221話 うさぎさん達とヘンテコな国 その5
【遊ぶことが平和的解決法? 友だち誘うなら多人数で喧嘩しないようにプレイしよう】
さてFLA略してフラをすることになったわけだが。
「へぇ愛理、今度は盗賊に襲われて20金貨奪われるだって」
「まぢでもう勘弁して。さっきからクソばっかひくんだけど」
「……前はなんですっけ、国が崩落してギルドから数百大金貨を支払うハメになりましたよね」
ルールはいたってシンプル。
私がしていた人生ゲームと大して変わらない。
各々自分の分身となるコマを取り、資金稼ぎするゲームだ。
各ターンに進めるマスは、番となるプレイヤーが近くにあるローターを回しそれで移動マスが決定するというもの。
だが普通の人生ゲームと違うのは、移動マスが任意のマスだということ。
たとえば。
「私の番ですね。……6。えぇと6マス目は毒の沼があるので5マスだけ進むことにします」
6マス出した場合6マスまで進め、残ったマスは次の自分のターンへ持ち越すことができる。
この場合シホさんは今6マス中今、5マスだけ進んだ。つまり次彼女が動く時2マス以上は確実に進めるという少し優しめな人生ゲームとなっている。
だが害悪な敵の残っている進みマスを奪うとかいう、悪質なマス目もあるので結局は運に左右されやすいのだ。
で今私はどういう状況かというと。
進みマス0、資金はマイナスを下回っている。
スカなマスをなぜか連チャンで引いてしまい、マルガリアン女王に先ほどから嘲笑われている。
ちくちょう、バカにしやがって。なんだよ、肘つきながらおぉあわれあわれと言いたそうな顔は。
まだだ、まだ逆転の余地はあるはずだ。
あと忠告しておくが、時々ダメージマスも出てくるが、このゲームにおけるダメージマスは資金を失う意味になる。
死亡するだなんてことはまずないが、自分以外のターンを迎えるたびに資金を失うというクソ仕様。
おかげで私は風前のともしび。これでどう戦えと。
「……商人を助けお礼として10銀貨をもらう。ほうほうとてもついてますねぇ」
「スーちゃんだったっけ? きみすごいねー、私より多くの資金集めるだなんて。私よりとても多い」
着々と各々私を含めこのゲームに溶け込んでいき。
中身は支離滅裂ではあったものの、みんなガチになって自身の資金稼ぎへと没頭した。
私は相変わらず最下位。1度、多めの資金を得られたがシホさんに即座に掏られた。あ、私の30大金貨どこへいった。
そしてゲームが終わる頃になると、かすかではあるが女王がくすりと少々笑い顔をみせた。
表面上小馬鹿にしつつも、個人的に満足してなにより。……言動が気に食わないことは口にしないでおく。
「いやーありがと。1人で退屈してたからさ、満足満足」
「楽しくやっていたより私はこのゲームの闇を味わったよ。最終的に『魔王の地獄の業火により土地がすべて焼き払われ、さらに多額の借金を背負う』だなんて。もう借金生活は懲り懲りだよ」
「今回ばかりは愛理に運がなかったとしかいいようがないわ。うん、相手が悪かった」
「それ、慰めてんの?」
バカにされている有無はともかく。
女王は大変満足したようで、私たちのほうに向き直ると。
「こほん。で、約束どおりーハゲの魔法解除するよ。あなたたちと遊んで気分がスッキリしたからね」
「そんなあっさり」
もうちょっと粘ろうや。とも思ったが私によく似ているものだからそんなこと言う気もなかった。重々理解できるそんなことを自分に言い聞かせて。
「まあね、これ以上国に苦情だの、テロだのモンスターの襲撃にあうだなんてもういやだし」
「ありがとうございます」
女王は近くに放り投げてあった(ちゃんと立てろ)杖を手に取るとそれを一振り。
またたくまの光が輝くと、一瞬でそれは収まった。
え、もうおわったの?
「これでいい? ハゲ騒動ももう聞かなくてすむねー。あぁそうそう遊んだお礼にあのフラの予備を1つあげるよ。あと旅に必要な物の数々を」
玉座の後ろに大きな宝箱がいつの間にか、置いてあったことに気付いた。
あのゲームをするのは……返す言葉もないが。他はいろんな物が収納されていた。
金目の物から、ネムココチ枕(快眠できる物?)、高そうな鉱石。なんだよ、付き合ってやっただけにこの高価な報酬は!
私の苦労は少なくとも無駄ではなかったらしい。これが土1tとかだったらぶん殴っていたかもしれない。
「ありがとうございます。すみませんね無理なお願いをしたばかりに」
「どうってことないねー。それに国崩落だけは避けたいってのもある、不評なものは取り除き撤退させるこれが最前だと思うしー」
消去法ってやつか。
でも単に心のないダラら女王かと思ったらそうでもなかった。
バカにされたことはともかく、実は悪くないかまってちゃんなのかもしれない。
としたら次来る機会があったとして、その時は泣かすまでゲームに付き合わせてやろう。
こうしてハゲの国、マルガリアン王国はハゲの呪いが解かれ。
人々は大切な地毛を取り戻した。
女王は後日、これからの国を安定させるべく、市民の意見も聞き入れつつ安定した国を築いていくといったらしい。
やるとは言っていないが、それも彼女らしいことではあるかもしれない。
そんないかにも頭のおかしい国をあとにしながら、私たちは次の国へと向かうのだった。