引き抜きズドドドドとレイニー目掛けて追いかけてきた。

「いやーっ!!!来ないでってばー!!!」

「ぎゃやー!!!!」

 側から見ればなぜそんな初歩級の魔物にビビっているのか、と見えているかもしれないが、レイニーはバニラビーンズもどきの捜索の疲労から逃げ回るのには体力が無くなってきた。直ぐに追いつかれそうになったので、相棒の槍でなんとか突こうとするも、何故かその魔物は軽やかなステップで槍の攻撃を躱してその避け方の華麗さがよりレイニーのイライラを増幅させた。

「なんで、当たらないの!?」

 一向に攻撃が当たる気配が無く、レイニーはほぼヤケクソで槍を突き出した。そんなやりとりを15分ほどしてレイニーはようやくその植物型魔物を倒すことができた。

「はぁ…はぁ…、なんであんな奴に時間かかってたんだ…。」

 乱れた息を整えながらレイニーは戦いの最後の方でバニラビーンズもどきの植物を頭に生やしていた魔物からその実をもぎ取っていたので、それを確認した。

「植物図鑑には載ってなかったけど、魔物も似たような植物生やしてるならそう書いといてよ…。」

 思わぬ体力を消費してしまったレイニーは疲れ切った表情でピーゲルの街へ帰ったのだった。

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