204話 うさぎさん達、近道を引き続き通る
【夜道には気をつけたほうがいい】
吸い込まれた先に映ったのは相変わらずの異空間。
だが、先ほどと違う点はなんの前触れもなくドアが出現するということ。
「なにここ?」
開けてみると宝箱があったり。
「……これ、最近ではあまり取れなくなったマジック・ペンダントではないですか! ……愛理さんこれもらってもいいですか?」
「おkよ」
最強魔法使いを目指す少女に中身を譲ると、非常に大喜びをし目を輝かせながらバッグの中へと。え、それって滅多に取れないレアアイテムなの?
再び歩みを進めると今度は。
「グルルル……」
端正な漆黒の体に毛を生やした3匹の犬に遭遇する。
友好的な犬……とはいかず、矛先は私たちの方に向けられ間を置かず襲ってきた。
「愛理さんあぶない! ……く、あのモンスター空間に入って自由に移動できるみたいですね」
狂犬のごとく、攻撃を受け止めるシホさん。
ヤツらは空間の中に入り、場所を移動しながら再び攻撃してくる。
空間を移動する……それって反則的じゃ。
「……ブラックバウンサー。本で見たことあります……かつて第一危険生物と言われた恐ろしい犬だって」
「な、なんでそんなモンスターがいんのさ」
そういえば言ってたな、ここでは本来いないはずのモンスターや、過去に存在したモンスターなどさまざまな種が在していると。
あれもどこかの時間軸から紛れ込んだモンスターかな。
「す、素早いわね。目で追いつくのが精一杯よ! とう!」
斬りかかろうとするミヤリーでも攻撃をかすめてしまうくらいに速い。
一同、身を寄せ合いながら体勢を立て直す。
「バゥゥゥゥウウウ‼」
「! ……そこか、ラビット・パンチ!」
背後から移動してきた敵の音を捉え、場所を想定し後ろを向いた。……ちょうど視線が向かい合い拳が敵に衝突し一発食らわせる。
見事攻撃が命中すると雲散するように消滅する。
「うわべだけじゃねえんだな」
小声を出しながら渋々驚く。
50倍というこの倍率。これは見せかけではなくちゃんと能力として反映されている。
AIさんに測定を任せると、ちゃんと50倍になっている云々の表記が見えた。
プログラムらしい数値がリアルタイムで数字の起伏もとい、数字の変化運動のように画面上で踊っているが、プログラムにわかな私には露知らず。わかるかそんなもん。
とかく。
どうやら50倍になったおかげで、能力も格段に上がっているみたいだな。
拳に実感は持てないけどそうみたいだ。
だが、インフレがだいぶ加速しているのか知らないが、安易に敵をワンパンできにくくなっている気がする。
てかこいつらの強さってどれくらいのもんよ。
「よく狙えたわね、さっすが愛理」
「……こうなったら早々に仕留めちゃいますね……テンプス!」
スーちゃんがそう唱えると、一場面区切られるように事が起き。
ドスーン。ドドドドドドドドドドドンッ‼
意識が戻ってくると、轟が発生するように連綿とした爆発が発生。
一面に顔を出していた敵の群れは、瞬く間に発生した魔法の爆発に飲まれ姿をくらます。
「……やりましたか?」
「いえ、どうやら敵はまだ生きているようです!」
「速度異常すぎじゃね? ドーピングカンスト値まで振ってるんじゃあねえの⁉」
どうやら一掃しようと、時を止め爆発魔法を唱えたみたいだ。
スーちゃんの爆発魔法は秒も逃さないほど、場所は的確で飲まれれば一掃できるであろう位置だった。
だがしかし、敵の速度が少々うわてだったのか、はたまた敵が1歩先読んでいたのかはわからないが。
ブラック・バウンサーはかろうじて1匹。
身震い、そして苦しそうに息を漏らしながら立っては倒れ、また起立しては倒れるその動作を繰り返していた。
あの爆発でギリ耐えるとは……あれこれってもしかするけどやはりインフレ進んでいる感じか?
