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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第1章 うさぎさんとの出会い
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5話 うさぎさん戦って狩る、そしてぶっ倒す(前編)

【夢の中がよくても朝目覚めると絶望する】


 翌日。

 異世界に訪れ、ようやく一晩越し。

 目を開けて見ると。

 体を動かそうにもいうこときかない。

 なんで。


 地球には、引力の大体300分の1の遠心力がある。

 と妹から聞いたことある。

 6千兆トンいう膨大な重さを誇り。

 こうして人間は地球に放流されず、地面に立っていられるらしい。


 バグか?

 それともフリーズ?

 ゲーム廃人の私から、何候補か理由をあげるとそれくらいだけど。


 あれ。


 なにかに押しつぶされているみたいに、

 微動だに動きやしない。

……アニメやマンガでよくある、上に1トンの重荷が乗りかかっているみたいに。

 たくこれどうなっちまってんだ。

 してその正体はいかに。


 目を開けてみる。


 さあなんでもきやがれ。

 煮るなり焼くなり食べるなり!

ってさすがに食べられたら死ぬだろ。


 さて。

 そんな自作自演のコントはさておき。

 これは果たして一体どういう状況か。


「ぐがーぐがー……」


 寝息を立てる、腹ぺこお姉さん。

 こらー。

 女の子がそんな中年おっさんみたいな寝方しないの。

 ちゃんとスースー言おうか。


「おいたっ!」


 いたた、なんか今響いちゃいけない音したような。

 気のせいだよな。

 整骨院生活とか嫌だよ愛理さんは。


「ちょま……」


 よだれを垂らしながら。

 なんか心地いい夢を見ているようだが……それよりも。

 痛い。抱擁ってこんなに痛いものなのか。


 締め付けられる痛み、ごおお……。

 だからそれ以上力入れないで。

 もしも私の体がタコみたいに柔軟性のある体質なら、

この状況打開はできよう。


 いやじゃなくて。

 目を見開いてようやく気づいたのだが。


 ……私はなんで寝息を立てるシホさんに抱かれているの。


「朝間からどういう不恰好だよ」


 シホさんが私を。

 マヌケっぽい寝顔をしながら、私を力強く腕で固定。

 私を抱き枕か何かと間違えていない?

 神よ仏よ私を助けてくれ。


 やばい非常に苦しい。

 さてこの危機的な状況、どうやって脱出するか。


①馬鹿力で脱出(シホさんが死ぬ)

②大声で助けを呼ぶ(殺害現場か何かと勘違いされるんじゃ)

③考えるのをやめる(死亡確定)


 どれもダメだこれは。


……それにしてもなんだろう。

 この抑えきれないほどの胸の高鳴りは。

 彼女の顔を見れば、見るほど胸苦しくなる。


「例のこれ吊り橋効果って言うんじゃあ」


 心理はあまり知らない、けどなこれぐらいはわかるぞ。

 テレビやSNSでちらっと聞いたことあるし。


 私は決してレズなんかではない。

 と腹に詰まった声を吐き出すように。


「し、シホさん……ち近いよ」


 なんという力量だ。

 前に押し出そうとするも不可抗力。

 いくらチート能力を持っている私でも、

ずっと抱きしめられ続ければあの世になっちゃうよ!


 必死で押し出そうとする。

力一杯に。


ぐ、ぐ、ごおおおお。動け動けよ。


「山ぐらいの大きさをしたおにぎり食べたいです〰〰」


 快眠しててなによりだな。

 って今はそんな呑気なこと言っている場合じゃねえだろ!

 早く起きてくれ。頼む。


「ふあ〰〰いただきま〰〰〰〰……………………す。…………ふぇ⁉」


 奇跡が起きた。

 眠そうに睡眠からようやく覚め。

 こちらの方を見ると少々の合間(あいま)黙する。


 どういう状況か。

 飲み込めてないやつだわこれ。

 いやむしろこっちが聞きたいよ。


 娯楽小説でよくあるシチュエーション。

 義妹やら妹がこの状況での主役なら。


起きる→なにやってんの? と罵られる→タイキックやらストレートパンチ食らって壁へ激突


 はいありがとうございます!

