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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第6章 うさぎさんと、あたおかな挑戦者達
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53話 うさぎ達のとある山登り調査 その3

【気を乱さす慎重に進むべきじゃね】


 登り始めてから数十分。

 岩の道が所狭しと続いているが、私は出てくる度にことごとくと破壊していった。


「ごらぁ!!」


 今丁度また立ちはだかる岩を破壊し、道を進みやすくしたわけだが。


「やりますね愛理さん。これで999個破壊しましたよ」

「999個? え数えていたの。というか私もうそんなに破壊したんだ」


 いつの間にと言わんばかりに、記録を私に提示してくるシホさん。

 よくその数数えきれたものだと、彼女の算する能力に度肝抜かれた。

 どうやったらそこまで数えられる気になるのか。常人なら100数えるのが限度だろ。

 因みにこの愛理さん、数学はからっきしダメです。


 数式? 方程式? 図形なにそれ美味しいの?

 私は己の人生の足しとならない無駄知恵なんて必要としないから。人間簡単な計算さえできればいいんだよ。

 と私の愚痴はここまでにするとして。


「これぐらい普通ですよ。愛理さんが岩を破壊する度にカウントしていたんですが」


 だから普通の人はね、そんなカンスト数字まで数えきれる気力なんてまずないから。


「……いくら私でもそこまで数える気にはなりませんよ」

「私も、あくびがでそうになるからやる気にならないわよそれ」


 2人は常識的な返答をしてきた。

 瞠目。

 2人の言葉に対して彼女は、ビックリしたかのような反応をとる。

 え、そんなに珍しかったの? この世界でそんな大きい数まで数えることなんてごく普通の事なんですかね!?


