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服従

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「服従……?」


「そうよ。まずはお互いの力関係をしっかりしておくのが常識でしょ?」


「いや、それは分かるんだけど……。『服従』ってどういうことかなーって」


「偉大なるネロ様に付き従えることがどれほど名誉なことか分からないの?……それとも、お前が私より上であると言いたいわけ?」


「……だって、ネロちゃんは俺の飼い猫──」


言いかけた俺の体がまたしても金縛り状態になる。おそらくとんでもない魔力で縛られているのだろう、指先一つ動かすことができない。


「ネロちゃん?……ネロ『様』、でしょう?」


どうやら俺のネロちゃん呼びが気に食わないらしい。だって、どう見ても俺より年下だもん、ネロちゃん。


「わ、分かったからこの金縛り、やめてくれ……!」


不思議なことに口だけは動かせるらしい。必死に声を絞り出してネロちゃんに許しを請う。


「ふふ、分かればいいのよ、分かれば」


「そ、それで服従ってどういうこと……?」


体の自由を取り戻した俺は、ネロちゃんに問いかける。


「そんなことも分からないのかしら。今日からお前は私の下僕として生きていくのよ」


「なるほど、下僕ね……。って!何で俺が君の下僕にならないといけないんだよっ!」


「いちいち喚かないで、鬱陶しい。……見たところ、お前は何の力もない。そんなお前を下僕にしてあげるの。身に余る光栄でしょう?」


「……たしかに俺は何の力もないかもしれないけど」


だからといって、はい、あなたの下僕になりますって簡単に言えるほど落ちぶれてもないつもりだ。


「なにが不満なの?お前にはなんの損もないのに」


全く理解できないといった様子で、ネロちゃんはこちらを見つめている。その顔は驚くほど可愛いが、とんでもない存在感を放っている。どうやら魔王の使い魔というのは本当らしい。


「俺だって、プライドはあるさ」


精一杯強がってみる。年下?の女の子にいいように扱われるのは男として許せ……なくもないけど。


「……まぁいいわ。どちらにせよお前は、私には逆らえないわけだし」


ネロちゃんは苛立ちを隠そうともせずに立ち上がる。


身長は俺の胸ぐらい。長い黒髪に、黒猫の時の面影を残す猫耳がピンと立っている。


それと、控えめな胸にすらりと長い手足。

お尻からは素晴らしい毛並みの尻尾が伸びている。


俺を見つめる切長の瞳は赤く、瞳孔が縦に伸びて猫のようだ(猫なんだけど)。口元からは獰猛な八重歯が覗いていて、あの歯で噛みつかれたらひとたまりもなさそうだ。


「というか、なんで今まで黒猫の姿だったんだ?それに、あんなところで一体何をして──」


「……それには海より深い事情があるの。二度と聞かないで」


いくつかの疑問を口にした俺をネロちゃんがギロリと睨みつける。その圧だけで俺は何も言えなくなってしまった。


「わ、分かった。聞かない。でも一つだけ聞かせてくれ……。ネロちゃ、いやネロ様は俺の味方なのかどうか」


ネロちゃんと言いかけた俺を睨みつけたネロちゃんは、腕を組みながらふん、と鼻を鳴らす。


「当たり前じゃない。私はお前の味方で、お前は私の……そうね、手下ということでどう?」


「なら、いいんだけど……」


どさくさに紛れて手下にされてしまった。まぁ、下僕よりはマシか……。


「それじゃ、さっそく行くわよ」


「……行くってどこへ?」


「決まっているじゃない。──魔王城よ」




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