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第4話 妹

ど、どういう事だ・・・??


初めて出会ったメイド姿の少女に、自分の生前の名前を言い当てられ、驚愕した。

「そ、そうです・・・・。俺の前世?の名前は、神谷渉です。でも、なぜそれを・・・?」


恐る恐る答える俺の言葉に、少女の顔がパァっと明るくなったかと思うと

「うわっ」

ガバッっと力強く抱きしめられた。


く、苦しい・・・・。

幼な子に何て力で抱きつくんだこの子は。そして華奢な見た目なのに思いの外力が強いな。

苦しくなって、ギブギブ、と俺は小さな手で彼女の腕を叩く。

しかし、叩いていた少女の細い腕が、小刻みに震えているのに気がついた。

「え、ど、どうしたんです」

か。と、もはやわけが分からずそう聞こうとした俺の声を、絞りだしたような少女の声が遮った。

「おにーちゃんっ・・・!!」


え・・・?何、何て?

おにーちゃん・・・?


・・・キミ、俺より年上じゃね?


でも俺の名前知ってて、え?どういうこと??

おにーちゃん・・・って。

ふと生まれ変わる前、いきなり俺のアパートに押しかけて来た際の紗代の顔が浮かんだ。



新卒で入社したばかりの一流企業を数か月で退職し、転がるように俺の安息のボロアパートに転がり込んできた妹。

紗代の就職先が決まった時には、家族で祝ってやったというのに。

あんなに喜んでいた母親に仕事を辞めたなんて言えないし、顔を合わせるのが気まずくてさー、とにへらと笑った顔を思い出す。「おにーちゃんの家があってよかったー」そうふざけたように言う妹を、情けない奴だと思いつつも、どこか憎めない愛嬌を感じていた。



もしかして・・・・


「紗代なのか・・・?」

そう問いかける俺の声に、少女の肩がピクリと跳ねた。


腕の力が弱まり、苦しさから解放されたかと思うと、そばかすだらけのあどけない少女の瞳に、大粒の涙が次から次へと零れ落ちていた。

ひっく、ひっくと肩で息をしていた少女だったが、暫くして落ち着いてきたのか涙を拭い、俺の目を見て頷いた。


「うん・・・」



それから目の前の少女の口からぽつりぽつりと、この状況を説明する言葉が発せられた。


話によると、どうやら妹の紗代も気がついたらこの世界に来てしまっていたらしい。

というか俺より年上って。時間軸どうなってんだ?俺いま10歳くらいなんだけど??


「・・・本当にごめん。おにーちゃんの家に上がり込んでニートして。めちゃめちゃ迷惑かけてたのに、火事で死なせてしまうなんて・・・。この世界でメイドのサーシャ・ヘスとして生きていて、突然そのことを思い出したときは、おにーちゃんへの申し訳なさと自分への怒りでおかしくなりそうだった・・・。」

どうやら少女の姿をした紗代は、この世界で俺以上に長く生活をしているらしい。

この屋敷へは、仕えて3年目になるらしく、今は13歳なのだそうだ。


この屋敷で働く中で、ある日自分が紗代であり生まれ変わっていた事に気づいた。

あの火事は、紗代が夜中に腹が減り、夜食を作っていたが、調理中なのに乙女ゲームのイベント(?)とやらで目を離しており、台所の何かにコンロの火が燃え移ったことが原因で起こった火災らしく、俺と同じくあのアパートで命を落としていたのだそうだ。


「おまっ、そんな理由で・・・!」

なんてこった。まさか俺の死因であるあの火事の原因が乙女ゲームだったとは・・・。

こいつ、最後の最後までゲームばっかしてたのかよ。信じられん。

文句を言おうと口を開くが、


「ごめんなさいっ!」

そう涙を流す彼女の瞳は、心からの謝罪を示していた。


それを見て、毒気を抜かれた俺は、

「わかったわかった、大丈夫だ、にいちゃんは恨んだりしてないから。またこうやって兄妹出会えたことの方が俺は嬉しいよ」


「本当にごめんなさい」と何度も謝る俺より背丈が高いそのメイド姿の紗代の頭を撫でながら、優しい声でそう伝えた。



もちろん、いろいろと思うこともある。まさかそんな時までゲームをしている妹の、火の不始末で巻き込まれ死ぬ羽目になるとは・・・。

ヲタニートなんてダラダラさせずに、兄としてもう少し人生の教育的指導をするべきだったのではないだろうか。

・・・しかし何も分からないこの状況で再び妹に会えた。突然転生(?)してしまった知らない地で出会えた家族同士、何とか支えあってやっていけるかも知れない。

突然の境遇に右も左も分からない俺にとっても一縷の希望に感じた。


ひとしきり感動的な家族の再会を済ませた俺たちは、一度状況の確認をしようと向かい合いながら話を始めた。


「それで・・・ここは一体どこなんだ?それにこの姿、何か知っていることがあったら教えてくれ」

メイド姿の、紗代だとわかった目の前の人物に対し、先ほどした質問の答えを促すように、再度問いかけた。

少し困ったような表情を浮かべ目を逸らし、何か考える素振りをしている。しばらくして意を決したのか真剣な目つきで俺を見つめると、静かにこう言い放った。


「お兄ちゃん、驚かずに聞いて欲しいんだけど・・・・」

そう前置きをすると、一呼吸置き


「このままお兄ちゃんが成長すると、7年後に処刑されて死ぬことになるの」


読んでいただきありがとうございます。

皆さん、GWは楽しんでいますか?

私はやりたいことは沢山あるのに、ダラダラしていると気づいたら夕方になっています…。


よーし、今年もダラダラするぞ~。

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