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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第2章 うさぎさん達、再始動イン大きな一帯へ
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217話 うさぎさん達とヘンテコな国 その1

【スキンヘッドの入射角は矢継ぎ早のごとく】


「あれですかね?」

「でっか、金箔塗装がやたらと目立ってるけど……にしても派手じゃね」


 しばらく歩みを進めていると。

 城壁らしき1つの一角が見えてくる。

 石英建築の建物が中には林立しているようにたたずんでおり、目立つようにどの建物にもやたらと金塗装が施されていた。


 なんだよもう、傲慢な貴族かなにかが住んでいるんか?

 遠目から見てうわべはよく整えられているのだが……なんだろうこの胸騒ぎ。フラグセンサーが機敏に反応しているんですが⁉


「……国はガイドによると、多額の財力、権威、政治ありとあらゆる権力を持つ王国らしいです。聞けば下民の者にはしきたりをつけているんだとか」

「それって大きなヒゲを生やしたじいさんが、よりよい国のために~うんぬんみたいなこと言って安定できるようなルールをきっとつけているのかな?」


 とかく大金持ちだということは重々理解した。

 だからってあんな金メッキなんて目立つものを施すだなんて、はたから見たらどうぞ狙ってくださいといわんばかりの国。

 モンスターあたりに狙われていないか気になる面々も多少ある。


 だがスーちゃんはかぶりを振らず。


「……あ、いえ。その」

「どうしたの? また恥ずかしがっちゃって」


 少し言いづらそうに腰を揺すらせる。

 くぐもった声で少し顔を紅潮させ唇を震わせていた。


 なに、どうしたの。そんな薄い本でよくあるような『雨降っているからラブホで少し雨宿りするか』みたいなお約束なセリフを切り出せなさそうな様子は。

 いや、スーちゃんに限ってそんなことはないだろう(推定だけど)。

 状況的におかしいし、深く懸念する必要はないでしょ。


「……その愛理さん、現在は幼い少女がその国王を担っているみたいですよ」

「ふーん…………そ。え? 今なんと」


 あれ聞き間違いかな? ロr……こほん少女がこの国を仕切っていると? ……パーカーの故障か、ついに中古品になっちゃったのこの服!!

 AIさんからの回答。


【AI:(壊れて)ないです、正常値100%なので正真正銘、劣化はしてはないかと】


 なるほど正常なのですか。

 でもスーちゃんの言ったこと念入りもう一度聞いておくよ。ほら、空耳聞き間違え……というのもあるしね。


「……ですから10代ぐらいの女の子です、理由はよくわかりませんがこの国の統治者らしいです」

「10代でそんな座位に? まさか天才なのですか」

「いや案外セコ技でも使って……」

「お前だろそれ」


 私が水を差すと苦虫を噛み潰したようでこちらを向き。

 おやおや、ミヤリーさんまたかよって顔してますね。

 しかしいつもながら私の文句に耐久のないミヤリーは、ぐっとこらえたかのように顔立ちを元に戻す。……あれ紙耐久卒業した。


「……私はそんなことしないわよ? 誰が料理の中に入っていたピーマンを残すだなんて」

「それミヤリーさんのことですよね?」

「い、言わないでよもう!」


 ミヤリーは自分の嫌みを握られるとはにかむ様子を見せさせる。

 あ、そうだこいつよく野菜嫌ってるからな。よし今度無理矢理食わしたろ。……窒息? 大丈夫こいつの残機は実質無限だからな。


「で、でスーちゃん? この国の名前なんて言ったっけ?」

「……ああ、えぇとですね」


 スーちゃんの言葉をじっと見つめながら待つ私たち。

 胸に期待感を抱かせながら返答を待つ。

……そういや、変な名前してなかったっけ。

 と考えていたらスーちゃんが国の名前を言ってくる。


 その名前は。


マ ル ガ リ ア ン 王 国


「へ? なにその名前」


 こうして私たち一行は、そのヘンテコな名を持つ国へ入ることを試みたわけだが。

 私はこの時、気づかなかった。

 この国のしきたりがとち狂うっているほど、あたおかだったということを。


☾ ☾ ☾


 城壁の門へと近づく。

 堅牢な石積み建築の要塞は真上から見ても壮観だった。

 何度首を傾けてもそれは広い面積をとっているせいか、首が痛くなってくる。


 いてて。

 無理に首を曲げるべきじゃなかった。

 にしてもでかすぎでしょ、所々空洞のようなもの見えるけど強い魔物かなにかに狙われてんのこの国。


「首曲がりません? そんなに曲げてたら首が元に戻らない……かもです」

「いや、さらっと笑いながらエグいこと言わないでくれる⁉」

「……はいはいみなさん御託はいいですから行きますよ」


……スーちゃんの言葉に催促されながらも、私たちは国を守る門番の前へと立ち会う。

 こわばった顔はまるで三国志にでも出てきそうな渋顔。

 安直な理由ではすんなりと通してくれなさそう。


……そういえば、メッタウチ無双時間忘れるほどたくさんやったな。

 歴史はあんま知らないけど、狩るのに夢中になってたり。

 おっといけないぼーと突っ立っているのもよくない、ちゃんと冒険者カードの提示しないとね。


「なんだこっちをじっと見て」

「あのDQNやめろ……やめてください。はいこれ」


 とがった槍を突き立てられたが、即座に冒険者カードを差し出して門番に見せた。

 シホさん、スーちゃんとミヤリーと続いて提示させると門番の顔は次第に和らいでいく。

 いや、最初っからその顔でやってくんない?

