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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第3章 うさぎさんと棺桶に眠る少女
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21話 うさぎさん達海上戦に参る その1

【朝日が昇る時間は重労働の始まりだ】


 次の日。

 朝日の光に照らされながら街中を歩く。

 街の辺りを一望できる景勝地まで歩みを進めると、ロータリーの噴水から綺麗な水が溢れているのが見え、浜辺の方面には波音を立てながら動く大洋が広がっていた。


「それで、今日は昨日のクエストをするということでいいんですかね?」

「さすがシホさん、理解が早くて助かるよ。もちろんそのつもり」


 ただ観光にこの街に来たわけではない。

 そう、クエストついでにここに立ち寄ったのだ。

 本来の目的を忘れていたわけではないので、そこを理解してもらいたい。

 本当は昨日のうち日帰りで見て回ろうと計画したのだが、余計な昨日の絡みによってそれが打破された。


 もしあのようなことがなければ、今頃私達は任務を達成しリーベルへと帰っていたはずなのだが。余計なお荷物が増えてしまったせいで、普段のスケジュールより逸れたものとなった。

 そう今、横で私が引きずっているものがなによりもの証拠になる。


「約束どおり、蘇らせてくれるんじゃないの?」

「そこは愛理さんのご都合主義ってことで。あなた、すぐ死ぬからいざという時に蘇生薬使って復活させることにした」

「それはないでしょ! 決して狙っているわけじゃないから早く蘇らせてよ」


 本当にそうなのだろうか。私にはミヤリーが自分の呪いを逆に利用し何かしら企ててたりと……少し考えすぎかこれは。

 でもHP1の縛りプレイってやっぱキツいですよ奥さん。

 心底呆れながらも、私達は受けたクエストを達成すべく向こうの浜辺にある海へと向かうのであった。


「まあいざという時は出してあげるからさ。……念入り蘇生薬は爆買いしといたから」

「できれば、今使ってほしいんだけど」


「だめです」

「だめです」


 口を揃えミヤリーの復活を拒否した。

 悲しいけど金欠防止のため、これは仕方のないことなんだよミヤリーさん……我慢しろ。


「なんでよーーー!」


 棺桶の中からは少女の泣く姿が頭に浮かぶ。

 いいから大人しくしろっつてんだろ!

