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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第4章 うさぎさんと天才?ちょっと影が薄い魔法使い
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番外編 うさぎさんと出会う前の天才少女 その1

ステシアことスーちゃんの前日譚です。

少々今日は睡魔がやばいのであまりかけなったのでここまでにしておきますが、明日今日の続きの分を書いていきます。

【魔法は誰でも憧れる一品ですよ】


 ここはとある中大陸にそびえる大都市、『魔法大都市グリモア』

 都市の中を覗くと、高い建物が林立するように続いています。


 約5000万人前後の人々がここグリモアに住んでいて。

 人口が世界の中で三番目に多い国として、よく上げられる大きな都市です。

 かつては小さく街と言っていいかも怪しい度合いの国だったみたいですが、偉大なる魔法使い様のお陰でここまで発展しました。


 その栄光を称え、今でもその魔法使い様の姿を象った石像が私達を見守るように立っています。

 1体に留まらず、グリモア中これほどかと思うぐらいの体数が点々と置いてあるのですが。


「まさか思ったより早く学校を卒業できるなんて」


 街中でぼそっと、小さく呟きます。

 決して自分が誇張していたとか、魔法で卑怯な手を使ったりなどは決してやっていません。

 いえ、本当です信じてください、なんでもしますから。


 私の学校で設けてある規則では。

 テスト中は、使用を禁ずるように先生から言われていて、もしこれに背くような行為をすれば魔法を一定時間封じ込められてしまう粉『魔法封じの粉』をふりかけられ、魔法はおろか空すら飛べなくなるのでみなさん真剣にテスト用紙に向かって筆を走らせていました。


 そして私は。


「まあ私にとってはどれも朝飯前。基本の範疇ばかりで楽勝でしたから当然の結果ですか」


 飛び級で魔法の学校を短期間で卒業しました。

 私ぐらいの年齢の子は本来まだ魔法に触れ始める頃合いですが、私はそれすらもできていて高学年の教室に移され、その後何事もなく卒業を迎えたといった感じですね。


 教師曰く、私の才能あっての卒業とのことです。

 表彰される時には、先生に執拗以上に褒められたのでとても恥ずかしかったですね。

 私の番に周りの生徒は一同に、こちらを見つめていましたがやはり人の前に立つのってとても緊張します。


 街歩く人達から声をかけられると軽く手をあげて挨拶してみせます。


「スーちゃん! 学校帰りかい?」

「えぇ、というか今日も忙しそうですね」

「グリモアの人間にとって配達仕事なんて朝飯前よ」


 ほうきを扱い配達の仕事を行う魔法使いさんに声をかけられました。

 彼は、言わばご近所さん的な存在で、いつも通りがかる私に声をかけてくれます。

 卒業のことは……あぁ褒められすぎるのは私にそぐわないことですので、ここは彼には悪いですがあえて言わないことにしておきましょう。


 軽い話も交えて数分後。


「じゃあ気をつけて帰るんだぞ! お母さんによろしくな」

「はーい」


 他の大陸に住む魔法を使う冒険者のほとんどは、グリモア並に実力は高くありません。

 この国に住む人のほとんどは上位種の魔法を使えるのですが、一般的な人なら精々2段階ぐらいが限界です。


 できたとしてもそれは生まれながらの才能を持った持ち主や、常日頃から独学を絶やさない一部の冒険者に限りますね。

 ですが、グリモアの実力に匹敵するかどうかは、私たちから見たらとても滑稽な話ですけどね。


 そういえば数年前に、火の魔法がこもったランプを誰かが他の大陸に売り出したって話を聞きましたが、利益のほうはどうなのでしょうか。

 聞けば繁盛して大儲けに至ったと聞いていますが、本当に便利なのか少し半信半疑。


「今日はいつもより魔法使いがたくさん飛んで……あぁいや卒業式があったんですから当然ですか」


 ……高い家々からは、今日も魔法使いが箒を使って空を飛んでいます。地上には石タイルの床が敷き詰められ、石造建築の街並みが映ります。


 魔法の国は基本的に学校などの教育機関も充実しており、そこでは未経験者である見習い魔法使いを教師が各々指導しています。ほうきを使って配達する人や、通学する見習い魔法使いさんなどさまざまです。

