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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第4章 うさぎさんと天才?ちょっと影が薄い魔法使い
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28話 うさぎさん達、またまたダンジョン攻略です その2

【記憶を巡らせるのって大事だよね】


 ミミックと奮闘中。

 スーちゃんにとあることを聞く。

 この数ある宝箱の中から果たして何個、当たりの宝箱があるのか。

 中身にどんな物があるかはわからないが、まずは手助けしてもらおう。

 確率の計算云々は、頭打ちで私の守備範囲外。

 だから仲間の手助けが頼りなんです。


 少々、こちらを訝しむような視線を送ってきて……私って怪しまれているのかな。


 この場面を突破すべく、魔法でなんとか対処してほしいと提案。

 彼女の力さえあれば、この難所をなんとか突破できる…………と思う。

 私のRPGの知識が正しければ、そんな呪文の1つや2つがあってもおかしくない。


 さすがに脳筋ゴリラみたいに、攻撃特化の魔法ばかりしかないってことはないでしょ。仮にそうだったとしたらマジでこの世界はオワコンでしょ。


「宝の中身が識別できる魔法ってあるかな?」


 頼むあるって言ってくれ。

 考え込むスーちゃん。

 だがあれかとひらめき出す彼女は、手の平にこぶしをぽんと乗せる。

 お、あるんだね、絶対あるんだね?


「あれですか。中身を識別できる魔法」

「なんですその魔法? 聞いたこともない魔法ですが」


 初見さんは放っておいて。


「シホ、愛理のことだから、何かしら策があるはずよ」

「すまないミヤリー、お前みたいにくまなく漁る主義はないんでね……で、スーちゃんひとつここは頼まれていいかな?」

「わ、わたしってそんなアホの子っておもわれてんのーーーーー⁉ というか無視するなぁぁぁぁ」


 駄弁を言い張るミヤリーは放っておき、スーちゃんの方に駆け寄る。


「……えぇと造作もないことですよ。でもめったに使う機会がなくて使用頻度が低迷していました、久々に使うので失敗しないか不安です」


 RPGでよくあるやつじゃねそれ。

 使い方がよくわからない魔法ってよくあるよね。


「大丈夫、失敗しても笑わない。スーちゃんは私の仲間だからね」

「……あ、愛理さん。わかりました、お役に立てるかわかりませんが尽力してみせます」


 少女が宝箱の前に出ると、なにやら呪文を唱え始める。

 杖を中心として、なにやら光のエネルギーが集まっていく。

 そして面前にある、宝箱目がけて言い放った。


「ミイルナ!」


 宝箱に光が当たり、残っている6つが赤く、3つが青く光る。


「なんなのこれ、宝箱の赤いやつと青いやつが出たわよ」


 おい、触るとか言うなよ。お前の一言一句は死亡フラグになりかねないから。

 赤は警戒、青は安全ってわかるのかな。……そういえばなんで信号の青って青くないのに『青』というのだろう。どう見ても緑にしか見えないのに。


「この光は一体何なんでしょう」


 赤い光のある場所に足を踏み入れるシホさん。

 ダメだよシホさん。それは。


「あ、シホさんダメですよその宝箱は。……それはミミックです」

「なんか、この光って規則性ってあるの?」

「えぇ。赤いのは宝に化けているモンスターです。青の方はというと普通の宝ですよ」


 お、実家のような安心感きたこれ。

 私の知っている魔法でよかった。これが……何かしらの思い制約なんかがついていたら、虱潰しに宝箱を破壊していたのかもしれない。


「……それは危ないですね。……便利ですねその魔法」

「目、目ぇ泳いでいるけど……シホさん? まさか1つずつ破壊しようと…………考えていた?」

「さ、さぁ? 決してそんなことは。斬擊で破壊していこうだなんていささかも…………」


 ブーメラン刺さってまっせシホさん。


「では安全な青の箱を開けましょうかね」


 とにかく開けてみようかシホさん。

 青い光の放つ、真上の宝箱の方へ行くシホさん。

 目映い青白い光。

 持続時間が何分か知らないけど、私の知識が役立ってよかったな。


 宝箱を開け、中を確認するシホさん。

 中は。


「陳腐な服が出てきましたよ」

「……うぅくっせ。こういうの不法投棄っていうんじゃあないの?」

「ふーほー陶器? 焼き物かなにかですか?」

「あぁいや、こっちの話。大したことではないよ」


 皮の服。

 いやまだだ! あと2つあと2つ残っているじゃないか。

 もう2つ私は開けるが。


「薬草ね、あせてはないけど……どうする?」


 薬草5個。……なんかの紙切れ1枚(何も書いてありません)

 ご、ゴミ箱と間違えているんじゃあないの?


「す、スルーしよう。ほら、腹壊したりしたら嫌じゃん」

「……ま、魔法で治療すれば元通りに……」

「す、スーちゃん? 体は大事にしようね」


 しょぼ。

 開けてがっかりだった。


「愛理さん。……私の魔法が役に立って……って愛理さん⁉」


 私の方に駆け寄るスーちゃん。


「だ、大丈夫。中身がしょぼすぎて失望しただけ。これくらい……ガチャのピックアップが全然当たらないことに比べたらかわいいものだよ。ふっ」

「こ……こういうのはよくありますよ。(から)の宝箱に違う冒険者が、遊び半分に適当な物を入れておく悪質な行為が」


 それ絶対やっちゃダメなやつ!


