31話 うさぎさん達、更なる高みを目指してレッツゴー その2
【都会は誰もが憧れる場所だな多分】
オタクシティへと到着。
相変わらずコスプレをした、街歩く人が大勢といるなぁ。
雑踏とする人々は、寄り添い談話を交えている。
「……ここがオタクシティですか。とても賑やかな街ですね」
「なんか、街っていうより見知らぬ高くて頑丈そうな建物がたくさんあるけど愛理あれなに?」
「あれはビルっていうんだよ。……その人みたいな絵が描いてあるものはこの街の趣味みたいなもの」
この前来た時と違い、新しいキャラクターのポスターが飾ってある。
魔女っ子のキャラとツンデレ属性のキャラがやたらと多い。
最近のオタク・シティのマイブームなのかな。
お、中に私の大好きなアニメ作品のキャラもある。
退廃的な街を舞台に、主人公とヒロイン達が強敵と戦っていくという話なのだが、当作品で特に人気なメインヒロインの巨大ポスターが目の前に。
めちゃくちゃ欲しい。
コピー元――原本あるかな、1枚くらい貰いたいですはい。
狂政気前が良すぎだろ。
ひとまず、いきなり来ても突っ込んでもあれなので、また観光でもしようか。
歩きながら私は、スーちゃんとミヤリーに街の説明を大雑把にした。
この街がどんな場所なのかあらましながらも平明に。
「……異文化です、異文化すぎますよこの街。我が祖国グリモアにもこんな文化ありませんよ」
「じ、人類には早すぎたみたいなこと言わないでって。単なる趣向の集まりのようなものだし心配はいらないと思うよ」
怪訝な目でスーちゃんは周りを見て警戒モード。
小さなうねりをあげながら怪しい物──もとい二次元の物に目をつける。
目ざといね。
ミヤリーは、看板やポスターを延々と眺めているが、腰曲がるぞ腰痛なっても私シラネってなるからな。
頭の上に疑問符を浮かべる2人だったが、なんだか興味津々な表情をして街の雰囲気を染み染みと味わったのであった。
またしばらくして。
都会のような、行き交うの人々の波を歩いていると、またあのメイド喫茶が見えてきた。
うぇ。
また、あのメイド喫茶かよ。心の中で悲鳴をあげる私。
そんな私にお構いなしで、2人はバイトをしているメイドさんに話しかけていた。
「お、ちょまって!」
呼び止めようとしたが時既に遅し。
「おや、冒険者の方々ですか? よろしければ……ってあの時のうさぎさんじゃないですか。今日こそは入ってくれますか?」
「え、入ったことあるの? よかったら私たちにいろいろ案内してよ」
「……この『萌え萌えオムライス』ってなんですか。……オムレツによく似た感じですけど見たことのない料理です。美味しそう」
オムライス知らないのか。……あ、そういえばオムライスってあれでも日本生まれの料理なんだっけ。
オムレツのほうはフランス生まれみたいだけど。
するとシホさんが小さな声で。
「2人興味津々で行っちゃいましたね」
「どうにかして連れ戻さないと」
そのメイドさんは以前私と話した、あのメイドさんであった。
何人このお店で雇っているか知らないが、釣られる気はさらさらないからな。
よし、2人を今すぐ止めよう。
「2人共、こんな場所入っても何の特もないぞ」
強引に両手で2人を引っ張っていく私。……長居はしたくない。
「あ、あのうさぎのお客さん! 3分でもいいから寄ってくださいよ」
「……あ、愛理さん私このオムライスが!」
「スーちゃん今度作ってあげるから、今日は我慢して。ミヤリーお前もだぞ」
「し、しぶる理由がよくわからないけど、わかったわ。スーちゃん愛理がそう言ってるし行きましょ」
「……愛用さん絶対ですよ」
スーちゃんお願い、その物寂しいそうな顔で私を見ないで。
愛くるしい顔で和むと同時に背徳感がもたげてくる。なんかごめん。