 日本の武士ではあるまいし『成敗してくれる!』なんてことになったら、とんでもない汚名をかぶせられる羽目になってたんじゃ⁉


「おっとすまん。今週99万と2200万の軍勢を相手にしていたからつい」


 ん? 今なんと。

 数字おかしくね。

 あまりにも尋常でない、数値を聞いた私は門番さんに顔を近づけ。


「え、なんじゃその数値! 今週って矢面にされすぎでしょ、ていうかその今週ってなに? 今月の間違いではなく?」

「あいや誤りはない、俺たちは毎日国に来たやつを記録してるからな」

「いやいや、別の国じゃ週1でそんな数にたっしねーよ⁉ 魔物の界隈はブラック企業ですかぁ」

「……ブラックキギョウ? 愛理さんいいですからお気をたしかに」


 仲間になだめられるも、やはり納得いかないなその数値はよ。

 万っておかしいだろ。それもう戦争レベルと疑わしいレベルだよな。

 でもそれに今まで亡国せず耐え抜いた、この国の強度さには度肝抜かれたが。

 いやおかしい、絶対おかしいゾその数値。


 全身甲冑とフルアーマーモード全開の門番さんだが、もしかして……だけどさその軍勢この人が1人で……なーんて。


「まさかと思うけどさ、そのモンスターおじさん1人で倒しちゃったりしてる?」

「キミは低脳か? どこにそんなマヌケがいるというのだ。そんなおかしいヤツがいるのなら1度、謁見したいものだなハッハ!」


 おかしいのはこの国とこの領土に住む全モンスターだよ。


 とかく、無事手続きが終わると城門を開いてくれる。

 今回は下から上へと開くスライドタイプだ。

 巨大な城壁だから、扉を収納する箇所ができたのかな。

 大きすぎる、というより非常に大きすぎるんだよこの国はよ、だから狙われているんじゃ。

 狙われた国マルガリアン王国。もうやだこの国私、明日から住めって言われても断固拒否するからね!


【愛理は自己主義なファンデッドラビットの称号を獲得した!】


 いらねーよそんな称号! てかなんだそのファンデッドって。1回ひっかいただけで血だまりがたくさんできそうなR15指定されそうな名前みたいだな!


「ほらそこのかわいい魔法使いさん、これを持って行け」

「……あはい。ガイドですかありがとうございます」

「いいですか無償でもらっちゃって」


 スーちゃんへ投げ渡されたのは、手帳サイズのガイドだった。

 厚さは中指と親指で挟めるぐらいの分厚さ。

 子細な情報がぎっしりと詰め込まれているだろうが。

 ゲームの完全攻略ガイドじゃあるまいし、説明するだけでそんな文字数食うものかよ?


「じゃあいくわよ、それじゃ門番さんまったね」


 城内に私たちが入ろうとしたその時、門番は呼び止めるように助言してくる。

 なんだろう、振り向かずこちらを見送って。


「いいか、目に入ったものを見ても驚くんじゃねえぞ」

「? それはいったいどういうことですか」


 先急ぐスーちゃんに続いて中へと入る。

 いやここぞって時に聞くべきこれは情報だというのに、あぁもう早く聞けなかった私の失態じゃあないか。


「なんじゃこりゃ」

「愛理……私夢でも見てるのかな私」

「おい、しっかりしろミヤリー! 朝だぞ現実だぞ是が非でもこれは正真正銘のリアルだぞおおおおおおおおお! 起きてくださいよミヤリーさぁん!」


 と正気を保てなかったミヤリーの肩を必死で手で揺する私。

 え、なんでそんなことしてるかって?

 普通じゃないの? あまいよみんな。


 この国完全に狂ってました。


「なんで、街歩くみなさん丸坊主なんですかね?」

「……1本も生えてない…………ですと⁉」


 仲間が立ち止まって思わず声を張り上げてしまうのも無理もない。

 美人が住まう国、そんな見果てぬ夢誰が見ようか。

 正直、この国に入ってようやくその門番の言葉に納得がいった。

 いやどちらかというと、あの時立ち止まらずそのまま、立ち去ったほうが賢明だったかもしれない。

 この国はというと。


「「なんでみんなハゲばっかなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ‼」」






 お気の毒ながらも、この国に住まう人たちはほとんど。






 ()()()()()生やしていなかったのである。




 な、なんじゃこの国。

 私の眉毛はおかしさを悟るように上下に動いていた。

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