207話 うさぎさん達、道中にて その2
【休憩時間は友好的に使えよな】
焚き火がはぜる音が聞こえてくる。
目を擦りながら開眼させると、鍋を中心に料理を食べる仲間の姿があった。
「……でさ、愛理が起きたら」
話の邪魔をしたらダメだと思い少々、まぶたを深めに閉じ耳を澄ませる。
「少し道中の人に聞いたんですけど、この周辺の敵他の大陸モンスターとは段違いの強者揃いみたいです。……おや? 今愛理さんの鼻がわずかに動いたような」
なんでそんなどうでもいい動きわかるのさ!
するとミヤリーがこちらへと近づいてきて……やっべなんとか誤魔化さないと。
「………………あんた起きてるならさっさと言いなさいよ……ほらお腹減ってるんでしょ? 私たちが頑張ってキノコスープ作っておいたから起きなさいよね」
うん、鼻から強く漂ってくるんだよね、野菜の養分を圧搾して作った野菜スープのブイヨンが。
妹に聞いた話によれば、地域によって肉入れるの有無にいまだ決着が着いていない料理らしいが……ここの文化はどうなんだろう。
「ふ、ふーん。あんたがその気なら私にも考えがあるわよ。見てなさい」
ほとんど閉じているように見えるから見ているとは言わねぇぜ。邸脳なミヤリーがどんな手を使ってくるかとくと拝見しようではないか。
一旦私の所を離れると、再び私の方へとやってくる。
今度はなんだと、いう感じで軽率な振る舞いを装っていると……芳醇な香りが漂ってきた。
(これ、ブイヨンじゃね? やばい腹の音がな……るッ!)
ぐぅー。
「ほら愛理、あんた食べるの大好きでしょ? 体のほうは正直ねほーらほーらいいかげん我慢なんかやめて目開けたらどうなのぉ? ほらほらほら」
催促させるようにまた私を誘ってくる。
こ、この棺桶娘が! 図に乗ると痛い目にあうぞ。
して、我慢の限界にきていた私は目を開けると。
「へっありがとさーん。ラビット・パーンチ」
「ぐあ! ちょなにすんの? って……」
パンチして、ミヤリーが持ってきたスープを片手に取り食べる。
にんじん、たまねぎなど栄養価値の高そうな物ばかりだ。
「あ、みんなおはよう。……ってもう夜になってんね」
現在時刻は夜!
「……私たち、あなたが眠っている間に調達して作っておきました。どうですお口に合いましたかね?」
「うん、美味しい。肉入ってるけどこれどうしたの?」
「私が美味しそうな動物を狩って……捕った物です。大丈夫です毒性はありませんから」
シホさんが捕ってくれたお肉ちょーおいしいよ。
牛肉に近い味だけど、非常に美味だ。……カレー粉でもあればまたカレーにでもして……あ、飯がねえじゃん。私のアホちゃん。
と誰か忘れているような気がする。
……焚き火の後ろに鎮座するのは……ミヤリーの棺桶だった。
「久々に入ったわね棺桶に…………あ、そーーーーーーだった! 愛理は耐性なんて無視して攻撃できる力があったのすっかり忘れてたわ〰〰〰〰!」
1人ではしゃいでいる、アホッ子がここに。
きみ、ゲームの説明書見ないタイプだろ。
無意識に使ってしまったけど、こればかりは怒りを買ったお前が悪い。……しばしの間、その棺桶の中で反省しているがいい。
「なんか棺桶から聞こえてくるけど……」
「……空耳ですよ空耳。悪い夢でも見ていたんじゃないですか?」
「ミヤリーさん、なぜいつもこうして無茶ばかりするのでしょうか」
顔に手を付け、呆気とするシホさん。絶対フリだ、絶対いいように役作りしてやがる。
「ちょーとみんな! ……そ、そのさっきのは謝るからさぁ復活させてスーちゃん!」
「……は゛゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!(音太い声) わかりましたよ……もう」
うるさいミヤリーの要望に応え、スーちゃんは仕方なしに、嫌々また蘇生させるのだった。
「スーさんまだ疲れが取れていないんですよ。途中マックス・ヘルンに乗せてあげましたけど……」
「ひ、ヒヒーン……」
寝ながら焚き火をひたすら見つめるマックス・ヘルン。
その表情からして、まだ俺は余裕だぞと言わんばかりの大あくび。
さすが人類には早すぎた最強君主馬神。手加減というものを知らないようで?
