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第5話 悪役令嬢?


暫くの間、何も話さず見つめ合うふたり。

外からはチュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえる。

あー、窓の外に大きい木があるんだな。さっきからそこに止まってる小鳥が囀ってるんだ。

この部屋は2階にあるのだろうか。心地よい日差しが部屋に差し込んでいる。いま何時くらいなんだろうなぁー。

さっきおはようございますって起こされたから早朝なんだろうなぁー。7時くらいかなぁ?


「・・・ちゃん、お兄ちゃん!」

ぼけーっと窓の外を眺めていた俺の肩を掴みワサワサと揺さぶられる。


あぁ、いけね。ちょっといきなりのことで思考が明後日の方向にいっていた。

「ちょっと聞いてる?!」


少し怒った顔で言われ、すまんすまんと向き直した。

「いや、だってお前、何それ?いきなり7年後に死にますとか言われても普通に信じられなくない?あれか?生まれ変わって予知能力でもついちゃったってわけ??」

真剣に話す紗代には申し訳ないが、余りに唐突な内容すぎて、あぁ、そうですかと受け止めることができない。


確かに兄妹揃って見知らぬ姿に生まれ変わってしまったのには驚きだ。

しかしこの先の、7年も先に起こる事が分かる人間がいるだろうか?ファンタジーの世界で予知能力を身につけたエスパーや超人なら分からなくもない。

しかしそんなまさか。目の前にいるのは外見は日本人離れしているとはいえ、至って普通のメイド姿をした少女に見える。


「まぁ、ワタシもこれに気づいた時はまさかって思ったし、いきなり信じてもらえるとは思ってないんだけどさ」

眉を少し下げ困ったように続ける沙代。


「間違いないの。だってこの世界は・・・ワタシが生前プレイしてた乙女ゲーム、『胸キュン☆パラダイス』の世界なんだから!」

「・・・・・」


その言葉にぽかんと口を開けたまま固まる俺。暫くそうしてから引き気味に冷ややかな視線を送る。


「え、胸キュン?・・・え?何て?」


確かにこいつ俺の家でニートしてた時ゲームばっかしてたわ。そんな感じのタイトルが書かれたゲームのパッケージが床にゴロゴロ転がっていたことを何となく思い出す。


「ちょっ、ちょっと!良いでしょタイトルはなんだって!!」

さすがに本人も恥ずかしいのか、赤面しながら両手を前にしてバタバタと振り回す妹。

「いや、だってそんなふざけたタイトルで何を信じろと・・・」

「本当なんだって、その証拠に・・・」

そんな冷ややかな視線を受け、焦るように沙代は説明を続けた。



どうやらその乙女ゲームとは、中世ヨーロッパ風の世界観をもった学園ものの恋愛シュミレーションゲームらしい。

いかにも女性受けが良さそうな設定だな。こういうのが流行ってるのか?よく分からんが。


沙代がこの屋敷に従僕として使えるようになり、今の俺の身体であるこの幼女アメリア・ローレンスを目にしてからもしやと思っていたらしい。

その名前と容姿がゲームに登場したキャラそのままなのだそうだ。

なんかさらっと出てきたけど、俺のこの身体、アメリアって言うのか。あまり分からんが何となくゲームとかに出てきそうな名前だな。うん、分からんけど。


しかし他人の空似もありえる。もちろん沙代もそう考えもしたが、それが確信に変わったのはつい最近の事だそうだ。

「この前執事長から聞かされたの。もうすぐ10歳になられるアメリア様の婚約者最有力候補が決まったって」

「え?婚約者??そんなのいるの??」

思わずそう口にすると、

「公爵家なんだから当たり前でしょ?!」と一蹴された。


そんなもんなんですかね?

「良いからちゃんと聞いて!その婚約者候補がなんとこの国、フォックス王国の第三王子セドリック・フォックスだったの!」

ふむ、へー・・・。なんかこれまたいかにもな名前だな。

完全に人ごとのように聞き返す。

「そのセドリックなんちゃらがなんだっていうんだ?」

「セドリック・フォックス!」

ピシッとフルネームで訂正される。

「フォックス王国っていうのがこの乙女ゲームの世界なの。その国の第三王子がセドリックよ。ゲームの設定通りなの。しかも、主人公をいじめて邪魔ばかりしてくる悪役令嬢アメリア・ローレンスの婚約者!!」


・・・あれ?なんか俺の名前の前に結構不名誉な肩書き付いてなかった?

悪役令嬢?悪役令嬢っていったよね?書いて字の如く悪役ってこと?主人公いじめるらしいし。


えー、まじかぁー。

完全に配役としてはハズレ役じゃね?

ゲンナリしてきた俺を視線で制しさらに続ける。

「登場人物が今の時点で二人揃ってるの。まだセドリックをこの目で確かめてはいないけどお兄ちゃんを見る限り、どう考えてもあのゲームの世界に転生してしまったとしか考えられない」


ううーん、そう言われてもなぁ・・・全く現実味が沸かない。

「とにかく!信じられないかもしれないけど、このままだと7年後にお兄ちゃんは死んじゃうシナリオなの!・・・せっかく生まれ変わってまた会えたのにそんな未来は嫌なの!だから、一緒に生き抜く方法を探そう!」


ここまで必死に訴えかけてくる妹を信じないわけにもいかないのかもしれない。

それにまだこの世界に来て数刻しか経っていない俺と沙代では経験値が違う。この世界の事をもっと知らないといけない。

それに、今信じずに7年後本当に処刑されて後悔するのは避けたい。


「・・・わかった。宜しく頼む」

俺はしっかりと頷き、覚悟を決めたのだった。


読んでいただきありがとうございます。

もうすぐGWが終わりますね。


あと10日くらい休んでいたい・・・(遠い目)

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