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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第2章 うさぎさん達、再始動イン大きな一帯へ
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223話 うさぎさん達の道中にて その2

 途上の町。

 ここは陳腐な雰囲気漂うどこか懐かしさを覚える町。

 町というよりかは、村と言ったほうがいいような広さである。

 立ち寄ることにした私たちは、その町に入り一通りに探索することにした。


「おや、見知らぬ冒険者じゃないか。キミはなんだ、その見慣れぬうさぎの服なんか着て」

「あぁいやこれはその……決して怪しい者ではない服装で」


 一番怪しまれそうな言葉を開口一番に言ってしまう。

 町の人、ワラでできた服を着た町人は不思議と私の方を物色し始めた。

 いつものことだが、まじまじと見つめてくるものだから……あのそんな顔しても金目になるような物はないですよ?


 よく薄い本にある展開で、怪しいヤツを後ろからなにかで気絶させそのまま監禁。

 あっち系な展開でアンナことやコンナことになったりするシチュエーションをよく見るが、実際はそんなこと……ましてこんなクソうさぎに手を出すもんならシホさんが蹴散らすなんてことも。


「怪しくありそうで……なさそうな。とりあえず顔を見る限りあやしいやつらじゃないんだろ?」

「……えぇもちろん、私たちは実力のある冒険者です。嘘偽りなく。ほらこの冒険者カードみても納得できませんか?」


 スーちゃんが率先して町人さんに答えてみせる。

 証拠を見せようと自らの冒険者カードを提示。

 S以上だしこれで「はい雑魚」なんて言われるなら口をつぐむなんてことはまずせず、喧嘩を売りに行きたくなる。


 トントンと提示した冒険者カードを指差しながらさせると、頭を振り納得した様子をみせた。


「え、Sだとぉ⁉︎ これは恐れ入った悪かったな疑っちまって」


 どうも私は説得力のある話という類のものがやはり苦手なようだった。

 年下といえどもスーちゃんが勇ましく見えてくるのはなんだろう。

 あれ、これが環境の違いってやつ? そう考えると心に多少の傷が。

 だめだ、私はこんな程度で砕けるうさぎじゃあない。


「その、旅の途中で立ち寄ったんだけどおすすめの場所ないかな?」

「ふむ、オススメの場所か。他の町と違って俺たちの町は大した物はないからな。あ、そうだ」


 すると後ろにいる、年長者の人が何人か前に出てくる。

 麦わら帽子にクワと、いかにもなにかを収穫した後直後の様子を私たちにさらしたが。


「そのうさぎの……えぇと名前は」

「愛理だよ。こっちは私たちの仲間で」


 軽く私がみんなを自己紹介する。

 場所は伏せながらも並大陸からはるばるこの地にやってきた、と答えて見せると町人たちは一斉に目を丸くさせる。


 そんなに驚くものなのか? いまだにこの世界におけるすごいの程度がイマイチわからないが、ひょっとして、そんなにすごかったりするのか?

 小声でシホさんに話す。


(ねぇシホさん、並大陸からここエルミアに来ることってすごいことなの? なんかめっちゃざわついてるよ)

(そうですね、たしかにすごいことではあります。なににせよ並大陸とエルミアはかなりかけ離れた場所にありますからね)

(……実のところ、ここはグリモアの栄える中大陸の斜め向かえに位置する場所にあるんですよ。少し離れた場所にあるのですが並大陸だと規模がちがいますね。それはもう珍しさこの上極まりないくらいに)


 とかく私たちは遠い旅行者という認識が、話との会話でわかった。

 ミヤリーはなにか、そこら辺に繁茂する雑草を黙々と抜いているがお前は少し話に入ってきたらどうだ。


「ん? 愛理町人さんのほうをよくみなさい。なにかくれるみたいだけど」

「よかったこれはどうだ? 腹の足しになるかはわからんが」

「おとこれは」


 多くの野菜を見せてきた。

 タマネギ、にんじん、トマト、ジャガイモその他もろもろと。

 取れたての物のため、少し土が覆い被さってはいるが新鮮でみずみずしい感じが伝わってきた。

 また食量の問題がこれで解決に。


 物珍しさになにかあげねばという使命感にでも襲われたのかな。

 非常に急き立てるかのような様子でこちらに、もらってくれることをひたすら待つ様子をさせているがこんなの断れるはずもなく。


「な、ならもらおうかな。その用意とかそういうのはいらないからその辺に置いてもらうととても助かるかな」


 すると町人さん達は、言った通りひとかたまりに野菜を置いていった。

 なんて心遣いのいい町の人なんだろう。

 しかも金はいらんなどと太っ腹な態度を見せてくる。

 まだ何もしていないというのに、もう私たちは何か大偉業を成した人みたいになっているけれど……私が……私たちがいつなにをしたのだろうと考えは募らせられるばかりだった。