 と自虐じみたセリフを言うのが、暗黙のルール。


 だが。

 実際そんな主人公が、取る反応を取れるわけもなく。


「愛理さんおはようございます! あ、あの1つ聞いていいですか」

「おはよう。……どうぞ」


 その場で飛び跳ね。

 恥ずかしがりながら反対側の端にある、

ベッドまで私と距離を取った。

 なんて跳躍力なんだ。


「こ、これはどういう状況でしょうか!?」

「いや、それはこっちが聞きたいよ! 危うくあの世行きになるところだったわ!」

「どうも目覚めたら縛られている感じがすると思ったら……うぅ」


 こんな生活がこれから続く。

 なんて考えると、気が酷に感じてくる。


「そ、そんな! 私は寝てる間になんてことを」

「……意識が戻る頃、大きい食べ物が目の前にあるのかと勘違いして、無意識に抱きしめてしまったようですね」

「すみません、なのでそんな今にでも死にそうな人みたいな顔しないでくださいよぉ」

「別に怒っているわけじゃないけど……もう少し加減してどぞ」


 夢の中でも、食欲は満たされないままでいるらしい。


「つーかないから! 私は非常食でもなんでもないから‼」


 シホさんが泣きそうな表情をする。

 やばい何か気に障ること言ってしまったな。

 まさかの豆腐メンタルかよ⁉


 こういう時。

 どうやって対処していいかわからないよ。

 あまり慣れてないから!

 私が悪者扱いされるじゃん。


 よし、ならスタンダードにここは謝ろう。


「………………あのシホさんごめん。き、気に障ったのなら謝るよ。だからさこ、これで元気になって!」


 私は立ち上がって。

 うさ耳パーカーのフードを被り。

 にこっと笑う顔を作って、両手をあげチョキのポーズを作る。(なにやってんだ私)


 ブラック企業で頑張っているオカンとオトン。

……私愛理は、こんな幼稚染みたことをやっております。


 しょぼん。


「………………」


 シホさんは。

 泣目になりながら、少々の合間沈黙する。

 え、滑ったのこれ。

 恥ずかしがってやっているのに……無駄な行為に終わったわけ?


 せめて。


『だっせーwww 超受けるんですけどwww』とディスってもいいんだよ。


 沈黙の後。

 彼女はボソリと呟いた。


「…………可愛い」


 思いの外。

 私のとった行動は、無駄ではなかった模様。

 笑いを零しながら、次第に声が大きくなっていく。


 シホさんには悪いけど、とても笑顔が似合う。

スマホがあるなら撮りたい。え、肖像権?


 あぁそうだ本人に許可とらないと。

 あれいつ執行されたっけ……ワカンネ。

 紛らわしいことしないでよおぉ焦った。


「あ、ありがとう」


 パーカーは愛嬌がある一品らしい。

 あながち『可愛いは正義』の理屈は間違っていないのだろう。

 やっぱコスプレは文化。

 異世界の人にもこの良さがわかってほしい、

な~んてね。


 そんな隠し効果あるかわからないけど。

 気兼ねしなくてよかった。

 このまま軋轢が生まれるようであれば。

 どう持ちきり直すか考えていたところだ。


 かくして私は長い早朝を終え。

 新しい1日がまた始まるのであった。


「顔火照ってません? そういえば」

「うるさい! 私はこれが私なの! はいこれテスト範囲ね」

「⁇」


 彼女はよく理解していない顔をしていた。


☾ ☾ ☾


【初クエストじゃい! どーんと来い】


 宿屋を出て。

 ギルドへ。


 扉を開けると、座っている冒険者一同はこちらに視線。


 視線と。


 いやこっち見んな。


 今日は冒険者達の注目の的になり。

一躍人気?

