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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第7章 うさぎさん達、外海旅行に赴きます
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69話 うさぎさん、旅行券を当ててまう

【くじなんて当てならねえけど、遊び半分でやるならいいかもな】


 街を歩いているとある店が目に飛び込んできた。


「は、なっつ。くじじゃん。どうしてこんな異世界に?」


 路上に置かれた卓には、商店街によくありそうなくじを回す抽選器が。

 興味本位で近づいてみる。少々遠い場所にいるので見えにくいけど。


「……至ってふつーのくじだね。これと言って目立ったところないけど」


 異世界にもこれあるんだね。

 私はああいうブツのものは極力手を付けないので、引いたら負けだと思っている。

 だって当たるはずないじゃんあんなもの。一等にハワイ旅行券とかあるけど、なにそれおいしいのって話。まじでくだらねえ。


 そりゃ好きな物出されたらみんなやりたくはなるけど、小さな希望を抱いて引いてみたらティッシュ1枚で終わったとかそんなの洒落にならないでしょ。最初っから痛い目にあいたくなかったら初めから引かない方が得策だ。あれは当たり外れの分からない課金ガチャみたいなものだし。あ、でもSSR確定なら買うわ。


 まあ話が少々逸れたけど、気が遠くなる乱数。常人には狭き門だよまったく。天井システムでもあればいいのになぁと思った時期がこの愛理さんにもありました。

 イカサマなんて一発でばれるだろうし、窃盗なんかすれば私の評判が悪くなる一方だろう。


「……イットウクジのフィギュアとかよく引いてたけど、結局当たらなかった苦い思い出が。負けるな私。悪魔のささやきなんかに負けるな。するべきか……しないべきかむむむ」


 最近、だいぶ私達の活躍が街に定着し始めたか、度々私を含めるみんなは行き交う人達に声をかけられるようになっていた。

 1人、天才魔法使いは除いて。存在が薄いからといって周りからあまり認知してもらえないのは少々可哀想すぎる。私としてもどうにか彼女を救ってあげたい気持ちはある。未だに手つかずで進展なしだけど。

 話を戻すけど、取りあえずくじは引かない方がいいよね。死に金になるなんて耐えがたい。……金銭的に余裕は十分にあるが…………いやいやしないよ。 


 するべきではないと私の性質がそう言っている。

 でも一応景品ぐらいは見てみようかな気になるし。

 人込みの中を押され気味になりながらも、奥へ奥へと足を進める。


 き、キツい。

 都内でよくやっていた、年に数回あるコマケ並の引力だ。押すなって私がぺったんこになるでしょうが。

 群集の中に飲まれると、四方から必死に身を乗り出す人々に押され潰されそうになる。


「ぐ、いって。潰れる潰れるって!」


 ざわめく人込みの中を乗り越えて、ようやくくじの方を直視できる場所へと出た。

 商売人が執り行っているが、目玉商品はだされていない。

 ちょうど今、先ほどの客の抽選が終わったようだった。


 その立ち去って行く人の手には、色とりどりなハンカチが握られていた。

 どうも外れを引いてしまったらしい。


 ま、そうなるわな。

 くじってそういうもん。


「商品の名前は公表しないんだ。そっちの方が面白みがある的な考えなのかな」


 等級ごとの景品は一切情報がない。

 あるのは回す機器のみ。


 と。

 商売人と目があった。


「ほう。これはこれは」


 こちらを興味深そうな目で凝視。

 こっちみんな。はいはいこれ絶対フラグだよ。

 このあとの展開は当然。


「そこのうさぎの服を着た方。1回いかがかな?」


 ほらな。

 仕方なしに近づいて少し話す。


「全く興味ないんだけど。おかんに今日お小遣い金貨銅貨5枚までって言われてるから!」


 当然ブラフです。姑息な手かもしれないけど、頭の中からこれ以外の選択肢がでてこなかったいや割とガチですはい。


「そう言わずに。初回だけ無料にしてあげますよ?」


 おのれ。

 無料という最強の禁句を使いおって。

 そんなこと言われたら、断るにも断れないじゃないか。

 先ほどやらないと言っていた(コイツ)はまんまと商売人の口車に乗せられてしまった。

 いいですかみなさんこれだけは覚えておこう。

 "人は一瞬で変わる"欲望には逆らえないってことね。おぉ怖い怖い。


 でもやるからには。

 ちょいと聞いてみたいことが一点ほどある。


「じゃあさ、具体的にどういった物があるの? お粗末なものだったらやる気おきないからさ」


 テレビでよくありそうな丸々年分の食べ物とか絶対いらない。

 消える物に価値はないと、私は考えている。

 存在し続ける物にこういう物は真価を発揮する物だ。


 例えばフレステとか、WAIIとか。

 全部ゲームハードじゃねえか。

 因みに愛理さんはディスクでゲームする派の人間です。


「全部ランダムなんですよねこれ」

「まじ?」


 唐突に告げられたランダム性があるくじ。

 何分の1とかそういう博打系のことに関してはよく分からんけど、遠い乱数の臭いがプンプンなんだが。


「えぇ。これは引いた人によって品質が変わる物でして、何が入っているかは完全にお楽しみなんですよ」


 なにその能力が高ければ、有利的なくじは。聞いたことねーぞ!?