「とりあえず、無限ボックスに入れておくね」

「あちょっと愛理、シホが中にいるマックス・ヘルンにも餌やれだってさ」

「あいよ」


 無限ボックスに待機するマックス・ヘルンにも、その一部を与えるようシホさんに伝言で頼まれるとにんじんを片手に持った。


「これだと本当のうさぎみたいに見えてくるけど……えぇい」


 少々恥ずかしい気分にもなったが同時に町の人に感謝の言葉を告げ、再び町を歩き回り出した。


☾ ☾ ☾


 歩いていると品出しされている屋台が見えてくる。

 その後ろ側には住民が住んでいる家があるが、なんだろうこれが外国の田舎ってやつなのか?

 今にでもウシガエルの鳴き声が聞こえてきそうな陳腐な雰囲気を持つ町だが、立ち並んでいるのはやや小さめの洋風建築の家である。


 海外とか住んだことないけれどみんなこんな感じ?

 でも売っている物は木製の物だったり、畑の道具だったりもあるけれど。


「……くわですか。愛理さん1本どうです?」

「スーちゃん? 私をからかっているのかな。しねぇよ、これ武器として使う物じゃあないでしょうが」

「だが嬢ちゃん、時に役に立つことがあるかもしれねえぜ?」


 割り込むように入ってくる村のおじさん。

 いつそんな非戦闘用の物が役立つっていうのさ。

 クワを一振りしたら大地でも裂けるみたいなイミフ能力が備わっていたり……そんなわけはなかった。


「土掘り返して埋蔵金掘り当てたり」

「アースで十分。土掘り返すなんて間に合っているし」

「え、そうなのか? なら土をかき集めたり」

「スコップでいいだろそれ。わざわざクワで使う必要性皆無じゃね?」

「むむむ……クワだと役不足なのか……」


 なんとかおじさんは、自分の売るクワを徹底的に自己アピールしてみたわけだが効果は徒労におわるのだった。

 気持ちはわかるけれど、全部パーカーで事足りる。うん。

 わざわざ買ったとしても、何に使えってんだ。よくあるじゃん、店で気になり買ったはいいがそのあと知らずにほったらかしにし存在をいつの間にか忘れていた、みたいな話。

 誰が死に金なんて作るかつーの。


「まあまあ。と愛理さんあそこに町長さんの住む大きな家がありますよ?」


 話を転換し持ちかけてきたのは、町で少し大きな建物だった。

 両手で開けられる扉が取り付けてあり、仰視すると白々とした縦長の家が建つ。

 なんだあの家。


「暇ならちょっと行ってみる? ここで文句ばかりたれるよりかはマシだと思うわよ」

「なら行こうかな、挨拶もなしにずっとブラブラするのも住んでいる人に悪いしな」

「……ちょっと待ってくださいよ。あぁもう」



 スーちゃんをよそに私たちはその町長さんの家へと入っていく。



「……内装は整ってますね。側に掲げてあるのは歴代の町長さんが写った肖像画でしょうか」

「見て見て本棚いっぱいあるわよ、一冊ぐらいもらってもばれないんじゃないかしら」


 興味が沸いたのか端に並ぶ数々の本棚を物色しだすミヤリーは、目を光らせながら本を一足先にとあさり始める。

 加えて好きな物を一冊パクろうとしているが……おいこら盗みはよくねぇぞ。いくら本が多いといえどもだ。


 中腰になり、中段にある本を漁るミヤリーに近づく。

 そして私は一言声をかけ人差し指を1本、彼女に注意を促すように戒め。


「だめだからな? いいかミヤリー、何事にも許可って物は必要だぜ、そういうことをやるのはただの盗み……すなわち悪の所業だからな」

「え、あ、いやいやただの冗談よ冗談。なに屈みながら人差し指立ててんのよ」

「冗談なの? ……まじかよ、ガチで受け止めるところだったじゃあねえか」


 冗談とはいえ、目がマジだったから……ややこしい。

 口ではああいうふうに言ったけど、口が開けばなんともだ。RPGに出てくる主人公に対して同じことがはたして言えようか。あの人たちは普通に盗んでいる? けどそこはゲームだからさ許容範囲ってことでいいからノーカンか?