「は、はあなるほど。両親からも同じようなことを言われた経験がありますが」


 ご両親、一体どんな教訓を彼女にさせたんだろうか。


「『お前はよくそこまでできるな』と驚いていましたよ。なぜ驚いているのか私には理解できませんでしたが」


 単に恐らくあなたが強いからですよ異常なまでに。


「つべこべ言わずさ先早く行くよ」


 長話もよくないので、そろそろ先行くようみんなに声をかける。

 漫才の練習やっているわけじゃないからさ。

 するとみんなそっかみたいな反応をして、私の言葉に賛同し私に続くように再び足を動かし始めた。

 傾斜面が非常に進みづらいが、辛抱して先に進んだ。



☾ ☾ ☾



 平らな地帯へと出る。

 会話をしながら岩の道を進むが、頂上はまだ先。

 頂上が少し大きく見えてきたような。

 あと何分かかることかはさておき。


 ゴゴゴゴ。

 巨大な足音。

 すると巨大な積み石を重ねたモンスターが姿を現した。

 図鑑を確認すると、先ほど倒した岩壁兵の巨大種だということがわかった。


 巨大種とかいるんだな。

 まあRPGならではの鉄板だと思うが。


「……ふむ先ほどのモンスターの巨大種ですね。では特大の水魔法を」


 スーちゃんが水の魔法を唱えて、それを巨大な岩壁兵へと飛ばした。

 見事に命中し、敵を向こう側に飛ばすが。


「……? 効いていませんね」


 飛ばされた、岩壁兵はもろにダメージはくらったものの全く無傷だった。


「……体の差、あるいはレベルの差か。どうやら相手は高い能力の持ち主のようですね」

「え、それぐらい敵は強いって事? んじゃ私行くわ」

「ちょっと愛理さん」やら「愛理」という声も聞こえたが無視。このまま泥試合になるくらいだったら私のパンチでゴリ押しした方が手っ取り早い。


 地面を蹴って、敵の目前へと赴く。敵の視野に入らないように背中に回り込んで様子を伺う。

 キョロキョロと消えた私を探し出す、巨大な岩壁兵。だが背中に私がいることにヤツは気づいていない。


「このウスノロが」


 一言。

 ヤツに向かってそういうと、こちらの存在に気づいたのか、頭を180度回転させこちらを振り向く。

 おっとばれちゃったねと、視線を送りつつ敵の攻撃する隙を与えず。


「ごらあ!」


 渾身のストレートパンチが炸裂。バランスを崩した巨大な岩壁兵は後方へと倒れる。……そのまま私は体を蹴ってジャンプ。そして降下するタイミングで再びパンチを叩き込む。

 こうすれば自由に動かせんだろと確信したのだが。

 パンチを叩き込んで、後ろへと下がり前に倒れる敵側を見ると。


「なん……だと」


 敵の姿がなかった。

 と後ろから。


「ちょっと!」

「……こ、この」

「あ、愛理さん!」


 後ろからは、仲間達の悲鳴が。

 首を捻ってそちらの方に視線を移すと。岩壁兵と奮闘する仲間達の姿が。

 数は数百……もしくはそれ以上いた。群がるその敵数に思わず呆然とした。


「……あ、愛理さんどうやらその巨大な岩壁兵分裂して普通の岩壁兵を無数に作り出すことができるらしいですよ」

「み……ミンチにされるわ。言っておくけど私食べても美味しくないわよ!?」

「お二人共、耐えて下さい数が増えたとはいえこれしき……はっ」


 奮闘するその様子は、呆然一方といった感じで私1人では対処できないほどにたかっていた。

 銃を撃とうにも、仲間が巻き添えになるしこの戦法はなしで。

 そんなことすればあとでみんなが「本当に裏切ったんですか!!」とか言われそうだからこれは正解。


 さてどうしたものか。

……よし、岩なら岩で対処するとしようか。

 随分前に倒した、ゴーレムの破片があったよな。


 あれと、先ほど倒した3匹分の岩壁兵の岩を素材として。

 パーカーの生成画面を開いて、『ゴーレムの破片×1』と『岩壁兵の破片×3』を素材とする。

 そして新たに複製したノーマルラビットパーカーをそれと合成しできあがる。


 目映い光から出てきたのは、ちょいと茶色い土色をしたパーカーだった。

 名前は……。

 とりあえず恥ずかしがりながらも、いつものかけ声で。


「ラビットパーカーチェンジ!」


 服が土色へと変色。

 装備は何もなしだった。

 念の為に能力を確認。


【アース・ラビットパーカー 説明:大地を操るラビットパーカー。地震、地面に散らばる瓦礫をくっつけ巨大な腕にして殴ることができる 補正 防御+ HP+】


【固】大地震を発生させることが可能。

【固】散らばっている瓦礫を操れる。腕にして自身の武器にすることもできる。(戦闘終了後に効力は消える)