「ギルドの人はそれでなにも言わないわけ? ちゃんと仕事してください! まじで頼む」

「うーんならここにはもう何もないんですね。……愛理さん、とりあえずお腹すいたんで何かくれません?」

「え、もう減っちゃった? 仕方ない近くの……安全な場所を確保して……」


 シホさんに1つ、美味しい食料を渡し、次の場所へと向かった。


【絶対油断はしないことそれぐらいは守るべき】


「ここが最深部か」


 眼前には高価な施しをされた、大扉が立っていた。

 頑丈そうな鋼鉄製。よくわからない模様のついた彫刻はとても独特。


「急に強そうなヤツがいそうな場所に……。こういうのはクリア後のお楽しみ要素じゃあないの」

「……昔は強い魔物が住んでいたとか。かじった程度ですが今はそれほど脅威なモンスターは出ないみたいです」


 その昔っていつのいつの話だろう。

 100年? はたまた1000年前とか。


 この先に強いボス的なモンスターがいるみたいだが、こんな装備で大丈夫かな。


 問題ない。


 いや、死亡フラグ言ってどうする。

 つーか仇となる矛先がどこにもないんだけれど!


 今持っている素材は。

 前に倒したイカが持っていた電気を採取したけど、今はあまり意味なし。

 となると、安定のアサルトで攻略していく……のだが弾丸が効けばいいな。


「……扉の先には岩の体をしたモンスター『ゴーレム』が立っています。……とても力が強いので要注意ですよ」

「いつからいたんだよ。んまあ戦うのは初めてだけど勝てるよね?」

「愛理油断するんじゃないわよ。もしかしたら開けたその先は奈落の底へ落ちる穴かもしれない」

「それはお前限定だ、一緒にすんな。で、できる限り頑張るつもりだぜ」


 はい、RPGの顔とも言えるモンスター。

 異世界に存在するゴーレムが、どんな感じか知らないけどとりあえずぶっ潰しますわ。


「たのもー」


 扉を開けたその先には――。


 大きな巨大な体を持つモンスターが鎮座していた。

 岩でできた体付き。両腕は太いほどに大きくかなりの力量があるとみた。

 まだこちらの存在に気づいていないせいか、全く動きもしない。


【ゴーレム 説明:岩の体をしたモンスター。腕から放たれるパンチは非常に強烈なので注意が必要だ】


 うん、それはわかる。

 でもゴーレムってさRPGだと力は強いけどとても鈍足なイメージ。まず俊敏に動くことはないでしょ? あ、フラグじゃないよこれ。

 すると、鎮座していたゴーレムが頭を上げこちらを向く。

 そして雄叫びを上げ、こちら目がけてもう突進。


ドゴオオオオオオオオン!


「うわあああああああああああッ⁉︎ DQNとか聞いてないよ‼︎」


 唐突に繰り出されたパンチに、仲間はそれぞれ分かれる。

 3秒ルールとか……。あ、ないんですね。また動き出しているよ。


 途端に攻撃を回避してそれぞれ四方に散らばる。


 ゴーレムは、ミヤリーを腕で攻撃し、その攻撃をミヤリーは二本の剣を盾代わりにして受け止めた。力の押し合いはほぼ互角だが、若干押され気味になるミヤリー。歯を食いしばっている様子がその様子を見せている。


「なんて力なの。こんな硬いやつ初めてかも」


 これだと力に押され負けてしまうと、悟ったミヤリーは一旦下がって退避。……やはりこれはレベル差かうーん理不尽。

 もっとレベルが高かったらもしかしたら勝てたのかもしれない。

 だが生憎にもミヤリーの現在のレベル到底私たちより低いレベルのため、正直今では役不足だな。


「ミヤリー下がってもいいよ」

「あ、じゃあそうさせてもらおうかしら。……なんか今の私では勝てないっぽいし。……でもサポートはするわ」


 ステップ踏みながら剣を飛ばすミヤリー。カキンとゴーレムの体はその攻撃を弾き、剣はミヤリーの方へと戻ってくる。……なにその剣1本私に頂戴……ってこのパーカー剣持てないんだった。


「ち、かすりもしないじゃない」

「というか、投げられたんですねその剣」

「投げたら私が指示を出せばすぐ返ってくるのよ。すごいでしょ(ドヤ)」


 ブーメランかよそれ!