 異世界のくじって色々と興味引かれるものがたくさんだな。……でもそれめっちゃ不平等じゃね能力低い人とか絶対かわいそうでしょ。


 じゃああれか。

 完全に運かこのくじは。

 ……ふふ舐めるなよ。ソシャゲでリセマラなしにSSRを1日で10体も手に入れた私の実力を!

 これは本当だぞ? ……妹にそのことをメールしたらその日、めっちゃ切れてて草生えたが。


「因みに上位のものだったらどういう物がでるのか分かる?」

「ムゲンダイセキとか、ドーピングアイテム1年分など様々です」


 めっちゃお得感あるじゃん。でも夥しい数はやめてね。


「よし乗った、おじさんそれ引かせて」

「わかりました。ですが1つ注意点が」


 な、なにさ。


「能力を使うのは禁止ですよ、優劣が付いてくるんで」


 あぁなる。

 せこいことするなとかそんな感じか。

 でもそちらの方が筋に合っているような気がする。


「ではどうぞ」


 後ろから「おぉ~」のウェーブに包まれながら、機器に付いている取手を持つ。

 ゆっくりと機器を回転させながら、徐々に速度を上げていく。

 中から玉が踊っているような音が散乱し、旋律のメロディーが響く。


 コロコロ。

 コロコロ。


 そしてその中から玉がポロリと1個。

 虹玉……あれもしかして?


 かーんかーん!


 店主は横に置いてあったベルを鳴らす。

 私が引いた玉は。


 虹。

 一等賞だった。


☾ ☾ ☾


 こんなことってある?

 いや嬉しいんだけどさ、これどうするのさ。


 帰り道。

 ゲットした景品をまじまじと見ている。

 歩きスマホみたなあれ。


「…………」


 それほど。

 私が気にするほどの物は一体何か。勿体振らずに早く言えって?

 まあそんな急かすなよ。


「みんなにどう説明しようか」


 私の手に握られていたのは、1枚の布製のチケット。

『外海大陸行きの旅行券1週間分』と書いてある。


 はい。

 旅行券です。

 ろくにハワイ旅行券すら引いたことない私が、こんなところで引くなんて。


 大陸ねぇ。

 そういえば、この世界って色んな大陸に散けているんだっけな。

 ギルドのワールドマップで見たけど、それはとても広々としていた。


 因みに今私達がいる場所は、並大陸と言われている所みたい。

 この券で外海に出る羽目になろうとは、誰が予想できたか。

 予定も全然組んでいないし、どう使うべきだこれ。


 とりま。

 私が持っていてもしょうがないので、仲間にこの券をどうするか話すことにした。


「それで、これをどうするか迷われていたんですね」


 夜の食卓にて。

 食事の切りが良いところで、みんなに旅行券を見せた。

 一同、目を丸くさせながらすげえ反応していたけど。

 なにこれ、そんな貴重なものだったん?


「……船って結構お金かかるんでなかなかレアですよこの券は」

「各場所の大陸1週間、自由に船で行き来できるんですって。最高じゃない愛理」


 価値感がよくわからないから、そんな反応取られてもなぁ。

 シホさんが真剣な目でその券を見て、思い悩む様子を見せる。


 あぁこれ。親の了承を得る子供みたいな立場だなあ。

 経験あまりないけど。

 すると暫くして、シホさんはこちらに。


「いいんじゃないですか、行きましょうよみなさんで」

「さすがシホわかるじゃん」

「……ぐっじょぶです」


 すんなり許可がおりた!?

 あ、でもこれくらいはスーちゃんの移動魔法でなんとかなるんじゃないの。


「スーちゃんの魔法あればこと足りるんじゃ」


 視線をスーちゃんの方へ。


「……すみません愛理さん大陸を跨ぐとなると、今以上にたくさん魔力を消費してしまうんでそこまで効率のいいやり方ではないんですよそれは」


 まじで。魔法の制約あったんかい!!

 でも大陸移動して来たとか言ってなかったっけ。

 範囲かなにか定めがあるのかな。


 定めの範囲だったからちょうどここにこれたとか。

 それならば、彼女がこの並大陸に来た確信が持てるが。


「……そういうわけでですので、これは良い機会です行きましょう」

「……それでいつ行くのさシホさん」

「期限はそう長くはないんで、3日後くらいにしておきましょうか。準備も色々と備えておきたいですし」


 横でうずうずするミヤリーは首を左右に振りながらブルブルと震わせていた。いや落ち着けってもげても私しらないぞ?

 そんなwktk(ワクテカ)な彼女は見開いた顔つきで目を光らせながら言い。


「なんかめっちゃ楽しみなんだけど! 今までこういう経験なかったから早く3日後にならないかしら! 愛理ねっね?」


 同意を求めて、私の方へと顔面を近づける。

 こ、困るって嬉しいことに関しては同意できるけど。

 お前は遠足前の小学生と同レベルっかってーの。どうせ行く前に中々寝れられないタイプでしょあなた。

「おかしは300円なミヤリー」

「さ、サンビャクエン? なにそれ」

「あ、これちょっとした魔法の言葉みたいなもん」

「気になる。今度教えて」


 なんで変なことに興味を抱くんだこいつは。

 ちょっとしたおふざけで言ったつもりが……いちいちめんどくせえ後始末どうしよ。完全に私の自業自得だこれ。

……仕切り直して。


「はぁ。満場一致ということで3日後旅行にいきますかみなさん」


 かくして。

 1週間の船旅が今始まろうとしていた。

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