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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第2章 うさぎさん達、再始動イン大きな一帯へ
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215話 うさぎさん達と雪中に佇む国 その2

【寒さしのぎにはあったかいものが一番】


 スノーミアのある店にて暖を取っている私たち。

 スーちゃんがだいぶ調子を取り戻してきたのか、話を切り出す。


「……みなさん、すみません先ほどは情けない姿をさらしてしまって」

「いや、別にいいよ。こんな寒さじゃあ気がさすがに参るよね」

「……愛理さんは元から寒くなさそうに見えますが」


 こんな格好だと、寒いようにはとても見えないよな。

 マジレスしながら言うスーちゃんは、口元をムと膨らませて羨ましくこちらを見てくる。

 ガンつけしてくる様子がなにかと殺気を覚え……なんかごめん。


「ところで、これからどうします? ここをすぐ抜けて平地にでも出ますか?」

「そうね、スーちゃんがかわいそうだし私は賛成だけど」


 ここを抜ければ平原に出る。

 寒さとおさらばできるわけだが、せっかく来たばかりなんだ……どこか回りたい気持ちがあったり。


「あぁ愛理さん」

「? シェリーさん、どうかした」


 一通り接客のおわったシェリーさんは、私たちの会話へと入ってくる。


「今ね、巨大な氷が道を塞いじゃって迂闊に通ることができないのよ。そのせいで平地に行くことさえできないって感じで。冒険者達が頑張ってはいるけど、ギルドの情報によるとあと3日はかかるって言ってたわ」


 マジかよ。

 簡単には通してくれないとか、そういう足止め系のイベントだこれ。

 あんぐりとした顔で彼女をまじまじと見ていると、待てと手招きしてくる。


「そんな苦い顔しないでよ愛理さん、あ、そうだこれ」


 シェリーさんは、私たちに人数分のある服を渡してくる。街の人たちが着ていた防寒具だ。

 手渡された物をいざ、触ってみると保温に強そうな分厚い材質のように感じられた。重さはそこそことありとても頑丈そう。

 マジもんの皮服ってこんな感じなのか。RPGの序盤あたりでよく安売りされているけど……意外と重量あるんだな。


「それあげるよ」

「え、いいの? めっちゃ高そうな見た目してるけど」

「構わないわよ、その子がとても寒そうだし、それはみんなにあげる。困った人は放ってはおけないから」


 なんだ、気前の良い聖人か。


「……いろいろとすみません、厄介になっちゃって」


 ありがたくその防寒着を受け取ると礼を1つ述べる。

 まじでこれ神対応じゃん、防寒着セルフとか私たちからしたら神の恵みのような存在。シェリーさんには感謝しないとだな。


 それはそうと、3日かぁ。

 待てなくはない……けどすぐ行けないのがなにかとむむむって感じ。

 できれば1日でも早く抜けられればいいのだけれど、()くように聞いて『はいそうですか』と頷いてはくれなさそうだ。

『『知るかボケーーーーーッ!』』なんて言われたら、私たちは単なる妨げ他ならないだろうし。さてどうしたものか。


 待てよ?


 ……冒険者たちが必至でその氷の塊を壊しているんだね?


「どうしました愛理さん?」


 少し考えていると仲間が声をかけてくる。


「あ、そうだ愛理」

「なんだよ急に、人が考えているって時に」


 唐突に考えている私に対し、ミヤリーがなにか閃く。

 私の肩に手を乗せると詰め寄り。


「どれぐらいの大きさあるか知らないけど、あんたならなんとかできるんじゃない……ほらガツンと!」

「おい、無暗にこんな公衆の場で素振りすんな!」


 ジャブのような動作をしてみせる。手を引いて右、左と交互に拳を放つ。前に敵がいるかのようなふるまいはミヤリーらしからない動きに少々人相を疑ってしまう。なんというエアプレイだ。おいこら他の人に当たったらどうする!