 横切るようにシホさんは、敵の下半身辺りまで足を滑らせて斬り裂く。


「これならたああああああああぁ!」


 ほどよい切れ味が、ゴーレムの足の部分に亀裂を入れた。

 彼女の力量が高いせいか、若干敵の動きが鈍くもなり。

 対等に戦えているな。


 さすがシホさん。戦闘はお手のものか。すると背中を見せたシホさんを腕で掴もうとするゴーレムだったが…………咄嗟にシホさんは背中に持っていた盾を片手に持ち、その攻撃を防いだ。


 巨体にもかかわらず、盾の硬さは異常なほどでことごとくと攻撃を遮り弾き返す。しかも目の瞬きみたいに一瞬で構えたぞ。

 どれだけ硬いんだよその盾。


「危ないところでした」

「反射神経たけぇよ」


 防御面も完璧だな。……そのまま力で押し上げ壁目がけてゴーレムを飛ばした。

 あれ、盾ってこんなに攻撃高かったっけ。


「盾とはいったい……」


 今度は、敵の腕に乗り。そのまま敵の顔面目がけて駆け抜ける。


 面前。

 近づいたシホさんは足を止めずに、剣を構えて。


「大きさが(あだ)となりましたね。……これでどうですかッ!」


 一振り。また力のこもった一撃をそのゴーレムへ。……だが今度は頭部へ。

 その切れ味はというと……。

 頭はまっ2つに割れ、地面へと落ちる。


 え、あっさりと勝ったの?

 重心の崩れるゴーレムから飛び降りて着地するシホさんは、敵の様子を伺う。


 合間。シホさんに手を振り感謝しようと手を振ったが、彼女の目はまだ……しかめた状態だった。真剣な眼差しで倒れたゴーレムを凝視する。

 気の緩みを感じさせない彼女の素振りを見て、私は危険を匂わせた。

 まだなにかあるの?


「…………」

「シ…………ホさん? どうったの?」

「愛理さん……まだ終わってないですよ。ゴーレムまだ生きています」

「え」


 次の瞬間。

 割れたゴーレムの頭部分が宙に浮かび、結合。

 そのままなくなった頭の箇所にその部分がはまって接着。……まじかコイツ。


 私は察したヤツの耐性を。

 ある能力が備わっていることに。


【それ反則! ってあぁ私が言えた口じゃないよね】


 ゴーレムは再び立ち上がり、再び一声を上げると再起動した。

 そう自己再生能力を持っていたのだコイツは。


「いや聞いてないわよ。そんなの」

「一筋縄ではいかないみたいですよ」

「こういうのはNPC専用がお約束だが、やられてからなんておもんないよ……チクショー!」


 通りでスーちゃんが苦戦する相手なわけだ。

 まさか再生持ちのモンスターなんて。

 いやだったらどうするのこれ。いくら倒しても無意味じゃね。


 だって。


 倒す→再生→倒す→再生→倒す


 とシンプルな無限ループの完成だ。

 これでいったいどうやって戦えと。


 策を模索しながら敵の攻撃をかわし攻撃する私達。

 一発ごとの攻撃の範囲が広すぎるため、地響きが計り知れない。


 再び応戦し始めるが……こんな敵とどうやって戦えばいいんだよ。

 まじのクソモンスター。


 害悪。能力ぶっ飛びすぎ、上方修正してどうぞ。


 垂れた目で半分もう諦めかけているのだが……いやだからどう戦えと言うんだ。

 うん? なんか誰か忘れているような。

 後ろを振り返ってみると。


「……………………」


 ポロっ。

 涙目になりながら立つスーちゃんの姿が。

 いや、スーちゃんってそういう。……そうか存在を忘れられるそんな陰キャ体質の子だったの? 完全に忘れていたわなんかごめん。


 まさに青菜に塩、やらかしてもうた。


 慌てて駆け寄る私。


「ごめんスーちゃんすっかり忘れていて……だから泣かないでほしいな」

「…………どうせ……ぺッ」


 こら女の子がそんなこと言っちゃいけません! 唾吐くのはやめたほうがいいってスーちゃん。まあ私も人のこと言えないけど。


 スーちゃんは地面でお絵かきを棒で始めた。独特な巨大モンスターに魔法使いが広大な魔法? でモンスターを蹴散らす絵だった。これがスーちゃんの"理想の私"なのだろうか。

……あぁこれ完全拗ねているね。とりあえずスーちゃん現実逃避はやめてこっち戻ってきてよ。


「私は空気の薄い魔法使いですから、忘れられるのも当然です……ですからお好きに……」

「いやそんな、煮るなり焼くなり好きにしろみたいな言い方されても……頼むから!」


 あぁどうしようか。

 仮に私の銃でも使えば、それこそ大被害だし危険。

 さて、目の前で拗ねているスーちゃんを救いつつ、かつゴーレムをどうやって攻略するか。

……まずったなこれはまた面倒くさい戦闘になりそうだ。

先週末は書く時間がなかった萌えがみです。

さてよくRPGで出てくるゴーレムを出して見ました。

ちょいと不死身要素を出しつつ、展開を盛り上げるとして。

スーちゃん。彼女は天才魔法使いという設定ですが、見た目は背が低め。なのでうさぎさん達のパーティの中で一番小さかったりしますね。

実は結構泣き虫な豆腐メンタルの持ち主で、存在を忘れられるとすぐにしょげてへこみ出すキャラですが、次回さてどうなるか。というか明日書きますけどね。

強敵を前にしてうさぎさんはどう太刀打ちするか。愛理は……なんか秘策あるかもです。

ではここまで見て下さってありがとうございます。明日もよろしくお願いします。

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