76話 うさぎさん達、道中の村で一休み
【途中休憩は念入りするのが大事だろ?】
ようやく行き先の村へと着く。
木の板を使った柵で村全体が覆われており中はというと、昔ながらの古民家であり藁で作られた屋根が特徴的な建物が建ち並んでいた。
この世界がどういった文化を発展していったのかは知らないけど。私歴史とかあんまり得意じゃないが
もしかして大陸によって文明の進み具合が違う?
こちらの村はというと、洋式というより和式。
歴史の教科書で見たような景観であり、人々は藁でできた服装を着ている。
民族衣装かは分からないが一族の指定の服かなにかだろう。
「……着きましたね」
辺りはもう真っ暗。
途中の要らん余興のせいで、無駄に時間を浪費したが問題ごとに直面することはなく無事到着できた。
これでやっとのことで休める。結構疲れ気味なんよねこう見えて。
それでこの村の名前はなんて言うんだろう。ヘンテコな名前や厨二病が付けるであろう名前なら笑うしかないが。
お。
入ってすぐ横に村の名前が書いてある看板に目がいく。
『中大陸の村チルデアへようこそ』
チルデア。
ぐーたらできそうな村の名前だな。
とりあえず宿屋に行こうっと。
「愛理? 折角なんだしもうちょっと遊んでいかない?」
もう真っ暗なのにコイツ何言ってんだ。
遊ぶって何を。
言っておくけど私肝試しは絶対嫌だからな。
「お前さ、もう真っ暗ってこと分かってる? 遊ぶなら明日にしろよ」
「ちぇ。愛理のケチ」
またミヤリーが拗ねた。
こいついつも私に当たってくるけど何なの?
私はお前のお父さんかお母さんかっつーの。こら門限は守りなさいでも私は優しいからコンビニくらいは許してやる。
「まあミヤリーさん愛理さんの言う通りですよ? 夜道は危ないです今日は大人しくこのまま宿屋に向かいますよ」
こくこくと。
後ろからスーちゃんも頷く。
「……ミヤリーさん体を動かすのもいいですけど、寝るのも冒険者として大事なことですよ」
新社員が先輩に社会のルールを教えてもらうような言い草。
スーちゃんまだそんなお年頃じゃないでしょ。……実はIQそれなりに高かったりするのかいやまさか。
……まさかとは思うけどスーちゃんそれってエアプじゃないよね。
そのまま。
村で一番大きめの3階立ての宿泊施設へと足を運び受付を済ませる。
で。
どうして私が。
「あのさ、なんで私がやるんだよ。ここはこの大陸出身のスーちゃんがやるべきなんじゃ」
後ろに控える仲間の方に眼付けすると、スーちゃんが代表して答えてくれる。
「……私達の中で一番強いのって愛理さんじゃないですか。ならここはあなたがやるべきです」
「本当はズルしたいんじゃないの?」
とミヤリーが割り込む。おいうさぎさんの力をそんな疑るような顔で見るんじゃねえ! チートはチートでも使い方次第では良い傾向に……なぁAIさん?
