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Level.13 イメージ力

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 キュリアがレイニーとザルじいの家に来て2日目。朝ごはんをモリモリ食べるキュリアの様子を見てザルじいは“たくさん食べてくれるなら作り甲斐があるわい"と嬉しそうに朝食を作っていた。

 朝食後にレイニーたちは防具に身を包んで、ピーゲルの森の調査隊と合流すべく森へと向かった。

「昨日は見たことがない足跡の発見だけでしたよね…。今日は何がわかるんでしょうか…」

「少しでも進展があるといいね。」

 夜での森の探索は危険なので夜の間に何か変化が起きていないか確かめながらレイニーたちは森の奥地へと向かった。

 だが、この日も何の収穫も無く帰路に着くことになった。

「はぁ…、今日は収穫無しでしたね…。オークが現れたのは偶然だったんでしょうか…」

 街外れの家までの帰り道、レイニーは隣を歩くキュリアに聞こえるよう、そう呟いた。

「………。」

「キュリアさん?」

 レイニーは反応が返ってこないことに疑問を抱き、トボトボと歩いていたのを止めてキュリアの顔を見た。何やら考え事をしているようで、顎に手を当てたまま歩いていた。キュリアの名前を呼ぶとハッとしたように慌ててレイニーの方を向いた。

「キュリアさん、もしかして森で見つけたあの足跡に心当たりとかあるんじゃ…」

「…うん、まぁね。伊達にゴールドランクとして名を馳せている訳じゃないよ。あの足跡は見たことがあるんだよ。多分あれはオークよりも強い、オーガという種の魔物よ。」

「オーガ…。確か人型の鬼のような魔物…でしたっけ」

「そう。オークより知能が高くてね。集団で行動していて村まで存在すると言われている種族。」

 レイニーはキュリアが話してくれたオーガについての話は魔物大図鑑には載っていない話だったので、慌てて腰のポーチからメモ帳を取り出してメモを取った。

「あれ、それじゃあ、オーガがこのピーゲルの森に来ていると言うことはどこかに集落を作ろうとして…?でも、オークも一緒に現れたのは何故でしょう…?」

「レイニーはすぐに気付くね。オーガが森に集落を作ろうと思って来たのならまだ話は分かるわ。でも、オークも一緒に現れたのが引っかかるの。」

 レイニーは憧れのキュリアから褒められて"えへへ"と微笑みつつも、話の内容が重くなってきたのを感じていた。

「もしかしたら、これは相当大きな問題かもしれないわ。レイニーは先に家に戻ってて。私ジルビドさんに話してくる。」

「えっ、キュリアさん、明日でも…」

「明日じゃまた何か変化があるがしれないわ。明日になるのを待ってて後手に回ってしまったらこの街が危険よ。だから、今から話してくる。」

 キュリアが感じたこの件についての憶測をジルビドに話そうとキュリアは直ぐに戻ると行って走って冒険者ギルドの方へ行ってしまった。

「ただいま…」

「おや、今日はレイニー1人なんじゃな。おかえり。」

「キュリアさんはちょっと急用で冒険者ギルドに行ってる。すぐに戻ってくるって言ってたから。」

「そうなんじゃな。今日も肉じゃがを作ってやったんじゃが…。先に2人で食べるとするかの。レイニー、手を洗って着替えて来なさい。」

「はーい。」

 1人で帰宅したレイニーに気付いたザルじいがキュリアのために肉じゃがを作ったとウキウキしながら反応を楽しみにしていたらしいのだが、キュリアが一緒じゃないと知ると少し残念そうにして、レイニーの分の肉じゃがを盛り付けてくれた。

 ――――――

 2人で肉じゃがとサーモンカツを食べて満腹になっているところへキュリアが帰宅した。

「お帰りなさい、キュリアさん。私たちもうご飯食べちゃいましたよ。」

「ごめんなさい、遅くなって…。ちょっとジルビドさんと話し込んじゃって。」

「それでジルビドさんの反応はどうでした?」

「ジルビドさんも同じことを考えていたみたい。もしオーガの集落だけを作るためにオーガの足跡があったなら過剰に接触はせずに森の奥地を立ち入り禁止区域に設定すればいい…って思ってたらしいの。でもオークも現れた…これは偶然にしてはやりすぎだと思ってたらしくて。1週間以内に何も変化がなければ森の調査隊は解散するって言ってたけど…。」

「1週間がタイムリミット…ですね。」

「そういうこと。さて、私も肉じゃが食べてもいい?」

「どうぞどうぞ!」

 キュリアはお腹が空いていたらしく、メインのサーモンカツもタルタルソースも初めての料理だったが、どれも美味しかったようであっという間に用意した分を完食したのだった。

