30話 うさぎさん達、更なる高みを目指してレッツゴー その1
【マルチプレイは計画的に倒すモンスターを決めておこう】
晴れて4人パーティになった。
後先どうなるかと心配もしたが、時間はそう長くはかからず、うさぎ、戦士、双剣、魔法使いの構成。
1人聞き慣れない職業があるって? 気にするな、私だって好きでやっているわけではない。
まともなメンバーを揃えて数日後。
軽いクエストの一仕事を終えギルドで昼食を摂っていた。
大して事態はなかったがすごいよ、ミヤリーがスライムに攻撃したら倒したと同時に水体が彼女の方にかかってしまい水浸しに。
普通のスライム相手になに苦戦しているのだと少々笑いがこみ上げてきそうになった。
あまり勢いよくスライムの水がかかることはないらしいが、冒険者達の証言では時々体の造り(弾力性)の柔らかすぎる個体――言わば変異種がいるみたいだが、それはよく水が飛び散るんだって。
そして運悪くミヤリーはその乱数を引いてしまい服が濡れてしまったとさ、ちゃんちゃん。
ステシアこと、スーちゃんが炎魔法で軽く乾燥してくれたおかげで、短時間で元通りになったが彼女があわれすぎてなんともいえねぇ。
「さっきからなによ、ずぶ濡れになったのがそんなにおもしろかったわけ⁉ ね、狙ってやったわけじゃないのよ。だ、だからそんな遠い目で見るなぁ!」
「なーんのことか、愛理さんわっかりまっせーん(棒読み)」
とぼけるように言い軽く煽ってみる。
彼女は見た目はいいけど、ゲームでいうところの脳筋ゴリラ。つまり叩くことしか頭にないヤツである。
慌てふためく様子がまた笑えてくるが、飯の続きを。
私たちが食べているのは、ギルドでも定番のメニュー。
一汁三菜という平衡のとれた組み合わせで、味の塩梅も絶妙だ。
感じ的には道の駅によくあるメニューに近いかも。……おとんと旅行の道中で立ち寄っては注文し食べたあのハンバーグ定食が懐かしい。
食べながら仲間たちと会話をする。
「大量のスライム狩り疲れましたね、スーさんの力があってとても助かりましたよ」
「いや、シホさんあなた何分か戦った後にすぐ空腹でバテたじゃん」
「あ、そうでした?」
ちなみに本日の記録は3分30秒あたり。
普段より少し早め。というかずいぶん前に買ってあげたベルトの存在やっぱ皆無なんじゃ。
「……いえ、私はそんな大したことしてませんから。でもミヤリーさんが弾力の悪いあのスライムを引き当てるだなんて……滅多に見れるものじゃないのに」
「す、スーちゃん後ろめたさなんていいわよ愛理みたいに侮辱したって」
「……いえいえ、単に運がいいなと思っているだけです。馬鹿にするだなんて私にはそぐわないことです」
「え、スーちゃん? あなた天使なの?」
「……羽根が生えていませんし、見ての通りの魔法使いですよ!」
私に馬鹿にされることが恒例行事になっていたミヤリーは、スーちゃんの加入によっていい薬となったようだ。
まるで天使が舞い降りたかのように隣に座る彼女の小さな手を握り。
スーちゃんは当惑しながら『え、え?』と反応しているが。どっちでもいいがあまりスーちゃんを困らせるなよ、まだ私たちの中で最年少だからさ。
午前中。軽いクエストを受け、遠足気分でモンスターを討伐しにいったわけだが。
最後のモンスターの1匹。
今日はシホさんが決めるぞという状況の中、巨大なモンスターの前に斬撃を放とうとした彼女だったが。
運悪くも、腹ぺこモードが発動してしまい、見す見す仕留め損なった。
「それで」
話を切り替え本題へ。
まずはパーティのバランスを整えるのが先決。1人でも役不足だったらまたそれで私の重りが増えていく一方だ。
ひとまず戦力になる主力を手に入れたわけではあるのだが。
各々、欠点といえる欠点があるので。
「とりあえず、またあのバカ総理のところにでも行かない? オタクシティ」
「……聞いたことありますけど行ったことありません。なんですかその聞き慣れぬ名前は……抽象的な部分が不明瞭ですが」
「なにその街。というか気になるんだけど」
2人、アイツ見たらびっくりしそうだな。
だって元総理でかつ2次元オタクなんだぜ?
