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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第2章 うさぎさん達、再始動イン大きな一帯へ
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210話 うさぎさん達、険しい山を乗り越えて その2

【温度管理は適宜に調整しとけ】


 道中、とっさに出現したのは。

 マグマの身を包むマグマドールというモンスターだった。


 大きさはそこまでとはいかない度合いではあるものの、どうも一筋縄ではいかないらしい。


「よっよっよっと!」

「あわわわわわわわわわわわ……」

「ちょっとスーちゃんぶつかる……ぶつかるって!」


 飛んでくるマグマの飛弾。

 銃弾のようにひききりなしのごとく飛んでくるその攻撃を、仲間の息を合わせて避ける。


「ぐげぇ……まじかよ」


 後ろの方を見る。

 岩壁の一部が熱さで溶解し壁が下へと流れていく。


 どうやら当たったら絶対アカンやつらしい。


「よーし、こうなったら」

「愛理? 飛んでパンチしにいった!」


 地面を蹴り、高い跳躍で飛び上がりパンチで落下攻撃……と。


「うわっ下からこっちに次々飛んでくんだけど⁉ ちょぶつかるって!」


 距離なんぞお構いなしに、飛んでいるこちらへ猛スピードで向かってくる。

 パーカー自体は火に耐性があるから問題ないが、私本体……特に皮膚などに当たったらとかくまずい。


 バリアの方は間に合わない。……スーちゃんに時を止めてもらうにも地上から私のいる位置までとても距離がある。さぁどうする。


「…………こうなったらこれを使うしかねぇか、無敵板装甲Ⅱ発動!」


 バイタス以降使ってなかったな。


 このハイパー・ラビットだと、常時までには及ばないがそれなりに長い時間、無敵版装甲を発動させることができる。それも発動に秒数もかからないので即発動可能。

 しかも、以前のと違い単に時間が延びただけにとどまらない。……道中この状態を解除しても、その解除時の時間は解除後、貯蔵される。これにより次発動するまでのラグは発生せず、これが残っていればいつでも発動できる。


 つまり。


【無敵板装甲Ⅱ発動 TIME180s】


 時間のカウントが始まると同時に起動させ、1体のマグマドールに向けてもう突進。

 急に加速がかかっているが、体に負荷はない。……視角を捉えたあそこだ!