「さて、レイニー。特訓の時間よ。」

「はい!」

 ご飯を食べ終えた2人は庭先に出ると武器を構えた。

「昨日は自分の魔法属性を知ることが出来た。それなら次は魔法を使ってみるところから。レイニー、魔法を使ったことがないって言ってたよね、まずは雷属性の初歩的な魔法、静電気を起こしてみてちょうだい。それが今日の目標。」

「分かりました!」

「大事なのはイメージする力。その魔法をどんなふうにどんな形にして使いたいのかをイメージすると魔力がその形になっていきやすいから。」

「ふむふむ…。イメージする力…」

 レイニーはキュリアからの指示をメモに書いて後は自分で練習あるのみだったので、キュリアはお風呂に入りに行った。その間レイニーはひたすら庭先で魔法を使えるように練習を重ねた。

「(静電気は下敷きとかの摩擦でパチパチって髪の毛が立つやつだよね…。摩擦でパチパチ…。魔力同士を擦ってみる…。)」

 昨日の特訓で魔力の引き出し方がわかっていたのでその引き出した魔力をどういう形にするのか、それをイメージしていくと、レイニーの手の中からパチパチッという音がした。だが、一回出来ただけで喜んでいてはダメだ。これを反復練習をして、直ぐに静電気を起こせるようにならなければいけなかった。

「(まだまだ…もっと早く…!)」

 レイニーはお風呂から上がってきたキュリアが声を掛けても集中してて全然気付かない状態で魔力の操作を行っていた。

 やっとキュリアに気付いた時には15分は経過していて、レイニーはその間でずいぶん早いペースで静電気を起こすことをマスターしたようだった。

「レイニー、お疲れ様。静電気出来るようになったみたいね。続きは明日にしましょう。」

「キュリアさん!私静電気上手く扱えるようになりましたよ!直ぐにパチッとするようになれましたし…!」

「レイニーは吸収が早くて助かるよ。私がこの街に滞在している期間中には魔法攻撃をマスター出来そうだね。」

「あっ、そっか…。キュリアさんはこの街が拠点って訳じゃないんですもんね…」

 レイニーは森の調査隊が解散されればキュリアもこの街から去ってしまうというのを思い出してしょんぼりしてしまった。そんなレイニーの頭に手を置いてキュリアは微笑んだ。

「大丈夫。私がいる間に必ずレイニーを強くさせるから。それに冒険者をやっていればまたどこかで会えるから。」

 そう言ってくれたキュリアにレイニーは目頭が熱くなった。泣きそうになるのを我慢してレイニーはお風呂に入ってきます!と意気込んでから浴室に向かったのだった。

 ――――――

 オークの群れが発見されてから1週間後。

 レイニーたちは今日も森の奥地を捜索していた。キュリアが言っていた森の変化が何もなければ調査隊の解散するという話はどうやら本当のようで、今朝森に出発する前に隊長のジルビドからそう言った話が出たところだった。

 そしてピーゲルを出発して2時間。森の中を彷徨っていると、レイニーはオーガの足跡を複数発見した。その足跡は森の奥に伸びていて、レイニーたちは慎重にその足跡を辿っていった。

 そして行き着いた場所は洞窟だった。洞窟の前には見張りだろうか、1体のオーガが立っていてキョロキョロと辺りを見渡していた。

「オーガの棲家がこの洞窟になったってことかしら…」

「この洞窟内にどれくらいの数のオーガがいるのか把握出来ないのが心許ないが…。こちらが先手を打って上手く誘い出すことができればオーガの殲滅も夢ではない。」

オーガの仮の棲家であろう洞窟から少し離れた茂みからレイニーたちは様子を伺った。

 そしてジルビドの判断でキュリアの魔法攻撃を先手として監視役のオーガを倒してから中にいるオーガたちを誘い出して戦闘に持ち込む作戦にすることにした。

 これから始めるオーガとの戦闘にレイニーは緊張した。震える手をぎゅっと握っているとキュリアがその手を自分の手で包み込んでくれた。まるで大丈夫と言ってくれたようでレイニーはそれだけで勇気を貰えた。

「よし、それじゃあ、キュリアくん、よろしく頼むよ。」

「はい。…凍てつく氷よ、捕縛する荊となれ。」

 キュリアの魔法、氷属性の魔法で出来た荊が一直線に監視役のオーガに向かって行き、オーガの体に巻き付くとあっという間にオーガが氷漬けになった。

 その異常に冷たい冷気を感じ取ったのか、洞窟の中から続々とオーガが飛び出してきた。そして私たちはオーガとの戦闘に持ち込んだ。

 

 

 

 

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