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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第2章 うさぎさん達、再始動イン大きな一帯へ
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211話 うさぎさん達、険しい山を乗り越えて その3

【道の駅にある店は通るときワクワクする】


 中腹に到着した私たちは、スーちゃんの提案で近くの宿屋に寄る。

 やや大きめの立派な宿屋で、窓越しから町が一望できそうな造形となっていた。

 気温が低めで……うぅ寒い早く入ろ。


 中へと入り店主に声をかけてチェックを済ませる。


「えぇと4人で」

「お嬢ちゃん、親御さんはいるかい? 10歳以下は1人じゃ泊まれないよ」


 は?

 中年ぐらいのおじさんだが、私を子どもとみたその人は私を追い払うようにしっしと。

 私、こう見えてもまだ15なんだぞ!


「いやいや、私15だよおじさん。ほら冒険者カード」

「…………あ、ほんとだ、すまんすまん。あまりにも小さすぎたもんだから子どもかと疑っちゃったよはは!」


 皮肉を言いながら大声で笑う店主。

 代金である、銀貨5枚を渡すと部屋の案内をしてくれる。

 上の階にある中ぐらいの部屋。ちょうど4人入れるくらいのスペースだ。


「あの……愛理さんなに壁にすがって落胆しているんですか?」


 揶揄われた自分に嫌気が差していると、シホさんたちが声をかけてくる。

 今の私は、まるで灰色人間。声も体も憔悴しきったような素振りになり。


「あ、いいや、べ、べつに落ち込んでいるわけじゃ……小さいって言われただけで」

「そんなガキ扱いされてなにらしくない様になってんの? ったく」


 気を取り直して。


「……ひとまず今日と明日ここに泊まりましょう。先の道は険しいみたいですから……あと美味しい物たくさんあるみたいですよ……食べなくては」

「スーちゃんっておいしい物のことになると目がないよね……私もスーちゃんに賛成だよ、連ちゃんで登るとなればそれは無策っていうか」


 温暖さを整えるためにもここは少しでも休むべき。

 その理由で私もスーちゃんに賛成。まぁ休憩所と言える存在なので少しぐらい長居しても文句は言われない…………たぶん。


「少し納得いかないけど、みんながそう言うなら……で次はどんな場所に行くことになるのかしら」

「……気が早いですよミヤリーさん、またヘマなんてされたくありませんし今はあえて言いません。その……夜中こっそり行くのもだめですよ?」


 とてもミヤリーのことを警戒している様子だった。

 真顔で考え込むミヤリーだが、髪を掻きむしりながら訳がわからない様子になる。おい自覚しろ、フラグ建築士なら慎重にならないと。


「まあまあミヤリーさん、愛理さんも顔色見るにとても疲れていそうですよ…………もうすぐお昼ですね、ちょうどいい頃合いなので外出ませんか」

「せ、せやな、シホさんに賛成」


 仲間と話し合って外へ出て、食事をとることにした。

 持ってきた食料も、火口歩いている間に尽きたし。

 当てはないけれど、ひとまず目についた物を食べて体力を補充しなくては。


☾ ☾ ☾


 外に出て少し歩いた先に屋台が密集する場所が見えてくる。

 雪道なので少し歩きづらいが……おっとこけるところだった、危なかったぜ。


「ヒヒーン」

「ぜぇぜぇ……歩きづら」

「その、愛理さん後ろ乗ります?」


 マックス・ヘルンを呼び出し雪道を歩くシホさんが声をかけてくる。

 なんでも、仲間の誰かが危機にさらされてはなるまいと私に(かれ)を出すように言ってきた。


 相変わらず聖人。

 シホさんはこういう面で顔が利くから頼りになる。


 とはいえ、手を差し伸ばしているところ申し訳ないが。


「大丈夫だよ! ほらこの通り!」

「そうですか? それならいい…………ってマックス・ヘルン⁉」


 その時マックス・ヘルンは屋台の焼き鳥? の売れているお店の方に突っ込んでいき……しかも剛速球。


「なななななななななななんだあの馬は⁉ とてつもない速さでこちらに突進してくるぅうぅぅぅぅぅうう!」

「わあああああああああああああああああ。わ、忘れていました! マックス・ヘルンは美味しい物に目がないって! す、すみませ~~~~~~ん!」


 申し訳なさを提示するシホさんの声は、直撃する寸前までその謝罪の言葉を濁らせずに声を伸ばした。

 そして数秒後。


 ドスーン!