 なるほどわからん。


「おやおや冒険者さんですか、これは変わった一行のようで」


「あ」


 口をそろえて私たちは目の前にいる年長の人へ視線を傾けた。

 少し長めの外套を身にまとい、客をもてなす。

 血相を変えずにこちらへ朗らかな表情で近づくと、気安く声をかけてくれる。

 大丈夫? このあと拉致られて拷問プレイとかされるのでは…………いやこれは私が変なものの見すぎななけだな。


「すみません、お騒がせしてしまって」

「……わ、わ、わ、悪気があったわけではないのですよ! あの人……ミヤリーさんはああいう性格でして」

「ははは。仲がよろしいのですね。いえいえ気にしませんよ、賑やかなのは元気でけっこうなものですから」


 快く私たちを受け入れてくれる。

 なにこれ、あえて卑下されているとかではなく、本心なの?

……ていうかこの人誰だよ。


「その、すみません。私のしつけがなかったもんで。あいつにはあとでキツくいいつけて……」


 睨み付ける。

 フーフー。

 とはぐらかすように口笛を吹くミヤリー。

 あーあこれは少し痛い目にあわせないとダメなやつですね。


「私は愛理っす。その……」

「私ですか? あぁこの町の町長です」


「え」


 一同冷めたような風が吹いたように一瞬固まる。

 死んだな、これはと。


「立ち話もなんですし……奥の部屋で話でもしませんか。……いえそんなに重々しい顔をしなくても、決して怒っているわけではないので安心してください」


「は、はあ。ありがとうございます」


 町長さんに招かれ付いていくと大きな大扉を開け、その中へと入るのであった。

 だんだ、これ。涼しい顔で大丈夫ですって答えているけれども……このあと厄介なフラグが待ち構えているのでは。いやそんなことはない……。

 と願う私なのだった。



☾ ☾ ☾


 奥の方へ入ると、応接室のような場所に入る。

 少し歩いた目と鼻の先には、両向かいにはベンチが置いてあった。


(まあさすがに、動物皮なんかは使われてはいねぇか)


 無論、大手企業が立ち会いの場としてよく使う、全体が黒く染まった物ではなく。

 レトロな木製の椅子だった。

 そちらに向かい、ゆっくりと腰を下ろし互いに目線を再度合わせる。


キィー。


 控えめな音が座ると同時に響いたがそれも一瞬のことだった。

 だが古めかしいその音に対して、本体はとても陳腐な物とは思えないほどの固さだ。

 手入れは欠かさずやっている証拠かな。


「ちょっと愛理さん、あまり興味本位で椅子は揺らさないほうが」


 半分軽い気持ちで椅子を揺らしていると、シホさんに困惑された顔で注意される。

 あぁいやシホさん、悪気があったわけでは。そのKYな私ですまん、つい昔のクセでやりたくなる衝動が……コホンコホン。


「すまん、無意識的にやっちまって。……すんません町長さんぶしつけな態度で接するこのクソうさぎを許してください、なんでもしますから。なんなら教祖的なうさぎ教とかを作ってもいいんですよ?」

「ほっほ。愛理殿は悠長に話しますな。いえいえ構いませんよ気になさらなくとも大丈夫です」

「……心広いのですね」


 こんな場所に私たちを呼び出したのは、ただ単に呼び出したというわけではないように見える。

 私たちに振る舞っている笑顔の裏側に、何かしら不安な様子も見て取れる。その証拠に数分に1回は嘆息。

 なにかあったのだろうか。


 一通りあいさつをやり終えると、数秒消沈。

 沈黙とした空気がよぎる。

 なにか話題を持ち出さなければ。


 と両隣に座り込む仲間の方を見れば、私を執拗以上に睨み付けてくるし。

 え、お前が余計なことしたからこの場は自分でなんとかしろって? そんな顔しているけど……あぁもうわかったよやればいいんでしょ。

 仕方なしに自分から気になる要点を問うてみる。


「ところで、私たちになにかご用ですか? さっきから少し困っているような顔にみてますけど」

「ふむ、実は少し困ったことがありましてな」


 私が切り出すと、その困った様子が徐々に浮き彫りになってくる。

 沈んだ顔をそのまま露わにさせると、助けを求めるかのように伝え。


「そのひとつ頼まれてくれませんか。村から少し歩いたある遺跡にその問題がありまして」


 遺跡?

 なにか祀っている場所かなにかで。

 少々問題に直面してそうだしここは。


「そのよかったらききますよ。このうさぎわりと顔が利いたり」


 と急に立ち上がって自ら親指を自分の顔へと向け図に乗り出す私。

 完全にこれは私の悪ノリなので深い意味はありません、どうか自重して。


「おぉそうですか! どうかとためらっていたのですが……実は」


 私たちはその町長さんの願いに耳を傾け、問題の場所となる遺跡へと向かうのだった。

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