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第14話 魔力適正

彼の秘密の室内に飾られた、爺やが描いたという絵。

あ、やっぱりこれは別の人が描いた物なのか。

爺やというと、セドリックのお付きの使用人という事だろうか?


「僕が描いた他の絵とは全然違うよね」

納得する俺の横で、少し寂し気な目をしたセドリックが続ける。

「僕もね、こんな温かみがある絵を描きたいんだ」


そう言われ、また絵に目を向ける。

暖かな春の日差しのような笑顔を向ける幼い少年。その少年を上から見下ろすかのような構図が取られた背景は、庭園なのだろうか。花が咲き誇っている。とても印象的な絵だった。

「素敵な絵だね。もしかしてこれはセドリックを描いた絵じゃない?」

なんとなくそう思ったのは、その絵の少年は髪と瞳の色が彼と一緒だったからだ。絵の中の彼は今より更に幼くて5歳くらいに見えるが。


「そう。僕の事を描いてくれた絵だ。爺やは絵を描くのが好きだったんだ。絵は爺やに教えてもらった」



「あ・・・」

セドリックのどこか寂しそうな「好きだった」という表現にもしやと思った。

「その爺やって・・・」

聞いていいのだろうかと思いつつもおずおずと声を発する。

きっと大好きだったその爺やとの悲しい別れを経験したのだろう。ふと生前俺が大好きだった祖母が突然この世を去った日のことが頭を過った。


「うん、もう年だからね。足腰が悪くなって昨年の夏に城を離れた。今は家族の元で暮らしているよ」


そう寂しそう口調で答えるセドリック王子。


・・・あぁ、生きてるのね。良かった。

この幼い王子にどう励ましの言葉を返そうかと考えていたので少し緊張していたが、良からぬことを想像した俺は少し拍子抜けした。

まぁでもいつも傍にいたのに会えなくなってしまったら寂しいよな。



そうしているうちに時間が結構立っていたらしく、ノック音と同時に

「お嬢様、そろそろお帰りの準備を」というサーシャの声が聞こえた。


俺たちは慌てて隠し部屋から出て久しぶりに窓のある空間へ出ると、辺りは既に夕暮れが包んでおり、セドリックのベッドがあるその広い室内を紅く照らしていた。


セドリックの部屋の外で待っていたサーシャの顔を見て

「ありがとうサーシャ。帰ろうか」

と返し、セドリックの部屋から出る。

送るよ、と手を差し出し紳士的に振る舞うセドリックは、やはり教育がしっかりされた高貴なご子息なんだなと思った。


俺たちは談笑しつつ先ほど国王陛下と挨拶した部屋に戻り、帰り支度を終えた両親と合流した。

「あらあら、本当に仲良くなって。二人でいると微笑ましいわね」

楽しそうに帰ってきた俺たちを見て、お母様が嬉しそうに言う。

「あぁ、本当に良い縁談になったな。このまま仲良く二人で成長してほしいものだ」

まだいたのかと驚いたが、国王も紅茶を飲みながらこちらを見て笑っている。


「ありがとうございます、父上。アメリア嬢とは話や趣味も合うようで、とても良き出会いだったと思います。ローレンス公爵、夫人、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」

まだ子どもだというのにセドリックはそうハキハキと告げ、俺の両親に頭を下げた。

やはりこの王子、しっかりしている。


感心して俺は隣で見ていると、

「まぁ!もちろんですとも!」

お母様は、そう言って嬉しそうに顔の横で手を合わせていた。



その後、セドリックや執事たちに見送られその日は王城と後にした。



ーーーー



「はぁ、つかれた~」


ボフンとベッドにダイブする俺を尻目に、前世の妹であり今世の侍女をしてるサーシャは、いそいそと帰宅後の片づけをしてくれている。

「どんな事してたの?」

手は動かしたままで、サーシャが尋ねる。前世で大手アパレルへ就職したと聞いた時もも思ったが、こうやって仕事をしているところを見ると、やはり器用になんでもこなすタイプだな、などと思う。

「あー、部屋に案内されてセドリックが描いた絵を見せてもらってたかな・・・」

聞かれるがまま今日の事を思い起こす。

「そうそう、凄いんだよ!あいつの部屋、映画に出てくるみたいな隠し扉があってさ!」

ごろごろしていたベッドから、ガバッと勢いよく起き上がり、俺は興奮気味に今日の一番衝撃を受けた出来事をサーシャへ語った。


「へぇ〜!私も見てみたかったなぁ」

いつの間にか片付けを終え、紅茶を入れていたサーシャは、コトっと持っていたティーカップを2セット机に置くとソファに座り、両頬へ手を添えるようにしてどこか空を見上げた。