……に。


 左方から。


「うさぎじゃん! 子どもにお似合いな服だな!」


 こう見えても15だぞ! 子どもとはなんだ子どもとは。


 右方から。


「うさぎのお嬢ちゃん! 怖いなら帰ってママに甘えてきてもいいんだぜ?」


 むか。冒険者達から煽りの声を受けてた。

 まあこの格好だと。

 流石にバカにしているようにしか見えないのは確かだけど。


 口が回るのは達者なものだ。

 それが減らず口に終わらないことを願わんばかりだ。

 さてと。


「あの愛理さん? 喧嘩はよくないですよ」


 シホさんが愁眉を開かず心配する。

 だが、私は拒み。


「少し下がっててくれないかな? すぐ終わるから」

「愛理さん⁉ まずいですよ!」

「とめないで、止めるな止めるな」

「今の私は臨界点を超えそうだぜ!」


「よぉくわかりませんけど」

「今の愛理さんの目つき、殺意に満ちた狂気の魔物みたいになっていますよ!」

「いいかシホさん、人は抱え込むのは難しい生物なんだ」

「だからこうして私は発散しにいくのさ」


 前の世界でなら察にお世話になるのだが。

 文化はここ中世でしょ。

普通にオフコース……、

ていうことで攻撃態勢はいりまーす。


 拳に力を込める。

 そして拳を壁目がけて。


「あ、あにきぃなんかあのうさぎ悔しがっている顔してまっせハッハッ! あれでも拳に異常なまでの力が感じるのは気のせいか?」

「何を言ってる! 俺は戦いの天才だ誰も俺に勝てるやつなんて……」


 言っている傍から、地を蹴り距離を詰めると。

 軽く、その戯れ事を言う連中の背後にある壁に向かって。

 パンチを中ぐらいの力量で解き放つ。


\ドゴーン!/


「…………ひ、ひぃ」


 壁に巨大な穴が空く。

 被害が及ばないよう、使われていない側の壁目がけて打ったけど。

 周りの反応は。


「き、鬼畜だ。悪魔のうさぎだ」

「う、嘘だろ。あんなふざけている見た目なのに⁉」


 ふざけた見た目で悪かったな。

 目を丸くする一同。

 ざわつく冒険者達。


 その空気は。

 突如、実力の高い実力者が出てきた時のような反応だった。

 うさぎなのですが。

 悪魔ではない。


「これで満足した? クソ文句ほざくやつが次、私の前に現れるっていうなら問答無用でぶっ叩くからね」


 冒険者達を鋭くガン付けし威嚇。

 怖ず怖ずと震える幾人。

 身を以て痛感した彼らに対し。

 締めに私はきっぱりと立ち去りながら言う。


「うさぎ舐めんなよ」


 と。

 私はどこにでもいる不良かなにかだろうか。

 攻撃で空けてしまった穴は。

 私の能力で直した。



☾ ☾ ☾



【初心者に優しい? 優しくない? とりあえず挑戦してみよう】


 受付の方に行くと。

 お姉さんは怯えながら私に応対する。

 直したとはいえ、まずは謝らないとね一応。


「すみません壊してしまって」

「ですが問題なく直せているので大丈夫ですよね?」

「は、はい勿論ですよ。それで今日はどういったご用件でしょうか、愛理さん」


 ひとまず安堵。

 お姉さん。

 怖いなら正直怖いって答えてもいいんだよ。


 皮膚から汗出ているけど、舐めれば分かるのかなこれ。

……って何考えているんだ私は。


「早速クエスト受けたいんだけど、なんか丁度いいものあるかな?」


 一応掲示板に。

 何枚かクエストの紙がある。


 初心者にはよくわからなさそうなもの

 ばかりだが。


 シホさんにも聞いてみたものの、

どれからすればいいかと迷う様子をしていた。


 そこまでこの異世界にある、

クエストのレベルって高いものなのか?

