Level.10 冒険者を始めました。
Level.10 冒険者始めました。
初めての魔物を倒せたことにレイニーは達成感を覚えた。そして魔物の核となる魔石を拾い上げてくれたリトとハイタッチを交わした。
「レイニー、初めてなのに上手いじゃないか!」
「へへ、攻撃の動作をしっかり見極めれば、怖いことないね!よし、ワイルドボアをいっぱい狩って練習するぞ~!」
「おう!その意気だ!」
それからはリトが周りを探索してワイルドボアを見つけると、レイニーに倒させる…といったルーティンで10体ほどのワイルドボアを倒すことができた。
「今日はこんなところにしておこう。街に帰って冒険者ギルドで練習の報告をしなくちゃな。シルビーさんが心配してると思うぞ。」
「そうだね。ワイルドボアの狩りを勧めてくれたのもシルビーさんだけど、あれは仕事上だし、きっと今は心配してるのかも…。」
そういって二人はピーゲルの街に帰ったのだった。
「シルビーさん、こんにちは。只今戻りました。」
「あっ、レイニーちゃん!お帰りなさい。どうだった?初めての魔物討伐は。」
「はい!なんとか10体ほど倒すことができました!自分でもびっくりするくらい冷静に戦えたと思います!」
「そっか、よかったー。初めてのことだし、心配していたんだけど、その様子ならワイルドボアだけじゃなくて、他の動物型の魔物も倒せるかもね。ええっと…、確か資料は~と…、あった。これこれ。」
シルビーが受付カウンターの下にしゃがみこんで何かを探し出すと、カウンターにバンッと分厚い本を取り出した。
「これは?」
「これは魔物大図鑑よ。魔物の外見がイラスト付きで載っていて、魔物の生態とか攻撃の仕方とか、細かいことまで書かれている本なの。図書館で誰でも借りて読めるから、レイニーちゃんも勉強の一環として読んでみたらどうかな?」
「こんな本があるんですね…。ふむ、魔物大図鑑ですね。参考になります!この後図書館に行って探してみますね!」
レイニーはシルビーから勧められた本のタイトルをメモして、お礼を言った。その後リトは自分の冒険者業の方に取り掛かると言って、ギルドの掲示板の方に行ってしまったので、レイニーはピーゲルの街の図書館に向かった。初めて訪れるので、図書館に入って直ぐの受付で、魔物大図鑑について尋ねることにした。
「あの、すみません。ここに"魔物大図鑑"ってありますか?」
「ええ、ありますよ。閲覧しますか、それとも借りますか?」
「えっと、ここで閲覧します。」
「それでは、900番の本棚の中央付近にあります。分からなかった時はまた聞いてくださいね。」
「ありがとうございます。」
受付の人から魔物大図鑑の場所を聞いたレイニーは頭の中で、番号を連呼して忘れないようにしていた。
「(900番の中央付近…。)ここか。あった!」
図書館というだけあって静かな空間にレイニーはあまり大きな声を出さないよう気を付けながら、分厚い魔物大図鑑を抱えて、近くの閲覧コーナーで椅子に座ると図鑑を広げた。載っていた魔物たちはどれも凶悪そうな見た目でレイニーはこんな奴らと戦うのか…。と億劫になってしまったが、ワイルドボアも倒せるようになったのだから!と自分を鼓舞して、図鑑を隅から隅まで読み込んだ。
ある程度ピーゲルの森で確認されている魔物をメモに書き込んで、レイニーは既に外がオレンジ色の空に包まれていることに気が付いた。
「もうこんな時間なのか…!帰らなきゃ。」
レイニーは魔物大図鑑を元の場所に戻して、図書館を後にした。ピーゲルの街の大通りを横切り、街外れの自宅に戻ると、ふわりとトマトの良い香りが鼻孔を擽った。
「ただいま、ザルじい。」
「おかえり、レイニー。夕飯の準備を手伝ってもらえるかのう?」
「うん、今着替えてくるね。」
レイニーは午前中から狩りに出かけていて、防具などを付けたまま図書館での勉強をしてしまっていたので、まずは手を洗って防具を脱ぎ、家の中で着る動きやすいパンツスタイルに着替えた。
「ザルじい、今日の夕飯は何?」
「今日はチキンのトマト煮込みじゃよ。」
「どーりでトマトの良い香りがする訳だ。」
そんな話をしながら、レイニーはザルじいの手伝いをして、二人では広い1階のリビングで夕食を食べた。明日も森で次なる新しい魔物との格闘があるので、お風呂に入ると直ぐに就寝したのだった。
――――――
翌日。この日も魔物討伐の練習にリトが付き合ってくれて、レイニーは今日初めてジャイアントグリズリーというクマのような魔物を討伐してみることになった。
