番外編 とある棺桶少女の追憶 その1
ミヤリーの話になります。
時系列的には、本編始まる前の数百年前の設定です。
彼女の身に一体何が起きたのか。
【私だって昔は今よりもっとすごかったんだから】
これは愛理達と出会う数百年前のできごと。
私ミヤリーは、とある伝説の勇者一行の1人として選ばれ主戦力として仲間を支えていた。
「こんのおおおおおおぉ!」
一切り。
荒野にて現れたモンスターの最後1匹を、私は手に持つ長剣でとどめを刺す。
「グゴおおぉ……」
筋肉質の体をし斧を携えたモンスターだったけど、そんな大したことはなかった。
すると別の場所でモンスターを倒しおえた仲間が。
私の元へと駆け寄り声をかける。
人数は私を含めて5人ほど。
重厚な装備をした勇者様と、端正とした体つきが特徴的な美々しい魔法使い。骸骨の防具を被った盗賊に、闘着をきた武闘家。全員は長年技を極めた熟練者揃いばかり。
私は他のみんなと違って、そこまで冒険者歴が長いわけじゃないけど決して足は引っ張っていない。
「ミヤリー今日もありがとうな。俺は全体攻撃する技あまり持ってないから助けにいけなかったがさすがだ」
「あら、勇者様。あなたが使った技、敵1匹にかすりもせず無駄に魔力を消費してましたよね?」
私に礼を言う勇者様の横に立っていた、魔法使い冒険者が言ってはならぬ事を述べる。
確か彼の使う技は、細長い光の剣を敵に向けて振り払う強力な斬撃だったはず。
戦闘中それを連発したけど、どれも外れて無駄に魔力を消費しただけだった。
聞けば、習得したばかりでまだ本調子じゃないとか言っていた。
どう聞いてもその場しのぎの、言い訳にしか聞こえないけどそこは大目に見てあげよう。
「俺の斧さばきもよかったが、ミヤリーの剣使いはそれをも量がする出来だ毎回」
「お前はもう少し、素早く動けるようになれ。そんなぽっちゃりした体をしているから鈍い動きしかできんのだ」
「なんだと!? 武闘家!? やんのか! あぁ!?」
武闘家と盗賊が口喧嘩を始める。
この2人は毎回ケンカする仲だけど柄はいい人。
いざという時には、必ず駆けつけてくれるし頼りがいのある親しい仲間だ。
「落ち着け2人とも、もう少しで次の街だ。ここでケンカしていたらモンスターの餌食にされるかもしれないぞ」
勇者様の言いかけで2人は、互いの顔を一瞬しかめつけて「ふん」と後ろを向いた。
仲良くする気は一向に見えないんだけど、直す気はないのかな。
私としては、会ってだいぶ経つ(1か月ちょっと)から少しは仲良くしてもいいと思うんだけどな。
「ミヤリーどうしたのそんな顔して? 2人の張り合いいつものことじゃない。どうせ少し時間を置けば燃え尽きるわよ」
魔法使いが不安そうな私を見て、肩をくすめて言う。
「別にそんなことは! って2人共早く行くわよ!」
先行く勇者様に続いて、私はケンカする2人の手を引っ張りながら次の街へと向かうのだった。
歩いていて思うんだけど、手引っ張っているのにまだケンカしているよこの2人。
「お前なぁ! だから武器の持たねえお前がそんなこと言えた……」
「ふざけるな! 物理が全てだ武器なんぞ一生疎遠な存在だ!」
非常に耳障りだった。この2人はなんでいつもくだらないことで喧嘩するのかと。
☾ ☾ ☾
私達が今歩いている大陸は大大陸地方。
この世界はいくつかの大陸はよくわかるように大、中、小、そして並大陸の4つが主な場所になる。
名前に因んで島の大きさと規模が全然違うから、そこからつけているんだとか。
それ以外の大陸もいくつかあるが、冒険者がよく歩く道はこの4つの大陸。
比較的この4つの大陸には人口が多く、冒険者も数知れず多い。
大大陸は、4つの島の中で1番人口数が多い。巨大な王国や街やらとにかく色々ある。
丁度今は、大大陸の1番端にある、少々広めな荒野にいる。もう少しで草原に出て、大きな街にでるらしいが。
「ほらみんな見えてきたぞ」
「あれですか。ここから見ても立派な街ですね」
勇者様が指差した方向には巨大な街がそびえ立っていた。
周りに生えている木が遥かに低く見える、それは大きな街で私達はその街へと続く林へと進む。
しかし。
私はこの時知らなかった。
この林の中で私の人生が、今後大きく変わる出来事に直面するだなんて。
林の中で。
「ヒッヒッヒ!」
10メートルはありそうな見た目が不気味な、全身フード姿をしたカース・ウィッチが私達の前に姿を現す。
