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その2

さかさかさ って何?

おてんちゃん って誰?

今回、明らかになります。なるはずです。


 ななちゃんとあんなちゃんがお玄関で、幼稚園のリュックを肩から外し、中のお手紙やお弁当箱を出して、流しに持って行き、靴下を洗濯機に入れたり手を洗ったりしているのを、いつもみたいに付き添いながら、僕は珍しく別のことを考えていた。さかぁさかぁさって何? おてんちゃんって何? 誰? ってね。


 だから、虹ちゃんと杏ちゃんがビスケットとチョコレートとミニトマトと麦茶のおやつを食べ始めたら、どうせ食べられない僕は、ベランダに出てみることにした。

 途中まで出た時に、杏ちゃんが、

「パル、行っちゃいや」

 「行ってもいいけど、帰ってきてよ」と、虹ちゃんが言うのは聞こえたけれど、僕はベランダに出て、物干し竿通しの輪の上に飛んだ。

家の中から「ママ、パル君悪い。あんな所に上っている」と杏ちゃんの声がした。

 摩奈さんが、「あんな所って言ったって、ママには見えないんだから」

虹ちゃんが、「洗濯物を干す棒を通す所だよ、危ないよねぇ」

「あなた達が上ったら危ない、とっても危ない、絶対にしちゃダメよ。でも、パルなら、だいじょうぶなんじゃない? また死ぬってことはないでしょ」


 そうだよね。また死ぬってことは、ないよね。それに僕、たぶんだけど魔法使いになっちゃったから、もう平気だよね。僕は物干し竿通しの輪の上で、オレさんが見ていた方を見た。ああ、ぼん君のお家の方だ。でも、はっきりとは見えない。


 僕は、ぼん君のお家の方に飛んで行った。上が赤くて丸い椅子を歩道に出して、おじいさんが空を見上げているだけだった。おてんちゃん? このおじいさんが? オレさんは、可愛いって言ってたけど、カラスみたいなとか言っていた。もっと先なのかなぁ。でも、この先はぼん君の住んでいる建物がずっと続いているし。と思ったら、べるりんちゃんとぼん君がママ、かすみさんに手を繋がれてマンションから出てきた。こっちに向かってくる。うわっ、べるりんちゃんには僕は見えないけれど、ぼん君には見えるから、見つかっちゃう。あれっ、見つかっちゃいけないこと、僕、何かしているっけ? でも、何となく、僕は、おじいさんの座っている丸い椅子の下に隠れた。


 ぼん君の足が近づいてきた。僕は後退りした。そしたらお店の中に入ってしまった。何となく悪いことしている気になっちゃう。摩奈さんがよく、SNOOPYのアニメのセリフを歌ってたからさ。 NO DOGS ALLOWEDっての。何だかね、犬だというだけで悪いみたいな気分にさせられていたのを思い出した。でも仕方ない、ってか、今、近くにいる人で僕を見えるのは、たぶん、ぼん君だけだし。


 お店の中に入ってあたりを見回したら、天井が真っ平らじゃないんだ。何だか波うっているってのかなぁ、色も模様も色々。ここ、何を売っているの?何だかまた別の魔法の世界に来たみたいな、変な気分。足下は真っ平らで、床なんだけれど、で、四方は傘だらけ。あっ、きっと傘のお店なんだ。で 天井は、ってか、わかった。天井から傘が逆さにたくさん吊るしてあるんだ。あの上に行けば、僕が隠れる所、たくさんあるみたい。ぼん君に見つからないように、僕は吊るしてある傘の中に入った。何だかゆりかごみたいな?ボートみたいな?不思議な感覚。でも面白い。誰にも見つからない安心感。下を覗き見した。ぼん君がキョロキョロ見回している。あれっ、もしかして、僕に気づいたのかな。

