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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第6章 うさぎさんと、あたおかな挑戦者達
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番外編 とある棺桶少女の追憶 その2

ミヤリー編後編です

時系列は過去から現代までです。

彼女が死にまくりますが悪しからず

【戦力外通告とか聞いていないんだけど!!】


 街に訪れてから数日。

 2日間の滞在を経て次の街へと向かう私達。

 しかし。


「よし今日も張り切っていくわよ」

「威勢がいいなミヤリー。じゃあ今日も頼むぞ」


 勇者様が後ろを振り返り私に言う。


「ってミヤリー足元!」


 勇者様が私の足元にあるものへ注意を促す。

 だが時すでに遅し。

 私は足元にあった、中くらいの大きさをした石ころを踏んでしまい前方へと転ぶ。


「ぐふっ」


 なんで足元にこんなゴツい石があるのかと、文句を言おうと立ちあがろうとしたが。

 体が思うように動かなかった。

 金縛りにあったとか、どこかが麻痺していることだったりはしない。なんで?


「あのミヤリー、あなたどうして」


 魔法使いが私の方をまじまじと見る。


「なんで棺桶の中なの!?」


 唐突の展開に頭がついていけず叫喚をあげた。

 気がついたら、視界が真っ暗で何も見えない。

 ただ認識できるのは、仲間達の声だけ。


 どうやら私はずっこけて死んでしまったようだ。

 魔法使いがなんでと言ったけれど、それはこっちのセリフだって。

 昨日までちゃんと何事もなく、パーティの戦力として戦っていたのに。


「ミヤリー回復していなかったの? 仕方ないから蘇生させるわよそれ」


 魔法使いが私に向かって、蘇生魔法をかけると私は再び復活。

 おかしいな私レベルに関わらず、能力値も飛び抜けて高いはずなんだけどな。


「ふう助かったよ」


 私の異変に気がついた勇者様は一言私に問いかける。


「なあミヤリー昨日妙なことされなかったか? 例えば変な攻撃食らったとか」

「ううん、そんなことないわよ? 別に思い当たることは」

「そ、そうかならいいんだ。それじゃ次の街へ行くぞ」


 今思えば。

 どうしてこの時、変な魔法をかけられたと告白しなかったのだろうか。

 そうすればあんなことにはならなかったはずなのに。


 道中の道端にて。


「ミヤリー! 足元に針が!」


 武闘家の声で足元の方にあった針へと目を向けた。

 それをそのまま踏んでしまい。

 再び私は。


「え、ミヤリー? また死んじゃったわよ」


 HPは満タンのはずなのに、踏んだだけでまた死んでしまった。

 モンスターと戦闘中にて。

 弱々しいスライム1匹相手に私達は戦っていた。


「私が先手で攻撃するわ、こんな雑魚私で十分よ」


 危険を顧みず疾走し、スライムの方へと距離を詰め攻撃。同時に私の足元にいたスライムが私の下半身に向かって軽く弱く突っつく。


 ふん。

 そんな弱々しい攻撃なんて効くわけないだろうと、軽んじて受け流そうとする。

 だが予想外なことにが発生。


「ぐふっ」


 そのスライムの弱い攻撃を受けただけなのに。初心者でも倒せる最弱モンスター。

 目立った特徴と言える部分もなく、まず苦戦することはないのだが。


「「ど、どうしてよおおおおおおおおおおおおお!」」


 また死んでしまった。

 次第に仲間達が私に向ける視線が、徐々に死んだ魚のような目に変わっていき呆れ顔になっていた。


 え、そ、そんな。

 みんな変な目で私を見ないでよ。

 別に私が弱いってわけじゃ。仲間達の視線がなんだか重く感じる。その目はまるで私を荷物か何かと思っているように。

? みんなでなに話しているのよ。


 それ以降も私はまた死に続け、仲間に迷惑をかけ続けた。

 そして。

 見知らぬ草原でぽつりと棺桶ごと私を置いて、仲間達は言ってきた。


「すまん、ミヤリー死にまくるお前をこれ以上パーティにおいては置けない。お前の身に何があったか知らないがお別れだ」

「ちょ!? 勇者様!?」


 勇者様は申し訳なさそうな声量で私に言う。


「魔力があなたのせいでもうからっからよ。これ以上私達を侮辱するというのなら悪いけどあなたとはここでお別れね」