「す、スーちゃん? 嫌なら明日に回しても」
「……それも……そうですね」
「な、納得しないで、私を……私を蘇生させてから寝て!」
相変わらず死んでもうるさいやつだなぁコイツ。やれやれ呆れるぜ。
☾ ☾ ☾
「それで私何時間寝てたん?」
「……ざっとこれくらいです」
スーちゃんが指を……えーと1、2の5。
げッ⁉ ご、5時間⁉
私、そんなに爆睡してたの。
感覚的には3時間ちょいだと思っていたのだが、疲労感やばすぎでしょ。
通りで周囲が真っ暗なわけ。
ここまでの途上、場所を確保するためシホさんが率先して近くの森へと入ったみたい。
スーちゃんが、安全な魔法結界を張ったおかげで安全性は高いようだ。
気絶している私にと、食料まで調達して……融通よすぎるな。
「ま? わたしそんなに寝てたんだ」
「大変だったのよ? モンスターに攻撃されたり、盗賊に狙われたりと」 ※結局蘇生してもらった人
「無法地帯すぎぃだろ、でもなんかすまん。あんなにモンスターが強いとは思いもしなかったから」
「そうですね、噂通り他の大陸とは別格の強さでしたよね」
「あのシホさん? 周りに合わせなくていいからね? あなた楽勝だったんじゃあないの?」
シホさんの腕は落ちるどころか、巨大なドラゴン相手でも同等な力を惜しみなく発揮していた。
今、大木に腰をかけ剣の手入れをしているが、疲れている様子全くなくね。
「……愛理さん、無理だったら魔法で指示すればかけてあげますよ……えぇと愛理さんが言う」
「バフ。仲間の能力値を上げたりさせるやつ」
「……そ、そうです。そのバフ魔法で対処すればなんとか」
ちなみにバフという言葉も私が教えてあげますた。
でもスーちゃん魔力なくならない大丈夫?
「とりあえず明日、近くの小さな街へ寄りません? ラグラッシュ・タウンを出てだいぶ時間が経ちましたし」
「……この森も出ればすぐ見えるみたいです」
懐からガジェットを取り出す。
バージョンアップしたとはいえ、少し無茶しすぎたかな。
インフィニティと呼んでいるけれど、これで一応最調整版らしいが。
体があまり慣れていないのか、もしくは敵のインフレに堪えてしまった……うんわからん。
念入り久々にこの力を使っておこう。
パーカーの力を使って、パーカーにある程度の力から抵抗する力を付与して。
【抵抗習得。これにより、長時間によるパーカーから発生される負荷などの抵抗が強くなります。なお反則力は別途となります】
へぇ。
また1つ増えたね。
というか、今さら聞くけどさこの変則力ってなに? ついでだから教えてちょうだい。
【反則力は、能力によって作り出したりできる力や能力などを生成する度合い、言わば制限です。質量が大きければ大きいほど自由度が狭まります。愛理さんの場合1つの国や大型建造物を作る以外でしたらなんでも可能です】
要約すると、チートはチートでも作れる限度がある。多すぎる物は不可能だと。
【そういうことですね、ちなみにインフィニティですとこの制限がない超反則力が搭載されています】
まぢかよ。
でもその分、負荷がかかりやすいことになるでしょ。
……考えて使わないとな。
「って愛理聞いてる?」
「聞いてるって……」
「よそ見していましたよね。手元のゴツゴツ器使って」
ガジェットのことを言っているのだろう。
「す、すまんよく聞いてなかった。街に行くんだっけ」
「……聞いているじゃないですか、愛理さんまだ疲れ溜まっているんですか? 顔色とても悪いですよ」
「そ、そう?」
「言われてみればたしかに。あんな強敵を前に1人で戦ったんですからなおさらです。明日の段取りは私たちが練っておくので今日はお休みください」
「疲れ溜まってるのよくないわよ。明日もまたたくさん歩かないといけないから……ね」
いつになく親切だなみんな。
眠気が妙に強い気が……。
「それじゃみんなお休み、愛理さんは眠いからすまんけどよろしくな」
「……お休みです、起床遅くなっても大丈夫ですから」
一言告げると私は1人体を丸め、再び寝入ることにした。
(さてと、次の街に行ったらある程度必須品を整えないとな……? あれそういえばムゲンダイセキがあったような……えぇとたしか個数は……………………Zzz)