ならここは、とどめに私は1発、おおきいヤツをかましたほうがいいよな。
と自ら勇躍し、前に出て。
「さてととどめはこの私が……。ん? シホさんどったの」
だが前に出ようとした時、シホさんが前に出て片手を私に向けて私の道を制止させる。
出る幕じゃねえって言いたいのか?
「愛理さんがする必要ありませんよ。ここは私が……はぁ!」
「わ、わかったよ。精々更地にしない程度の威力でよろしく」
と危険を察知して、私はスーちゃんとミヤリーの背中を両手を開き押しながらせっせと引き下がる。
最後の一発で倒そうと考えたが、シホさんが自ら進んで抜刀から放つ斬擊によって討伐完了。
しかもあれは本当に斬撃(明らかに桁違いすぎて呼んでいいのかわからない件なのでとりあえずこれにとどめておく部類カテゴリ)はどちらかというと。
まるでSFに出てくるようなビーム兵器さながらの、巨大……いいや広大な斬撃で、その一閃は次元をも裂きそうな剣捌きだった。インチキ火力も大概にしやがれ!
「ね、ねえ愛理、シホってあんな秘技持ってたっけ?」
言いよどむミヤリーは物怖じとしながら、こっちの方を向いて聞いてくる。
目を丸くし鳩が豆鉄砲を食ったような顔で……こっち見んな。
「いやなにをいまさら。あれが平常運転でしょ……た、たぶん」
「……愛理さんの言う通りですよ、というか元からだったんじゃないですか?」
(あの威力には魔法使いの私も返す言葉を毎回考えてしまうのですが)
「そ、そうだったっけ。あーそーそーおもいだした思い出した。あは。あははは」
「おい、ミヤリーごまかせてねえぞ」
小声でブツブツの言うスーちゃんは、内心怯えている様子。
なのか? うん、わからん。
シホさんみたいなキャラが無双ゲーなんかにいたら。
【愛理イメージ】
Log:シホの討伐数 1990不可説不可説転体突破!(1s)
……
Log:シホの討伐数 5980不可説不可説転体突破!(5s)
こんなのだめだ、絶対人権クラス昇格だよ!!
他のキャラはつまはじきにされて、絶対『このゲームはただシホがバッタバッタ斬り続けるいわばシホゲーとも呼ばれている』とか評価のウィキサイトだと言われるオチになるって……いやそんなゲーム誰がする。
【AI:シホは新たに『そんな時、魔物は実感した。モンスター界隈は彼女に蹂躙されているのだと』の称号を手に入れました!】
シホさんそんなに大きくないからね?
ネルトリンゲン、よくウェブ小説に出てくる街モデルとか言われているけれど、そんな大きいシホさんいたらこの世の終わり。
あ、ていうかシホさんはそんなことするわけないか。
ってなに言わせとんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
サーセン。
ともあれ。
よ、容赦ないな……シホさん。というかあなたの実力ならあのブラックバウンサーの動き、止まって見えていたのでは。納刀すると後ろに控える私の方を振り返り。
「ここの魔物、思ったよりやはり強いですよ」
なお例外は除く(シホさんを見ながら)
「……時を止めてある程度大型魔法で対処したのですが、予想以上に強力ですねこれは」
「それはそれとして……。うん」
3人でミヤリーの方を向く。
「な、なに⁉ 全部私のせいだって言うの? そのみんなでかわいそうな目で見ないでくれる?」
「いや、全くそんなことないんじゃあない? ……ほらこれが案外、利点に働いて……いたり」
「よそ見なんかしてはぐらかしているつもりでしょ! はいはい、私がわるーございました! ならこんな面倒くさいところ早く抜けて目的の場所にいくわよ!」
皮肉言われながらも二つ返事で自ら先へと進むミヤリー。
別に彼女が全て悪いとは言い切れない。ゆえに私の注意が行き届いていないばかりに。