 マックス・ヘルンはシホさんごと、その屋台のお店に突進し家を荒れ地にさせる。


「あーあうかつだったわ。まさかマックス・ヘルンが暴食だったなんて」

「……その見ている場合ですか、早く助けに行きましょう」


☾ ☾ ☾



 食物に飛んで行ったマックス・ヘルンとシホさん。

 まあ、シホさんは悪くないんだが当のマックス・ヘルンは。


 彼の強烈な衝突によって、お店は半壊。調理していた物が辺りへと散乱し被害は甚大だった。


「ったくあんたどう責任取ってくれるんだ?」

「いえ、あの……」


 しかめ面で立たされるシホさんとマックス・ヘルン。

 そして。


「なんで私たちまで……」


 さりげなく、私たちも同伴だというレッテルを付けられ、店主の前に並ばされる。

 調理していた物はすべて地面へ。……どう責任取れだと? んなこっちが聞きたいつーの。


 一番責められているシホさんは、いつになく矮小で中々頭が上がらない様子でいた。


「あのですから……うちのマックス・ヘルンが……」

「それはさっき聞いたぜ、さっきからマックス・ヘルンが……云々ばかり言ってるじゃねえか、いいかこの食料調達するまで大変なんだぞ! ……ったくよぉ」


 聞き返そうなら、ずっと店主は永遠にこっちのターン行うしで文句を言うタイミングも作れない。

 はぁまずったまずった。


「そこのふざけたうさぎ! 肉少しくれや、こっちは困って……」

「いや、私は人間だよおっさん、つーか悪気があったわけじゃあないんだから少しは許してあげろよ」


 すると堪忍袋が切れたのか、矛先はこちらへと傾き。


「おうおう言うね言うねぇ! うさぎのクセして……ごらぁぁぁ!」


 暴力で解決ってか。脳筋かよ。


「あらよ」


 機敏に残像を作り出す高速移動を使用し後ろへと回る。背中がお留守となっていたので手刀で軽く振り下ろし。


「おりゃ」

「グべぼラおざヴッ⁉」


 滑り込むように前に倒れる。


「…………あの、おっさん大丈夫?」

「こ、これしきのこと。も、もしもチャラにしてほしいって言うなら……(ここ)を元に戻せば考えてやろう! ま、無理な話だろうがな。そうこの家は親父からじじいの世代から続く老舗でな……ブツブツ」


 1人トークが始まったのでその間に私はあることを済ませる。

 それから数分後、こちらには見向きもしないで自慢げに語る……語り続ける(長い)