 想像つかないんだけど、周回稼ぎができる、

ものなら私は喜んで引き受けるが。

 あったら探すのに苦労してない。


 なのでこういう時は、受付聞いた方が手っ取り早い。

 そう思った私は再びここへ出向いたのだが。


「でしたらこれなんてどうですか。初心者用のクエストですけど」

「……ほうこれは」


☾ ☾ ☾


 リーベルの少し外れにある森。

 そこは。

 大量のモンスターが、ひしめいているとのこと。

 ある程度駆除してもらえればいいとのことなので。

 初心者には打って付けのクエストみたい。

 さてどいつから血祭りに上げようか。


「着きましたね」


 森の入り口付近で、シホさんと作戦内容をお互いに確認し合う。


「依頼はモンスター10体の討伐だね。……なんでもいいから助かったよ」

「あぁでも」

「大丈夫だよシホさん。腹ぺこ対策は取ってあるから」


 森に向かう際。

 あの屋台通りにあった料理店で、遠出用の食料を用意した。


 私が買ったのは大量のおにぎり。

 ……ついでに収納袋がなかったので。

 小さめの革袋も買った。


 ないと不便だしねいろいろと。


 しかもこの世界で作られているおにぎりは。

 それなりに腹持ちがよく、1個食べるだけで3食分の腹持ちが得られるらしい。


 具材は何も入っておらず単なる塩飯おにぎりだが。

 冒険者の間でこれが大評判だとか。


 ちなみにこれは、シホさんに買ってもらった。

 少し貸してほしいと言ったら、

 すんなり貸してもらった。


 貸しはなし。


 と言ってくれたし。

 これぐらいはいいよね。


 なので今日の依頼に関しては。

 シホさんの空腹対策はバッチリなはず。


 それでも油断は禁物だな。

 彼女は期待を裏切らず、

すぐ倒れるし過信すぎるのもよくない。


「だからさっき貸すよう言ってきたんですね。なら安心しました、それでは行きましょうか」


(私はあなたが一番心配なんだけど)


☾ ☾ ☾


【見た目で判断するのはよくないぞよ! まず実力を見てから判断しろおおおおおおおおお!】


 木々のそよぐ少々深めな森。

 間で地図らしき看板が立ってはいる。

のだが、なんか宝の地図並にわかりづらい。

 いや立てられるぐらいだったら、

新調することもできるだろうに。


「ガルルルルゥ」


 ほい。

 うろちょろと沸いてきましたよ。

食欲か何かに飢えるモンスターが。


 ウルフが5匹、目の前に現れる。

 開幕早々、集団攻撃とは相手側も侮れないな。

 こちらに警戒しながら呻き声を立て。

 ゆっくりと近づいてくる。


「愛理さん気をつけて」

「わかってる、そんなドジらないって」


 体毛を揺らしながら。

 歯をむき出しにし、睨め付ける。

 その様子は野生の獣そのものだ。


 シホさんが率先し。

 前に。


「ふんぬっ!」


 肩に掛けている鞘。

 そこから頑丈そうな剣を引き抜き。

 利き手に剣、そしてもう片手に盾を持った。


 (つか)部分を。

 力強く握り身構える。

 毅然(きぜん)として立ち向かう姿は非常に勇ましい。


「ここは私に任せてください」


 さてお手並み拝見。


 正面のウルフ達を過り。

 颯爽し距離を詰めていく。

 周りにも注意を配りながら。

 それぞれの動きを探っていた。


 でも視線が5つも分布しているしな。

 シホさんが優勢になることは…………むしろ危険じゃね。

 大丈夫かな。


 野を踏みしめ、襲いかかるウルフ。


「そんなの、効きませんッ」


 片手に持つ丸い盾で攻撃を塞ぐ。

 続いて反対側から控える1匹。


 視角からして。

 シホさんは攻撃しにくそうな状況。


「仕留め……るしかなさそうですね」


 小声でなにか言った気がする。


 いくら相手が弱いからといって。

 不意を突かれ、やられそうな感じがするが。


「え」


 しかしそう思ったのも。

 ほんの数秒。


 耳から聞こえてきたのは、斬撃の斬り裂く音。

 残像と共に何かが掠めた。

 ウルフは悲鳴を上げ、先ほどシホさんに襲いかかった2匹は、

 血を垂らしながらその場に倒れていた。


 いや、見る隙もなかったよ今の⁉

なにあの技、あの剣術?