 話し続けても埒があかないので、私は彼女の声を無視して目的の場所へと足を運んだ。


 マリン・タウンの向こうにある浜辺。

 海面には中くらいの大きさの岩がいたるところに立っている。さすがにテトラポットはないが、堆積となっている岩が代用を担っている。


 とても強そうなモンスターがいるとは思えないが、ゲームにいたる所にある罠同様に最善の注意を払い最後まで気を抜かないことにする。

 初見殺しとか嫌だしね。


 私とシホさんが受けたクエストは、この海に潜むモンスターを退治してくれという依頼だった。

 話に寄れば、小型から大型のクラゲモンスターがその中にいるんだとか。

 親玉さえ倒せば大丈夫みたいだが、果たしてどんなモンスターなのだろう。

 棺桶から何やら語りかけてくる少女は。


「綺麗な海ね、本当なら泳ぎたい気分なんだけど、愛理がケチだから遊べないのが残念よ」


 棺桶に入っているのにも関わらず、何で見えているみたいな口ぶりするのだろうか。

 まさか透視能力があるのかな。


「なんで綺麗とかわかるの?」

「……ああ言ってなかった。棺桶の先端部分見てみればわかるよ」


 言われたとおり、棺桶の先端部分を見る。……全く変なところは見当たらないのだが果たして。


「実はね、そこに小さな外を見れる穴があるのです。……そこから外の情報を収集しているってわけ」


 僅かだが、見えづらい約1ミリぐらいの小さな穴がそこにあった。

 家やマンションの扉にありそうな小さめの覗き穴だ。

 興味本位で、その小さな穴をのぞき込むとミヤリーの目が見えた。


……棺桶の中なのにも関わらずめちゃくちゃ元気そう。

 棺桶の中って、カプセルホテルみたいに充実しているのかと疑いたくなるのだが、中はいったいどうなっているんだ。


「気を取り直していきますよ。……ミヤリーさんはここに置いておきましょう」

「あ、おいちょ!」


 持っていても邪魔になるだけなので、砂場に置いておくことにした。

 なぁに、置いていても気にされることはまずない。辺りのゴミと同化している、みたいな理由の解釈をもってくれればきっと大丈夫でしょ。


……バッグに収納するのもいいけど、それはかわいそうな気がする。

 だからといい、こちらに放置するのもどうかと思う部分もあるが……いや何もない空間でただひたすら待つよりかはマシでしょこれ。


「そんじゃお留守番よろしく」

「覚えてなさいよ!」


 怒りを飛ばすミヤリーを放置して、2人で海の方へと向かった。


【海の生物は取れたてが一番美味しいと思う】


 海はこちらに押し寄せるように小さな波を作っていた。

 敵はどこから湧いてくるのだろうと、辺りの注意を配りながら一瞥する。

 海辺にある砂浜を歩いているが、一面に映るのは間断なく続く海の景色である。


 異世界の人は綺麗好きなためか、ゴミ1つすら見つからない。

 えー意外、てっきり酒瓶でも散乱しているかと思っていた。

 従って、なんもいない。


「あ、愛理さんあそこ」


 シホさんがなにやら見つける。

 大きな岩の方に、タコのような小型で全身の白いモンスターがいた。……いやあれはイカかそれともタコか。……どっちでもいいが仕掛けてみるか。

 岩の隅に身を隠しながら、ひとまず様子を(うかが)いながら速やかに武器を構えた。


「よし、まずはあれから仕留めよう。見た感じ弱そうだから合図したら前に出るよ」

「了解です」


 お互いに相づちを打ち合図しモンスターの方へと近づく。

 歩一歩を慎重に踏みながら前へ。

 すると図鑑が反応する。


【イカンパス 説明:海に潜むモンスター。浜辺に多く生息し漁師達を襲う】


 漁師さんかわいそう。水産業の事はよくわからないけど仕掛けに行くぞ。

 少しずつ、距離を詰めながら拳に力を入れる。

 イカンパスの前に立ち、拳で攻撃。


「ラビット・パン……t」


 しようとした瞬間に、こちらの動きを察知したヤツは私達の方を向く。さらに岩に隠れていた他のモンスターがわんさかと溢れ、私達を取り囲んでいた。マジかよ。

 いや、聞いてないよ、こんなにたくさん出てくるなんてさ。

 そして攻撃をしようと私達が動き出すと。イカンパスは口から黒い粘液を飛ばしてきた。


 ブシャっ。


 不意打ちにその液体……墨が私達にかかった。

 顔面が真っ暗にされ、視界を塞がれる。そのまま足として付いている触手で払うように攻撃。もろに食らって岩の方へと激突。抵抗ないままそのままダウンしてしまう。


 やりやがったなこの。

 仕返しに立ち上がるが、連発でその墨を飛ばしてきて私に攻撃する隙も与えなかった。

 四方から墨攻撃が飛んでくるので、この場所だと立場が悪いと思った私はシホさんを抱っこして真上の崖へと地面を蹴って上がった。

 ここなら攻撃が飛んでこないので安心。パーカーの跳躍力が高くて助かった。


「いきなりなにするんですか。怖いじゃないですか」

「ごめんごめん。ああでもしないと狙いが定まらないからさ」

「仕方ないですね。……言われてみればそうですね」


 理解してくれたシホさんは、下の方にいるイカンパスを見た。……大体30体ぐらい蟻集を作りながらひしめいている様子が見える。上にいるこちらへと墨攻撃で対処しようとしたが、距離に有限があるせいか途中で落下。届きもしなかった。そっか、距離に限度があるのか。