 蘇生魔法を使いすぎたせいで、魔力をほとんど失った魔法使いは憤慨した様子で答えた。


……。


 どうやら私は知らないうちに、仲間の怒りを覚醒させてしまったみたいだ。


「そ、そんなこと言わないでよ! 私達は仲間じゃないの!??」


 今までの冷静さが徐々に損なわれていき、私の気は動転していった。

 なんでなんだろう悪いこと……したつもりは。

 あ、前訪れた街で、魔法使いの食べていた皿に盛られている骨付き肉を欲情に逆らえずつまみ食いしたことあるわ。魔法で口封じされてすぐバレちゃったけどね。……いや今はそういうことじゃなくてね!


 と。


 僅かな棺桶から差し込む一筋の光が中を照らす。

 目でそこを覗くと景色のいい草原が辺りに広がっていた。


……。


 綺麗。

 じゃなくって。

 今は仲間を説得させるのが大事でしょ!


 念のため。

 冒険者カードを見てみる。

 その一筋の光に向けて。

 うっすらだが、その変なステータスの数値に私は目を疑った。


(何よ、HP1って)


 私のレベルは高レベル。

 なのにだ。

 HPの最大数値が1になっていた。

 寝ぼけているのかしら。念の為目を瞬いて今一度再確認。

……。

 やっぱりHP1だわ。1桁止まりの正真正銘の1。夢じゃないみたい。


(もしかしたら、一昨日ぐらいに戦ったカース・ウィッチの魔法か何かなの? なんてことを)


 どうやらあのモンスターはとんでもない置き土産を私にくれたみたい。

 いや、いらないんだけど。


 めっちゃ迷惑。

 ほら、外見るとみんながまた一層冷たい目線を私に送っているし。


「あの、その」


 何も思いつかないのにも関わらず口を開く。

 その先をどのように言うかどうかも考えず。


「た、達者でなミヤリー! 検討を祈るぞおおおおおおお!」

「あのちょおおおおおおおおおおお!??」


 最後の一言をチームを代表として、勇者様がそのように言うと4人は疾走し私の前から姿を消した。

 こうして私は孤立した。

 同時に棺桶生活が始まりを告げて。



☾ ☾ ☾



【転落人生なんてめっちゃ最悪! とりあえず出してよ】


 放置されてから何か月経っただろうか。

 感覚的には50年くらい経過している。閉じ込められて気がついたことがあった。

 それは。


「全然歳とっている感覚ないんだけどどうして?」


 死んでいるのかわからないけど、棺桶の中だと全く歳を取らないのだ。

 いや、どういう設定やねんというツッコミはしないでよね。それは禁句だから。

 その性質が相待って私は今こうして、歳を取らずに退屈な棺桶生活を送っているわけだが暇。


 とても暇。


 数年後。

 変な盗賊が私の元へとやってきた。


「おい見ろよ! 古めかしい妙な棺桶があるぜ!」

「マジだ、もしかしたらとんでもない品物かもしれないぜ! 売ったら金たくさん手に入るかもしれないぜ」


 あのね。

 私は財宝にでもされているわけ?

 今世間でどれぐらい、私の値打ちが付けられているかわかんないけどさやめなさいよ。


「ちょちょっと! やめなさいってば! てわっわ!」


 私の声なんて届きもせず盗賊達は私を乗ってきた船へと運んだ。


「今、なんか聞こえなかったか?」

「気のせいだろ。って今揺れてわっわ!」


 船にかけられている桟橋から揺れ動いた、私の棺桶に驚いて盗賊は反射的にそれを海へと投げ出してしまう。

 ちょっと何やってんのよ。

 って死んでいたら水の中でも平気か。でもこれからどこに向かうのだろう。


 海面の流れに飲まれ、私は棺桶共々に別の大陸へと流されていった。

 それからまた数十年経過。

 砂浜に漂着していた私は、1枚の紙切れに目がいく。


「え、ここって並大陸!? じゃあはるばる南の方に私きちゃったってこと!?」


 大大陸より南にある大陸。

 波大陸の浜辺に私は流れ着いてしまったみたい。

 くっそう。


 あの勇者様いや。

 もういっそあの人のことは敬意を捨てた勇者という名前にしよう。

 よくも私をコケにして。

 覚えていなさい。


 あ、でも感覚的にはもう50年経っているから、あいつもうジジイじゃない。

 もうどうでもいいかあの勇者のことは。


 子供がやってくる。

 近くにあった棒で、私の棺桶を急に突っついて。

 ツンツン。ツンツン。

 こらやめろ! 私の大事な棺桶に傷がつくでしょうが!