「おじいさん、いつもここにいる鳥は?」

「いつもじゃないよ。天気のいい時に1時間ぐらい、そこに籠を吊るしておくんだ」

「今日は天気、いいでしょ」

「ぼん、曇りはいい天気じゃないの」とべるりんちゃん。

「でも、雨は降っていないよ。ママ、曇りって悪い天気なの?」

「悪いっていうんじゃないけれど」

「おじいさんにはいい天気じゃないんだよ。雨が降れば雨傘、晴れれば日傘が売れるけれど、曇りの日にはどちらもあまり売れないからね」

「で、鳥さんは? どこにいるの?」

「店の奥の家の中にいる」

「どうして? あっ、悪い天気だから?」

「ついさっきまでひなたぼっこさせてたんだ。それに、日陰でも一日中吊るしておくと、ちょっとね」

「ちょっと、何?」

「ぼん、あまり色々質問しないの。すみません。ほら、べるりんのピアノに遅れちゃう。その前に本屋さんに寄りたいんでしょ」

「邪魔じゃないですよ。そういえばピアノ習ってるんだね。上手になったかな?」

「うん、ここのも言えるよ。ドレミファソ、ソファミレド、ドレミファソ、ソファミレド、ドソミソドって鳥さんが歌っているでしょ。べるりんね、前は言えなかったからこっちの方が好きなの。前はね、左から読んでもちゃかちゃかちゃ、右から読んでもちゃかちゃかちゃ、ちゃかちゃかちゃだったの」

横からすかさずぼん君が、「さかさかさ、さかさかさ、さかさかさ」

「あら、あれ、かわいかったのよ」とかすみさん。

「でもぉ、べるりんは、嫌だったの!」

ぼん君が再び、「さかさかさ、さかさかさ、さかさかさ」と歌った。

べるりんちゃんが、「左から読んでもさかさかさ、右から読んでもさかさかさ」。


 あっ、さかさかさ、ああああっ、オレさんが言ってた、さかぁさかぁさぁ。僕は身を乗り出した。

「二人とも上手だね。でも、ほら、ママが本屋さんとピアノに行きたいってお顔してるよ」

「本屋さん、行かなくていいもん」とべるりんちゃんが言えば、

「鳥さんに会いたい」とぼん君。

「おてんちゃんはね、今日はもう奥にいるから」

おてんちゃんと聞いて僕はもっと身を乗り出した。落っこちそう。いや、僕は魔法使い、落ちはしない。けど、ぼん君に見つかっちゃう。あれっ、なんでぼん君に見つかっちゃいけないんだっけ? 


 その時、僕の足下が揺れた。僕はふらついて、そしたら僕の乗っている虹色の傘がもっと揺れた。そしたらお隣のお空の色の傘が揺れ、そのまたお隣のピンクの傘が揺れ、揺れはどんどん伝わってお店の中の傘がたくさんゆらゆら、バサバサ音をたて始めた。

 みんなが下から見上げている。見つかっちゃう! 

おじいさんが言った。

「こういう風は雨の前かな」

みんなの視線がお店の中の上ではなく、お店の外のお空に向いた。

「えっ、そうなんですか、戻って傘を持ってこなきゃ。長靴もいるかしら。おてんちゃんには今度会わせてもらおうね」とママさんが言った時、おじいさんが上を見上げて、「あ〜また来ている」と 困った半分、面白さ半分な声を出した。

「あれがねぇ」

雨が来るのって見えるんだっけ? 僕も傘から身を乗り出した。電柱の横棒にオレさんが風に逆らってとまっているのが見えた、つまり雨を見ようとして、僕はお店の中のさかさの傘からつい飛び出していたわけで、

「あっ、パル君だぁ」ぼん君の嬉しそうな声。


 オレさんが僕に挨拶しようとしたのか、急降下してくる。かすみさんがぼん君とべるりんちゃんの上に覆いかぶさる。おじいさんが両腕あげて振り回す。僕は慌てて空色の傘の中に隠れた。オレさんは、急上昇した。どこかに飛び去ったみたい。僕のお家にだったりして? やだなぁ。


 おてんちゃんに会えるかなぁ。お店の奥に行こうかな。お家に帰ろうかなぁ。あっ、今帰ると、オレさんに見つかっちゃう。夜になれば、鳥目のオレさんに見つからないし。ふふ、さかさかさのおてんちゃんに、会いに行こうっと。おじいさんには、僕は見えないよね。ふふ、オレさんは、お店の中の奥には入れないんだもんね。ちょっぴり意地悪になった僕。ふふふ。


お楽しみいただけたでしょうか。

おてんちゃんが、誰なのか、お分かりいただけたでしょうか。

パル君番外編2おてんちゃん の番外編が続きます。


ペット喜怒哀楽は、音天の別サイトです。

小説を同時掲載いたしております。

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