 合間を置かず。

鋭い目つきをさせながら、残り3匹に向かう。


 敵が接触した時。

 またまた思わぬできごとが発生。


 立ち合った瞬間に姿が消え、

3匹のすぐ後ろへと回った。


「遅いですッ」


音を殺し一瞥するウルフ達。

……彼らは存在に気づいていない様子だった。


 というかシホさん。

普段はあんなに大人し気なのに、

いざ戦う時にもなればあんな目つきするんだ。


 やるときはやる。

そんなスタイルかな。

 でもそういうの私好きよ。


 しかし。

 私は今、何が起きているのか。

 理解が追いついていない。


 トリック……手品。

 超能力そんな次元の領域ではなく。


 一瞬にして消え、3匹の背後に回った。

 なんだあの大技。


 目で追う暇もなく、『シュン』と風の音だけが聞こえた。

……瞬間移動か何か?

の彼女だけが成せる大技なのだろう。


 維持して。


 剣を再び身構えた。

 揺れる草木と木々が嵐を呼ぶように激しく揺動。

 刃先が瞬く間に煌めきだすと。

 3匹は後ろのある激しい音に気づき、後ろを振り返った。


 神々しくも辺り一面を照らす光剣(こうけん)

 目映く光るその剣からは、何度も擦り合う騒音を掻き立て。

 手に持つ彼女は、攻撃するタイミングを見計らい、

ひたすらその場で止まる。


 3匹が振り返ったそのタイミング。


 揺れ動く緑地の中で。

 目力の入った威勢をし、剣を横に振り払う。


「がっ‼」


 ウルフ達は最後の遠吠えも。

発声できないまま、押し寄せる斬撃の光へと飲まれていくのだった。


 やばい人を仲間にしてしまったのかも。


 実力は他の冒険者と対して変わらないだろう。

と正直、軽視していたが私の考えは甘かったらしい。


 いや、なによあの強さ。

 神話、勇者レベルの強さだろあれは。


「シホさん強すぎじゃね」

「え?」


 思わず言葉が零れる。

 自覚のない彼女は瞠目(どうもく)

 褒められたことないの?


 まさかあれで今まで「普通です」みたいなこと思っていたのか。 

 ……シホさん、私はこの場で確信したよ。絶対あなたを敵に回してはいけないと。


「だってさあんな斬撃真似できないんだけど。……むっちゃくちゃ羨ましい」

「そ、そうですか? いたって普通ですよ。今までは戦う前に倒れて不戦止まりでしたが」


 え、じゃあ街にいるみんなって。

 シホさんの凄さをわかっていない人がほとんどってこと?


