61話 うさぎさん達と、ちょっと難関ダンジョン? その1
【事前調べはちゃんとしてから行きたい場所へ向かおう】
私達が今いる大陸。
その端に佇む奇妙な場所があった。
かつて、何かしらの建物が存在していたらしいが今は完全に廃墟。
毒沼があちこちに散乱しており、とても近寄りがたい場所である。
リーベルの街中にある、壁に貼られた地図をみていたら。
偶然そこに目が留まったので、興味本位でそこへと赴くことにした。
「……何もないですね」
向かい始め数時間ほど。
スーちゃんの魔法でさほどかからなかったが、本当に何もないただの廃墟だった。
復唱。
本当に何もない。
目の前に映るのは、半壊した建物の残骸らしきものがかつての面影を残しているが。
人の気配は何1つすら感じなかった。その廃れた廃墟を私達は歩きながら。
「めっちゃぼろぼろじゃん。軽い気持ちで来たけど何かあるかな」
「私もここ来るのは初めてですよ。聞けばゾンビがうじゃうじゃ出てくるらしいですよ」
ゾンビとな。
某映画でよく見るような、悍ましい見た目をしたあいつか。
ボロボロな服装とうなり声が目立つあいつら。
果たして、この世界のゾンビは一体どんなものだろうか。
というか、ミヤリーなら昔ここがどういう場所だったか知っているんじゃ。
なので隣にいるミヤリーに聞いてみた。
「ねえミヤリー。あなたなら昔ここがどういう町だったか分かるんじゃない?」
だが彼女はぽかんとした顔付きで、何言っているんだという顔をする。
「悪いけど、そんな数百年前のことなんて覚えていないわよ。……でも確かに昔ここは町並みのいい場所だったと思うけど」
一応訪れたことはあるらしい。
「カジノばっかやって、パーティメンバーがよく変な顔していたけどね」
「このギャンブラーが! 他にあるでしょ! 人柄がよかったとか景観がとても落ち着く感じだったとかさ」
もうコイツ金遣い荒い系のキャラだろ。
少しはギャンブル以外のことも考えやがれ!
「だって、ここのスロットよく『7』が揃いやすい台があったのよ? おかげでどっさりお金が貯まっていったけど」
なにその裏技でも使ったような、耳を疑いたくなる体験談は。
え、じゃ昔お前めっちゃ金持っていたのかよ。
「まあ死にまくって殆どなくなっちゃったけど」
どすん!
その場で宙返り。
「いや! 預けてもらえよこのバカミヤリー!」
「まあまあお二人共。喧嘩はそれぐらいにして」
止めに入るシホさん。
「……毒の沼がたくさんみえてきましたね。あ、ミヤリーさん踏むんじゃないですよ?」
注意深く彼女を鋭い目つきで、いつになく見つめるスーちゃん。
「わ、わかってるわよ! だからスーちゃんそんな目しないでよ!」
お前はまず、トラブルメーカーなりかねんその性格を直さないと。
だからいつもそうやってみんなに心配させられるんだよ。
「はあ。言う事聞くわよだからさぁ」
諦めがついたように、彼女は軽く息を1つ吐く。
「まあ! こんな貧相なところにモンスターなんて沸くわけがないでしょ? とっとと探索してリーベルに帰りましょ」
肩をくすめ堂々と言うミヤリー。
おいやめろ。シホさんの話聞いてなかったのあなた?
読書のみんなからも『こいつフラグ立ててばっかやな』とか思われるから、もっと真面なセリフ使えよ。
ってそんなことコイツに言っても無駄じゃないかと、そう思っていたとき。
「うぅぅ……」
土の中から。
なにやらうなり声をあげながら、這い出てくるモンスターが周囲にたくさん出てきた。
☾ ☾ ☾
【余計なフラグ立ては死亡フラグを引き起こす要因←これ前も言ったようなま、いっか】
「ほらミヤリー余計なこと言うから敵を読んじゃったじゃん」
「はひ!? ま、まさかこんなことになるなんて……。私ってなんでいつもこう不幸を招くのかしら」
「知るか!」
【ミヤリーは『不幸を招く、フラグ立て大好き棺桶少女』の称号を手に入れた】
変な称号つけられちゃったよこの子。
「ゾンビですね。基本彼らは不死身ですので素による攻撃では無意味です」
ゾンビっぽい特徴ですねシホさん。
【ゾンビ 解説:人型のボロボロな服装をきたゾンビ。夜暗の道や廃墟などに出現する。毒の含んだ毒団子を口から出して投げてくるので注意が必要】
グロし。
幸い見た目は、眼球が飛び出したりしていないから。
多少気持ち悪さは軽減されているように見える。
でもなぁ、攻撃。投げてくんなクソ。
「……とりあえずみなさん体を寄せ付けて、誰1人そこから離れないように。今魔法の準備を」
スーちゃんの指示で背中を付け合い、一同に各々の武器を取り出す。
彼女はなにやら、対抗するための魔法を準備なうとのことだがどうする気だ。
