1.序
僕はきっと、まだこの世界を生きなければいけない―――
誰かに質問されたわけでも、死にたいと思ったわけでもない―――
ただ漠然とした何かが僕の脳裏にそう呟く―――
中学校に意味もなく来ている今日この頃。
今は4時間目で、僕の至福の時間でもある。
いつものように机の上に突っ伏して、重低音鳴り響く大人の声をBGMに寝る僕。
特段イケメンでも、頭がいいわけでも、ましてや運動ができるわけでもない。
特徴を上げるなら…一人で本を読むのが好きなだけかな…
そんなこんなで45分が経ち、チャイムが鳴り響く。
僕はお昼を急いで食べ、図書室へと急いだ。
扉を開け、司書の人に会釈、返却本をボックスに入れて本を探す。
そして最高の時間が始ま――
「ねぇ紗枝君」
「っ!?堂夏さんですか…脅かさないでください…」
「勝手に横に来て勝手に驚いただけでしょー」
と、笑いながら答えるのは堂夏詩織(とうかしおり)さん。
いわゆる同級生の図書室仲間だ。
気になる人も少ないと思うが、紗枝(さえだ)といのは僕のことである。
正直人間観察が得意な僕でもこの人のことはよくわかっていない。
まぁ百聞は一見に如かず、いずれ言っている意味が分か――
「そんなことより、最近おすすめの本があるんだけど…
読む本が決まってないなら読まない?」
「え、おすすめの本ですか…ちなみにジャンルは?」
「わかんない!」
こんな人だ。
「本のジャンルがわからないって…面白いんですか?」
「面白いよ!読んでみたらわかる!しばらく貸したげるから!」
女子からこんな風に迫られては逃げる一手も見つからないし、
実際堂夏さんの勧める本は面白いものが多い(たまに地雷もあるが)
「そこまで言うのでしたら読んでみます
…あれ?これ図書室の本じゃないんですか?」
よく見ると貸し出し用のバーコード…どころか出版社や著者すら書いてない。
「これ借りても大丈夫なん――」
と、横を見るともう彼女の姿はそこにはない。
周りを見渡すとさっきとは別人のように静かな堂夏さんが椅子に座り本を読んでいた。
こうなったらいくら話しかけてもこちらの声は届かない。
「…汚さないようにだけ気を付けようか」
と、つぶやいた僕は、とりあえず今日読む分の本を戸棚から選ぶ。
そしていつもの日常が再開する。
家に帰り、鞄を置き、寝転びながら借りてきた本を読む。
ゲームは嫌いではないが、あまりプレイしない方だ。
僕は好きなシリーズ物の最新刊を開く――
――と気付いた頃には辺りは暗く、本の世界から引き戻される。
有意義とは言い難いかもしれないが、幸せならそれでいいと思っていた。
そして本を読み終えた僕は夕食に呼ばれるまで寝ようと思い、寝転がる。
―ふと、堂夏さんから借りた(一方的に押し付けられた)本が目に入る。
「…まだ時間はあるし、最初だけでも読んでみるかな」
そう独り言を部屋に残し、本の世界へと踏み入れた―――――
お読みいただきありがとうございます。
誤字や不適な表現などあれば申し訳ございません…
初めてこうやって投稿させていただきました。
三日坊主な僕の作品は続くか怪しい…ですが続きが気になる方は気長に待っててください!