「で、俺はこの家督となり……」

「その、熱弁中申し訳ないけどいい?」

「なんだよ? ……魔法使いどうした」

「……(目の前をチョンチョンと指差す)」

「え、前………………え、う、嘘だろ」


 久々に能力を使い。


「というわけで直したけど」

「な、なんだとぉ――ッ⁉ どどどどどどどーなってんだああああああああああああ!」

「うっせーな、少しは静かにしろって。その一応便宜性の良い力を持っていて」

「そ…………そう…………なんだ?」


 店主はそれから少し魂が抜けたかのように、干からびた声を出し少し膠着状態に陥っていた。



☾ ☾ ☾



「ごほん! さっきはみっともないところを見せたな……忘れてくれ」


 立ち直った店主は、少しいたたまれない雰囲気をにおわせつつも私たちと話してくれた。

 能力で綺麗さっぱり戻したわけだが、こういうときこそ反則力(チート)の出番だろう。

 黙々と炭で肉を焼きがながら……ひとつ持ちかけてくる。


「その……なんだ、少し今納得がいかない感じでな」

「なんで」

「いままでこういう経験なかったからな。秒で直しちまうやつがいるだなんて……想像以上だ」


 でしょうね。

 いや、逆にいたら怖くね、それこそバグレベルだよ。


「少し調達しに行ってくれないか? そうしたら俺の気分も晴れる気がして。苦虫をかみつぶしたよう顔するなよ、大丈夫だ好きな物()()()()やるからさ!」


 ん? 今なん。

 私はこの持ちかけをいいことにニヤリと少しほくそ笑み。


「あーあ愛理の悪癖が始まったわよ」

「ミヤリーさん声が大きいですよ、それにこれだとあれですし……信頼感を勝ち取るのも悪くないそんな気がしますよ」


 小声がかすかに聞こえてくる。

 ミヤリーはともかくシホさん、やはり戦士だな。


「それでおっちゃん、どこに行けばいいんだい?」

「ここから少し……」


 おっちゃんの言い付け通りに、目的の場所を目指し依頼事を請け負った。

……コミュってこんなに難しかったっけ? わからん。



☾ ☾ ☾



 さて弁償はチャラになったわけだが。

 またしても例のお使いパターンに至ったわけで。


「まさか、麓とは別の進路があったなんてなぁ」

「……ここは、あまり温度差が激しくないですね。中枢部だからでしょうか?」

「結果オーライじゃない? 行き詰ったらマックス・ヘルンに乗せてもらえばいいことだし」


 当の突進した本人からの返答は。


「ヒヒーン……」

「そんなに落ち込まないでください。あなたが全部悪いわけではありませんから、あなたの癖をすっかり忘れていた私の盲点なのでお互い様です」


 手綱を引いて、私たちの後ろから悠々と騎乗するシホさん。一方的に攻めるのではなく、自分の欠点を言い同情する。

 ペットをなじるのではなく、自分のことも詫びるとはシホさんはやはり優しいなぁ。


 曲折とした道は長く続いており、その進路は険しい。

 帰りはスーちゃんが移動魔法でひとっ飛びしてくれるらしいから、修羅場は進路と言わざるを得ない。


「この洞窟を抜けると、食料を手配してくれている加工業者の人がいるみたいだから、その人にもらえばいいとさ」


 精肉に関しては守備範囲外だが、事情を説明してやれば大丈夫なはず。

 道中モンスターにも遭遇するが、後ろに控えるシホさんと相棒のマックス・ヘルンの活躍により前線は難航せず順調に進んだ。


「道中、土に潜るヤツいたけど、シホがいてよかったわ」

「……山の中ですからね、私も大規模な魔法は打てませんからね」


 洞窟を抜けて、業者の人がいる場所へと向かう。

 略言ながらも簡潔に説明すると、すんなりと頷いてくれた。


「えぇと、これが頼まれていた肉ね、道中気を付けるだべ」

「あ、はいあざっす」


 麦わら帽を着た中太りなおじさんは、私を見て。


「で、うさぎのお姉さんあんた捌かれにきたべか?」

「いやいや、私は人間食いもんじゃねえよおじさん!」


 新しいな今度は食料認定されるなんて。

 その昔、日本でもそういやうさぎが狩られていた時代があったと聞く。

 この世界にうさぎ肉あるのかな。……まあいいや。


 礼をいい、その場から後にすると、調達用の肉をマックス・ヘルンに付いてあるバッグに収納させる。

 シホさんによれば、大容量スペースの袋なため、大方の物はこのサドル内に収まるみたいだ。


 ギュ。


「きつくないですか? そうですか、では行きましょうかそいさっと」


 しぶることなく詰め込むと、再びシホさんは騎乗。

 洞穴まで歩みを進めると、スーちゃんが。


「……では唱えますね」

「大丈夫? 天井に頭をぶつけたり」

「……愛理さんなにを言ってるんですか。心配いりませんよ、私の使う魔法は瞬間的に移動できる魔法ですからね」


 少し悪ふざけで言ってみたが大丈夫なんや。

 つまりワープ式とな。


 そしておじさんの待つお店へと帰り。


「これでいいですか」


ドスン!