 もったいない。

 こんなにも凄い人なのに誰にも褒められないって、

悲しすぎる。


 そして今日。

 私が彼女の実力を目撃した、第1証人となったわけだ。


 とはいえこのパーカーが。

 どれほどの性能を持ち合わせているのかどうか。

 彼女と同等。

 の強さか、はたまたそれ以下か。


 まだ分からず仕舞いだが。

 これからじっくり観察させてもらうことにしよう。

 どっちが強いんだろ。


「と、とにかく先へ進みましょう」


 倒したウルフの、周辺にできた巨大な亀裂。

 空の方へと。

 上昇する黒煙を尻目に私達は先へと進む。

 残り5匹か。


【エッッ! なプレイは決して私は求めていないからね絶対】


 奥に行くにつれ、モンスターの数は増す。

 先ほどのウルフも紛れていれば。

 中には触手がついた木と同じ大きさをした、

気色悪いモンスターの姿も見える。


 なんでもありだな。


 ここ本当に初心者用のダンジョンかよ。

 難易度詐欺しているんじゃねえのか。

 ……もしかすると初心者のダンジョンに。

 たまたま強いモンスターが、一部紛れ込んでいるのかも。


 俗に言うところの、見殺し系のモンスターなの。

 あれって。


 念入り図鑑で確認してみるか。

 触手のあるモンスターに図鑑を向け。


【デビルプラント】


 説明:栄養素を浴びすぎた植物が、突然変異して生まれた禍々しいモンスター。口からどんなものでも溶解してしまう高熱液体を吐き出す。


 こわ。近寄らんとこ。


 あんな見た目で、攻撃なんかされたらひとたまりもない。

 クラゲのような見た目をしていて、

頭部に口がある。

 口からは舌を出して、白い体液を垂らしながら鈍足ながらも動く。


 ホラー映画かに出てきそうな、目を伏せたくなるような外観だ。


「アイツ臭くない?」

「デビルプラントですね。初心者冒険者の間では、非常に嫌われているモンスターですよ。実際溶解され殺された人もいるという話です」


 余裕と淡々と。

にこにこしながら補足説明をするシホさん。

 なんでそんな余裕な顔できちゃうわけ。

ようは慣れとそういうことなのか。


「殺傷力高すぎだろ! 骨なんかなりたくねえよ私は長くこの世界で生きるんだッ!」

「だ、大丈夫ですって! 衣服が溶けるくらいですよ。でもあのモンスターに近づく初心の冒険者はあまりいないですよ」


 ですよね。

 馬鹿でない限り。

 無謀にそんなヤツと、闇雲に戦ったりすることはまずしないだろ。


「近寄らんとこ」


 誰でもあんなヤツを見れば、危険だって、

わかるよ禍々しい見た目だし。


 というか衣服がなくなるって……。

それはそれでえr……ごほんごほん。


「うーんでもやっぱさ……」

「へ?」


 ……無数に伸びている触手を奇妙に動かし。

地面を這い私達の目の届かない所まで歩く。

まあそこを見計らって、私は勢いよくパンチをソイツに入れ。

倒しにいったのだが。


「ちょっと愛理さん⁉」


ぎゃああああああああああ!!


 奇声を上げ、威嚇してくるデビルプラント。

 無数に伸びている触手を、

絡めるように私側へと払ってくる。


 手の平よりも、幅広い太さをした、

その触手は突風を起こしながら襲いかかってくる。


 拳が何個入るくらいかな。

……数人分の拳を入れられるくらいのスケールはありそう。


 襲いかかる触手を軽々と踏み台にし。

 本体側へと駆け上がっていく。

トランポリンみたいで楽しいなぁ。


 面前。

 助走を落とさず。

 拳にいつも通りの力量に調整して殴打。


 歯応えのある音を鳴らし、

バウンドボールのように、吹っ飛んでいったデビルプラントは、

そのまま息絶える。


「モンスターを殴る感触ってこんな感じなのか」


 無意識でパンチしただけでこの威力。

 改めてあたおかな装備だと理解する私。

 いやただの壊れじゃんこの装備。


 倒した途端に、鼻をつまんでしまいそうな強烈な腐臭が漂ってきた。

……臭すぎた。

なんというか。

 ラフレシアより臭そうな強烈な臭いだった。


 聞いたことはあるよ。

……世界一臭いにおい出すってことはさ。

 このデビルプラントと、どっちが臭いのか嗅いで比べてみたいものだ。

 いやしたくない。

嗅覚がバグる。


「愛理さん凄いですね。…………、非常にいいづらいんですけど」

「このモンスターはとんでもない腐臭のする溶解液を持っているので……なるべく倒さない方がいいです。それに経験値あまりおいしくないんで」


 いや、それ今言う⁉ 

 あ、でも先走った私が悪いか。はは。


「シホさんそういうこと、先に言ってよ。お陰で服汚す羽目になったじゃあないか」


 経験値は得たものの。

こいつを倒したことに関しては私の誤算だったらしい。

 いやマジで臭い。


 ☾ ☾ ☾


【フラグそれは不幸を呼ぶ禁句と書いて、不幸を呼ぶ禁句(フラグ)


 道中。


「ねえシホさんあれなに?」

「あれは……」


 向こうには。

 二足歩行をした真っ白いモンスター。

 丸っぽい形状をしており。

 外観は子供が適当に描いた象みたいな見た目をしていた。


 なんだろう。

 ネットスレにあるア●キ●●●トにいそうな見た目をした、

のっぺらモンスターだ。


 それになんで無色なの。

……つうかこっち見んな。

 とソイツが通り過ぎて行くと、白いモンスターは次々と出てきて。

列を作りながら道を渡って横の木々へと姿を消す。

 お前らはカルガモか。


「あれはイロナシっていうモンスターですよ」


 イロナシ?