【固】鈍足だが、どんな攻撃も受け流す高防御を持つ。受け流したダメージを数十倍にして相手に返す反射能力持ち。


 はい来ました。

 今度は防御型のラビットパーカーの模様。

 地震か。

 そういえば、住んでいた場所が都市部だったからよく地震起きていたっけ。


 妹が事前に『明日、地震が起きるらしいから姉さん注意してよね!!』と注意書きのメールを送ってきたことがあったが。

 まあそんな事はさておき。


「愛理さん? また服の色が変わりましたね今度は茶色?」


 1番に反応したシホさんがまじまじとこちらを凝視。


「……カラーバリエーションいくつあるんですか? 1着私にください」


 作品的にそんなことしたら、私の特権がチャラになってしまうのでそれはできないと思うよスーちゃん。

 剣を振るうミヤリーは。


「え、今度はゴミカラー? どうでもいいけど早く助けてよ」


 お前、ちょいとお口チャックな。

 さて感想を述べる仲間を助けるとしよう。


「みんな、少し我慢してね」


 忠告を一言。


「え、それってどういうことですか」


 気になる一同は頭の上に、疑問符を浮かべる様子でいた。

 なあに。すぐ分かるって。

 足に力を込めて、足を大きく振り上げる。そしてそのまま振り落とすように大地を踏む。


 すると、巨大な振動が発生。

 何回か踏みつけると、仲間を襲っていた岩壁兵が空高く宙に浮く。

 さてとあとはゴミ処理するだけか。


 手を大地に付けて、周りにちらばらる瓦礫の破片を寄せ集めた。

 巨大な腕っ節をその瓦礫で作り、空高く伸びるくらいの大きな腕が私の前に作り出される。

 一塊目がけて腕を岩壁兵達に近づけて。


「砕け散れ!」


 悪役がよくほざきそうなセリフを言い、見開いた腕を握りつぶすように閉じる。

 中から土が土煙を出すように放出。再び手を開くと岩壁兵の姿はそこには1つもなく。


「ふう見事に散ったな」


 あっさりしたものの、無事敵を倒すことに成功した私なのだった。



☾ ☾ ☾



【火を噴く竜は暴れん坊なのか? とりあえずぶっ潰す愛理さん】


「それにしても今日も豪快でしたね」


 一同に私を褒め称える。

 まじでやめて、私褒められて伸びるタイプじゃないからさ。

 麓の近くまで来た。

 無性に暑さが私達を襲う。


「それにしても暑いわね。溶岩が見えているわよ」


 両端には溶岩が生き生きと踊っている。

 渦巻く波を作りながら勢いよく。1度でも、足を踏み外せば骨になってしまいそう。おぉ怖い怖い。

 そういえば気になったんだけどさ。


「ミヤリー?」

「? なに愛理」


 気になったので彼女に問うてみる。


「お前ここから突き落としたらどうなるの? いくら棺桶でも消滅したりしない?」


 溶岩に呑まれたらどうなるのだろうか。

 溶けてそのまま完全になくなるか、それとも相変わらず死んだままの状態を保ち続けるかを。

 見開いた顔付きで彼女は即答する。


「いくら私でも、あんなの耐えきれないわよ。炭になって完全消滅するわよ」

「まじで?」

「おおまじ。……だから愛理いくら私が死なないからと言って押さないでよね?」


 押すなと言われたら押したくなるのがタブーだが、一応大切な仲間だし見す見す殺すわけにはいかない。


「心配すんなってミヤリー。いくら私でもそんなことしないって……だから安心しろ」


 ぽんぽんと彼女の肩を叩く。


「あんがとね愛理」


 と横からスーちゃんが。


「あ、……愛理さん」

「なに? スーちゃん」

「"蘇生魔法"なら肉体がとかされても大丈夫ですよ? なのでミヤリーさんが死んでも問題ないです」


 それってチートじゃね?

