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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第2章 うさぎさん達、再始動イン大きな一帯へ
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231話 うさぎさんたちと廃城

【歴史あるところにはロマンあるけれど、足下には絶対注意しろ】


 昼下がり。

 橋を越えるとまず見えてきたのは。


「森か」


 広々と続く森だった。


 いや森というよりジャングル? ……樹海?

 わからないけれど、とにかく深々と続くところに暗い木々の道が私たちを待ち構える。


 薄気味悪い見た目が行く手を阻むというか、いや素直に近道があるというのならばそこ使わない?

 だめ、だめですよね。


「……なんだか怖いですね。強力なモンスターがたくさんいそうです」

「スーちゃんがいるなら大丈夫でしょ。……それでこの森を越えていけばいいの?」

「……えぇ、森を抜けると一本道の抜け道が見えてくるので、そこを越えると、大王国圏内に入れます。まあその手前にあるこの森を多くの冒険者は恐れて、帰るなんて人が多いみたいですが」


 どれだけ深いんだよ。

 過労死は嫌、だとかそんな感じかな。

 私たちだけに留まらず、抱いていることはどうやら一緒らしい。


 暗い森の中から巨大モンスターが背後から忍び寄って。


 噛まれる→毒に冒される→即死するぐらいの猛毒が体に回る→ガメオベラ


 そんなの嫌だからね?

 妹が確か言っていたが、たしか毒蛇だけしか住んでいない離島がどこかにあったよな。

……まあいいか。


 また巨大モンスターの馴れ合いに身を投じるってことを考えると、強い奴はたくさんいるに違いない。


 みんなで中に入る。

 薄暗い空間が永遠と続くその道は、私たちから安心感をなくしてくる。


 虫のざわめき、鳥や獣の叫び声も恐怖を与えるがごとくこだまする。

 気味悪い、帰らせて。


【AI:だめです】


 ですよね〰〰私が勝手にチキってましたはいどうもすみませんですたー。


 スーちゃんが魔力のランプを点けてくれているおかげで、ある程度視界が確保できる。


「……これを使えば暗い道でも温かみが感じられるでしょう」

「魔法使わないの? 使えば昼間みたいに明るく照らせるんじゃないの?」

「ばか、魔力を消耗したくないからしてんの……」


 パーカーの僅かな金色のラインが軽微な光を放ってくれるが、それでも範囲は狭く最奥まではよく見えずただ自分の周辺だけしか照らしてくれない。


 歩いていくと、所々ある大きな一角が見えてきた。

 巨大な石造建築で覆われた塀の中には大きめの尖塔がある。


「あれは……城ですか?」


 通り抜ける度に、点々とした数々の城が見える。

 だが手入れはされていないみたいで、空を掲げる城の旗はどれも破れかけだ。


 苔やヒビもやたらと広がるように目立つがなんだろう。

 あの城は。


「……昔はこの一帯に城がたくさんあったみたいですね。ですが強力なモンスターの襲撃が多く今の場所に築城場所を移したみたいです」

「つまりあれですか? 今見えている物は当時の名残りともいえる……廃城ですか?」

「……察しがいいですね、シホさん。えぇ……そのせいか今はただの観光名物、大きな置物になっています出入りは自由とのことですが、モンスターには注意するようにと」


 被害が大きかったから場所を移したってことだな。

 スーちゃんによれば、昔は草原の場所も森で、この大陸に住む者たちからは。

 通称死の森――デスフォレストと呼ばれ恐れられていたみたいだ。


 現存する国は、昔あった数から数えると10割中5~7割しか残ってないみたいだ。

 残りの3割は陥落し亡国と化した後。

 当てもなく友邦の国と合併したり、新国を立てていったなどと経緯(いきさつ)は様々らしい。


 だけど、国々が一丸となり大開拓を計画し、今の最奥にある草原……森のあった場所は、木を全て伐採されその成果が実り、数か月後にようやく今の原型ができ草原になったらしい。


