Level.12 魔法属性はなんでしょう。
Level.12 魔法属性はなんでしょう。
レイニーが目を覚ますとそこは真っ白な天井だった。
「ここ…は…?」
「あっ、レイニー目が覚めたんだな!今看護師さん呼ぶから!」
レイニーが目を覚ましたのに気付いたのか隣にリトがいて、直ぐにナースコールを押したようで看護師と医師が飛んできた。
「レイニーさん、目を覚まされたんですね。今から少し心音などを聞きますね。」
医師にそう言われてレイニーは寝たきりでされるがままに心音を聞いてもらった。
「うん、問題なさそうだね。しばらくは点滴治療をしてもらうから直ぐには起き上がれないから、安静にね。」
「あ…ありがとうございます…。」
レイニーは点滴をしているというから、あまり体は動かさないように視線だけを動かして医師に感謝を述べた。看護師と医師が離れると病室に一人の女性と二人の男性が入ってきた。レイニーはその女性に心当たりがあった。
「あ、もしかしてオークを倒してくれた…?」
レイニーはオークからの攻撃で意識を手放してしまう前にひんやりとした冷気と白髪のショートヘアーの女性の姿をこの目で見ていた。病室に入ってきた女性がまさにその人だったので、レイニーはその女性に問いかけた。
女性はレイニーの問いかけにこくりと頷くと、胸に手を当てて自己紹介をしてくれた。
「私はキュリア・バッカス。冒険者ランクゴールドの冒険者。オークをこの街に襲いに来る前に足止めをしていてくれてありがとう。」
「キュリア…さん。ゴールドランク…。」
レイニーは意識が戻ったばかりで、口が思うように動かないがキュリアの名前を復唱すると、キュリアはこくりと頷いて、自身の後ろにいる男性に視線を移した。
「君がレイニーくんだね。初めまして。私はピーゲルの冒険者ギルドのギルド長、ジルビド・アッガーというものだ。こっちは補佐官のハルスト・イジュール。宜しく頼むよ。」
「ジルビドさんに、ハルストさん…。冒険者ギルドの人が私に…?」
ジルビドと名乗った男性はミルクティー色の髪の毛を短く刈り上げ、そして翡翠色の瞳がレイニーのことをじっと見つめた。レイニーはジルビドとハルストが何故自分の病室に来ているのか分からずに、質問した。
「今回のオークの件、レイニーくんとリトくんを危険な目に遭わせてしまったこと、怖い思いをさせてしまったこと、誠に申し訳ない。」
「二人の病院での治療費は冒険者ギルドが肩代わりしますので、ご安心ください。」
ジルビドはオークがピーゲルの森に出没し街を襲いかかろうとしたことを知っていて、その対処にレイニーたちだけで向かわせたことについて謝罪をしてくれた。ハルストは今回病院での治療費を冒険者ギルドが持ってくれることを話してくれた。冒険者ギルドのお偉いさんがそうやって謝罪を述べたことでレイニーは時間差でじんわりと涙を溜めた。
「わたし…死んでしまうかと…。キュリアさんが来てくれなかったら、私の命は尽きていたでしょう…。すごく怖かった…怖かったんです…ぐすっ、大切なリトを…相棒のリトを失ってしまうかもしれない恐怖と自分の命が尽きそうな恐怖が同時に襲ってきて…。ッ怖かったよ~!」
レイニーは心の奥でくすぶっていた恐怖心が今になって襲い掛かってきて、涙をぽろぽろと流しながら泣いた。本当は怖くて堪らなかった。でもリトを助けたい、街を守らなきゃと思ったその信念だけでオークに立ち向かおうとしていた。結果的にキュリアが駆けつけてくれてオークを倒してくれたが、レイニーの頑張りは評価されるべきことだった。レイニーがベッドに横たわったまま、涙を流すの見て隣にいたリトがティッシュでその涙を拭ってくれた。リトも無事だったこともレイニーが涙を流している理由の一つに入っていた。
「君の境遇はザルドさんから聞いている。この世界に溶け込もうとしていた矢先にこんな怖い思いさせてしまってすまない。二人のおかげでピーゲルの街は無事で済んだ。街の代表としてお礼を言いたい。ありがとう。冒険者たちが直ぐにレイニーくんの元へ行かなかったのも問題の一つだ。それにしても、何故平和だったピーゲルの森にオークなんていう種族の魔物が…。」
「ジルビドさん、森の調査隊はもう編成されましたか?」
「いや、これからだが…。リトくん、まさか参加してくれるのかい?」
ジルビドは考えこむように腕を組んでオークが何故このピーゲルの森にやってきたのか、その真意を突き止めようとしていた。そんなジルビドにリトが"森の調査隊"というワードを出してきた。レイニーはどういうことかと首を傾げた。
「あの、その"森の調査隊"というのは…?」
「ああ。レイニーくんがまだ目を覚ましていない時に決まったことでね。本来ピーゲルの森に生息していないオークが現れたことでピーゲルの森は今とても危険な状態にあるとされている。そのオークが現れた原因を突き止めるべく、ギルド長の私を隊長とした"森の調査隊"が冒険者ギルドで編成されてね。それにはキュリアくんも参加してもらうことになっている。」