「何か策あるの?」
「……お祓い用の魔法を唱えようかと。………………あ」
何か思いとどまった様子。
え、ここで何か問題発生? どうしたんだお姉さんに言ってみ。
「……唱えるのと、魔法陣を作るまで時間がかかりますね。撃つ頃にはやられちゃいます」
「それってラグのせいで間に合わないってこと? ……でこのままいくとミンチにされるのか」
「……ラグとかミンチとか。私には少し聞き慣れない言葉ですがまあ愛理さんの思っている通りですよ。……早い話が間に合いません」
うっそやろ。
しゃーないここは。
「ラビットパーカーチェンジ……ストロング」
ストロングラビットパーカーに姿を変え、ラビットハンマーを取り出す。
「そのハンマーはこの間の。一掃する気なの?」
「勿の論。ここはうさぎさんに任せておけミヤリー」
私は両手に握るラビットハンマーを横にして攻撃準備。
そういえば、これ大きさも変えられるんだっけ? じゃあ周囲のコイツらを一掃できるくらいの大きさで。
するとハンマーが、みるみるうちに巨大化し横一杯にサイズアップ。
「でっかいわね」
「でかいですね」
「……でかいですね」
口を揃え感想を述べる3人。
だから大したことないって、こんな些細なことで驚かないでくれ頼むよ。
大軍の群れ縦一列の塊である、ゾンビ達がこちらへと向かってくる。
「うがああああああああ!!」
危険を察知し、地を蹴って飛ぶ。
耐性無効化の能力を念じて、ハンマーにその力を付与させる。
そして、手に持つハンマーをブーメラン代わりにして勢いよく下に向かって投げた。
「へ! ゾンビはゾンビらしく土に帰っておねんねしやがれ!」
下に向かって投げたハンマーは、そのゾンビの群れに高速で回転しながら向かっていく。一寸にして投げたハンマーはゾンビの群れを数秒経たないうちに跳ね飛ばす。
着地して。
「ふう急に押しかけてきたもんだから、反射的に攻撃しちまった」
「愛理、相変わらず大胆ねやり方が」
仲間のいる位置とはずれた場所に投げたので、当たる心配はなかったのだがそれでもビクビクと怯える仲間の姿がそこにあった。
あぁチキンかよこいつら。
「いや、殺しはしないから心配しないで」
「ならいいんですけど、もうちょっとお加減を」
「……でもあの豪快な攻撃結構見物でしたよ。お陰で1割程度は片付きましたよ。…………しかも攻撃したゾンビは再生していませんし」
すると1つ。
私の足下に何かが転がり込んでくる。
ぽろっとこちらにきたのは。
……腐肉。
はい腐肉です。
黒色の肉にハエ? がブンブンと回っているが。
【腐肉 解説:腐った肉。取り敢えず食うなにおうなあと妄想すんな。絶対いいことなんて起こらないゾ!】
まあ知らないものは触ったりするなとか言うし、あれと同義語として捉えた方がいいか。
「い、いらねえ……でも一応素材だし取っておいて損はねえかな」
ちょいとにおいが強烈過ぎて回収するのを拒んだが、念には念をということで素材として吸収した。
いつ使うことになるか分からんけど大丈夫だろきっと。
「でもあとどうするんです? ぞろぞろと押し寄せて来ていますけど」
周りから他のゾンビ達がこちらへと向かってきていた。
だがそんなことなんぞ織り込み済み。私がただ考えなしに飛び上がって、ブーメラン投げをしたわけではない。
ついでに一掃できる"策"を用意した。
それは。
「心配しなくていいよシホさん。だって」
「?」
「も、勿体振らないでいいなさいよ!」
「もう"勝負"はついているから」
私は指を鳴らして合図を出すと。
dddddddddddddddドンッ!
周囲一辺から巻き起こる小規模な爆発。
「ラビット・トラップ」
狂政からもらった言わば、ラビットパッチの拡張機能の1つである技だけど。
見えない罠を地面に敷いて、任意のタイミングで指で合図する。
すると連動してその罠が作動する。
因みに敵がそこを踏んでも作動する罠である。
罠の種類は色々とあるが、今回はその中の爆発を選びそれを飛んでいる最中に。
周囲一辺に設置して動いていないゾンビ共の場所に隠しておいた。
小規模ではあるが、威力は十分。
あ、因みにこれも無効化の力を、付与させておいているから問題なし。
「あっさりでしたね。流石と言わんばかりですが凄い仕掛けです」
「……魔法以外にこんな荒技が。今度その技を伝授させてください!」
スーちゃんそれはこの作品的に大丈夫か、少し先が思いやられそうな内容だから控えようね。
「……あ道が開けましたよさあ先に行きましょう」
クソみたいなゾンビの群れを乗り越えて、先へ進む私達なのだった。




