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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第2章 うさぎさん達、再始動イン大きな一帯へ
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234話 うさぎさんたちと、鍛冶職人のおじいさん

【腕の立つ職人は神が成す荒業を振る舞う】


 現れたのは年配のおじいさん。


「どうも」


 軽く挨拶をする。


 身長は私より少し高いぐらいで、

シホさんとミヤリーよりかは低かった。


「ところで何用かのう?」

「えー少し見てもらいたい物があって」

「見てもらいたい物? あんた……えぇ」

「私は愛理、シホさんに、ミヤリーとスーちゃん」

「え、今回まとめちゃうの⁉」


 お前は黙っとけ

と視線を送りつつ。


「それで愛理ちゃんや、ワシになにを見てもらいたいんじゃ?」

「まあ立ち話もなんじゃ、入りなさい」


 私たちを招き入れるように、

彼は扉の横に立つ。


「おじゃましまーす」


 扉を閉め中へと入る。








☾ ☾ ☾








「いろんな物、ありますね。あちらこちらに武器、武器、武器……たくさんありますよ」


 中は小さな作業場、

といった感じだった。

 作業で使っているであろう道具の数々。

 床の端や壁際には武器が数々あった。


 奥のほうには縦に伸びた鍛造台。

その横には、赤く燃えたぎった溶湯の入った壺がある。


 とても本格的だ。

 ゲームでしか見たことなかったけれど、

実物はこんなものだなんて。


 と横端にあるテーブル。

そこに置いてある椅子に座り話す。


「それで見てもらいたい物とは?」

「友人に頼まれた物なんですけれど。おもて……これを見てほしいって」


 流星石を取り出す。

 とてつもない重心が私を襲い、

やむを得ず下に置いた。

 500グラム? もあるんだからそんな重すぎる物、

常に持っとけと言われたら。

 無理です、ときっと常人なら答える。


「ほうほうこれは」


 そのいかにも重そうな石を物色し始める。


 彼の名は。

メイソンさんという。


 異名として『不朽のメイソン』という肩書きも持っている。


 エルミア家に仕える鍛冶職人で、

昔、王家に伝わる上品な剣が折れてしまった際。

 彼に頼んだところ、なんと新品同様の仕上がりで帰ってきたそうな。


 それ以降、彼に頼む冒険者や商人があとを絶たず。


 老いた今でなお、

手は鈍ることなく、

この数十年、強靱な精神・技術力で街の武器を支えている偉大な人物

となっているらしい。


 それなら――。

不朽のメイソン

と言われることに納得がいく。


「それでメイソンさん、流星石のことなにかわかります?」

「ふむ」

「……この国ならわかる人がいると聞きましたけど」


 一通り見終わると、こちらのほうに顔を上げ。


「流星石じゃな。とんでもないものを持ってきたのう」

「これは、ワシら職人の中でも知っているヤツはほんのごくわずかじゃ。ワシも数十年前に1度だけ、これを使った武器を製造したのじゃが……まともに扱えるやつはおらんかった」


 1度だけ作った

というパワーワードも強力。

だが、それを持ってしても他の人は、


『重い』

と答えるのだ。


やっぱり流星石ってスゲーな。ひょっとしたら……重いのは

人の“思い”

かもしれない、

なんつって。



「なぜですか? できたのなら扱える人が多くなるはずでは」

「重すぎるんじゃよ。そうこれ自体の重さ、がじゃ。……結局そのあとエルミア家に献上してのう」


 他の人が扱っても重い品物だなんて。

 見てもらって解明してこい、

なんて簡単に狂政は言っていたが、見る限り簡単には終わらないっぽい?


 その証拠に、先ほど外で立ち会った、

柔らかい表情とは真逆に。

 とても険しい表情を浮かべている。


「じーちゃん、その昔作ったていう武器今も城……エルミア家が保管しているの?」

「私も気になる! おじいちゃんそれどこに行った見られるの」


 赤い目を見張ると、いつになく興味の惹かれたような顔を彼女はしてくる。

 相当、棺桶生活するのが嫌で、

強い武器が欲しいと言っているのか。

 単純に拝みたい、

という好奇心が気を惹かせているのどちらだろう。


「待て待てミヤリーちゃんや。それをみたいならほれ、これを持っていくといい」

「……これは、エルミア城への通行証⁉ いいんですか」

「ちょいと流星石を預からせてはくれんかのう? 久々にみたせいか興味が湧いてな」


 メイソンさんは、興味津々だった。

 この様子じゃあとても時間がかかると、言っているのだろうが。

どうしてこんな重要な物を?


