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第16話 魔法の練習


はて?

2属性持ちとはこれ如何に。


前世の妹であり、今世での専属メイドのサーシャからはこの世界の悪役令嬢アメリア・ローレンスは氷属性の魔力持ちと習った。

乙女ゲームの世界では、婚約者を取られそうになり逆上したアメリアは主人公を氷漬けにしようとするなんて展開を聞いたのも記憶に新しいのだが・・・。


氷属性だけじゃないんですか?

なんかもう一つ属性もってるみたいなんだけど俺。

そう思い、サーシャへ視線を向けるが、彼女も何のことだ?と言わんばかりの不思議そうな表情を浮かべている。


何だろう。どうも表情から察するに、やはりアメリアが2属性持ちという設定はゲームには存在しないようだ。

突然、ゲームの設定外の事態に困惑するものの、俺はその2つ目の属性とやらが何なのかを確認することにした。


「それでお兄様・・・わたくしの魔力の属性は何なのですか?」

「あぁ、えーっとね」


セシルお兄様は一瞬、手を顎に添えて考える素振りを見せると、ビシッとこちらに人差し指を立てた。

「恐らくあの色は火属性だ」

「火属性・・・」

俺は返ってきた答えを、ぽつりと復唱した。


「うん。紅くて細い色が混じっていたから、この火属性はそんなに強い物ではないかもしれないね。でも変だな・・・ローレンス家に火属性の血が混ざったことがあるという話は聞いたことがないし、第一氷属性とは真逆なのに・・・」

セシルお兄様は、そう呟きながら何かを考え始めたようだ。


「あの・・・セシルお兄様」

その姿に、俺はおずおずと声をかける。

先ほどまでまとっていた魔力の光は消えていた。


「何か火属性だと良くないことでもあるのでしょうか・・・?」

いきなり設定外の適正で異端児扱いされたりしないか?と不安になり、心配そうなか細い声になってしまった。


その声に、セシルお兄様は微笑み、今のアメリアより高い背を少し屈めて、目線を合わせる。

「いいかい、アメリア。この世界の魔法について少し教えてあげるね」


そう言って、語り始めた。


「魔力には主に、火、水、風、土の4つの種類があるんだ。これらを4元素の魔法という。そしてこれらの魔法は属性ごとに細かく派生していき、我がローレンスでは水属性から派生して氷属性を持つものが多く生まれる家系になったんだ」

まぁこれも最近習ったのだけどね、とセシルお兄様は笑った。


「昔は様々な魔法の研究が行われていてね、4属性全てを扱える大魔術師という存在もいたそうなんだ。そして魔力適正の高い人間が有力貴族になっていったみたいなんだけど・・・。

でも今はそんなに凄い魔術師はいないんだ。魔力適正も氷属性のローレンス家なら、エドワード兄さまのように水属性のような近似属性の複数属性持ちは存在するけど、氷と炎はほとんど真逆に位置するでしょう?だから、すごくすごく珍しいことだよ」


なるほど。つまりこの組み合わせはかなりイレギュラーという事か。

しかし、何故この2つの属性の適正を持っているのだろうか。

やはりこれはあれだろうか、異世界から来たという事に何かしらの関連があるのだろうか・・・。


そう考える俺に、セシルお兄様は優しく手を差し伸ばした。

「とても珍しいことだけど、決して悪い事ではないよ。むしろ凄い事なんだ。僕は氷属性しか持たないから、氷魔法しか教えられないけれど、一緒に続きを練習しようか」

「はい」

そう言って俺は、差し伸ばされた手を取った。




ーーーー


それから数日間。

俺は毎日のようにこの訓練場に来ては、魔法の練習に勤しんだ。

セシルお兄様はまだ13歳だというのに教えるのが上手く、最初に見せてもらった「氷の矢」もなんとか出せるようになった。

魔力というのは、しっかり練ることができると威力を増すようで、最初は小さな氷の粒しか出なかったが、今ではアメリアの人差し指のほどの長さをした、氷の欠片が出せるようになっていた。


しかし、出すところまではできても的に当てるとなると、これまたコントロールが難しい。

お兄様の技を見様見まねでやってみるも、浮かび上がった氷の欠片はひょろひょろと宙を舞ったと思えば、的に当たることなく1~2メートル先でポトポトと地面に落ちて行ってしまう。