手に持つ短い杖を激しく振りながら、使い慣れした魔法で私達を圧倒。
「武闘家行くぞ!」
「筋じゃないがやむを得まい」
2人は隣に立ちながら、力を合わせ盗賊は斧を、武闘家は鍛え上げられた拳を敵に叩き込む。
だがカース・ウィッチは、静止させる魔法か何かを使い2人の動きを止めた後、杖による衝撃で遠くへと飛ばした。
「ぐあ!」
「どあ!」
大木に叩きつけられた2人は気を失う。
「ふ、2人とも! こうなったら俺が」
勇者様が両手で力強く剣を握り走る。
疾走時に襲ってくる敵の魔法による弾が勇者様を襲う。勇者様は1発も当たることなく避けて徐々に距離を詰めていった。そして近距離に迫った間際に剣に力を込め、渾身の一太刀を飛び上がって振り下ろす。
「くらえええええええ!」
だが彼の力が入った一撃も、容易に跳ね飛ばされ体ごと魔法により地面に叩きつけられる。
「ミヤリー。私はもう魔力がほとんどないわ。だからあなたが勇者様を助けてあげて」
魔法使いは道中で手強い相手に対して、強力な魔法を何発も撃ち。
その結果ほとんど魔力が残らず、魔法1つ使うのが精一杯な状況に陥っていた。
そこで、唯一残されている戦力である私の出番ということ。
断る理由はない。
だって大切な仲間だもの。私は駆け出して、愛用の黒剣を片手に敵との間隔を狭める。弾は避けるのではなく弾き返して反撃、目をくらませて見失わさせる作戦だ。
全ての弾を撃ち返して反撃、反撃。
漸次。
敵との距離は近くなる。そして距離が近くなった瞬間に放たれた弾を撃ち返した拍子。
「遅い! 油断したわね」
敵の側面へ移動し腹部に数撃入れる。器用に使い慣れた黒い長剣を交差するよう何度も連続で。
グサグサ!
と。
かまいたちのような斬撃が、カース・ウィッチの身を刻む。
痛みにより、体勢を崩す敵の体から飛び蹴り宙へと上昇。顔を上げる前に私は体に宿る闇のエネルギーを体へと凝縮。黒く紫のオーラをまとった剣の一撃を敵に横切るように振り払った。
「はあああああああああぁ!」
その瞬間。
一瞬こちらの様子を伺っていたのか、カース・ウィッチは顔をチラリとあげ怪しい目つきを私に送った。
「なんなの……?」
突如私の体に異変が。
倦怠感のような気が鎮まるベールに包まれる。体が一瞬黒く発光しすぐ光は収まる。
一瞬その謎染みた相手の行動に不安を抱いたが、トドメの一撃を続行。
「ヒギいいいいいいいいいいいぃぃ!!」
カース・ウィッチは、その場で解けるように溶けて力尽きた。
☾ ☾ ☾
「急げあともうちょっとだ。もうちょっとで街だぞ」
「えぇそうですね、とりあえず宿屋に行きましょう」
仲間を担ぎながら、急いで街へと向かう勇者様と魔法使い。
2人が気絶しているので現在先を急いでいる。
まずは宿屋で、休息を取るといった感じの段取りで向かっている最中だが。
「? ミヤリーどうしたの」
魔法使いが手のひらを見る私の方を振り向く。
気にかけているのだろうか。心配してくれるのはありがたいけど、なんでそんなにまじまじと見ているの? まあいいわ。
移動する最中。
体から何やら違和感を覚えるようになった。
それがなんなのか、私自身もわからない。
ただ言えることは、心の底で何やら胸騒ぎがすることだけ。
「……。大丈夫、ごめん早く2人を手当てしなくちゃね」
「そう? ならいいんだけど」
気にしていてもしょうがなかった私は、とりあえずそのことはまず後回しにし。
急いで気絶した仲間の手当てするべく、街へと先を急いだ。
街に到着し、冒険者カードを見てふと目を疑った。
何かの見間違えか、はたまた夢かと。
自分のHPが1になっていることに。これが不幸の始まりなのであった。
追々どうなるのか知らずに。
読んでくださりありがとうございます。
番外編何にしようか迷いましたが、まだ書いていないミヤリーの話にしました。
本当は、他のキャラにスポットを当てたい気もしましたが、それは別の機会にするとして今回は彼女を主役にさせてみました。
今と違って、さほど過去のミヤリーはバカなキャラではありません。昔の彼女は結構できる子(設定的に)だったのでパーティの中ではエースの部類ですね。
明日は後編を出しますので、楽しみに待ってくださると幸いです。
それではみなさん今日も読んでくださりありがとうございました。ブックマーク等はお任せしますのでよかったらまた見てくれるとありがたいです。ではでは。