 え、それ本当? ってことはさ。

 悪知恵を働かせた私はミヤリーに。


「ちょ……なに愛理 その目は……目がとても怖いわよ」

「前言撤回。マグマダイブしてきて」

「「嫌よ! いくらスーちゃんがいるからってそんなこと断じてしないわ」」

「愛理さんミヤリーさんを悪いように実験台にするのはやめましょうよ」


 シホさんが止めに入る。

 まあやったところで無駄になりそうだし、やらない方がいいか。


「シホさんがそういうなら、やめにしよう」


 ちょっとした命拾いをしたミヤリーは、ほっと1つため息を吐いた。


☾ ☾ ☾


 眼前には大きな火山が。

 どうやらここが行き止まりのようだ。

 すると奥からうなり声が聞こえてくる。


 グルルル。

 鼻息の荒い猛獣の獣感ある威圧。

 火山の方に視線を向けると。


「愛理さん……あれ」


 直ぐさま気がついたシホさんは、うなり声のする方に人差し指を向けた。


「……巨竜ですね」

「うわぁでっか」


 小声で私達が話す視線の先には、二本の翼を生やす巨竜がそこに佇んでいた。


「ぐがあああああああああああ!」


 咆哮1つ上げると大地が激しく揺れ、火山が噴火する。

 幸いこちらにマグマは浸水してこないが、それでも激しい叫び声だった。

 というかドラゴンと戦うのっていつぶりだろ。


 多分、初めて異世界に来て以降戦ってないよね。

 根源の大元を叩くとしよう。


「じゃあみんな準備おっけい?」

「私から行っていいでしょうか?」


 真っ先に話して来たのはシホさんだった。

 どうやら先制して攻撃を仕掛ける模様。


「その……どれぐらい持ちそう?」

「あと30分はいけそうですね」


 ほうその30分後が腹減りの合図か。

 それまでに。

 ケリをつけるという意味で捉えた方がよさそうか。


「……シホさんカバンにおにぎりたくさんあるので補充は任せてください」


 回復要員として張り切り出すスーちゃん。


「……その洪水の魔法を使いますね。きっと存在あまりばれないと思うんでその隙を突いて攻撃します。……あみなさん、忠告しておきますけど忘れないで下さいね」


 いや忘れないって。

 私達は仲間だろと、言い張る他3人。

 かくしてボスである巨竜狩りが今始まるのであった。


☾ ☾ ☾


【数値はただのお飾りだから、あまり真に受けない方がいいよ】


【フレアワイバーン 説明:宙を舞う巨竜。口から役10京度の火炎を出すので一瞬で骨にされる。咆哮を1度上げるだけで震災レベルの地震が発生する】


 またクソみたいなモンスターが現れました。

 10京ってなんだよ。


 数値がバグレベル。

 まあ当たらなければどうとでもなるって言うし、やられなければ問題なし。

 フレアワイバーンにシホさんが、瞬間移動でゼロ距離まで接近。


 スーちゃんが遠距離の外周を走りながら速い水の球を飛ばし援護射撃。

 交差する斬撃で敵の腹部、頭部に傷を入れる。悲鳴を上げるフレアワイバーン。苦しみもがく竜は目の前にいるシホさんを見下ろすように見つめ、手に付いている爪で引き裂こうとした。