「アメリー、しっかり的への距離を確認してから、当てるイメージを持つんだ」

「うぐぐ・・・」


両手を広げて、言われたようにしているが、これがなかなかコツが掴めないのだ。


「はぁ~、疲れた」

上手く的に当てることができず、魔力切れでへなへなと地面に座り込んだ。

練習をしていて気づいたが、魔法を使うと運動をした時と同じようにだんだん疲れてくるのだ。

魔力があるからといって、無尽蔵に魔法が使えるわけではなく、一定の消耗をすると魔力が枯渇状態に陥るらしい。

これは休んだり寝たりすると回復するが、無理に使いすぎるとめまいや吐き気など体調を崩すため、無理はしないようにと習った。


「そろそろ休憩にしようか、アメリー」

振り向くと、セシルお兄様が飲み物が入ったグラスを持って立っていた。

「ありがとうございます」

そう言って受け取ると、ゴクゴクと飲み干した。甘い果実の汁が入った水だ。

疲れた身体に染み渡る。


「ふふ、良い飲みっぷりだね、アメリー」

一気にグラス半分ほどまで飲み干したのを見て、セシルお兄様が笑う。

「あちらの休憩スペースで座って休もうか」


屋根付きの休憩スペースを指さし、にっこりと紳士的な笑みを浮かべる。

まだあどけない顔つきの中に、少し大人びた雰囲気を感じる。

「さぁ、お手をどうぞ」

そう言って、さり気なくエスコートしてくれるのは、やはり貴族の息子なのだなといつも思うのだった。


休憩スペースのソファまで案内され、ゆっくりと腰を降ろす。

飲みかけだったグラスは移動中、メイドのサーシャが受け取ってくれていた。

「お嬢様、どうぞ」

その預かっていた飲みかけのグラスを受け取る。中身はしっかり継ぎ足されていた。

さすが、公爵家のメイドは優秀だ。

そう思いながら、もう一口グラスに口を付ける。


「うーん・・・」

しかし、少しぬるい。徐々に夏が近づいているこの季節。

屋外での魔法訓練は少し暑いなと思う時期になってきたのだ。


「どうした?浮かない顔をして」

グラスに口をつけながら、微妙な顔をしていると、隣に座ったセシルお兄様が何事かと顔を覗き込んできた。

アメリアとお揃いの群青色の瞳が、白くきれいな肌とのコントラストで美しく輝いている。小首を傾げた表紙に、瞳と同じ色の肩に付かないほどの長さで帰路揃えられた、サラサラとした髪が流れる。


こういうのを、乙女ゲームのプレイヤー達は見て歓喜するんだろうな。

そんな事を頭の中で薄っすら考えつつ、先程思っていたことを素直に伝えた。

「この果実水、この天気の中飲むには少しぬるいですわ。もっと冷たいと良いのですけれど」

「なんだ、そんな事か」

セシルお兄様は、そう言うと俺の持っているコップに手をかざした。

一瞬、薄っすらと薄水色に手元が光り、手元に冷気を感じる。

同時に、ポチャポチャとグラスの中の果実水に落ちるのを感じた。


「わぁ…!!魔法にはこの様な使い方もあるのですね!」

グラスの中には、セシルお兄様が作った氷の欠片が数個入っていた。

手元でグラスを傾け、少し混ぜてからもう一度飲んでみる。

先ほどまでぬるかったそれは、氷によって冷やされ、冷えた液体となって喉を通り抜ける。

「冷たくて美味しいです…!!」

素晴らしい魔法の使い方だ!

なんて便利なんだ。

「ありがとうございます!セシルお兄様!」

そう興奮しながら言う俺を見て目を細め、セシルお兄様ははにかんだ。


「これも簡単な氷魔法だから、アメリーもできるよ。これからどんどん暑い季節になっていくから、こうやって涼めるのは我々氷の魔法使いにとっての特権だね」


確かに。氷魔法で涼を得る。すごくいい考えだぞ。

この世界には電化製品が存在しない。

夏場はエアコンが無いのかと思っていたが、これは氷魔法の応用で涼めるかもしれない。

そう思った俺は、色々と試してみたいアイディアが浮かび、非常にワクワクしていたのだった。


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