というか3分待つくらいだったら、カップ麺食ったほうがましだわ! ということで却下して立ち去る。
振り返らず、疾駆でその場を駆け抜ける。
☾ ☾ ☾
【レビューはちゃんと見てからゲームしよう】
1度たりとも振り返らず。
……道中人とぶつかってしまったが気にせず走り抜ける。なんかごめん。
やっとのことで通り過ぎ辺りを見回すとそこはあのゲーセンの場所だった。……後ろにみんなはいるね。
「……あの魔導具はいったい。ガラスの中に品のような物が閉じ込められていますけど」
「どうぞ取ってくださいみたいな? ……愛理あの取り出し口からちょっと取ってくる」
「おい待て、それ犯罪だからね、これは硬貨をその魔導具に入れて遊ぶ物だよ」
少々初見さんな2人はクレーンゲームに目を付けた。
今回の商品はというと、かわいらしい動物のぬいぐるみ……なぜかうさぎ。
一目散にそこへ駆け寄ると、ミヤリーとスーちゃんがガラスに張り付いて目を光らせていた。
代金を払って遊ぶ物だと教えてあげたが、中でもミヤリーは『ちぇ』みたいな素振りをみせた。
それだといい大人に慣れねぇぞ。(実年齢は視野には入れず言う)
「なるほど、あの投入口に硬貨を入れればいいのですね。……今度やりましょうかね」
「スーちゃん取れないって感じたらすぐやめるのをオススメするよ」
「……へ、なぜ。……愛理さんがそう言うのであれば大人しく今度そうするとしましょう」
余計な埋没費用は抑えたいところ。
して、狂政の邸宅に向かう私たちは、真ん中の通りをひたすら進路を変えず前に進む。
というか全力疾走したのにも関わらず、平然と立っていられるシホさんっていったい。
私はたしかに足に力を込めたはずなのに、やはり彼女の耐久値は並外れた数値を持っていることだろう。
戦闘力を機器で測定したら、100億万あったりして……いや、んなわけないか。
「シホさん、全く疲れていないけど大丈夫?」
「えぇあれくらいは。……少々お腹が空いたくらいですかね」
空腹も問題なしか。
ってそうじゃないだろ。ここまで数十キロはあるはずなのになんで平気なのさ!
いつもはすぐ体力切れるのに。あれか、都合で能力値が変わるみたいな。うん、わかんない!
辺りの店には達寄らず、狂政の待つ豪奢な邸宅へ。
以前いたスーツを着る男性の人に用件を言うと、あっさりと道を空けてくれた。
階段を上り、大扉の前へと向かい中に入る。
狂政へと立ち合うと軽く土産話をし。
「そんなことがあったんだな。……聞くからにまた愛理君の青春の1ページが」
「黒歴史できたみたいな言い方やめろ、それで新しく入った2人が私の仲間」
「後ろに控えるミヤリーとスーちゃんを、招くように手を差し出すと2人が前に出てくる」
「………………」
「こら……いけって」
ためらう様子のミヤリーに肘で突いて指示を出す。
なにびくっているんだコイツ。
「み、ミヤリーです、よろしく狂政さん」
「……ステシアです。影は薄いですがなにとぞ」
「ステシア君にミヤリー君か。私の名は狂政、この街の長を務めており日々とかくものを開発している者だ」
私からしたら単なる趣味趣向の部類にすぎないが。
部屋を開けると、テレビで美少女ゲームのギャルゲーをやっていた。
相変わらずだなと感じたがこれぞ狂政。
「で、今なにやっていたの」
「レイコちゃんルートを周回していたぞ。……何度やってもあのルートは泣ける」
私は狂政がどんなゲームをしていたか、その『レイコちゃん』という名詞である程度察しがついた。
プレイ経験はあるのだが、このゲーム初期バージョンがクソすぎたんだよね。
適当にボタンを乱雑に打っているとすぐ、バグったりフリーズしたりと。
当時の私は初期バージョンのほうをやっていて、あまりにもすぐ落ちるからむかついて押し入れに入れた苦い思い出のあるゲームだ。
