38話 うさぎさんは、そろそろ衣食住を整えたい その2
【同じ手に苦戦はしない対策はちゃんと練るべし】
湿気の強い沼地。
辺りからは、強烈な臭いが所々充満している。
なんだこれ。すっげえ鼻に来るんだけど。
ガスマスクを付けたくなるようなこの異臭。
……というかこの世界にガスマスクってあるのかな。
まあ普通に、プログラミングやオタクの文化などが存在する世界だし、あっても不思議に思わない。
いやというかこんなこと思っていても今更感あるだろマジで。
「なんかべちょべちょするんだけど……愛理ぃ~」
後ろで、沈まる沼道を苦労しながら進むミヤリーは、悪戦苦闘しながらも前を進む。
べちゃべちゃって。
そんなエロい表現……愛理さん教えた覚えないよ?
なんでお母さんみたいな口調になっているんだ私。
「はいはい自分でやる」
「ちぇこのケチ」
拗ねるミヤリーは、どこかと子供染みた部分があるな。
「足場悪いですね。なんとかなりませんか?」
「無理。パーカー変えてみたけど無理だったね」
試しにアクア・ラビットパーカーで試してはみたものの、不可抗力だった。
行く手が阻むわ、武器の中にドロが溜まり詰まるわで散々な目に。
仕方ないのでアサルトに戻して、普通に進むことにした。
「……進みにくい足場がこうも難しいとは」
「スーちゃんなんか便利な魔法ないの?」
「……残念ながらこれといって専用の魔法は」
ふむ、詰んだなこれ。
と浮かれていると目の前の沼地から、巨大な物体が飛び出した。
それは以前戦ったことのある敵が見入った。
ドロドロとした体に、いろんなゴミが付着している気味の悪いモンスター。体から強烈な腐臭を漂わせ私達の嗅覚を狂わせる。5メートルから10メートル前後のそのモンスター。
ま・た・お・ま・え・か。
ミドミドロン。
前にようやく倒したクソ耐性を持ったクソモンスター。
大事なことなので2回言いました。
「愛理さんこのモンスターって」
「だね。……嫌だけど戦いますか」
スーちゃんとミヤリーのやりとりを聞く。
「何なのよこのモンスター気持ち悪」
「……ミドミドロンですか。……注意して下さい耐久も高く、かつ強烈な悪臭を放つので危険ですよ」
「スーちゃん! なんかないの?」
「……あのミヤリーさん。私は魔法使いではありますが、なんでもできるとは限りません。……臭いを消す魔法なんて需要ないんで存在しないですよ。……ここは我慢して戦いましょう」
はあ確かにあの臭い強烈だよね。以前どう戦えばいいか戸惑った私だけど。
射撃も打撃も効かないモンスターだったけど。
「大丈夫だよ、ここは私に任せといて」
して前に立ち、呆然と立ち尽くすミドミドロンを見つめる。
相変わらず、でっけえ見た目だなおい。
……以前のように、苦戦を強いられる相手ではない。
それでも臭いは強烈なので、長居はあんまりしたくないな。
……狂政からもらった力の一部である、新たな能力それは。
「ラビットパンチ」
いつも通りに渾身の一撃を拳に込めて解き放つ。
泥まみれな体に、その拳が入り何かしら反発力のある音がした。……手応えなし前ならここで詰んでいたが。
「愛理さんやっぱり効かないですね」
「心配要らないよ」
触れた拳に念じる。力強く訴えるように。
するとミドミドロンは次第にうなり声を出しながら、暴れ狂いだしそのまま破裂。
はい爆殺。
泥の破片が辺り一帯に降り注ぎ、ミドミドロンは消滅した。
「ま、まさか」
驚くシホさんに私は。
「ね?大丈夫って言ったでしょ?」
長期戦に及ぶどころか、短期戦に留めることができた。
お、やばなんか反則級の強さをどうやら手に入れてしまったらしい。
……私が手に入れた新しい能力。
それは。
攻撃した相手の耐性を無効化して攻撃するというインチキ能力。
狂政に最初は常時つけるかと言われたが、それだとつまらないので念じたら使えるようにしてもらった。
念じるとこの能力が作動し、特殊能力だろうが耐性だろうがどんな力も無力化して攻撃できる。
つまりどんな強い耐性を持った敵でもこの能力の前では全てが無となる。……晴れてこれで無敵の力を手に入れた……わけだが、いやそれにしてもぶっ壊れじゃねこれ。
因みにこの能力……全パーカーに適用できる共有能力にしてもらったので好きな時に使える優れもの。
まあいざという時の対策として、入れて損はないと思いまして。
後ろのみんなが羨ましがる様子を見せる。
いや、持っていてもゲームがつまらなくなるだけだよ? 加減っていうものが分からないと。
「愛理その能力私に頂戴」
「嫌だ」
即答で拒否する私だった。
というかそんなことしたら、ガチのチート集団になるじゃないか。
☾ ☾ ☾
【道選びは計画的に行おう】
沼地の道を抜け、草木のある道へと出る。
やっとかと一安心する私達一向。
だが、裕福な時間っていうのは、長くは続かないもの。
どこかで亀裂が生じることも折々あるものだ。
「……看板ありますね」
3つの名前が書き記した看板が立つ。
↑沼地の大空洞
→湿地草原
←ドロドロ沼地
うわ、はいきたこれ。
どうやれというんだ。
「どうします? 私はどちらでも」
「ならこうしようか」
道に散らばっていた木の枝を手に取り。
「愛理それで何をするというの?」
「とりま、見ておいて」
その木の枝を落とす。
能力は一切使っておりません。
はい迷ったときみんなよくするアレです。
枝は。
右側へ。……おっとそうきたか。
「……んじゃみんな右に向いたから右へごー」
「ふむなるほど、行き先を示してくれる魔法か何かですか?」
いやそんな魔法ないからね?
ただのおまじないみたいなものだから。
「では……右に向かいましょうかね」
行き先が決まったところで、枝が導く方向へと向かう私達なのであった。
いや、これで本当にいいのかね。途中で詰まったりは。
まあそんときはそんときで。
率先し前へと進み、看板の記す湿地草原の方へと向かうのだった。
短めですがこんばんは。
愛理の反則的な能力発動となりましたが、まあちょっと常時発動もつまらないので任意のタイミングで発動するようにしました。
まあ彼女もそんなに連発して使うようなタイプではなくじっくり派なので、いざという時に使うそんな感じですね。あと2話くらい続きますが、果たして愛理一向は無事目的の家を手に入れることができるのでしょうか。さあ狩りの時間ですよ愛理さん。
ではみなさん次またお会いしましょうそれでは。




