237話 うさぎさんたち、機械軍と戦う その1
「愛理さん愛理さん、王様困ってるみたいですよ」
「わかってるわかってるから、
で今回は、えーとあの機械軍ってヤツら
シバきに行くの?」
「はい、手強い? みたいです」
「みたいってなんだよ。
スーちゃんとミヤリーは、
台本読みのリハーサル中? まあいいや」
「ということでみなさん、
今回は強い愛理と戦うみたいです、
あちょ愛理さん⁉︎ 待ってください、私も〰︎〰︎少し喋りたいのに!」
【見えてるものだけで判断するんじゃねぇぞ】
「どうかお願いします!」
頭を下げられ、言葉を失う。
反応に困るのだが、
なに機械軍って。
聞くからに強そう。
こういった、シンプルな名前を持つ
ものは、
だいたい強かったりする。
「ちょタンマタンマ……」
「その一大事なんですか?」
王様は答える。
「あぁ。最近どこからともなく湧いてきて、
人々を襲うのじゃ」
「……知らない場所でそんな状況に?」
「しかも相手は命のない機械じゃ」
「我が軍は、最前を尽くしたが、
キリがなくてのう」
「それで今、戦力が少し心許ない状況なのじゃ」
場が重々しくなる。
時間につれて、引き下がれなくなってくる
この心境。
引き受けるしかないんじゃね。
「困ってるわよ、王様もその兵隊さんも。
……やったほうがいいんじゃない?」
仲間の促しもあり。
悩みに考えたすえ、
私は──。
「いいよ」
「引き受けてくれるか?」
「うん、ここで逃げるっていうのも
なんだか情けないし」
「やるしかないっしょ」
すると、王様がこちらに近づいてくる。
正面に、立ち会うと、
私の両手を優しく握り揺らす。
「おぉ引き受けてくれるか! 問題を解決してくれたあかつきには、褒美をやろう」
「さすが愛理さん、そう答えてくれると信じていましたよ!」
結局引き受けてしまった。
というかみんな、
うまくいった
みたいにお互い、口角を上げ
微笑しているけれど
ハメられた?
「……私ハメられた?」
一同ゆっくり頷くと
どこか、敗北感を覚える。
「気づかないほうが悪いのよ」
「都合のいいことばかり言いやがって。
ダァもう! わかったよ、やればいいんだろ
やれば!」
☾ ☾ ☾
エルミアを出て北西へ。
王様に場所を教えてもらい
薄暗い森林へと入った。
敵が本当にいるのかと
思わせてくれる静寂。
とても不気味すぎるな。
「静かですね、モンスターがたくさん
押し寄せてきそうな
雰囲気なのに、出ないとは些か不気味です」
\バキ!/
「ひぃっ!」
急になにかを踏んだ
物音に私は上擦った声を出す。
なんだ、魔物なんてどこもいねえぞ?
「あ、ごめ私」
「紛らわしいことすんな、
なんか出たかと思ったじゃん!」
音の正体は、
ミヤリーが木の枝を踏んだ
音だった。
こ、こいつぅ。
真顔で平然と言っているが
もう少し
空気読んでほしい。
「ごめごめって! わざとじゃないわよ」
「でもさっきから
気になっているんだけれども……」
「んだよ、さらなる煽りならよそでやれ」
「違うって。……そのなに、私の歩いている茂み、木の枝が道なりに沿って
敷かれているんだけれども、どうしてだかわかる?」
言われてみれば。
危険がないように、彼女を端の茂みを
歩かせていたが……不自然だ。
それを、川を作る形で敷かれているし
妙だ。
「知るか、そんなのわかっていたら
もうとっくに教えてるわ!」
「……謎理論ですね。とかくミヤリーさん
注意してくださいね。
地雷とか、仕掛けてあったりするかもしれませんし」
これが
フラグにならないことを、
願わんばかりだ。
なら……ならないよね?
普段は街のほうにやってくる
みたいだが、肝心の機械軍
の出処は、明確に特定されていないらしい。
この森林に発生源がある
と言われているが
どこにいるんだ?