「きっと2人も気に入ると思うから行く価値はあると思うよ、性格は“アレ”だけど」
? と首を傾げる2人。
シホさんはもう知っているからと心配いらない様子。
「久々ですね。……してどうしてそこへ」
「ちょっとした戦力補充さ。なんかこのままじゃやばいような気がしてさ。ミヤリーの付けている道具完全な無敵ってわけではないでしょ? その補強となるものを発掘しに行こうかと」
「なるほど。たしかに。このままだと確かにピンチの立て続けになりかねないかもしれないですね。あと私の空腹対策を練りたいですし、行きましょうか」
戦士の勘なのかな。自ずと私の言いたいことを徐々に理解していっている感じ。
少し癖のある人だけど、“戦えば敵なし相手は死ぬ”といった強さの持ち主。頭の回転はとてもいい……と思いたい。
「じゃあ、オタクシティ向けてレッツゴー」
このままではパーティが半壊しかねないと悟った私は、再び狂政のいるオタクシティへと向かうのだった。
☾ ☾ ☾
【どうやら日々魔法はインフレが加速しているらしい】
ギルドの外出るとスーちゃんが私の袖を引っ張ってくる。
「どうしたの?」
「……手貸して下さい」
唐突になに!? まさか変なプレイを要求しているんじゃ。
幼げながら恐ろしい子ですな。
「……あの恥ずかしいんですが。……転移魔法を使うので愛理さんの記憶をちょこっと拝見させてもらおうかと」
これはもしや。
ゲーム好きなら誰しもわかるあの呪文じゃね。
「転移魔法? どうやって使う物なの?」
「行った場所にワープできる魔法ですよ。……ですが相手の体を触り、その人の記憶を探り場所を登録する必要があるので少々手間がかかりますけど。……その先ほど変な顔していましたけど顔になにかついていましたか?」
「いやデンデン(全然)」
「そっぽ向いてバレバレですよ。魔法使いの直感でわかりますから」
魔法使いの直感ってなんだよ。
お母さんは全部お見通しの類語かな。
「とりあえず、手出してください。あと私卑猥なのは……ちょっとあれなので変な妄想はなしですよ?」
「あいよ、手短にね」
それ某RPGにも欲しいやつ。
めっちゃ便利じゃないか。
言われたとおりスーちゃんに手を差し出す。
すると少女は私の手を握り目を瞑った。
数秒も経たない内に、スーちゃんは目を開けると。
「…………完了です。大方の場所はわかりましたよ」
あれでわかったとか、さすがスーちゃんやな。結論、パーティを組む際は必ず最初に1人は魔法使いは入れよう。
日々魔法というものは、進化を遂げている一品物らしい。
「……さあみなさんこちらへ」
私とスーちゃんのいるところにみんなが集まると、みんながちょうど入るくらいの魔方陣が現れた。
すると下の魔方陣が光りだし、発光するがごとく光に包まれると体ごとどこかへと飛ばされていくのだった。。
短めですがこんばんは。
とりあえず作戦会議みたいなことを話しております。
スーちゃんが使っている魔法は、某RPGに出てくる有名なあの移動呪文。その強化版とも言える有能な呪文です。他にも多彩な呪文を兼ね備え、愛理達をサポートする面々がありますが果たして。
明日、久々に狂政が再臨。愛理達は何かねだるようですが一体それは。
ではまた明日お願いしますではでは。




