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第8話 ご対面

しばらくして応接室に呼び出される。初めてのご対面だ。


室内には両親と王子がソファに座っており、王子の従者と思われる少年が脇に立って控えている。


俺の入室に気付くと、立ち上がった金髪の少年にしてこの世界の攻略対象者セドリックは、優雅な所作で頭を下げた。

「初めまして。フォックス王国の三男、セドリック・フォックスです」

まだ変声前のボーイソプラノが、落ち着いた様子で伝える。綺麗な声だな。


「初めてお目にかかります。アメリア・ローレンスと申します」

すぐにこちらも綺麗に淑女の礼を決める。マナー講師の先生がいつも褒めているカーテシーだ。恐らく今日も上手くできたことだろう。

そう思いつつ柔らかな笑みを作りながらゆっくりと顔を上げる。


目の前の美少年と目が合う。

おおぅ・・・。近くで見ると天使みたいに綺麗な顔をした少年・・・。背丈は俺と同じくらいだろうか。歳もおそらくそんなに変わらないであろう。つるりと綺麗な肌に、整ったパーツ。優しそうな目元。目の色はうっすら金色がかった茶色だろうか?

元男の俺でも目を奪われそうだ。こりゃぁ女子達もキャーキャー言いそうだわ。

しばらくぼけーっと見ていると、あとは若いもの同士で仲を深めてねと他の大人達は退室していった。

王子の側には14〜15歳くらいと思われる従者が一人と、俺側には専属メイドのサーシャ。


あれ。いきなりタイマンデスカ。

暫く立ち尽くしたまま様子を伺うように王子様の顔を見たが、目線が合うとニコッと微笑まれる。


うっ、笑顔が・・・ま、眩しい。俺は咄嗟に目を細める。

心なしかセドリック王子の後ろから後光が差して見える気がした。


これが王子スマイルか。営業スマイルなんだろうけど、もし俺の中身が本当に女の子だったら・・・危ない。コロっとやられそうだ。10歳そこそこの少年なのになかなかだな。

流石乙女ゲーム・・・。

いや、落ち着け。俺はグッと拳を握り自分を奮い立たせる。


ここからが重要なところなんだ。

俺は、昨夜サーシャと考えた作戦を反復する。

昨日、妹と共に考えた作戦。それは、淑女とは思えない言動で相手を失望させ、婚約白紙の申し出を誘導させる・・・名付けて『はしたない女はお断りだ!作戦』である。

通常、いくら公爵家とはいえ王家に婚約の申し出を断るというのは無理な話だ。また、公爵夫妻を納得させられるだけの理由や説得をすることも出来ないと考えた俺たちは、それなら相手から断ってくるように仕向けてはどうか、という結論に至った。

王家の花嫁となる女性は淑女のマナーを身につけることが当たり前だ。品がなく、はしたないと思われれば、きっと相手から断ってくることだろう。

とにかく通常の高位貴族がしないであろう言動を王子の前ですることによって、“この令嬢は王家にふさわしくない”と思ってもらうことを目的とした作成だ。



しかし思い返すと、自分で思いついた作戦ではあるが、やや深夜のハイなテンションで考えたため少し不安要素があった。


今朝、目が覚めてすぐの妹との最終ミーティングをした時に、一夜明けて冷静になった頭で聞いてみたのだ。

「もしかしたら王族への礼儀を欠いたといって何かお咎めがあったりするのでは?」と。

しかし元妹のサーシャは、自信に満ちた表情でこう言った。

『大丈夫!おにーちゃんは、乙女ゲーム『胸キュン☆パラダイス』の悪役令嬢、アメリア・ローレンスなんだから!』


・・・それは、本当に大丈夫なのか?やや心配になる俺を尻目に、妹は力説する。

『悪役令嬢のアメリアは、その名の通り、ずっと幼い時から我儘な性格で育ってきたんだよ?現におにーちゃんの記憶が戻るまで、本当に凄かったんだから』

公爵家の娘として可愛がられてきたアメリア。まだ社交界にも出ておらず、ほぼ今いる屋敷の中が彼女にとっての世界だった。

使用人は自分が命令したことならなんでも従う事が当たり前。気に入らない事があればすぐに癇癪を起こし、自分が思ったように動かないメイドや従者は親に言いつけてすぐにアメリアの元を去っていったのを見ていたそうだ。

そんな中、器用に立ち回りアメリアの専属メイドになった妹は地味に有能なのかもしれない。


『悪役令嬢になるはずの、まだ9歳で我儘なアメリアが、王子とはいえ同年代の子どもに対して多少の失礼を働いたからといって、そこまで大きな処分があるような自体を招くとは思えないの。そもそもここは乙女ゲームの世界。死罪になるのは王族の殺害未遂レベルの大事件を起こす事だから、この程度ならきっと大丈夫!』


謎の乙女ゲームの世界と悪役令嬢であることに対する、妹の自信が不安要素ではある。

しかし、そうこう考えていても仕方ない。もう目の前にはその王子が来ていて、今がその作戦を決行するべきタイミングなのだから。

俺は斜め後ろにいる専属メイドに目線を寄せると、サーシャは自信に満ちた瞳でGOサインを訴えてきた。ははは・・・これはもう行くしかなさそうだわ。


仕方ない。これも乙女ゲームのシナリオとやらに巻き込まれず、死亡ルートを回避するための布石。

それに・・・この程度の事をして何かしらの処罰があったとしても、訳も分からない断罪ルートに巻き込まれるよりはましだ。



よ、よし。やるぞ・・・。

俺はもう一度深く息を吐いて行動に出た。


読んでいただきありがとうございます。

続きもよろしくお願いします!

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