しかもそれは発売してすぐやっていたから、まだ修正パッチはなかった。
パッチが配布されたのは、私がゲームを押し入れに封印してから数週間後の話。……期間が空きすぎたせいでソフトを置いた場所を忘れ、結局やらずそのまま放置したが。
コイツ。そんなクソゲー認定されそうな環境化におかれてそうなゲームをことごとくとプレイしていたというわけなのか? 猛者じゃん。
「よくあのゲームできるね。私最初の修正パッチが来る前にやっていたからクソすぎてすぐやめたよ」
「……愛理君。それはタイミングが悪すぎたのだよ。追々出たパッチだと大きなバグは大幅に改善されたぞ。……まぁそこで新たなバグが発見されて、一部のユーザーが叱責し炎上まで発展したが」
「マ? ……というか今さらっと炎上したって言わなかった? ……今度はなにやらかしたんだよ」
肩をぽんぽんと叩いてくる狂政。
「よかったら、今度貸してやってもいいぞ。……安心するがいい問題となった大箇所はほぼ直してあるから問題ない」
「サンキュー。それはありがたいな」
プログラミングの知識がこんなところまで活かされているとは、元いた世界にいる市民が知ったらどんな反応をとるのか。
絶対なんか言われるだろ。……はいはいワロスワロスっと。
でも私が1度投げたゲームを、しかもほぼ完全修正された形でプレイできるのだ。
貸してもらうのに損はないだろう。
「ゲーム機は貸してやるから自由に使うがいい」
私に1台、正方形型のゲーム機を渡してくる狂政。
よく家電製品店に売られてそうな見た目だが……というかそっくりだ。
「これも魔力で動かせるの?」
「もちろん。だいたい少し魔力を通してあげるだけで24時間は持つぞ」
便利な品物じゃん。
これなら電気代を大幅に節約できたりも……大人げねぇ私。
しぶしぶ手に取りながら少しハードを見回して、私は無限バッグへと収納させる。
「パッチ? バグ? 聞き慣れないことばですけど」
「……私も全くわからない話です。……一体どういうことなのやら」
「強い魔法かなにかかしら?」
「それは今度話すから……そろそろ本題を話そう」
話の趣旨を理解できていない3人は放置して。
さてここから本題だ。忘れちゃいけない。
「ちょっと狂政頼みたいことがあるんだけど」
「ふむ、なんだなんだ……なんでも言ってくれ」
「私たちのパーティはさ、欠点があるからちょっとまた作り出す力か何かで強化してくれない? あ、俺TUEEEEみたいな無双系の力はなしで。ぶっ壊さない程度の許容範囲の力が欲しいなぁ……なんて」
頼み込むと狂政は快く、快活と手で「b」サインを送ってきて。
「任せておけ。……その前にまた1つ頼まれてくれないか」
よっしゃとなったのもつかの間。
まーたかよ。
ただとは言っていない……そういうことか。
……まあ金を払わないだけ光栄に思うべきかここは。
「やっぱりか」
「王道系のRPGなら依頼事をクリアした上で報酬をもらうだろう? 要はそれだ、こちらもそれなりの難易度に応じた課題を君たちにやるつもりだ。……だが些細なことならただでやることも考えてやらんこともないが」
コイツ。
私はその狂政の頼み事をまた引き受けるのだった。
まあ内心大切な友達だと思っているし多少はね。
言われた場所へといき、物事を解決しにいく私たちであった。
再びの狂政の再臨からこんばんは。
少々また疲れ気味なんで今日はこの辺にて。
とりあえず、タダっていうのもよくないと思い、お使いイベントをさせる方針にしました。
話の内容はまだ決まっていませんが、早くて明日中に決めて行きたいものですが。
さてうさぎさん達は明日どんな修羅場? をくぐることになるのか。
ではまた明日お願いします。ではではです。