すると。
なにかを踏んだ感覚がした。
「? なんだ」
足元になにか違和感ある。
おそるおそる、足を上げると
「げっ、罠⁉︎」
激しい音が発生すると、
茂みが揺れ、
「愛理さんあれ」
「なんだこのロボットは」
頑丈そうな、装甲を身にまとった
敵が出てきた。
二足歩行で人型。
それが群れを作るように
たくさん出てきて、気づけば自然一帯が鋼鉄の塊に変わっていた。
「……どこから湧いてきたんですか
フレイア!」
先手を切ったスーちゃんは
魔法で迎え撃った。
1体だけでなく回すように。
「……機械かなんだか知りませんけど
私の敵……には」
一斉に排除
できたかと思った。
がしかし。
「……!」
「……火をものともせずッ⁉︎ く、速い」
受けているのにもかかわらず
数体掛りで襲ってくる。
鋭利な剣を振りかざし
落とされる。
やばい、スーちゃんが危ない。
「させません、はっ!」
斜めに横切ると、
斜めに崩れるように切断。
「た、助かりましたよ、シホさん」
「あいつらは」
図鑑を起動させて確認する。
【機械兵 解説:
機巧な体を持ち、さまざまな種類がいる。
並の魔法では、ビクともしないので接近戦
とうまく使い分けて戦うのがベストだ】
まじか
だからさっき、効かなかったんだな。
よく見たら
弓持ち、剣、銃
と種類はたくさんいた。
「こっちにも来る、ラビットショット!」
飛びかかって来たので、
急対応するようにして、ラビットライフルで迎え撃つ。
「どうだ」
「……」
「効いていない? そっかこれも魔力使ってるもんなっ」
装甲が弾を弾く。
撃ち続けても、簡単にかき消され
敵は攻撃を止めず、
攻めてくる。
どうも、
私の使う銃も、
魔法と同じ、魔力が使われているせいか、
通用しないみたいだ。
「拳じゃないとダメなら……ラビットパンチ!」
放った拳で殴り飛ばす。
敵の刃物を避け、掻い潜り
隙を見て拳を入れる。
攻撃を受け、体が破壊されると
地面に破損した部位が散乱した。
「愛理大丈夫?」
「なんとかな。でも今回ばかりは
1人で全部無双、
なんて一筋縄では行かなそうだぜ」
背中を寄せ合いながら
大勢の敵を前にして対処する。
くっフォームチェンジで戦うか
どうする。
☾ ☾ ☾
敵の波を掻い潜る。
数多におよぶ軍勢を相手に
武器を振るう。
「おりゃ! 機械かなんか知らないけれどポンコツにすれば問題ないわよね」
「なんの理屈だよっそれ……食らえ!」
数もこちらよりも倍以上の数。
以上ではなく異常。
「シホさんあと何分行ける?」
人差し指と親指が少し離れるぐらい、
ってあともう少しか。
「しかた……ないっ! スーちゃん」
「はい」
魔法で応戦する彼女に声をかけ
頼む。
「アレ使える?」
「テンプスですね、何分止められるかわかりませんがやってみます」
火の魔法が効かなかった彼女だが
地と混合させた魔法で固め、
仕留めるといった荒技で対処していた。
さすがグリモアの知恵
といったところか。
「無理に全部やっつけなくていいからね」
「……もといそのつもりです……ッ!」
一旦、身を引き
隙が作れるような場所を探し出す。
木の上に乗り、勢いよく飛び降り。
口を大きく開き、高々と潤いの声とともに
杖を前に振り唱える。
「……テンプス。時間よ止まれ!」
世界は沈黙に包まれ──。
次の瞬間、場面が飛んだかのように
交錯する魔法が轟いた。
大きな風、爆風が立ち込め
巻き上げられた機械兵は、
風圧によって飛ばされる。
「くっラビットフィールド!」
みんなを守ろうと
体を包む膜をかけ衝撃から防ぐ。
立ちこめた黒い煙
そのあと
あたりを見渡すと鉄の下敷き。
どうやら、初戦敗退だけは
免れた。
まじで死ぬかと思った。
何回か服を変えては変え、
状況によって転じたが
数はバグレベル。4人でも無理なほどに、相手は多勢。機械だからって調子こくなよ。
「なにか手がかりは。よくわからん中身だな。ここに根城が本当にあるのか?」
破壊した機械の中身を確認
しても、私には目が点。
よくわからない。だぁもう
こんな時に卯乃葉さえいたらなっ!
「うん、これは? みなさん来てください。
少し違和感があるところがあって」
シホさんはなにかを発見した?
ようだ。
「なにも変わらない、普通の草木にしか
見えないんだけれど、どうしたのよ」
足元にある野原。
そこを指差しながら
不思議と重い表情をしていた。
なにかそこにあるの?
「ここだけ妙に違和感あるんですよ」
「足の感触といい肌触りも」
「……それにここに耳を当てると空洞か何かある音が、聞こえてきます。さながら作り物……みたいな」
目が早い。
実際に触りながら、やってみせているが
言われてみれば、そう見えなくとも。
「……ちょっと少しそこを詳しく調べて
みましょうか。なにか手がかりが
見つかるかもしれません」
そこを集中的に見つめて
私たちは謎を模索し始めた。
ここにいったいなにが?