「あの乙女ゲーム、胸キュン☆パラダイスの正統派王子セドリックの幼少期の暮らし・・・。オタとしては凄く気になるところ・・・」


出された紅茶を飲みながら、「あぁ、転生してもやっぱりオタクなんだな」なんて思った。


「ゲームの中でも完璧な王子様なんだけどさ、あの幼いセドリックも天使みたいだよね~」

前世の妹サーシャのオタスイッチが起動したらしい。

そういえば転生してから妹のこういう姿を見るのは初めてかもしれない。


この世界に来てから、悪役令嬢がなんだとか婚約者に殺される運命だとか色々あってオタ活どころでは無かったのだろう。

実際、セドリックとの婚約を免れることは出来なかったがサーシャにとっては束の間の休息なのかもしれない。



その後も、根掘り葉掘り今日の出来事について聞かれた。

「そういえば」


俺は家に帰ったら問いたださねばと思っていたアレの事を思い出した。

「お前この世界の魔法について、全然教えてくれてなかったな」

そう。魔法だ。セドリック曰く、家系魔法とやらがあって、王家であるフォックス家は風魔法、我が公爵家であるローレンス家は氷魔法らしい。


「あー、魔法か!ごめんごめん、あまりこのゲームって魔法の要素が無いから忘れてたんだけど・・・来月でアメリアも10歳だから教えておいた方がいいね!」

そう言いながらサーシャはてへっと舌を出しておどけるように片手を頭にやった。

・・・おう、だいたい想像してた通りの反応。


「え?俺、来月誕生日なの??ってか、10歳だからって、なんか関係あるのか?」

そういえばもうすぐ10歳だとか言ってたなぁと思いつつ、気になるワードを拾った。

「そう、この胸キュン☆パラダイスの世界には魔法学園があって、魔力を持った生徒が通うことになるんだけど、メインが恋愛だからそんなに魔法バトルが繰り広げられる~みたいな展開にはならないんだよね」

「なるほど」

俺は相槌を打ちつつ、続きを促す。

「で、10歳になると全国民の子どもたちが神殿で洗礼式を行うことになってるの。その時に、魔力があるかどうかを調べる儀式があるわけ」


10歳になると魔力の波動が安定するため、この国では毎月の月末、その月に10歳となった子どもたちが身分を問わず集められるらしい。だから10歳が関係あるのか。

「私も魔力測定をしてもらったんだけど、適正が無かったんだよね~」

せっかく転生したのに残念過ぎる!と悔しそうに自身についても教えてくれる。


話によると、だいたい高位貴族は魔力持ちが多く生まれるそうだ。魔力持ちはその家系で非常に大事に育てられる。貴族間の結婚でも強い魔力持ち同士を結婚させ、家紋の発展をさせようとする家は多いようだ。

って、やっぱりこの世界での魔法って結構重要じゃねーか!

こいつ、自分に魔力適正がなかったから教えるの忘れてたんだな・・・。

男爵家の令嬢であるサーシャだったが、魔力が無かったため、早々に家を出て働くこととなったらしい。世知辛い世の中だ・・・。


「そうそう、アメリアはこの国の公爵家の娘だから、ちゃんと魔力を持ってるよ〜!来月の6月20日はアメリアの誕生日だから、月末の洗礼式で魔力適正の結果が分かる事になってる」

「氷属性か・・・」

「なんだ、知ってたの?そう、このローレンス公爵家は氷属性の家系で、ゲームの作中でも悪役令嬢アメリアが主人公を凍らせようとするシーンが出てきたりするよ」

そう言うと、サーシャはニィ、っと悪戯っぽく笑った。

「そんな事したらバッドエンドまっしぐらじゃねーか」

何となくそれをしたら主人公を守ろうとする王子に剣を突き立てられる光景が思い浮かんで、身震いした。

「うん。実際にゲーム中では剣を持ったセドリック王子によって阻止されて、投獄からの死罪ルートだから、絶対主人公を凍らせようとはしない方がいいよ」

再度サーシャの顔を見ると真顔だ。こういう事は真剣に教えてくれるらしい。



「あとは、他の攻略対象についても教えたいけど、学園に入学するまで出会わないはずだからまた今後教えるね!」

そろそろ夕食の時間だから、と、この話は切り上げとなった。




夕食の席でも、ローレンス夫妻は非常に機嫌が良く、今日の話で盛り上がっていた。

二人の兄たちも興味津々なのか、セドリック王子とはどんな話をしたのか、二人で何をしていたのかなど聞いてきたが、俺は、セドリックの秘密の部屋については言わない方が良いかと思い、当たり障りのないと思われる事だけを話すことにした。


「そういえば、王家は風魔法の家系だと教えていただきました」


今日、セドリックから教えてもらった事を伝える。

「ああ、アメリーはまだ知らなかったか。そうだ。我が国の王家の方々は強い風魔法の家系だ。そして我がローレンス家は氷魔法。私とエドワード、セシルも氷魔法が使える」

父であるローレンス公爵が、切れ長の美しい目元を細める。

「お母様は?」

「レティナは水魔法だ」

そう言われた美しいお母様は、優しくにっこりと微笑む。

「エドワードは私の血も受け継いだから、水魔法も使えるのよ」

長兄のエドワードはウェーブのブロンドヘアで、外見がお母様譲りだ。

氷と水魔法ということは、2属性持ちという事もあるようだ。

「きっとアメリアはお父様によく似ているから、強い氷魔法に適正があるはずよ」


この世界では親の外見に似ていることでその属性を継ぎやすいという事だろうか。俺はすでに先程、自分の適性を知らされたので答えはもう知っていたが、

「そうなのですね!来月の洗礼式が楽しみです」

そう言って、無邪気に笑って見せた。


読んでいただきありがとうございます。

ようやくファンタジー要素が出てきました。

引き続きお付き合いいただければと思います!

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