「ぐがぁ!!」


 先読みして回避。

 すると前に気を取られていたフレアワイバーンは、後ろに佇むミヤリーの存在に気づかず。


「これでも食らいなさい! そらそらぁ!」


 足の方を狙って2連撃。

 多少の手応えがあり、敵の足から血が出る。……その後も彼女は何度も足目がけて傷を刻み込み攻撃をやめない。


 だが彼女の攻撃に対しては激しい叫び声を発する事はなく、そのまま見ぬ振りをして再びシホさんのいる方に視線をやる。


「無視なの!? あの私攻撃しているんですけどなんで!!」


 かまってちゃんは放っておく。

 後ろに付いている尻尾で彼女をなぎ払おうと攻撃。しかしシホさんは避けるどころかそこから駆け上がるように登っていく。


 手に持つ剣を一振りして、尻尾を切り落とす。

 切れ味が相変わらず華麗だな。

 怒りに悶え苦しむフレアワイバーンは、口から火の玉を連射、連射、連射。


 側転し、周囲を回るように避ける彼女の素早い動きになすすべもなく。

 攻撃は全て避けられた。

 んじゃそろそろしかけるか。


 このまま殴ってもいいが。

 ちょいともう1つ新しいラビットパーカーを使うことにする。

 私が以前ゴリマッチョ君にやられた後、宿屋で目覚めシホさんにもらった物。


 それはゴリマッチョ君が落としたアイテムらしきもの。戦利品なので私にどぞと彼女が手渡してきた。

 少々その時は悔しい気持ちになりはしたものの、同時にありがたい気持ちを彼女に送った。


 手に入れたのは、巨大獣の骨。

 一体いつ使うか迷ったが、まさかここで使うことになるとはな。

 私を倒したくらいだし、相当な力がこの素材に眠っているに違いない。


「んじゃ始めるか」


 本日2回目ですよみなさん。

 さてどんなパーカーが生まれるのやら。

 生成以下略を踏まえ、作り出されたパーカーは。


「ほうメラメラしてんなおい」


 そのパーカーにチェンジして、姿を変える。

 パーカーの色が、鮮やかな赤に変わり手には武器が。

 打撃の武器。


「ほほーん。ハンマーか打撃武器ときたか」


 よし性能のチェックを。


【ストロング・ラビットパーカー 説明:パワーに特化した剛力型のラビットパーカー。強大な敵に対して与えるダメージが数十倍になる。手に持つラビット・ハンマーも強力だ 補正:攻撃+(50%) 素早さ-(10%)】


 ふむふむラビット・ハンマーっていうのか。

 素早さが下がる代わりに、高い攻撃力が手に入ったようだ。脳筋ゴリゴリ系のタイプだ第一印象なんか頭悪そうな感じ。


 さて、能力はいかなものか。

 おっとまずは武器の方をみよっと。


【ラビット・ハンマー 解説:携帯用に自由に大きさを念じることによって変えることができる。重さは100t以上あるが、所持者の負担にはならず重さは感じない。巨大な敵に対して与えるダメージが(自分の攻撃力・レベル+敵の重さ×ラビットハンマーの現在の重さ)の数値となる】


 あのやばくねそれ。

 どこか北欧神話の神が持っていた武器要素あるけど。

 かつ、攻撃力が50%加算されるから……エグいなこれ。

 だから素早さを遅くしている…………って10%ってそんな差なくね?


 というか『%』表記が出るのって今回が初めてじゃね。

 普段の『+』表記ってさ大体いくつかな。AIさんに教えてもらおう。


【…………+の表記は基本的に()がないものは5%加算です】


 ほうほうなるほどね。

 じゃあこれめっちゃ高くなっているってことか。

 ではストロングの能力を見てみよう。


【ストロング・ラビットパーカー】


【固】巨大な相手に対して与えるダメージが50~100倍になる。(微調整可能)

【固】粉砕パンチ(技) 触れた敵・物はどんな耐性があろうと一撃で倒せる(念じて発動)