 力のこもった拳をその魔物に向けて放つ。


「フレア・ラビットパンチ!」


 連続で打つ……といきたいところだったがやめておく。


「無敵板装甲Ⅱ“解除”」

【AI:無敵板装甲Ⅱ解除します。TIME160.5s Next:0s】


 そう時間がなくならない限り永遠に使い回せる。

 またさらにこの秒数も時間経過と一緒に微量ながらも回復するので、従来の問題がこれで解決できる。


 叩き潰したのち、仲間の方へと引き下がる。

 潰したマグマドール1体は倒すまでには至らなかったが、少し怯んでいる状態で今は動けない。

 タイミングを窺った、シホさんとミヤリーが二手に分かれ、纏まっている二匹を分断させようと手を打とうとするが。


「私があのマグマドールを叩きつけて……ハァッ!」

「おーけー! 上手くいくかは保証できないけど!」


 瞬間移動で敵の背後に回り、抜刀した自前の剣をなぎ払い遠くの壁際まで叩きつける。そして再び瞬間移動すると今度は追いかけるように敵の前に立つ。


「シホや愛理たちだけに、良いところ取りさせてたまるもんですか!」


 袖から出てきた二本の黒剣を取り出すと素早く駆け出すミヤリー。

 交差斬りさせるようにかけ走る。


「とぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」


 迫り来る火炎玉を、交差させた剣を上手く使い盾が代わりにさせ間合いを詰めていく。


 ほほーん。ミヤリーにしては考えたほうだな。

 状態異常を視野に入れ、剣を盾代わりにさせる。

 というか、あの剣耐熱があるせいか溶けない。……だからその剣どうなってんだよ。


「もらった……! 横にッ」


 シホさんのいる方とは逆側に狙いを定めようとした。


……しかし。


「……ッ⁉ 動け……」


 ミヤリーは肩越しに後ろを見た。

 そこには大きく伸びいる液体の部分があり、それがミヤリー足首と二の腕を縛り付け固定させていた。

 当然この状態では、強い力量で千切る……なんてことをしない限りは。


「……させません! はっ」


 水魔法と風魔法を組み合わせた攻撃。

 スーちゃんは水を刃状に生成させると、形が崩れないように風魔法を外部から空気で固定。

 それをカッターのように杖で振るうように下へ落とすと、ミヤリーを縛っている火炎の触手を切断させた。


「間一髪でしたね……。あの触手は掴んでいる間は溶解能力を持ちません」

「さっすがスーちゃんお手なものね! ……じゃあ気を取り直して」


 ミヤリーが振りかざした二本の剣でマグマドールを上方連続、右方向へと斬りつけ反対側へと敵は飛んで行く。


「忘れ物よ……それ」


 片方の剣を飛んで行くマグマドールに向かって投げる。

 飛んで行った方向のマグマドールは壁へと落ちる……のではなく、同時に飛んだ片方の剣がヤツの身を串刺しにして壁に吊す。


「さっきのお返しよ……あとこうして」


 ミヤリーが握り潰すようにして……手の平を閉じるような動きをとると、それと同調するように剣は突き刺さった敵の亀裂を拡大かさせていき。


 ボッチャーン!


 威力に耐えきれなくなったそのマグマドールはそのまま散乱した。

 どこでそんな技覚えたんだよ。


「お前、そんなのどこで」

「無意識に力がみなぎっているなぁと思ったから試しにやってみたんだよね。そうしたらできた」


 と軽々と抜かすミヤリー。

 厨二くせーこと言ってるよコイツ。


 一方、シホさんは。


「触れたら溶けそうですが……はっ!」


 一寸のためらいもなく、危険な相手に立ち向かっていく。

 間断なく繰り出す高速の一閃は、敵の両腕を瞬時に切断させる。

 先ほどミヤリーに使った、触手の攻撃を仕掛けてくるがシホさんは振り向くことなく動かずそこで立ち止まる。


 それはまるで、敵の一手先の動きが読めているように窺えた。


「振り向かなくとも、音を通してわかりますよ」

「⁉︎」


 なぜ見えているのかと、一瞬の戸惑いを見せ触手を止めるマグマドール。

 そのうかつな行動をシホさんにみせると、彼女は密かに身構えていた剣を、振り向きながら薙ぎ払い放つ。


「うかつな。旋風両断!」


 風の刃が対象に直撃すると、巻き込む形でマグマドールはそれに飲まれ、刃内部で発生する強力なかまいたちで部位を仔細に分断され、あっさりと倒されてしまった。


 なんというか、シホさんの強さはこの大陸でも健在でいつも通りの平常運転でこちらとしては安心した。


 風のごとく私たちのほうに戻ると、怯みが解ける寸前の最後のマグマドールを見た。


 「……敵がピンピンしている隙に早々仕留めたほうがいいですね。あんな触手(攻撃)なんかされたらたまったもんじゃありませんし」

「なら私がやる……たああああああああああぁッ‼︎」


「ちょ愛理さん……そっちは」


 怯んでいるマグマドールに猛突進。

 拳に力を込めて食いやがれ。


……そういや幅員が狭まってきているのは気のせいか?


「「フレア・ラビットパンチ‼︎」」


 灼熱の力をまとった拳が直撃すると、マグマの……底……底。


 って私の足場ねぇーじゃねえええええええかぁ!