 死んでいる私が言うのもなんか変だけれど。

 とにかくやめなさい、ろくな大人になれないわよ。

 その少年は飽きたのか、他の場所に行ってしまった。


 せめて謝ってほしかった。

 ……。

 気がついたらまた50年ほど経過。

 街の売り物として、私は販売されていた。


 自分でも何言っているのかわけわからないけど、はい売られていたのよ。

 当然棺桶ごと。

 値打ちは大金貨100枚。


 昔、この大陸にあったとある街にカジノがあったんだけど。

 それで何回スロットが回せるのよその値段は。


 欲を言うなら欲しいわね。

 そうすれば大儲け間違いなしだけど。※ミヤリーは図に乗っているだけです真に受けないでください


 早々。

 私を買ってくれる人なんているわけないじゃない。

 と思っていたのも束の間。

 ある全身防具の男が売主の前に現れ。


「それをくれないか?」

「あんちゃん正気かい? ……この『呪われた伝説の棺桶』何が起こるかわからないよ?』


 何よその変な名前。

 もっとまともな名前なかったの?

 男は金貨100枚を合間置かず店主に手渡す。


 何が目的なのこの男は。

 男に買収された私は、その後彼のお荷物として背中へと背負わされる羽目になった。

 聞いた話によれば。


 彼は魔王を倒すため、強い仲間を集めるべく世界中を旅しているらしい。

 昔一緒にいたあの勇者とどこか似ている感じがするけど、子孫なのかなこの子は。

 私はどうも、現代ではその呪われた棺桶と言われているらしく、触ったら呪われる不幸なことが起こるぞと変な噂が流れているらしいが。


 呪われているのは私自身なんだけど。

 別にあなた達が触っても何にも害ないよ?

 ……って言っても聞こえないから諦めよっと。


 進展があったのは数か月後。

 その転機は突然とやってきた。


「じゃあ私と勝負したら諦めてくれる?」


 目の前にはうさぎ? の服を着た少女と。

 長髪が特徴的な女戦士が彼の前に現れた。

 後ろの人はともかく、前の子は一体何者なんだろう?

 ふざけた格好にしか見えないが果たして。


 だが。

 結果は私の予想を遥かに上回っていた。

 男はそのうさぎっ子にコテンパンにやられ、報酬として私を貰ってくれた。

 驚いたのは、一瞬にして大岩が彼女のパンチによって木っ端微塵になったこと。


 ありえないでしょ。

 あの小柄に何が秘められているというの?

 そのうさぎっ子に貰われ。


 ってそれは蘇生薬?

 私は蘇生薬を使われ。

 数百年ぶりの復活を果たす。

 私は今まで溜め込んでいた眠気を空に飛ばした。


「ふわぁ」

「?」


 目の前にいたうさぎっ子。

 こちらを鳩が豆鉄砲喰らったかのような、顔をしながら呆然とまじまじと見つめる。


 うさぎっ子。

 後にこの愛理という名の少女との出会いこれがきっかけで、私の第二の冒険が始まるのであった。

読んでくださりありがとうございます。

ミヤリーの過去話を掘り下げて書きましたがいかがだったでしょうか。

実はモンスターの呪いが原因で今のような弱々しいキャラになったんですよね。

そこから愛理達と出会い色んな厄介ごとに彼女は巻き込まれていく、そうしてミヤリーの第2の人生はスタートしたわけです。

ちなみにミヤリーは小大陸の出身です。

今後何かしらの機会で故郷のことを掘り下げるかもしれませんので、気長に待ってくださると幸いです。

今回で6章は終わりとなります。

次回からは7章です。

明日からまた頑張って描くので応援の都度よろしくです。

では今日はこの辺で失礼します。

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