「人間に直接危害はなく、ただ横断するだけのモンスターなのですよ」

「でも聞いた話、あのイロナシを倒すとバチが当たって祟り殺されるとか」


 ひとまずこいつも確認しとこ。


【イロナシ】


 説明:その名の通り色がない体をしているのが特徴的。元は異世界からきた転生者が思いつきで描いた絵が具現化して生まれたモンスター? らしい。(詳しく解明はされていない) へんぽこりんな見た目をしているからって虐めちゃだめだぞ!


 …………とりあえずアホが作り出した、

アホなモンスターってことでいいのかな。


 なんてこった。

 カルガモの行進じゃああるまいし、

この世界一体どうなっちまっているんだワケワカメ。


 イロナシの進行が終わり先へと進んでいくと。

 それからも立ちはだかる敵を何回も倒していく。

 敵は大抵私のグーパンの一発で沈む。

 しかも軽いパンチなのにも関わらず反動が異常なまでに飛んでいく

……あ、星が1つ煌めいたな。


 そして目標の10体、

倒すことに成功した。

 ひとまず休憩しようと森にある少し開けた場所があったので、

そこで一旦休んでから帰ることにした。


「ふうモンスター沢山出てきたけど、あれほどの数とは。色んなモンスターいて驚いたよ」


 正確には。

変なモンスターいすぎて驚いたのが正直な感想。


「他の場所にはもっと色んなモンスターが出てきますよ。人によっては捕獲して飼育する人だっていますので」

「そいつらなんか頭おかしくね? 本当大丈夫なんだよね⁉」


 この世界狂いすぎじゃね。

人もモンスターも。

あんなモンスター達を飼いたいって、

奴の頭どうなっているか1度中身見てみたいほどだ。


「こんなあっさりなら、巨大なロボットと戦ってみたいな……いるとは思えないけど」

「ロボットって何ですか? 聞いたことないんですが。……私気になります」


 下らないことをほざく私にバチが当たったのか。

 それとも運がついていないのか、一面が足音か何かで揺れ地響きが発生。


 ドスン。ドスン。


 大きな足踏みが聞こえてきた。


「何この音?」

「地震ですよ。地震」


「「そ、そんなことわかっているよ! なになに⁉」」


 フラグ。

 それは禁句とされている、

口に出してはいけない古より伝わりし言葉。


 これを口にすれば自ずと地雷を踏む羽目となる。

 どうやら私は、

そのフラグを不幸にも立ててしまったみたい。


 ドスン。ドスン。


 いや明らかに違う響きだと思うのだが。

 木々をなぎ倒す。

して向かってくる巨大な物陰。


 凄まじい振動に私達は一同身構え。

 不吉な予感、そんな気配を悟り。


「ギャアアアアアアアアア!」

「「!?」」


 私達は後ろの方へと振り返ると。

 全身銃武装した、

巨大ロボットのようなモンスターが姿を現した。


 いやSFじゃねえええええええだろおおおおおおおおここ‼ 沸きどころ間違っているだろ完全に‼‼‼

 頭部は竜の形を模したような形状。


「かんっぜんに」

「出る作品まちがえてんじゃあああねえええええのおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ⁉」


 発光する双眸の中から何やら機械音を掻き立てている。


 つうか。

 KY。(空気読め)

 いや異世界に銃って――――。


 どうやらフラグは不幸を呼ぶ禁句(フラグ)

当て字通り口にしてはならない言葉らしい。

初クエストの回を書いてみました。

時間が出来たら設定的なものを出す予定にしています。

どういったモンスターがいいのか迷ったのですが、ちょっと面白そうなモンスター出たらいいなそんな単純な理由です。

勿論普通なモンスターも出す予定ですが、それと混合させるようなそんな感じで行こうかなと。

次は愛理の新しい力が? 次回また読んでくれると嬉しいです。

ではでは。

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