 人口が多い国ですから、毎日のように空を見上げると、鳥のように散り散りと飛ぶ彼ら……彼女達の姿が見えます。


「早く空の世界を飛んでみたいものです……はぁ」


 時々、外の場所から赴いて、グリモアで魔法を習いに来る冒険者も中にいます。

 そのほとんどは別の大陸や遠方などから訪れた人ばかりで、どの方も我が国で魔法を習いに来たと答える方がほとんどです。

 私の教室にもそんなお方がおられました。割と自信満々な方でしたが。


☾ ☾ ☾


【言うのはとても勇気いりますよね】


 中大の建物が重なるようにいくつも建っていますが、何回見てもここはもの凄い大都市です。

 路地と大路(おおじ)問わず、どこの通りも果てしない道が続いているので歩くのが非常に億劫ですね。


「家の方向はたしかこっちで……」


 先ほど途上で買ったパンをかじりながら帰路を進みます。

 行きつけのお店でよく購入するものなのですが、やはりこれは私の活を入れる一品物です。

 誰のお金ですって? ……これは母からもらったお金です。


 学生はみな、ちゃんとした収入源が確保できるわけないので両親に依存しがちです。

 はぁ、いち早く自分で小銭稼ぎでもいいですから、できるようになりたい。


 両親と他の有名な街へ足を運んだことがありますけど、どれもこの国とは規模が小さかったです。そこで私は初めて世界には面白いものがたくさんあるんだと実感しましたが。


 グリモアがどれぐらい広いかというと、巨大な円の塀内にたくさんの建物が数知れずあるのです。

 似たような建物もちらほら。

 そのせいで昔、よく母親と街で逸れる度に泣いたものです。


 自分ながら恥ずかしいですねこれは。


 そんな魔法に恵まれた、国で私は育ったわけですがいざ我が家へと。


「帰りました」


 街の住居。

 青い屋根が特徴的な2階建ての家。

 窓辺に飾られた綺麗な花が、鉢に植えられているところが特徴的です。

 まあこれは母の趣味なんですが。


 家に入ると父と母。そして幼い妹の姿がありました。


 4人家族のごく普通の一家で充実な毎日を送り、何1つ不自由なことなんてありませんでした。

 でも最近私は、常々思うのです。もしかしたら私より強い冒険者か誰かが世界のどこかにいるのではないかと。

 期待を胸に寄せながら、私は今日も食卓の並ぶテーブルへと座るのでした。


「お姉ちゃん、今日やっと卒業したんだって? 凄いね私もお姉ちゃんのような凄い魔法使いに早くなりたい」


 長い白髪をした、羨ましがる我が妹イルシィは目を輝かせこちらを見てきます。

 興味津々な様子が。

 うぅ笑顔が眩しい。


 いつもイルシィの笑顔には、姉ながら適いません。

 一言で表すのなら、妹そのものが光の塊のような存在です。


 愛くるしい素振りに頭を悩まされます。

 ですがイルシィ魔法使いはそう簡単になれるものではないですよ?

 ここは1つ妹に魔法使いになるのはそう甘くはない、という世間の厳しさを教えてあげなくては。


「イルシィ、一端の魔法使いへの道は険しいですよ。覚悟しておくのです」

「そんなぁ! でも私はお姉ちゃんよりもっともーーーっと凄い魔法使いになってあげるもんね。難しい魔法でもなんでも覚えるよ!」


 取りあえず、妹には非常に難しいものという嘘を言い。

 はい本当は嘘ですよ。初級魔法の取得まではそんな道は険しくないです。

 でもこうしたほうが相手にとっては逆に火がついて、やる気になったりしますよね。

 なのでこれはいい例の嘘でもあるのです。


「あら、スーちゃん、魔法はそんなに難しくないものだと思うけれど」


 空気を読まない母親が口出しする。

 というかいい加減その「スーちゃん」って呼び名やめてほしいのですが。

 母が気に入っている私の愛称らしいですが、昔からこのような変な呼び方で言っていますが、いつも批判しているこっちの意見も視野にいれてもらいたいところでもあります。

 おかげで一部のご近所さんにもそう呼ばれるしで、勘弁してって感じですね。


 これは母の"癖"みたいなものです。数年たった今でも決して完治しない不治の病的なものに冒されているわけですが、自分の母親としては恥ずかしい一面です。


「こら母さん。ステシアは妹に本当は魔法使いへの道は険しいということを教えたんだぞ。……それにどの魔法も簡単なわけないだろう」


 そんな母に対して、頑固な父はそう言いました。

 たしかに中には、非常に取得に困難な魔法も存在する。


 よって、わりと挫折する人も中に多いんだとか。

……ちなみに私は学校の休憩時間によく難しい魔導書を読み、重ねに重ねほとんどの上級魔法をも覚えたので一躍教室では注目を浴びましたね。


 簡単なのはごく一部の魔法なわけで、中には高難易度の魔法もあるのです。

 私はどれも取得できましたが、他の生徒の視線から妬ましい感じが伝わってきたのです。


 一部、私をライバル視していたであろう魔法使いが約1名いたんですけど、よく私に出会っては勝負を仕掛けてきましたが。(実は内心仲のいい友という関係ですけど)

