番外編 うさぎさんになる前の愛理さん その1
本編が少し始まる前の愛理の話です。前後編と出す予定ですのでその辺よろしくです。
【ニートでもやることあるんだよ】
ここは日本の大都市。全国的人口が一番多い場所だ。
街歩く人々は今日も足音立てながら各々の場所に出向く。
社畜や通学、はたまたブラック企業などそれぞれ行き先は散り散りだが、人間は1日中体を動かさないと気が済まない生物。
だからこうして、人々はいつも汗水垂らしながら“社会”というディストピアをさまよい歩く。
そんな人が苦労しているのにも関わらず、それを気にも留めてないやつは一体どこの誰か。
さあ誰だろうね。……他の誰でもないこの私です。
「おっしゃ! レート10000突破やったぜ」
気分的に行きつけのゲーセンへ行った私は、得意の有名な音ゲーをプレイしていた。
丸い箇所をタイミング合わせて叩いていくリズムゲームなのだが、今日で念願のレートが15000を超えた。
筐体がいいのかわからないが、やたらとこの台パーフェクト判定がよくでた。……悪い台だとずっとBADが出てしまい、台パン刑に極刑したくなるクソ台があるがこの台はパーフェクトが頻発する。
新調したのかな。以前から愛用している台の席でやっていたけどこりゃ気づかなかったわ。よく見たら、ずいぶん前にキレ屋が作った凹みがなくなっているし明らか新調されているな。
最近、隠居なりがちになっていたが、今回で一気にレートが800から1000まで上がったので足が地に着かず、おのずと高揚感を覚える。
隣も同じゲームの筐体が連綿と数台設置されているのだが、その筐体でプレイする人達がこちらを物色し羨ましそうに見ていた。
……いや羨ましがるのはいいんだけどめっちゃはずいんだけど。
あ、私が叫んだりするからか。馬鹿だな私は。
こうして、私は本来行かないといけない学校へ半年間登校もせず、ゲームに没頭する毎日を送っているのだ。
最初は流れで、友達なんて自然とできると軽率に考えていた。……まあほとんど私が読んでいたノベル小説が影響しているだけなんだけどね。
けど現実はそんな甘くなく、数日の間、学校の通学を繰り返してはいたものの一切友達はできなかったのである。
というか、まわりの女子男子含めてうるさすぎた。
環境を変えるべく、私はその月を最後に学校に行くのをやめ、無断欠席し以降ゲームの世界に溶け込み今に至る。
ときおり、教師から電話がかかってくることもあったが、面倒くさいのでわざと着信オフ。頻繁にかかってくるのでのちにブロックしてやった。
そうしたら教師が私の家に来て説得しに来たけど、私は怒鳴って追い返した。……これにより私を邪魔する者はようやくいなくなり、晴れて自由の身になったのだがうん愉快愉快。
……昼時になったので一旦帰宅なう。……確かオカンが私の為に惣菜を色々と作ってくれていたような。
「お、あったあった」
冷蔵庫を開け、中を覗くといろいろと敷き詰められるように惣菜が入れてあった。
というか詰めすぎじゃね。……ここまで買い詰めなくてもいいような気がするけど。母はこういう買いすぎる悪い癖があるからなぁ。何回かそんなに買わなくていいと戒めはしたものの、一向に直す気配すらなかった。
それはおろか、日に日に食料は増殖する一方である。なにその“消そうとすると逆に増えます”みたいな現象は……私のよく見る動画のタグにそれが付いているけど、これは似通うなにかを感じさせるなぁ。というかマジで買いすぎる加減わかってないだろ。
パックに詰めてあったハンバーグを取り出して食事を摂る。……けっこう好きなんだよねこれ。
「うん、美味しい」
食事をおえ、自室にこもると私は再び自作PCを立ち上げ、ネットの世界へと潜り込んだ。
【ゲーマーはひたすら戦場を駆け巡る】
「今日はみんななにしているのかな。……ちょっと見てみようか」
ネットを立ち上げ、とあるSNS『スイッター』を見る。因みにこれ明確にはSNSの部類には入らないみたいだよ。なんでも情報収集するための専用ものなんだとか。
気を取り直しログインする。
リアルに友達いないとはいえ、それは学校での話。……スイッターで知り合った同じグルは沢山いる。フォロワーも4桁超えており、もうすぐ万垢になりそうな数に達していた。
「これ、へたすれば公式マークつくんじゃね」
と変な妄想を言ってみるが、自分でもこれは図に乗りすぎだと確信していた。
ひとまずなんか呟いてみる。
『レートようやく15000突破したぜ! この調子でもっと上の高みを目指して参るのでみんなオナシャス』
のツイート。
する通知がめっちゃ来た。……人数が増えるとこういう対応にどうするか困ってくるんだが。
『さすがスナイパーさん! こういうのは朝飯前だな!』