【……知らんがなとでも言っておきます】
さですか。
「違えよ。あれはな私の素の力だよ厳密にはちょっと違うけどさ」
少し間を置いたのち私は拒否。フォームチェンジ依存にはどうか首を突っ込むのは遠慮願いたい。
なんだよ、明らかに図星な素振りだったけど本当はそうだろ。
記入するのが私ってなったけどできたらスーちゃんが……もうわかったみんながやらないなら私が騙されたと思ってやってやるよ。(諦め)
まあいいや。
変なこと張り合ってもいたちごっこになりかねない。
用紙を記入し終え、宿主に硬貨を支払った。
「あら、うさぎちゃん書き終えたのね何歳? どこからきたの」
急にオタク口調で喋るのやめろや。
「並大陸のリーベルタウン。あとお姉さん私こう見えても15だからな!」
年齢は20代くらいだろうか。
そんなに私達と年齢変わらない見た目だが。
実は背丈並の人より私ちょいと低めでして……大体138cm。
はいチビです口の悪いクソ女だよ。見上げられるくらい相手は高いので非常に劣等感が。あぁ妹が羨ましいなぁていうか少しくれ。
てっきりおばちゃんタイプの店主かと思ったが、若い宿主もいるもんだね。※因みに妹は170cm。
「ああそうなの? ごめんごめんちっちゃいからつい悪いことを口に出ちゃったよ」
ちっこくて悪かったな。
薄笑いしながら誤魔化しているように見えるが。
うぅ人生で自分の身長を恨んだかもしれない。低いのが仇になったなもう泣きたいよ愛理さん。
ディスられてないかこれ。
「くすっ」
後ろでミヤリーがそのやりとりを見て頬を膨らませて笑う。
おいお前、ラビットハンマーで叩くぞコラ。
☾ ☾ ☾
宿部屋は4人部屋がちょうど空いていたので、そちらに泊まることにした。
風通しがよく窓辺から外を見ると、そこには大きな満月が佇んでいた。案外景色は……いや普通だこれ。
食事は予め私が収納していた食べ物にし腹を満たし、近くにあった温泉へと入り旅の疲れを湯で流す。お楽しみタイムは各々想像していてどうぞ。
入浴後。
部屋に戻った私達はこれからのことを会議していた。
理由は勿論行き先の話だ。
「……それでどこにいきますか? 中大陸は経済発展が進んでいる場所が多いので王国などたくさんありますが。あ、あそこ入国ランクがS3人以上でしたてへ」
ガチの城あるの?
あのファンタジーとかでよく見るような可愛いお姫様とかさ。……でも行ったら王様に討伐依頼出されて長ったらしい復活の呪文とか言われるのでは? ……どうしようメモ帳とかないんだけど!
「私は面白い街とか行ってみたいですね。……例えば腕試しできる場所とか」
するとスーちゃんが何か思い立った様子をみせ。
「……そういえばいいところ知っていますよ。この先西に行くと大きな街がありまして、そちらは武器などが盛んでコロシアムもありますよ」
「ほほう。それは面白そうですね」
「私もそこ行ってみたいわ。今度こそ強い武器を手に入れてみせるわ」
死亡フラグを言うミヤリーはさておき。
ノリノリで楽しみ気味なシホさんは薄目をしている。
なにか企んでいるの? まさかコロシアムで無双してやるとか言わないよね。
「シホさんその街に行きたいの? なんならそこにいってもいいけど」
「ほ、ほんとうですか愛理さん! 戦いたくてうずうずしてたんですが」
あ、その目ってそういう意味だったのか。
要するに戦闘強者。頼む食べるのが得意か戦うのが得意かどちらかに絞っておくれ。
彼女の身に宿る闘争本能が顔に出ていた感じじゃね。いやでもさ空腹で倒れても私知らないよ? 完全に観客へ公開処刑する羽目になる……いやそれ私が補充役として出れば私も犠牲に……もう嫌だこの世界。どれだけ私を過労死させれば気が済むんや!
「……ならそちらに向かいましょうか。明日の朝向かうとしましょう」
するとスーちゃんが加えて何か言いたそうな顔をする。
「それと」
なんだろうか。
トイレでも行きたいのか?
いやその下り前にもあっただろ。
別の違う理由だろう。……確かこの大陸ってスーちゃんの故郷があるって言ってたよな。? もしかしてもしかするかもしれないフラグの予感。
「……その街の向こうに私の故郷があるのですが、行ってみられますか」
マジなんかい! 候補出しちゃうんだ。
一同首肯。
「前から気になっていたんですが行きたいです」
「私もだよ、スーちゃんの生まれ育った国がどんなものかこの目で確かめたいな」
実際魔法の国というのが気になる。
「……分かりましたありがとうございます」
こうして。
行き先のルートを大方確保し、翌日から本格的な旅行が始まるのだった。
のはずだった。
はいそのはずで。
翌日目覚めると部屋が荒らされていた。ドロボーが入ったように散乱していて。……なんかパクられたのか? よし警察呼ぼう! ってここ異世界だった。
「な、なんじゃこりゃ! 荒らされてるみんな起きて」
バッグや色んな物が部屋中に錯乱し汚らしい部屋が目に映る。
顔から。
汗を垂らしながら私は思った。また厄介事に巻き込まれるんだろうと。




