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戦力外通告

1


「すまないが、マキヤ。非常に言いにくいんだが……」


何度も聞いたセリフを目の前に立つ男が言う。この先の言葉は聞かなくともだいたいいつも同じだ。


「あー……っと、その、もしかしてクビ、ですか」


「あ、ああ。急な話で悪いんだが、まぁそういうことだ」


「いえ、……こちらこそ力になれなくて申し訳ありませんでした。……今までありがとうございました、アランさん」


これで何度目かになる戦力外通告。別にこの人が悪いわけじゃない。むしろ、俺に戦う能力が全くないにも関わらず今までパーティに置いておいてくれたのには感謝しかない。


アランさんは申し訳なさそうにしながら頭を下げている。パーティの前衛を務めていたアランさんは、真面目でパーティメンバーからの信頼も厚い。俺も彼の人柄には好意を抱いていたので、職を失うよりも彼の期待に応えられなかったことが心残りだ。


「ごめんねぇ、マキヤくん。次に向かうダンジョンはちょっと危険なの。私たちもこれからレベルアップしていかないとって思っててね」


アランさんの隣に立つ女性、ルリカさんが困ったように笑っている。彼女の扱う攻撃魔法と支援魔法は、何度もパーティの危機を救ってきた。お淑やかで気遣いができる彼女は、パーティに欠かせない存在だった。


「そうなんですか……。近頃、魔物の活動が活発らしいので気をつけて下さいね」


「すまんなァマキヤ。お前はいい奴だから、次のパーティもすぐ見つかると思うぜ?」


厳つい顔の男が笑いながら俺の背中を叩く。


「ええ、グレンさんにもお世話になりました。またどこかでお会いしましょう」


「なんだよ水臭ェな!またいつでも誘ってくれや!もちろん、お前の奢りでなァ!」


「はは……。考えておきます……」


口調は荒いが面倒見もよく、新人冒険者からも慕われているグレンさん。彼の豪快な斧捌きがもう見れないと思うと、少し残念だ。


「では、またどこかで会おう、マキヤ」


「はい。皆さん今までありがとうございました」


冒険者ギルドから出ていく3人を見送る。たった今、俺は無職になってしまった。冒険者として今まで頑張ってきたけど、ここらが年貢の納め時なのかもな……。


俺に冒険者としての適性がないことは、昔から分かっていた。剣術が得意でもなければ、魔術が得意なわけでもない。斥候としての才能もない、となればいよいよ荷物持ちぐらいしかできることがない。


ただ、荷物持ちにもある程度の戦闘能力がなければ、危険なダンジョンでは自分の身すら守ることができない。このタイミングでの戦力外通告は、ある意味当然のことなのだ。


「……次の仕事、探さないとなー」


生きるためには、お金がいる。そんな当たり前のことに考えを巡らせながら、俺は冒険者ギルドを後にした。




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