 そう先ほど、スーちゃんが注意を促そうとしたのは、先に足場がなかったこと。お、落ちる。

 パーカーの力があるとは言え、顔面はヤバイヤバイ。


 恐怖のあまりに黄色い声を出す。


「ぐおおおおおおおおおおおぉミスったぁぁああああああ誰か助け……」


「愛理!」

「愛理さん!」



 落下する私に対し声を揃えるミヤリーとシホさん。

 なにもできなさそうに少々すさみを見せるが。


「……はぁ無理して」


 ただ1人だけ呆気な声を出すと。


「……仕方ないですね、【テンプス】」


「……りさん……愛理さんわかります?」

「わあああああああああぁ⁉︎ あれ」


 気がつくと、景色が灰色になっていることに気づいた。

 それまでの意識は消えていたので、死んだとばかりに思っていたが。


 これってよもや。


「……もう、私がいなかったらどうしていたつもりですか?」


 横にいたのはスーちゃんだった。景色全体が静止するよう止まる。……彼女に袖を掴まれ浮いているが……あれ宙にいるはずなのに床よろしく歩ける。


 そうあの時止めの魔法……テンプスを発動したのだ。


 首を傾げるスーちゃんは少々息を漏らし。


「……この力があるとはいえ、まだ慣れていませんから少しこちらのことも考えてくださいね」

「やっぱり時止めてくれたんだ。ありがとう助かったよ」

「少し……わかったことがあって停止中は自由に宙問わず床同様に歩けるみたいですね」


 2人が待っている所まで歩き戻ると。


「時は再び刻み始めます」


 時間は再び動き出し、辺りは鮮明になっていく。



「わぁ!あああああああああ愛理!」

「お、落ちたかと思いましたよ」


 近くにいた2人が驚嘆。

 いやそんなに驚かなくていいだろ。



「す、スーちゃんが助けてくれたんだよ」

「この間スーちゃんが言っていたテンプスって魔法? 私がピンチな時も使ってくれたあれかぁ」


「と、とにかく愛理さん、闇雲に突っ込むのはおやめに」

「わかったよスーちゃん」


 入って早々、とんだドジ踏んだ私だったが仲間のおかげでかろうじて助かった。

 ってかまだまだこの坂道険しそうだな。……さっきみたいなことが起きないように今度は足元に注意しないと。


☾ ☾ ☾


 進路を進め数分。

 灼熱の滝が落ちる高所の道をひたぶるなに進み、中間地点となる拠点を目指す。


「グゴオオオオオオオオオオオオオォ!」


 紅蓮の身を宿した巨大な竜と遭遇し。


「邪魔だボケぇ! ラビット・パンチ! 50倍」

「……魔法……と必要なさそうですね」


 遭遇した瞬間、私は自然と体を動かしていた。

 拳に力が入り、気づけば50倍の力を蓄積させ地面を一蹴し殴りかかった。

 私たちの大きさは僅か敵の足下ぐらいの小さな大きさだったが、私は気にも止めない。


スッパーーーーーーーーンッ!


 速度を減速させずにそのまま50倍のパンチが炸裂する。

……ふと火を噴くよう見えたが、相手が悪かったな。なんかごめん。

 そのドラゴンは火口へ落ちていく。


「あれ、あっさり倒しちゃった感じ?」

「……はい、愛理さん風に言うなら……ワンパンです」


 とサムズアップしてくるスーちゃん。

 口を尖らせにやっと。え、内心かっこつけてたりしてる?