 少々大きめの振動が響く。

 堆積になるくらいの分量のためか、見る感じ非常に重そうだが。

 彼女は血相ひとつすら変えず、店主の前に置いた。


「重くないのか?」

「え、重いってなにがです?」


 平然とやってのけるシホさんに関心の念しか私たちは抱けなかった。


「やっぱりすごいわね、シホって」

「……だってシホさんですから当然ですよ……多分」

「多分って……まあ理解はできるけれど……やっぱすげぇよシホさんは」




☾ ☾ ☾




「ほらできたぞ」

「さんきゅーおっちゃん!」


 無事帰還した私たちは、調達した品物を店主に届けた。

 こわばった感じで数秒、精肉とにらんでいたが確認を終えると顔を柔軟にさせる。

 少し待つように言われると調理にとりかかり、こうして食料を確保できたわけだが。


「これなんていう料理ですか?」

「……スピラチキンと言うみたいです。串刺しにした肉をそのまま焼いた料理みたいですね」


 とスーちゃんは言っているが。


 外見はどー見ても焼き鳥である。

 串はバーベキューで使うような串刺しを扱っているが、私いや日本からやってきた人なら誰でもそれが焼き鳥だと視認できる物だった。


 大丈夫だよな。外見は美味しそうだが実はゲテモノ料理が含まれていたりして……。昔写真やテレビで見たことあるが海外の一部一帯だと、カブトムシの幼虫を炙って食うからなぁ。おぇえな案件。

 空いていたベンチで食事をとっているが、みんなが食べる中私だけ手が止まっている。


「その食欲ないんですか愛理さん? すごく気難しそうな顔してますけど」

「別に」

「腹壊したとか?」

「してねーよ」

「……ではなぜそんな苦虫を嚙み潰したような顔をされているんですか?」


 私に異常があるのではないかと疑る仲間。


 気まずい。


 作ってくれた店主にも申し訳ないので、意を決した私は。


「あぁもうわかったよ、食べればいいんでしょ食べれば!」


 \パク/


 らちがあかなかったので、降参し焼き鳥もといスピラチキンを口に入れた。


……。


……。


……。


 あれ、意外といけるじゃんこれ。


「意外とウマじゃん」

「……でしょ? 作りすぎたってことでたくさんもらっちゃいましたが、まだ食べます?」


 紙袋から差し出してきたのはかさばる量のスピラチキン。


「なにそのご都合展開な流れは⁉ ……おいしい……おいしいけどさ」


 そう考えている間にも3本ほど手元にあった肉を間食させ。


「で何考えていたのよ、毒が入ってたとか?」


 言いづらいけどアニメに出てくる、料理が苦手なキャラが丹精込めて作ったおそろしい闇鍋みたいなおぞましい味を想像していた。

 が意外と、普通の焼き鳥だった。


「おいしいか、不安でさしぶってただけ」

「……はぁあなたって人は。それ食べたらそろそろ行きますよ、この先

寒いですからね」

「う、うん」


 すると横で何か言いたそうなシホさんが口を開き。


「愛理さんの故郷でもこのような料理あったんですか?」

「う、うんあったよ。見た目はほぼ一緒だけど、味大丈夫なのかなあって」

「……ほほう。ちなみにですけど、愛理さんの故郷ではこういった物はなんという名前で?」


 興味津々なスーちゃんが過敏に反応し、横目で答えを催促するかのように近づいてくる。

 使っている物を除けば完全に一緒だけどね。

 はぐらかすのもアレなので、答えてあげよう。


「こほん。私の故郷だとこういった物は焼き鳥って呼んでたよ」

「……ヤキトリ。ふむふむ、シンプルながらいい名前ですねそれ。今度作ってくださいよ、あ、素材は私が調達するんでご安心を」


 なに私が作る前提で話進めるんだよ。


「いやなんで作ること前提⁉ ま、まあいいやさあもうすぐ氷窟だよ、いこ」

「あ、愛理さん待ってくださいよ。意外と速いですね」


 話を遮るように、タイミングよく中距離ぐらいにある氷窟を指差して話を逸らす。

 はいそこ、タイミング良すぎないか、とか言わないの。


 腹ごしらえをすました私たちは、その中へと足を踏み入れた。

 めっちゃ寒そう。

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