「その時間潰し用にじゃ。ずっとここにいても暇じゃろう? そんなに見たいのなら確かめにいくといい」

「なに、エルミア家はどんな者に対しても友好的じゃ。きっと通してくれるぞい……展示室以外にもたくさん部屋があるからじっくり見ていくといい」


 なるほど。

 つまりは見てやってもいい。

が時間がかかるので、ここでのんびり待つよりかは、

城にでも行って時間潰ししろと。


 お人好しというか。

 初めてあったのにもかかわらず、

そんなあっさりと。


 大丈夫?

 それが実は牢に入れるための罠だったり。

 うん、ゲームでよくあるやつ。

 でもまったく、悪いことを考えているようには、

全く見えない。


「じーちゃん、これ使い終わったら返せばいいの?」

「ちょ愛理⁉」

「まあまあミヤリーさん、こうも貸すと言ってくれているわけですから。ここはお言葉に甘えませんか?」


 うんうんと頷くと。

私にも頷き返してくる。


「そ、それもそう……ね。ありがとうおじいちゃん」

「……メイソンさんありがとうございます」

「いやいやいいってことよ。楽しんでおいで……時間が経ったらまた来るといい」



☾ ☾ ☾





「そういえばおじいちゃん」

「なんじゃ」


 ミヤリーがふと

メイソンさんに声をかける。


 懐からなにやら……黒っぽい。

って。


 いつしかの、

銃士に貰った拳銃じゃあないか!

 結局目立ったところがなく、

あまり使わず終いになったが。


「これ少し調整してもらえる? 道中もらった物なんだけど」

「……それよくわからない、通りすがりの銃士さんから貰った物ですよね。最後に使ったのいつでしたっけ……なんだか私と似ているような」


 同情するように、

帽子を目深にさせる。

 いや、最近は忘れられてないからね。

だから、そんな自分を恨むような顔しないでくれ。


「スーさん帰ってきてください!」


「……あぁまたこれです。ひっそりと私戦闘で魔法撃っているのに文で一括りにされることもしばしばで。」

「強大な魔法打とうとしたら、愛理さんにいいところを……ぶつぶつ」


 しゃがみながら、

虚無世界に入ってしまう。

 スーちゃん、なんで自分から墓穴掘りにいくんだよ。


「アメあるがいるかの?」

「……はっ! いります、下さい」


 アメのことを言い出すと、

我に返り目を覚ます。

 この人、やはりタダ者ではないな。


「それで調整できるの? 使い勝手悪いのよ」

「できるぞい」


 疑問に早々に答える。

 慣れたような口だが、

え、あの複雑な物直せるの⁉︎


「ちょっと貸してもらうぞい」


 断りもなしに拳銃を手に取り。

鍛造台に置いた。


「ふんぬ!」


 そしてどこからか。

 巨大な、身長ほどの大きさを持つ、

金槌を取り出すと。


 両手で持ち、

火花を散らしながら、勢いよく

叩き出した。


 カン! カン! ドン!

 カン! カン! ドン!


 もしや。

 最初に聞こえてきた音、

その正体はこれなのでは。


 どうりで、物騒な音が出るわけだ。


 時々、溶湯につけては叩く、

その一通の工程を繰り返し。


「ほれ、できたぞい。これで大丈夫なはずじゃ」


 数分で銃を上品に直してくれた。

 前と比べ、

ツヤ出しが良くなり、むしろ新品に思える

仕上がり。


 え、これ本当に直したやつ?


 不朽のメイソン

と言われている意味がよくわかった。


 にしてもあの金槌、

どうみても重そうだが……握力どれくらいあるんだ?


「撃ちやすくもなっているはずじゃ。今度試してみるといいぞい」

「ありがとうおじいちゃん!」


「すみません、お代は……」

「べつにいいぞい。流星石のこともあるしサービスじゃよ」


 気前えよすぎ!


「みてみて愛理これかっこよくない⁉︎」

「そ、そだね」


 どう反応しろと。


 銃を直してもらったミヤリーは、

大いに喜び。


 そして。

 それから少し、室内を回った後。


「じゃあじーちゃんありがとう、後で必ず返しに行ってくるから」

「おうよ、来るのはじっくり回ってから来ていいからの」


 外に出て、エルミアを歩きながら。


「まあそんなこんなで、これがあればエルミア城に入れるみたいだし。行ってみる?」


「はい」

と一同賛成の声を上げてくる。


「んじゃ決ーまり。流星石を調べ終えるまで、時間かかりそうだし行ってみるか」


 こうして時間潰しにと。

 この国が支える居城――エルミア城

へと行くことになった。


 でもよくよく考えたら、

流星石がなかったら、城には入れずにいた、

かも?

 狂政め、間接的にハメやがって。

 まあ結果オーライってことで。行くとするかな。


「愛理さん、それにしても『流星石』。いったいあれはなんでしょうね?」

「うーんわからない。……でも」

「……もしかしたら、私たちの知らないトンデモねぇ力が、眠っていたりしてね」


 私もどこか、流星石の謎が気になりだしていた。 


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