 あれを一気に葬ることができれば。……うんそういえば。

 あることを思い出しシホさんの顔を見て。


「シホさん、ミドロンの時に使ったあの大技あったじゃんあれ使える」


 そうミドミドロンの時に使ったあの大技。あの技は広範囲高火力を持つ大技でこの場所で打てば敵を一網打尽にできる。

 奥の手は彼女が持っていてよかった。と思ったのもつかの間。


「すみません愛理さん、あの技を使うと体力をほとんど使い切ってしまうので無理ですね。……一応殲滅は可能ですが倒れてしまいそうです」

「ちなみに今空腹どれくらい?」

「これくらいですかね(指で小さいcを作りながら)」


 つまりもう少しでまた倒れると。だったら迂闊に使えないな、使った直後に他の魔物の餌食にされでもしたら彼女が危なそうだし。

 あの大技そんなに体力の消耗が激しいのか。……だったら仕方ない。

 私は銃を構え、イカンパス達が群がる中心部に照準を合わせた。


 引き金をそっと引きながら、頭で高火力の爆発をイメージした。


「ラビット・ショット」


 発射直後、凄まじいスピードで駆け抜けるその弾は一瞬にして地に直撃すると、その一帯を火の海に変え、イカンパスもろとも殲滅した。

 その爆発が起こった場所には大きな穴ができあがり、黒煙が上がる。

 あれ、やりすぎたかなこれ。月でよく観測されている海の比ではないくらいに大きく見える。


「……やっぱりすごいですよ愛理さん」


 横でパチパチするシホさんがとてもニコニコしながら私を褒める。いやよくあんな光景を目の当たりにして笑顔で振る舞えるものだな。

 この威力度合いからして核兵器のレベルなんだが。彼女の余裕さ一体どこからくるのだろうと心から感じるのだった。


【海の生物をおびき寄せろ】


 浜辺の方に戻り今度は海側を見渡した。

 この海の底にモンスターがいるらしいのだけれど、それらしき姿は一向に見当たらないのだが、はていったいどこに。


「その海を脅かしているモンスターってどこにいるの?」

「何言っているんですか、当然海の底ですよ」


 まあそれもそうか。普通の人からすれば息が続かず溺れ死ぬだろうね。

 息が続かずそのまま水死とか、端から見たら自殺行為だよなこれは。

 じゃあ、どうやって倒すのさ、なに水面の水を全部吸い取った後に殴り込みに行くとか? それなんか漁師の人にとても迷惑なんじゃ。


「じゃあそいつをどうやっておびき出すの?」


 すると、シホさんは袋から頑丈な縄を取り出す。罠か何か仕掛けるつもりか。

 厚みのある縄だが……釣るのかそいつを。


「これをある程度の長さに切って、食べ物を縛り付けます。……そして海の方に垂らしてつければ……あとは待つだけですねひたすら」


 やはり釣りじゃあないか。そんな時間を潰すほど私も暇ではないんだが。

 他に解決策はないかな。策、策、策。


 ……。


 水中呼吸ってできるかな?

 このパーカーに、そんな便利な機能があるとは到底思えないが、あるのかそういう能力。

 だって、固有能力と共有能力にそんな情報全くのっていなかったし不明瞭だ。

 ひとまず聞いて。


【できません】


 はい儚くも私の希望はAIさんの投げやりなセリフによって否定されました。人生そんなに甘くないということが証明されました。


 まあですよね。と諦め策を講じようとした時、AIさんが続けて画面を出してくる。

 今度はなにさ。


【前に倒したモンスターの素材を使って新しいパーカーを作ることはできますよ。それを使用して作ったパーカーならば水中移動できます】


 ……前にそんなモンスター倒したっけ。


【ミドロンの水分】


 素材の一覧を開くとこの素材が出てきた。

 あ、そういうことか。…………これなら潜って戦えるかもね。よし。

 私は立ち上がりシホさんより前に立つ。


「愛理さんどうしたんですか、急に立ったりなんかして」


 彼女の方を振り返って答えた。


「シホさん、この攻略方見つけたかも」


 AIさんの言葉を信じることにし、新たなパーカーの生成に取りかかろうとする私なのであった。

こんにちは皆様お昼をどうお過ごしでしょうか。

私は執筆する時間にひたすらふける毎日です。

さて海での海での戦いを描きましたがいかがだったでしょうか。

書いていて思ったのですが、愛理の跳躍力やばいなと思った次第です。

次、新しいパーカーが登場です。予定なんですが今着ているアサルトとは違う色のパーカーになります。性能も少し違うぐらいですが、次回もお楽しみにして頂けると嬉しいです。

それでは皆様、また次回お会いしましょうではでは。

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