「まぢか、もうちょっと粘ってほしかったけど」

「ムゲンダイセキを使うと、以前より段違いの力になるようですし、しばらくは自分の力に実感が持てない場面が多くなるかもしれませんね」

「んなこと私は問題ないわ、愛理も強くなったんだから私だって」


 一同、不信なミヤリーの方を見る。

 いやおめぇは違うだろ。


「な、なによ、みんなこっちをじーと見て……疑っているわね? おっとあんなところにモンスターがぐおおおおおおおおおおおおおぉ」


 向こうのザコモンスターに目をつけると、ミヤリーは一目散に駆けていく。

 だが、私たちは追おうとは考えず先走った彼女を観戦した。


「た! た! でやああああああああああああっ! ぐぶべぼば! おりゃあああああああ!」


 軽やかな動き、岩のモンスターなのだが身動き1つすらしない。ひたすら我慢しているようにも……あれ、妙に体が光って……。


「その突っ走っていったけど……援護いく?」

「……やめといたほうがいいですよ」

「え?」


 スーちゃんがなにを言い出すのかと、ふとそのモンスターと戦うミヤリーの方を見続けると。


~数分後~


「あのマグロックというモンスターは……一見攻撃をせずひたすら受け流しているようにしかみえませんが」


 突如ミヤリーと戦うマグロックの体が光り出し。


「え、なに? ……ちょちょちょちょちょ……‼」


ドッカーーーーーーーーーーンッ!


 急に爆発し体ごと爆発――自爆させた。

 それは他も例外ではなくミヤリーも。


「ちょちょ……足場が……! って今棺桶に入っているからってなんでなんでアイテムの効果が有効じゃないのよ!」


 隣にいたスーちゃんの姿が消える。


 崖ごと崩れる、ミヤリーありきその棺桶の元へと駆け寄り浮遊魔法でなんとか救助。


「……言おうとしたのに……なにしてるんですか。後の祭りにはなりますが」


――マグロックには敵の耐性関係なく行う攻撃――


「へ?」

「……つまりミヤリーさんの持つアイテムがいくら優れようが、あの自爆の前では無力です」

「う、うっそでしょ! そんなのありぃぃぃぃぃぃぃぃぃい⁉」


 素っ頓狂な奴がなにを言うんだか。

 果敢にも自ら自爆特攻機となった彼女は、その後スーちゃんに哀れながらもさながら蘇生魔法をかけてもらうのだった。


【ヘルバーン:マグマ地帯に住む竜で火炎には要注意。火の中にいる時急激に体を()()()()()()()()()()()

【マグロック:球体状の全身溶岩で覆われた岩でなにもしないが受け流し続ける度に発光が激しくなる。これが飽和状態に達すると体ごと耐性をも無視する爆発で相手を巻き込む脅威の自爆技を所有する】


 やっぱ危険じゃねぇか。




 ってアイツ再生すんのかーーーーーーーーーーーい‼





 そんなこんなで難敵と悪戦苦闘を繰り広げながらも、徐々に火口への道は遠ざかっていきようやく出口が見えてくる。

 先にある巨大な大穴からは、パーカーの機能を通して巨大な隙間風が聞こえてきた。


フュ~~~~ッ……。


「ん? どうしました愛理さん」

「いやさ、みんなは聞こえないかもしれないけど、隙間風が聞こえてきたよ……ほらあそこ」


 みんなひたすら足下に気を取られてばかりいたので、あの大穴の存在に気づいていなかったようだった。

 でも私の着るパーカーみたいに、よく聞こえてくるような能力があるわけないので気づかないのもしょうがないか。


「あれなの。……足下が窮屈すぎて全く気づかなかったわ」

「はい、やはり愛理さんは耳がいいですね、中間地点はあそこですか」


 いやだからシホさん、これはパーカーのおかげだって。


 無駄な障害物も少なかったので、難なく最後の通りを抜け。

 ようやく火口エリアを抜けた。




~エルミア山脈・中腹~


「うおぉ、もうこんな高い所まで来たんだ」

「……おっとみなさん橋と橋……気をつけてくださいね、脆い部分もあるみたいなので」


 積雪の中腹。

 拠点とは言いがたく、それは1つの町が形成されていた。

 3か所に分かれており、吊り橋が3つある。


 民家や施設も完備……これ本当に拠点か?


「……時間は昼ですか? ここに来るまでクタクタですし、近くの宿屋で予約を済ませて取りあえずやすみませんか?」


 橋渡ったすぐ隅に、宿屋がある。スーちゃんがそこを指差して提案。

 疲弊しきった体を養おうと、彼女の言う通りそちらへと向かった。


(はぁ……疲れた)


 あと、愛理さんもひっじょーうに疲れていた……だなんてみんなには恥ずかしくていえなかった。

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