『スナイパーのプレイヤースキルはやっぱ尋常じゃなくて草w この知能1割でもいいからほしい』
因みにスナイパーっていうのは私のネットにおけるハンドルネーム。
よく家ではFPSをメインにゲームをしているのだが、そこでよく私はスナイパーライフルと漁るとライフルを使っている。で銃が得意だからなんかそこから名前付けたんだが、もうあまりにも知名度が広がり過ぎたせいか垢作った瞬間一気にたくさんのフォロワーを獲得。
以降友達もたくさんできた。人気になればこんなにも信者が増えるんだなと恐る恐る感じるが。
「……とりあえずみんなにいいねくらいはしておこう」
一括いいねを押してそのツイートを閉じる。
タイムラインを眺めていると馬鹿みたいな記事を発見する。
『【悲報】日本の首相税金を無断で自分のオタクグッズに費やしたことが発覚し強制辞任されるwww衝撃の画像がこちら』
いや馬鹿じゃんコイツ。
二次元好きな総理ってなんなの。……なに最近の総理大臣ってこれが普通なのかと処理が追いついていない自分がいるが、記事の中身は一言でいうなら大喜利でもやっているような内容だった。……やたらと買ったアニメのフィギュアの一覧がずらりと。この国は果たして大丈夫なのだろうか。
辞任後行方を暗ましたらしいが彼は一体何処へいったのだろう。まあ私には一生縁がないことだから気にすることないか。
時間もいい感じになっていたのでお待ちかねFPSで再び我が戦場へ。
☾ ☾ ☾
敵をことごとくと瞬殺し、なぎ倒す。
数時間に渡り、1対1の一気撃ちになるが。
敵は茂みに隠れながら、射撃を行っている。よくネットではこういうのをチキン戦法と俗称されることもあるが、そんなのは私には効かない。
「この私に勝てると思っているの? これでも食らえざk」
予め先ほど仕掛けておいた地雷を起動させ。
ドゴーン。
爆発と同時にその隔離場所だった茂みは粉砕され、まずいと思った相手は距離をおこうとする。俗に言うチキン戦法というやつだろうか。おい戦うなら正々堂々と戦いやがれ勝負くらいゲームやっている同士ならちゃんとやろうぜ。
「ちょろくて草」
一瞬の隙をついて射撃。その一撃によって敵は倒れ画面上には。
【WIN】
の文字が。
今日も一仕事終わったな。
そしてしばらく軽い仮眠をとって夕食を取り湯に浸かる。
……夜は少し出歩きたい気分なので外出することにした。ええと場所は。
【予約したいなら早めにしとくのがいい】
人気某同人ショップ。
好きな本の発売日が間近になっていたので予約したいと思う。
ショッピングウインドウも兼ねて、一回りしてからカウンターの方へと向かうことにする。
今日はやたらと新作ほやほやの薄い本がちらほら見えるが。
「あ、この人の新刊出てたんだ。ついでに買っておこう」
好きな同人作家さんの本が出ていたのでおまけとして買っておくことにした。
資金的にはゆとりがあるので2つ同時に買う事は容易だった。
「じゃあこれと……この本の予約したいですけど」
「かしこまりました」
新刊の同人誌と好きな本の予約を店員さんに頼み込む。
用紙に記入をして、代金を支払う。これで完了。
☾ ☾ ☾
ことを終えた私は夜のオタクの憧れの地を踏み歩く。
まだ閉店していない店も見えるが、長居しすぎたせいで今日はもうあまり時間ないな。
高層ビルの建ち並ぶ家屋の道をまっすぐ進みながら、買った同人誌をナイロン袋から取り出しチラ見する。
……決してこれはあっち系のものではなく、至って健全な非エロの同人誌だから私に変な疑惑は持たないで欲しい。
うーんでもひとりぼっちっていうのもなんか寂しい気持ちになる。……ネットの世界での私なら友達はたくさんいるけど……できればリアルでもほしいな。
欲を言うならとても常識のある長髪のお姉さんがいいかな。……まあ会える保証は微塵も感じないけど。
家に帰り、再びゲームをして時間がいい感じになったので、今日はこの辺で寝落ちすることにした。
あくびを垂らしながらスイッターでお休みのツイートをする。
そしてシャットダウンのボタンを押し今日の活動をおわることにした。
電源を消して目を閉じるとぐっすり夢の世界へと入るのだった。
読んで下さりありがとうございます。
今日は愛理の異世界来る前のサイドストーリーを書かせてもらいました。
結構なネット廃人だと思われるかもですが、彼女はこんな口荒い準不良な性格をした持ち主です。
私事ではありますが、作者さんはFPSはやったことないにわかな人間です。なので完全にFPSの同様の描写ができているかは分かりませんがそこは大目に見て下さると幸いです。
今日はもう1本午後にでも出す予定ですのでまた読んで下さると嬉しく思います。
それではみなさん今日も1日よろしくです。また午後お願いします。GWもあと少しですね。