【固】とにかくパワーが高いですw


 おい3つ目! ふざけんな。

 実質2つ能力がある。

 ……というかただのぶっ壊れじゃねえか。

 1つ目はまだしも、2つ目は状況によってはゲーム性がぶち壊しになるじゃねえか。


 2つ目の能力は封印しとこっと。

 さて。

 手に持つ赤いハンマー。

 それを片手に持ち。


「おわっと! と とっと! 重く…………ねぇ」


 説明の通り、ハンマーは軽かった。

 例えるなら、コップ1本と変わらないくらいの重さ。

 これで100t以上あるんだぜ? 重量もバグレベルだな。


 疑問なのが、他者に渡したらどうなるということ。

……今はやらないけど、今度ミヤリーに持たせよっと。


「うし、行くか」


 いよいよと動く。

 走ろうとしたが、体が重く上手く走れなかった。どうやら遅くなるというのはあながち嘘ではないらしい。

 なのでこんな攻撃力に補正がゴリゴリと盛ってあるわけだ。


「……小走りなら行けるかな……よっよっよ……」


 小走りしてみる。

 遅くながらも、多少は走ることができた。

 ちょいと時間はかかりそうだが、こいつならあのドラゴンを一瞬にして葬れそうだ。

 でもすぐに使うのはつまらないので、少し遊ぶことにする。


「? 愛理さんまた……今度はとても赤いですね」


 シホさんが手を振りながら声を掛けてくれる。


「真っ赤っか!? でもいつもよりなんか遅くない?」


 う、うるせえ! このパーカーはそういう仕様なの。

 マジレスすんなよミヤリー。


「……ほうなんとも燃えそうな赤色ですね」


 私がスーちゃんに合図を出す。

 ここで一気に洪水魔法を使ってもらって一気に畳み掛ける。


 その隙にトドメだ。

 だがまずは空を飛ぶ敵をどうするかだな。

 地上が危険だと悟ったフレアワイバーンは、空中で休んでいた。


 呑気に空を飛びながら。

 ムカついた私は。


「きたねえぞ! 地上にいる敵に対して正々堂々と戦いやがれ」


 とそんな声が届く訳もなく。

 火球を3発撃ってくる。

 速度的に追いつかないと思うので、避けるのはやめた。


「愛理さん?」

「な、なにやっているのよ? 避けないって正気?」


 困惑する仲間達。

 だが遅いから仕方ない。

 攻撃に特化した脳筋型のラビットパーカーなんだから。


「こ、こうなったら」


 意地でもと。

 頭の悪い思考を思いつく。

 私は迫り来る火球をハンマーで。


「ほいさ!」


 野球のボールの様に跳ね返す。

 全ての火球を打ち返した。その弾は飛ばしたフレアワイバーンに帰っていき直撃。


 え、当たったのあれで?

 てっきり外れまくる落ちが連発するかと思ったけど。


 まあいいや。

 フレアワイバーンはそのまま落下して、翼が千切れもう飛べない状態に至っていた。


「……整いましたみなさん下がっていてください」


 彼女の指示通りに、フレアワイバーンの周囲にいた仲間は後ろへと下がり待機。


「……いきますよ……はぁあああああああ!!」


 魔法陣を地形一杯に作り出し。

 そこから現れたのは。

 巨大な洪水。

 津波と間違えそうなその水圧は、フレアワイバーンの身を一瞬にして飲み込み姿を暗ます。


 数分。

 洪水が収まると、数メートル先にフレアワイバーンが弱々しい様で立ち尽くしていた。


「愛理さん大丈夫ですか? ……って愛理さん?」

「じゃあ仕留めてきますかね」


 私の後ろに立つ2人に堂々と宣言し、敵側へ歩みを進める。

 ハンマーを両手で持ち、小走りで駆け出す。


「うおおおおおおおおおおおおおお! ちと遅いけど我慢我慢! 愛理さん頑張るよb!」


 駆け出す最中、見守るスーちゃんが僅かの微笑んで『b』サインをしてくる。

 私は、両手が塞がってできないので、口咎めて首肯し『任せておけ』の様子を彼女に送った。

 そして精一杯の力で走り抜け、敵の元へと近づいて。


「おりやあああああああああああ!!」


 力を込めてジャンプ。

 他のラビットパーカーに比べて、ジャンプ力はちょっと低めだけどこれで十分。

 ラビット・ハンマーを敵の頭部に命中させ。


 そうだな。

 できれば必殺技名をここで高々に宣言しておこうか。

 無名のままじゃちょっと心許ないし。


 うし。


「ラビット・スタンプ!!」


 安直なネーミングセンス。

 まあ強いに越したことはないしこれでいいや。

 攻撃を食らったフレアワイバーンは、高々に雄叫びを上げて力尽きた。



☾ ☾ ☾



【学校仕事あとのメシって格別じゃん? とりまなんか食わせろ】


 少しの長旅から帰ってきた私達は、家でうまい料理を買いしばし食事をとり、それから仲良く風呂に入っていた。

 あ、みんなこの小説お色気シーンとかないからね?

 私の裸興味ある人なんてまずいないと思うけど、過度な期待は慎むように。


 エッな演出が欲しい人は他渡ってどうぞ。

 大きな浴槽で仲良く浸り、今日1日を振り返る私達。


「あのハンマー今度貸してよ愛理?」


 ラビット・ハンマーを貸してくれと頼んでくるミヤリー。


「う、うるさい! それにあれは私専用の武器だからなに起こっても私知らないよ?」


 自己責任は一切負いませんとテンプレな言葉を彼女に投げつつ。

 湯船に沈むシホさんは。


 ぶくぶく。

 ぶくぶく。


 泡を水中で作りながら遊んでいた。

 それに便乗するようにスーちゃんが、彼女の真似をする。

 いや、シンクロかな?

