213話 うさぎさん達、雪原を踏みしめて
【雪道には気をつけて進め】
山を抜けると雪原が広がっていた。
少し向こうを見渡せば、雪のない平原。と言っても山地だが。
スーちゃんによるとこの先にある、とある国を横断しないと行けないらしい。
「それでスーちゃん、その国経由すれば雪原抜けられるんだね?」
「……はい、スノーミア王国、山地地帯の王国のひとつで、かつて暖を取るために仮拠点として建てた場所だったんですが雪の中に安全な国でも作ろうという方針が立ったみたいです」
パーキングエリアみたいな。
でもこんな寒い雪道なんて、マッチが何本あっても足りなさそうだし建てない理由も見つからないよね。
「雪道には冷たい系のモンスターが出てきます、用心して」
「冷たいかぁ。フレアで凌いで……って燃え尽きたら意味ない……どうしよう」
「愛理どうしたの?」
「すまん、ちょっとタイム」
背中を見せて素材一覧を確認を始める。
「タイムって?」
「『待て』ってことだよ。わかったら少し待っとけ」
少し待つように言うとその場にあった木下で、私を待ち続けた。
うん? なにをする気だって。それはね。
パーカー作るか。
困った時用のパーカー作りである。
「えぇと、今回は拾った氷とそこら辺に落ちている雪玉を使って生成して……」
久々のパーカー生成。
氷の素材もそれなりに集まってきたのでタイミング的にも好都合。
AIさんにそれを言うと直ぐさまUIを展開してくれる。
「いや、できんのかよ」
「今さらですが、口で仰れば省略できるようになりましたよ」
「それ早く言って」
早く使いたかった。そんな話は一旦おいといて。
新しいパーカーの生成に取りかかった。
道中出くわした雪男から入手した素材と、地面に転がっている雪を素材として。
素体であるノーマルラビットパーカーを使い合成。
ラビット・パーカーチェンジ。
の一言を心の中で唱えると、呼応するようにパーカーが冷たい水色のように変わる。
周囲から小さな氷風が発生すると、その姿が浮き彫りとなる。
【アイス・ラビットパーカー 説明:凍てつくような色をしたラビット・パーカー。高い極寒耐性と体から発する超低温度攻撃などは、触れた物を凍らせて凍死させることが可能】
どうもこのパーカーだと、専用武器ラビット・アイスブレードという氷刃を使えるらしいが。
地面に突き刺すだけで、氷を広げ延長させることができる優れ物。
手を振りかざすと氷ブレスを発するなど、欠点が見つからない。
みんなの所に寄って手を振ってやると。
「おーい」
「……また新しい服ですか。今度は寒そうな水色ですね」
「これ大丈夫? 触れたら凍っちゃったりして」
新しい服を見始めるみんな。
「これで寒さ対策バッチリ」
「なるほど、寒さに適した装備なのですね、アイスキャンディーたくさん作れそうにも……」
「そんなノリでかき氷作れとか言わないでよね? ……そのい、いくよ」
はぐらかしながらも先陣を切り前を歩く。
木々の道を越えると、雪原へとたどり着いた。
真っ平らな道が永遠と続くような光景で白1色が一面に広がっていた。
すると空から。
「グゴオオオオオオ!」
【レイギロス: 氷の体を纏ったドラゴン。羽根から放つアイスレインは無数のつららを突き落としてくる】
巨大な氷のドラゴンと遭遇。
見る感じに頭から突起した氷が特徴的で、強者感ありありありき。
「うっせーな、ほらよっとこれでも食らいやがれ」
手を振りかざすようにすると例のアイスブレードが出現する。
手より大きい、総体的に氷でできたその氷剣をやり投げのように相手目がけて飛ばす(本来の使い方間違えている気がするが)
「グゴバボォォォォォォォ⁉」
「あや、これは私たちの出番今回ないですかね」
遠くを見渡す格好で、飛んで行くレイギロスを見送るシホさんたち。
しばらくすると、【レイギロスを倒した】の一文が。
倒しちゃった系か。
手を招くように動作をとると、再びアイスブレードが私の手元に戻ってくる。
貫徹力も計りしれないなコイツ。
「……あのドラゴン、この一帯では害悪指定されている危険生物なのにあっさり倒してしまうとは」
「ねーねー愛理その剣私にも(つん)」
ミヤリーがアイスブレードに触ると。
カチカチカチ……。
凍り付いてしまった。そして棺桶モードに移行。
ゑ?
【AI:本パーカー、及びアイスブレードは敵の耐性をも貫通させ無効化します。よってミヤリーさんの持たれるきあいのミサンガは無効となり呆気なく(汗)】
タヒッたてか。
「すまん、ミヤリーそれどうも耐性貫通にして通る氷の刃だって。……だからお前のアイテム効かないだとさ」
「そ……それ早くいいなさいよ」
いやうかつに触ったのはお前だろうが。
「言うか、触ったお前が」
「……ミヤリーさん溶かして蘇生させてあげますから……ね?」
「お、お願いするわスーちゃん」
寒さに凍え死にそう(もっとも死にそうな声だが)なミヤリーは、その後スーちゃんに治療を受けてもらうのだった。
お前はうかつに毛虫を気になって触る小学生かよ。
☾ ☾ ☾
寒い雪道は続く。
氷系のモンスターがやたらとこの一帯は多く。
モンスターの体色も氷のように染まっている。
【スノーガル 解説:寒い一帯に住むカンガルーのモンスター。体温のほとんどがマイナスの体でできているため、口から吐く氷の息は強烈】
氷のカンガルーと接触。
身構えながらも敵の攻撃を窺い応戦。
「グガァァ!」
高い跳躍力で飛んでかかってきた。
低温に関わらずよくあんなに飛び跳ねられるものだ。
「……カチコール」
スーちゃんが防御を上げる魔法を唱えると、敵の攻撃を硬さのあまりに跳ね返した。
「助かったぜスーちゃん」
よし、と攻撃にかかろうとすると。
敵は、輝くぐらいの氷の息を吐いてくる。
突風を巻き起こしながらのその攻撃は徐々に距離を詰めていき、私たちの距離を制していく。
「なんのこれくらい、炎獄斬り!」
シホさんの放った火をまとった広範囲の斬撃は、輝く氷の光さえも打消し攻撃を押し返した。
火が直撃し、敵の体に火が付くと周りを激しく熱さを訴えるように走り回る。
そして間をおかず。
「おりゃ、ラビットパンチ」
そんなに遠いところにいるわけではないので、パンチを一発入れる。
「ブフォ……」
妥協程度に殴ると、スノーガルはその場に倒れ息絶える。
こんな感じで氷系のモンスターが数々遭遇したわけだが、枯渇に見舞われることなく進むことができた。
途中、木に模したモンスターや幽霊モンスターにも遭遇したが、仲間と力を合わせてこれも突破。
おっと、あそこに見えるのは……目指していた国かな?