 ん? 待てよ。ジャブ……当てる。


 当てる……パンチ。


 そうだパンチだ。


 あったじゃないか、簡単な解決策が。


「さんきゅーミヤリー」

「私はなにも言ってないけど……なんか閃いたって感じの顔してる!」


 私は再び、シェリーさんに声をかけて聞く。


「ねえシェリーさん」

「ん? どうしたの」

「その、氷どこにあるかな。もしかしたら解決できるかもしれないよ」


 私はシェリーさんにその場所を教えてもらい、仲間たちと共にその場所へと向かうのであった。


☾ ☾ ☾


 シェリーさんに教えてもらった所に行くと。


「うわぁ、なんじゃあの高さは」


 街の外へ出て少し歩いた先。

 そこには緑豊かな平原


 ではなく。


 巨大な氷の壁が行く手を塞いでいた。

 よじ登るにしても高低差はだいぶあり、1歩踏み外したら即死しそうな秘境だ。

 さらに詰め寄ると大きさの迫力は増長し、それはまさしく圧巻であった。

 城に建ちそうな城壁並の高さはあるぞこれ。……かき氷何個作れるだろうか。

 あいや、そんなことしたら腹壊すって。低脳すぎワロ私。


「……大きいですね。巨大モンスター並の高さはありますよ」

「ならここは私がぶった斬っ……愛理さん?」

「頼むからやめてくれ! 周りの人が大怪我するからね!」


 所構わず大技を使おうとしたシホさんを制した。

 いやたまったモンじゃあない、あの技ウルティムソードは威力こそ調整できるものの、威力はそれでもなお危険な技……言わば諸刃の剣とも言える。


「いいか、シホさんそれだと私たち荒し扱いされるから……おk?」

「アラシ? ……嵐? 風なんて吹いてませんよ」

「いや違うって! 私が言ってるのは荒らすヤツのこと言ってるの! ……威力のあまり賠償金を払う羽目になって借金を背負ってしまった……みたいな作品私よくみたことあるからさ」

「えぇと愛理なんの話?」

「いや、理解しないでいいっす」


 またゲームの癖が出てしまう。

 そっか荒しの言葉ここだと定着してないんか。

 あるサンドブロックのゲームやってたら。

 急に野良の荒しがやってきて、私が数時間かけて作った嫁のドット絵を跡形もなく破壊されたことがあるんだが、あん時まじでMK5(マジギレ5秒前)だったからな。おうおう思い出したくもない。