「…私もその森の調査隊に入れさせてください。」
「だが、レイニーくんはついさっき怖い思いを…。」
「確かにとっても怖かったです。でも、街の人を守りたい気持ちは皆と同じで私にもあります。力不足なのは分かっています。でも役に立ちたいんです。」
「ジルビドさん、私がレイニーの特訓に付き合うから、それで許可してもらえる?」
「キュリアくんまで…。分かった。森の調査隊にレイニーくんも加えよう。調査隊に参加しつつ、レイニーくんはキュリアくんから手ほどきを受けるといい。何か新しい力に目覚めるかもしれない。」
「ありがとうございます!」
レイニーは寝たきりの状態だったが、点滴が効いて来たのかゆっくりと起き上がって、ジルビドに懇願するとキュリアの後押しもあり調査隊に入れてくれることを許可してくれた。レイニーはジルビドにお礼を言うと、キュリアの方に向き直った。
「キュリアさん、良かったら私の住んでいる家に泊まっていってください。部屋はたくさんありますし。私の家に泊まれば特訓をするのも簡単でしょう?」
「いいの?」
「はい!是非!」
レイニーからの提案にキュリアはこくりと頷いて承諾してくれた。こうしてレイニーは病院から点滴による投薬治療を受け、ポーションも貰って直ぐに退院した。
翌日にはレイニーは完全回復し、キュリアとリトと共にピーゲルの森の調査隊に参加した。調査隊のリーダーであるジルビドの指示の元、レイニーたちはオークが出没している森の奥地へと進んだ。
「この足跡…、オークのではない気がします…。」
「確かにオークよりも人型に近いね…。レイニー、武器を構えといて。何があるか分からない。」
「はい!」
レイニーが発見した足跡は以前レイニーとリトが森で発見したオークの足跡とは違っていて、より人型に近い、5本指の足跡になっていた。それを確認するとキュリアが武器であるレイピアを構えて森の奥の方に視線を向けた。
その日はオークではない足跡を発見しただけで進展はなく、森の奥はまだまだ先だということで調査は翌日に持ち越しとなり、レイニーたちは帰宅したのだった。
「ザルじい、ただいま。」
「おかえり、二人とも。夕食の準備ができておるぞ。」
「ありがとう、ザルじい!今日は…肉じゃがだね!」
「レイニー、肉じゃがって何?」
「えっと、ジャガイモとお肉、人参玉ねぎとかを醤油や砂糖と一緒に煮込んだ料理でね、とっても美味しいんですよ!」
レイニーの家に帰ると夕食を準備してくれていたザルじいが出迎えてくれて、レイニーたちは各々部屋に戻って防具を外してくると、キュリアが肉じゃがに興味を示していた。
皆で席に着いて合掌をして食べ始めると、キュリアは早速肉じゃがに箸を伸ばした。レイニーとザルじいはキュリアが肉じゃがを食べてどういった反応をするのか気になって、食べる手を止めてその反応を窺った。
「…美味しい。」
いつもクールな印象のキュリアが肉じゃがを食べたことでほんの少し微笑んだ気がして、レイニーとザルじいは顔を見合わせて、嬉しそうに笑った。
三人で囲む食卓は楽しくてレイニーたちはあっという間に肉じゃがを平らげてしまった。
「レイニー、この後時間ある?」
「え?ありますけど…。」
「魔法攻撃の特訓しよう。」
「!!はい!」
夕食後、家の外にある広い庭に出たレイニーとキュリアはお互いに武器を構えて特訓が始まった。
「まずは自分の魔法属性を知ることから。レイニーは何属性かまだ分からないでしょう?」
「はい…。まず魔法を使ったこともないです…。」
「じゃあ、この石を使ってみて。」
「この石は?」
「魔道石と言って魔法属性を知るときに使われる石なの。その石に魔力を込めることで現れる反応で魔法属性を判断するわ。」
「魔力ってどうやれば…?」
「そうね…。この石は魔力を吸収することもあってね。石に意識を集中してくると何かを吸われる感覚があるから、それを引き出すイメージをするといいかも。」
「わ、分かりました!やってみます!」
レイニーはキュリアから魔道石を貰い受け、その石に意識を集中させていった。すると、キュリアが言った通り、何かが吸われるような感覚がやってきた。
「(これが魔力を吸われる感覚…。で、これをもっと引き出す…。)」
キュリアに言われた通りのイメージをしていると、数秒後、レイニーの手の中にあった魔道石がぱきっという音と共にレイニーの手に痺れるような感覚があった。
「キュリアさん、石が…!」
「石が割れて、今掌に痺れる感覚がある?」
「?はい、あります…。」
「それならレイニーの魔法属性は雷ね。石が割れて、魔道石を持っていた人が手に痺れる感覚があるとそれは雷属性の反応の現れなの。」
「私の魔法属性は雷…。」
「それが分かっただけでも収穫ね。明日は実際に魔力を溜める練習をしましょう。」
「はい!」
こうしてレイニーとキュリアの魔法攻撃の特訓は幕を閉じた。レイニーはキュリアから魔道石を貰って、部屋に行ってからも、その石が割れた箇所を撫でながら、魔力についての勉強をしなくては!と意気込んでその日は眠りに就いたのだった。