ワイルドボアよりも攻撃パターンが増えているが、単調なのは変わりないらしく、レイニーは冷静に攻撃を躱してジャイアントグリズリーに槍で何度か刺突攻撃をすると、ドスンという大きな音を立てて、その巨体が倒れた。
「よし!レイニー合格だよ!ジャイアントグリズリーも倒せるようになったら、ギルドの依頼も受けられるだろうよ!」
「ありがとう、リト!ここまで根気よく付き合ってくれてありがとう。」
「それでさ…、レイニーがいいならなんだけど…、俺とコンビを組まないか?二人なら背後とかもカバーしあえるし、一人よりかは生存率も上がると思うんだ!…ダメかな?」
拍手をしてジャイアントグリズリーの落とした魔石を拾ったリトがレイニーの傍に駆け寄ると、コンビを組もうという話を持ち掛けてくれた。まるで捨てられた子犬のようなうるうるとした瞳で訴えかけられたので、レイニーは不覚にもきゅんとしてしまった。そんな感情を悟られないよう、コホンと咳払いを一つした。
「私で良ければ、是非ともリトの相棒になりたいです!」
「よっしゃ、決まりだな!冒険者ギルドに行って早速クエストを受けてみようぜ!」
「うん!」
ジャイアントグリズリーを倒したことをシルビーに伝えると、びっくりした様子でこの数日間で急成長したね!とレイニーの頭を撫でて褒めてくれた。なんだかくすぐったい気持ちになりながら、レイニーはお姉ちゃんがいたらこんな感じかな…と思いながら、大人しく撫でられた。
「それで、シルビーさん。俺たちコンビを組むことにしたんだけど、レイニーのペースに合わせたクエストを受けたいんだ。何かいいのある?」
「そうねぇ…、初めてのクエストだし、まずは薬草の採取系のクエストはどうかしら?皆ピーゲルの森に自生している薬草だから、見つけやすいと思うわ。」
「レイニー、それでもいいか?」
「うん。最初はこういうクエストばかりだろうって覚悟してたし。」
「んじゃ、シルビーさん。そのクエストに行くから受注で続きを。」
リトがシルビーに受注で続きの申請をしている間にレイニーは掲示板に張り出されている他のクエストを眺めてみることにした。
「多種多様なクエストがあるのね…。」
そんな風に感心していると、リトの手続きが済んだようで名前を呼ばれた。
「はーい、今行くー!」
リトと共に再びピーゲルの森にやってきたレイニーとリトは、クエストの依頼書に書かれている薬草と生えている草たちを見極めて次々と採取をしていった。
「ふう…。こんなもんかな。」
「だいぶ採れたな。これなら依頼の量はクリアできそうだな。」
リトと二人で黙々と採取をしたからか、持ってきていたかごに沢山の薬草を採取することができた。そのかごをリトが背負い、ピーゲルの街に帰ろうとした時、レイニーの耳に聞きなれない動物のような咆哮が聞こえた。
「ん?今の鳴き声って何…?ワイルドボアに似ているような…でも重圧感があるというか…。」
「レイニーにも聞こえたか?森の奥の方でしたけど…。胸騒ぎがするし、急いで街に帰ってシルビーさんに報告しよう。」
「う、うん。分かった。」
なんだか焦った表情をするリトを不思議に思いつつ、危険を回避するためにレイニーたちは走ってピーゲルの街まで帰ったのだった。
「シルビーさん、こんにちは。クエストの薬草採ってきましたよ!」
「レイニーちゃん、リト。おかえりなさい。初めての薬草摘みはどうだった?」
「依頼書にイラストが付いていたので、比較的簡単に見つけることができました。あの、それでシルビーさん。私たち薬草の採取を終えた後に森の奥の方でワイルドボアに似た…でも声の重圧感とかが違う鳴き声を聞いたんですけど…。」
レイニーはリトが背負っていたかごから一つ薬草を取り出して、依頼書のイラストと並べながら、確認をしてもらうと報酬金の用意をしているシルビーに先ほど聞いた動物か魔物の鳴き声のことを話した。するど、報酬金を抱えてシルビーが深刻そうな顔をして帰ってきた。
「レイニーちゃんたちも聞いたのね。最近ピーゲルの森の奥深くからそう言った鳴き声を聞いたっていう冒険者たちの報告が相次いでいてね…。危険だから、レイニーちゃんたちは森の奥に行かないようにね?」
「そうなんですね…、分かりました。気を付けます。」
「近いうちにここのギルド長が森へ調査隊を派遣すると思うから、それまでは我慢してね。」
「ギルド長っていう人がいるんですね…。」
「ギルド長は忙しいからね。レイニーちゃんが知らないのも無理ないわ。」
そういってレイニーたちはシルビーから警告を受け、森の奥にはいかないことを約束し、薬草採取の報酬金を受け取ったのだった。