 周りには大勢の冒険者が(つど)っている。

 彼女の力量ならば、こんな壁即座に破壊してくれそうではあるが、被害甚大となれば他の冒険者からなに言われるのやら。


 シホさんが元々馬鹿力持ちの脳筋子ということは十二分に承知だが、今回は事が事なのでここで止めることが賢明だろう。


 周りは五十、百以上もいる冒険者たちが歩きながら策を練ったり攻撃してたりしているが。


「ファイアッ! くっそ俺の黄金級の神罰銃(ゴールデン・バニスト)が歯が立たないなんて!」


 全身金メッキをした、あたかも投資で作ったように見える自慢銃の銃が、真価を発揮できずその場で膝間ついて嘆く銃士の人。

 どれだけ誇り持ってんだよ。


「フレイア! フレイア! だめ、全然溶けないわ。……私の計算は間違ってたというの⁉︎」


「……私でもあんなに自分を過大評価なんてしないのに……あの魔法使いなんてなりたくないですね」


 魔法使いやらさまざま職業に座っている冒険者がチラホラ、ご苦労なことだぜ。


「おや、あなた方は違う大陸から来た冒険者ですか?」


 1人のギルドのお姉さんらしき人が駆け寄ってきた。


「はい、こちらの先に進みたくて……苦戦していると耳にして少しでも扶助になろうかとこちらに来たのですが」


 淡々とシホさんが説明してくれる。


「そうでしたか、それはこちらとしては願ったり叶ったり(ネガカナ)です!」


 なんなんだその略称の仕方! ここの方言もしくはスラングに代わるなにかかな⁉︎

 うんわからん、みんな本当に申し訳ない。


「さ、さこちらへ詳しい話はあちらでしましょう少し狭いですが」


 近くにあった拠点と思わしきテントへ招かれ、私たちはその中へと入っていく。


「暖かいわね、ここ。スーちゃんおいで、こっちあったかいわよ」


 近くにあったストーブらしき所へと行き暖を取ろうとするミヤリーとスーちゃん。

 充電中の2人をよそに私とシホさんは長テーブルへと座り彼女の話に耳を傾ける。



☾ ☾ ☾



「えぇと、つまりあれって異常気象で作られた産物ってこと?」


 腰かけて話を聞くと、どうもあの氷壁は自然に生成された物らしい。

 毎回この一帯に住む住民はあの壁に苦しめられ、行き来することがこいつが現れると困難になるようだ。

 今年は例年より大きく街の人々は大騒ぎして、普段より人員を多めに取ったわけだが。


「でも結果的に多めに派遣しても進展なしというわけですか」

「はい、尽力はしているつもりですがあまりにも硬く……はぁ」


 もはや手詰まり状態なのか、ギルドの人は憔悴しきったような感じで脱力状態に陥っていた。


「事情は把握したけど……も」

「ここでやらないとうさぎがすたるわよ、愛理是が非でもやりなさい!」

「なんだよ、その言葉〜異世界で流行ってるスラングかなにか? ……まぁいいや」


 うさぎがすたるってなんだよ。初めて聞いたよそんな言葉。


「わかりましたよ、やるよやりますよその壁この私がワンパンしてやりましょう」

「へ? ワンパンとは。……助力してくれるんですか⁉」


 泣き崩れしていたギルドのお姉さんが顔を上げる。

 転換早。とそれはさておき。


 壁の中心部へと案内された私たち。

 周りから注目を集められているが、愛理さんは気にしなーい気にしなーい。


「そのこの辺だと大丈夫だと思います……試しに攻撃してみればわかると思います。び、びくともしないので」


 私は軽く拳に力を入れて。


「あっそ、ではお構いなく攻撃してみよっか! ラビット・パンチ」


 拳に力を入れ壁に向かって攻撃すると。


 ズドォォォォォォォォォォォォォォン!


 周りを覆っていた氷の壁は崩壊していき、その断片が下へと落ちていく。

 慌てて、近くにいた冒険者たちは後ろに避難して後ずさりをする。


……はい、破壊しちゃいました。


 後ろを向くと驚いて言葉を失ったお姉さんの姿が。


「あ……あ……」


 あのみなさん、驚愕して白目むいちゃってるんですけどぉぉぉぉぉぉお!?

 おそるおそる声をかけて生命確認をし。


「そのびくともしないってなにが?」


 卑下するかのように彼女は視線を落として小声で答えてくる。


「あ、訂正……しますびくともしないように思っていたみたいです」

「いや、そんな私を怖い顔で見ないでよ」


 軽く力を入れただけだというのに、その氷壁は私のパンチによって一瞬にして破壊されたのであった。


☾ ☾ ☾


 一瞬で問題解決したわけだが。

 国のギルド、王様から多額の報酬金をもらった。

 そんな大したことないんだけど、程度がすぎたのかこれ?


「その愛理殿」

「あ、はい」


 ぶす


 横からミヤリーに肘打ちされる。ちゃんと場を弁えろって? ……わかったよ。


「ワシらの国を救ってくれて光栄に思うぞ。そなたら一行に50金貨を贈呈しよう」

「どうも……ありがとう…………って50金貨!?」


 日本円で50万円……ゲーパソ買えるじゃねえかああああああ!

 あまりの高額に驚き。


「いいんすかこれ!」

「ワシにとって安いものじゃ。それにおぬしら海を渡ってきた者じゃろう? ならばそれなりの報酬をやらんとだめだと思ってな」


「……太っぱらな王様、お金は大した価値に値しないというわけですか」


 と横で小さな声で喋るスーちゃん。

 私が手に取ったその金貨が入った布袋を片手を差しのばしたのち……反対の手で押さえ抑制する。お金には目がないのか?


「時に愛理殿、次の当ては決まっておるのか?」

「近くの国に行く予定です。どこかはまだ定まっていませんが」


 愛理さんは風任せです。


【AI:ぷす】


 笑うな。


「ならここはひとつ、ワシから行き場所を1つ提案しよう」

「と言いますと?」


 シホさんがそう聞くと、王様は1つ咳払いをし。


「この向こうにマルガリアン王国という国がある、そちらに行くといいじゃろう」

「まる……なんて?」


 ドスドス。


 あぁもうわかったって。今のはあまりにもびっくりしたからとミヤリーのほうをにらむ。


「なんですかそのいかにもば……独特な名前の国は」


 稚拙な名前とか言っちゃだめだよね。


「その国はな、交流はないんじゃが独特なしきたりがあるようじゃ。……もし時間があればそこに行くがよかろう」

「ありがとうございます、いってみましょうかね」


 せっかく勧めてくれたので、ありがたく次の目的地へとそこを指定。道すがら少し観光にはいい気がして行くことにした。

 国をあとにして、平原へと足を踏むと。


「どうしたんですか? 愛理さん」

「……難しい顔してらしくないですよ」

「あ、いやなんでも」

「変なの」


 名前からして、いかにもこのにおうあたおか臭はいったい。

 変な国でないことを今は切に願おう、いやまじで勘弁してよって。

 いかにもおかしすぎるとは言えない、だまりこくる私なのだった。

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