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Level.14 オーガ戦

Level.14 オーガ戦

 洞窟から出て来たオーガは全部で7体。

 かなりの数であったが、レイニーたちは先日キュリアが不審な足跡の正体がオーガであることを突き止めてから森でオーガとの戦闘もあるかもしれないというジルビドの推測をもとにオーガの攻撃パターンなどは調査隊の中で共有されていた。

 だからオーガが石を削って作ったであろう少し鋭利な武器を持って攻撃してくるのは予想済みだった。だが、予想外だったこともある。それはオーガの強靭さだった。レイニーたちの鋭利な刃物の武器ではオーガの強靭な筋肉の鎧を破ることが出来なかった。

「硬いな!オーガってのは!」

「ジルビドさん、どうします!?」

 リトがその筋肉の硬さに舌打ち混じりで不満を吐くと、レイニーは調査隊の隊長であるジルビドの判断を仰いだ。

「ここは魔力をまとった魔法攻撃をするしかないな。キュリアくんの氷属性の魔法や他の皆の魔法攻撃があればオーガに通用するかもしれない。」

「分かりました!やってみる価値はありそうですね!」

 ジルビドの作戦を聞くとリトが頷いて双剣に魔力を込め始めた。他の調査隊のメンバーの冒険者たちも次々と魔法攻撃の準備に入った。

 レイニーはこの1週間でキュリアから魔法攻撃についての特訓を受けていた。その成果を見せる時が来たのだと思い、他の冒険者と同じように魔力を込め始めた。

 パチパチと静電気が起こる音と共にレイニーの槍には雷属性の色である黄色の光が集まり始めた。レイニーは次第に魔力を高めていく感覚を感じながらオーガの方をじっと見つめた。オーガたちも何か強力な攻撃が来ると思っているのか防御の姿勢を取る者、魔力を貯めているのをチャンスだと思って攻撃してくる者、それぞれだった。

 レイニーの目の前にいたオーガは後者だったようでレイニーに向かって拳を振り上げていた。

「そう…簡単に攻撃を受ける訳ないでしょ…ッ!」

 レイニーは意識はあくまで魔力を込めている槍の刃先にありながらもオーガの拳を避けてオーガの懐に入ると、今まで貯めていた魔力がついにバチバチッという雷の音と共に発光した。

「雷の(いかづちのやり)!!!」

 ズドン!!!という落雷の音が森に鳴り響いた。オーガの懐というゼロ距離で今までの特訓から習得した魔法攻撃《雷の槍》を放ったレイニーの槍は、オーガの脇腹から風穴を開けてオーガを絶命させた。そしてそれだけではなく、レイニーの目の前にいたオーガだけではなく偶然その後ろにいたオーガの右腕をも巻き込んで数メートル先の樹木を貫きやっと止まった。その威力の強さに周りにいた冒険者たちは皆ぽかーんとしていて、オーガもその威力に恐れを抱いたようで足を半歩後ろに下げた。

 だが、オーガは直ぐに闘争心を戻し、雷の槍を放ったレイニーに襲いかかった。そんなレイニーを守るようにリトが武器に火属性の魔力を込めて作り出した炎の双剣をオーガの腕を切り落とした。"ぎゃあ!"というオーガの痛みに悶える声を聞きながらレイニーは直ぐに魔力を回復するというポーションをぐいっと飲んだ。魔力が枯渇している感覚を初めて味わった。レイニーは体の内側からの力が無くなってくるような感覚にヘロヘロとしたながら地面に手をついた。

「(雷の槍を一発打っただけでこんなに疲れるなんて…!連発出来ない…!)」

 レイニーはポーションの効果が現れるまで、地面に手をついてひたすら意識を集中させて魔力の回復に尽力した。レイニーは自分が今足手纏いになっていることが悔しくて直ぐに立ちあがろうとしたのだが、魔力が枯渇していると力が入りづらく、立ち上がるのもやっとな状態だった。

「レイニー、大丈夫か!」

「リト…!ポーション飲んだからもう少し休めばもう一回打てるよ!」

「レイニー、無理しないで。まだオーガが残ってるから、レイニーのさっきの一撃は最終手段で取っておくべきよ。」

「キュリアさん…。」

 レイニーはキュリアにそう言われてこくりと頷くと他の冒険者の魔法攻撃が当たるようにオーガを誘導するように努めた。

 そして最後の1体になり、ジルビドがその手に持った片手剣で水属性の魔力をまとわせオーガの核がある左胸を貫いた。

「ふぅ…、これで最後の1体だったか。7体もいたオーガをこうして倒すことが出来たのはレイニーくんの魔法攻撃の効果だな。オーガも怯んでいたし、そのおかげで魔法攻撃の的中率が高くなった。ありがとう、レイニーくん。」