 てかやること派手だなおい。

 エルミアの人はやることに踏ん切りがいいというか、話から察するに物怖じすら感じないな。


「つまり今国が建っている所は昔魔物の巣窟になっていていつも狙われていたってことか」

「……ですね、作るために各場所から物資を集めて再建したって話も書いてあります」


 シホさんたちの種族にどこか似ている箇所もあるが……あれはもうある意味理解が追いつかないしまあいい。


「どうする? よかったら少し寄り道していかない?」


 なにか思い立ったミヤリーは……城? 城の方を指差した。

 ツアーでもしたいのかな。


「……こんな恐ろしい森でよくそんなこと言えますね。愛理さんどうします」

「あぁ私は問題ない……シホさん、空腹のほうは大丈夫? ポケットからもし良かったら出すけれど」

「問題ないですよ、いつでも戦えます」


 戦えるシホさんがいれば、ほぼ無敵じゃんね。


「ならミヤリーのいう通り少し回っていくか。シホさんがいればなにかあっても助けてくれるしね」

「そうと決まれば早く行きましょうよ、廃城巡りも悪い気はしないわね」


 そんな堂々と息巻いていたミヤリー。


 点々と時間を考慮しながら、そびえ立つ廃城に立ち寄った。

 小型のモンスターもいたが。


「ぎゃあ!」

「ラビット・パンチ」

「ぐぶ……」


 悪魔モンスターが出るくらいで、私のパンチ1発で倒せるくらい弱かった。


「ふむ歴史ある風格ですね、大広間は私たちの家よりかは大きくありませんけれど十分な広さですよ」


 廃城の廊下、玉座、大広間、倉庫などと目に付いた場所にはとりあえず行ってみた。

 めぼしいような宝は何ひとつ見つからなかったが、いたる場所にある亀裂でわかるようにハッタリではなくやはり相当年期の入った城なのだと痛感する。


「……これは拷問道具でしょうか? 枷などがつるしてありますが」

「城の1つや2つ、拷問道具なんて珍しい物でもないわよ、私の時代なんて牢屋にこもってた奴もたくさん見たしね」

「さらっと涼しい顔でお前何言ってるんだ」


 拷問道具や罠、数は様々だ。

 昔、親に頼んで城登ったことはあるけれど、やはりヨーロッパタイプの城は壮観だなぁ。

 特に現物の拷問道具が散らばっているのだから、また新鮮さを感じる。


 なんだこれ、人型のワイヤー……吊し系のやつかな。

 薄い本でよくある結束の……あれあんまり好きじゃないんだよね。

 キャラが虐められているようでかわいそうに感じるし。


「こんなので吊されるとか正気の沙汰ではないな……」



☾ ☾ ☾



「宝箱あるじゃない……どれどれ」


 ミヤリーが部屋にあった宝箱を開けようとする。

 明らかに古めかしい見た目で、中身は空なのではないかと察した。

 城の物って空がいたるところにあったりするものだけれど……実際どうなんだろうか。


ガラ。


空っぽ。


 やはり私の推測は当たっていた。


「な、なんでよぉ〰〰〰ッ‼」

「そんな現実甘いわけねぇだろ、ほったらかしにされているってことはほぼゴミ……なら入ってないに決まってる」


 泣きじゃくるミヤリーは放置して。


 一通りデスフォレストにある廃城を歩いた私たちは、最後に訪れた場所の中にある小さな控え室で休憩しながら少し話し合い。


 2人分の部屋だが、そんなにホコリはひどくなかった。

 でも衛生は多少整えておきたかった私は、スーちゃんに魔法でしてくれと頼んで処理してもらった。

 ほうきくん泣いていいよ。


「……おおかた回りましたよね、そろそろ行きましょうか」

「歴史の体験ができたところで私は大満足です。まあミヤリーさんに(どう)じて、お宝が手に入らなかったのは少し心残りではありますけれど」


 防犯無謀な国なんてあるわけないでしょ。

 当然そんな滅びた城内にある宝箱なんて、セミの抜け殻と同じだろ。


 でもここはひとつ、慰める言葉でもかけてあげようかな。


「うまくいかないこともある、冒険も人生も一緒だよ。……つーわけでミヤリー泣くな行くぞ」

「ふぇ〰〰〰〰ん……」


 かくしてお宝を手に入れられなかったミヤリーは少々心に傷を負ったが、森のほうに戻って再び。

 最初に行く王国に向けて緑地を踏みしめる。


 出ても薄気味悪いってことだけは、相変わらずだがそこは目を瞑って我慢しないとだな。


「お見えてきた、あの洞穴だよね」


 青々とした葉の山に一本通路の抜け道が見える。

 今いる所よりやや傾斜がかった場所にあるので、少し見えづらいけれども。


「……えぇあそこを抜ければ王国圏内に入れますよ」


 スーちゃんの言葉で活気を取り戻していく仲間たち。

 道中の敵もそれなりに大きさのあるやつも多かったけれども、協力してなんとか突破。

 暗礁は越えられたかな?


「ワクワクしてきたー! もうヘマしないからね? えなに愛理そんな顔して」

「死ぬよりお前の落ち込む顔もっとみたいな……って」


 瞠目した顔で肩を掴んで上下に揺らして。

 おいやめろ。


「こらー私を勝手におもちゃにしないで!」

「冗談だつーの。だからやめなって」

※ひとまず復活できたミヤリーさん


 王国に入るまでもう少し。

 さて振り切って進もうかな。

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