 アーティスティックスイミングってやつ?


 風呂でやるものなのか?

 趣旨が微妙にずれているような。……まあいいや細かいことは気にしないよ常考。


「ねえ2人共それ楽しい?」


 聞いてみる。


「ぶくぶくぶく!(ええ楽しいですよ! 愛理さんもやってみては?)」

「ぶくぶくぶく!(……シホさんやりますね 私はあと60分くらいいけそうです)」


 何を言っているか分からないが、きっと1歩も譲らない激しい戦いが水中で行われているのだろう。

 なんか誘われたような気がしたが……無視だ無視。

 すると2人は息を合わせたかのように浮上。


「……60分無理でした。もうちょっといけそうな気がしましたが」

「あらスーさん。私はまだまだ全然いけますけど?」

「……むむ。もう一回です! シホさん」


 イキがってシホさんがマウントをとりだす。

 いやどんな戦いだよ? てか60分とか宇宙飛行士じゃないんだからさやめようよスーちゃん。

 締めに私が。


「2人共風呂であまり遊ばないの」

「はーい」

「はい」


 勝負に終止符が打たれた。


「報酬もめっちゃもらえたしよかったじゃん。……あぁミヤリー一応山分けするけど無駄遣いまたしたらしばくからね」


 怯え出すミヤリー。


「まぁまぁ愛理さん。それはもう今日いいじゃないですか。……私いえ皆さんお疲れな様子ですし」


 私も含め疲れている様子がバレバレな私達。


「バレバレか」

「バレバレです」


 目を瞑り、堂々とシホさんが答える。


「愛理もう上がってそろそろ寝ましょう。……私もう眠い」

「分かったからそれじゃそろそろ上がろうか」


 かくして私の長い長い一日がまたおわる。

 留年から始まった異世界生活というのは、私の思ったものとはかけ離れた存在。

 宇宙人が襲来したり、宇宙人の兄弟が襲来したり……宇宙人ネタばかりだなおい。


 そんなハチャメチャな日々をこの異世界で送っているけど、全然悪い気はしない。

 うん……悪くは…………。

 と真っ先に上がろうとしたシホさんが。


「ふえへえへへへ愛理さーん」


 目が渦巻き状。


「ちょま!? し、シホさん!?」


 ほーらこれだ。油断してたらこの仕打ち。

 逆上(のぼ)せる状態となったシホさんが、顔を真っ赤にしていた。


 やっべ入りすぎたな。

 ……逆上せたシホさんを、3人がかりで部屋へと運んだ後。

 ようやく私達4人は各々の部屋で寝付くのだった。

ついに50話いきましたこんばんは。

昨日はあまり書く暇がなくて、キーボードを滑らせる合間がなかったのですがようやく今晩の投稿です。

さて豪華(確信は持てない)2フォームの登場です。

ざっくり説明すると、防御型のアースと攻撃特化のストロングです。

実はアースだけ、グラウンドかどちらかにするか迷っていた裏事情があるのですが迷いに迷ってアースにしました。

とそんな小話はひとまずおいといて。

ちょこちょこ愛理の話の中で妹が出てきますが、今後でる予定? かもです。

それはだいぶ先に回している段階ですが、出てきたら「あぁあの時に言っていたあのキャラね」みたいなノリで思い出してくれれば宜しいかと。

名前も裏でもう既に決めておりますが、まだ露見するわけにはいかないので(ネタバレは重罪)、そうしないと愛理にラビット・パンチの刑に処されるのでお口はチャックしておきます。

来週また出していきますので、皆様応援の都度またよろしくです。

校正等も引き続き行っていきます上、よろしければまたみてくれると嬉しいです。

ではみなさま来週もまたお願いします。ではでは。

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