「いえいえ…、一発打っただけで、ヘロヘロになってたのでお役に立つどころか足手纏いになってしまって…。」

「初めての魔法攻撃にしてはとても攻撃力の高い魔法攻撃だと思うわ。あとは連発できるように、魔力調節をすればいいと思う。」

 ジルビドからお礼を言われてレイニーはぶんぶんと両手を振った。キュリアからは次の課題を挙げてもらえたので、レイニーは腰のポーチからメモを取り出してしっかりと書き留めた。

「オーガは倒したが、まだ洞窟の中にいるかもしれない。気を引き締めて洞窟の中を捜索しよう。」

「はい!」

 ジルビドを先頭にして洞窟の中を進み始めたレイニーたちは暗く湿っぽい洞窟の中を壁を伝って歩いた。

「ピーゲルの森の奥にこんな洞窟があったなんて…。俺知らなかった。」

「私は洞窟の存在は知っていたが、オークやオーガが根城にしていたという話は今回が初めてだよ。」

 リトが洞窟の壁をキョロキョロと見渡しながら歩いていると先頭を歩いていたジルビドが慎重な足取りで答えた。そして、洞窟に入って15分ほど経った頃、洞窟の奥地から強大な魔力をひしひしと感じた。

「これは…、ラスボスの登場ってことか…?」

 リトが冷や汗を掻きながら武器を構えたその先には先ほど戦ったオーガよりも一回り大きなオーガがドンと居座っていた。

「このオーガを倒さなければ、ピーゲルの街の危険は消えない…、皆やるぞ!」

「はい!」

 ジルビドの言葉と共にレイニーたちは武器をぎゅっと握って大きなオーガとの戦闘に入った。先程戦ったオーガと同様、通常の武器での斬撃ではオーガの皮膚に傷を付けることが出来なかった。硬い筋肉の鎧を纏っているオーガはそれだけではなかった。自身が座っていた手頃な椅子のような大きさの岩の側から一本の剣を持った。

「武器を持ち出したってか…!」

「くっ…、厄介だな!」

 武器を持ったオーガはその強靭な筋肉をフルに使って放たれる重い一撃は地面を抉り、その威力に調査隊の皆は青ざめてしまった。

「こ、こんな奴、倒せるのか…?」

 1人の調査隊のメンバーの冒険者が後ろに後退りながら呟いた。その言葉を聞くと次第に調査隊メンバーの中で不破が広がって行った。だが、レイニーは諦めなかった。

「ピーゲルの街を守らなきゃ…!敵わない相手でも…それでも、勝たなきゃ!街を、大切な人たちを守るの…!」

 レイニーの頭の中にはザルじいの顔が浮かんでいた。急に見知らぬ土地に放り出されたレイニーをザルじいが温かな料理と言葉で包み込んでくれた。リトの母親のランラも気前良く接してくれた。レイニーは少しずつであるが、ザルじいの言っていたこの世界の人々の力強さを実感していた。今ここにいるリトやキュリア、ジルビドも含まれている。そんな人たちを守りたいんだと言うとその言葉に同調するようにリトが双剣を燃やした。

「レイニーの言うとおり、ここは踏ん張らなきゃな!俺たちが守らなきゃ街が壊滅しちまう!」

「ピーゲルの冒険者ギルドのギルド長としてここらは引けない。街を守るという名目があるしな!」

リトやジルビドが立ち上がったレイニーの隣に並ぶと、ニッと笑った。ネガティブな発言をした冒険者以外の調査隊のメンバーは皆やる気に満ち溢れ、巨大なオーガに立ち向かおうとしていた。その冒険者はキュリアの手を借りて立ち上がっていた。

「心が折れても立ち上がらなくちゃならない。私たちは冒険者。魔物と戦うことこそ宿命。こんなところで立ち止まっていてはダメよね。」

「皆さん…!こいつをなんとか倒しましょう…!私の雷の槍があれば、なんとかなります。隙を作ってください!」

「一撃必殺ってやつだな!分かった!レイニーの魔力が溜まるまでの間、オーガの気を逸らせよう!」

 レイニーは周りの皆がレイニーの隣に並んでオーガの前に立ちはだかるとレイニーの雷の槍を使ってオーガを倒すことに賛成してくれ、そしてレイニーの魔力が溜まるまでの間オーガの注目を惹きつけることに尽力した。

 そして…調査隊のメンバーの錯乱により上手くオーガの気を逸らすことが出来、レイニーの魔力はMAXになった。

「皆さん、魔力が溜まりました!」

「レイニー、やったれ!」

「《雷の槍》 !!!」

 バチバチと静電気が起きる音がしたかと思えば眩しいほど黄色に発光していたレイニーの槍は雷を纏った一撃必殺の槍となり、一直線にオーガの核がある左胸を貫いた。

 そして、ゆっくりとオーガは後ろに倒れそのままサラサラと砂になったかと思えば光の粒子になって四散した。


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