 才能とは、ときに仇になることもあるのでしょうか。

 そんな話はさておき。


「ところでお父さんお母さん……あの件なんですが」

「おぉ……あれかいよいよか」

「早いわね」


 前々から言っていた。

 いつか世界一の魔法使いになるために、旅に出たいと。

 両親共々笑いながら当時幼い私に対して、よしよしと答えてくれましたが正直見た感じ半信半疑と言った感じでした。


 ……学校に上がりもう一度その話を持ちかけたら、成績次第で出してあげると言ってくれました。

 そう言われた時の嬉しさは今でも残っていますね。

 以降私は、魔法の勉強に勤しむ日々に没頭し寝る間も惜しみつつ、苦労しながら色んな魔法を覚えていき。

 気がつく頃には、教科書に載っている魔法を全て覚えてしまい、テストをする日には先生にとても褒められたものです。


「お姉ちゃんいなくなっちゃうの? 私寂しいな」

「大丈夫です、強くなってまた帰ってきますから。それまで元気でいるのですよ」


 決して今生の別れとなる言葉を言っているわけではない。

 出て早々死にました、なんてことは決してありえない、あってはならないので。

 そんなことをしたらグリモアの人々から『グリモア人として恥を知れ!』などと言われそうですし。


 私が落ち込むイルシィの頭にポンと手を乗せると、イルシィはこくりと頷いてくれました。

 母は。


「いいんじゃないの? スーちゃんあなたほとんどの魔法使えるじゃない。成績もダントツ1位だったし問題ないと思うわ」

「それじゃ……」


 許可がもらえる。そう確信した時だった。


「いいわよ旅に出ても。……ただし」

「た……だし?」


 条件を持ちかけてきました。

 おや、いったいどんな条件が。

 まさか、実の母を倒していけなんて言うのではでしょうね。


 たしか母は、高ランク冒険者のギルド側から特殊クエストを任されるくらいの強者冒険者だったような。

……いやいや学校出たばかりの私が、そんな母に勝てるわけないじゃないですか。というか殺される。


「明日、試練の魔洞窟に行きなさい。……そこで“あるもの”を手に入れたら旅に出ていいわよ」

「あ、ある物? それはいったい」

「それは行ってからのお楽しみ。あぁ報告はいいから終わったらすぐ出かけていいわよ。……でも定期的に手紙は出すと……母は喜びます」

「お前、なんなんだ今の間は。絶対今娘2人に『寒い話しているなぁ』とか思われているぞ?」

「え? 変だったかしら」


 にこりと笑い答える母。

 あのお父さん、そんな冷たく考える子に見えました⁉


 試練の魔洞窟。

 かつて魔法使いが、さまざまな魔物と戦乱を巻き起こしたとされる古の地。

 強力な魔物が多く、未だに危険なダンジョンとされています。

 そこに調達するものがあるとは、母は一体何を考えているのか。


 にこにことした目つきをしているので表情がイマイチ掴めないのですが、贈品かなにかでしょうか。感じからして母は少しもったい振っているようにも考えられなくもないですけど。……あのどうせなら直接渡してくださいよ、実の娘なんですから。


「それはかまいませんけど、強い魔物がいるって聞いたことが……」

「スーちゃんならできるって。でないと最強の魔法使いになれないわよ。………………それ」

「はっ。いつのまに」


 一場面飛んだように、母の手元には少々陳腐な肩掛けの布鞄がありました。持って行けとそういうことなのでしょう。

 どうやら私を後戻りさせる気はないみたいですね。ここで断りでもしたら旅に出ることすら許可してくれなさそうです。

 言ったことには責任を持て的なものなのでしょうか。


「今魔法使いましたよね?」

「……? さーなんのことかしら。お母さん知らない」


 はぐらかすとは、先を知りたければ1歩踏み出せとでも言いたいのですか。

……えぇわかりました、わかりましたよ。操られているような気分にもなりますけど、ここは仕方なしに母の言いなりになっておきます。お母さんにはやっぱりかなわない。


 すると母は魔法でまた何かを私に渡してきました。

……魔法使いの服一式と革袋です。

 もう少しなにかくれてもいいのにと、言わんばかりの少量なのですがここはぐっと堪え我慢しておきます。

 これも最強の魔法使いになるための修行と思えば大したことありませんよ。


「まあ頑張ってきなさいな。立派な魔法使いになったら、また顔を見せてよねお母さん達に」


 私はこくりと頷いて、家族に見守られながら、翌日試練の魔洞窟へと向かうのでした。 

読んでくださりありがとうございました。後日のあとがきになりますがいかがだったでしょうか。魔法の国の名前はまだ決めておらずとりあえず魔法の国という仮名にしていますが追追決めようと思っています。とりあえず少女がどういった経緯で愛理達と出会ったかそして試練の魔洞窟に隠されているのは一体なにか。次回また書きます。

それではまた。

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