「……その待ってくださいよミヤリーさん! 足下には気をつけないと」
「そうだぞ、奈落に落ちても私知らんからな」
声をかけながら大大陸への進路をたどり、歩みを進めるのだった。
それにしても道のりが長く感じる。
☾ ☾ ☾
歩いていてわかったことがある。
AIさんに測定してもらったところ、どうやらここにいる1分という時間は現実時間でいう一瞬の秒数にしかならないという。
つまりいくら長居しても時間の隔てはあまり発生せず、気に病む必要はないということだ。
(時空が云々、時間の遡行時間が云々とか、マンガやアニメでよく聞くけど、実際に体感したのは初めてだよ)
ある程度進んで数分。
やたらとブラックバウンサーが頻出。
幾度にも渡り戦闘を繰り広げ、危ない橋を渡りながらも順調に歩みを進めた。
「ここ……ブラックバウンサー多くね? さっきからやたらと遭遇してばっかだけど、速すぎて手に負えないんだけど」
「……私も魔力が切れそうで……うぅあそこで魔法を使いすぎましたかね」
一同、同じ思いを寄せ少々悪戦苦闘。
最初に突っ走りすぎたのか、スーちゃんはとても息を切らしている様子だった。
体感的に今1時間ほどか、疲れているのはスーちゃんぐらいだが、私からしたら魔法使いの魔力切れは所持金が0になることと同義語なので、彼女のことも視野にいれつつ彼女の回復を重きに置きたいところだが。
こんな所に全快できる場所でもあれば。
そんな都合よくは。
「うーむ、どこか……どこかないか」
辺りを見渡してみて、着目できる場所はどこかないかと探す。
くまなく遠目から1か所1か所丁寧に凝視させ見る。
果てしない空洞には…………うん? 少し開けた場所が。
仲間と共に、その場所へと駆け寄るとまた札が立っていた。
「読みますね『えぇと、これに手をかざすと体力を回復できま す!』」
\ガタッ!/
えぇと。
ってなんだよ、その不確信でやる気な〰〰〰いその出オチはよぉ!!
余分に低脳でわざとらしい改行をし、なぜか縦読みさせているが。どっかのガセネタじゃあるまいし。
というか、反射的にズッコけただろうが! あと頭が痛い。
「なにあんた、急に転んでんのよ」
「う、うるせえ! 放っておけ」
続きを読む。
「『なお、この先再び選択肢が出てきます。片方は念じた場所へ直接通ずる道、もう1つは強敵が待ち伏せる修羅の道』……どうやらまた慎重にならないといけないみたいです」
看板から淡い光が発されると、疲弊仕切っていた体が徐々に回復する。
「……疲れが消えて……しかも魔力が元通りです」
「やったね、スーちゃん。連戦が長丁場になっていたから疲れていたところじゃない?」
「ごもっともです、あれでもだいぶ魔力使いますからね。ちょうどいいタイミングで現れてくれてよかったです」
「無理強いはよくないよ?」
「……重々承知です、でもありがとうございます」
「うむ、よろしいぞよ、スーちゃん」
「……愛理さん時々おじさん口調になったり変な語調になりますよね」
「スゥーちゃん? 今際の際って言葉ぁ知ってるかなぁ~」
「……ブルブル。し、知ってますよ! 言葉を撤回します、今のはなしですみせんでした。ですからその……コワイ笑顔しないでもらえると……」
そんな悪気があったわけではないのだが。
スーちゃんが怖さのあまり、泣き顔になり聞こえないぐらいの大きさで鼻をすすり始める。
やばい、すげぇ私悪いことしちまった。とりあえず私の横隣(スーちゃんとは反対側)にいる2人にはばれないようにせねば。
「ご、ごめんって。そんな悪気があったわけじゃ」
「ヒックヒック……。本当ですか?」
「うさぎジョークだよ、泣くのはよしな。ほらこれでも使って涙拭きなって」
能力でハンカチを作ってそれをスーちゃんに渡す。
「ヒックヒック。……な、泣いて損しましたよ。笑うべきですねあはは、まんまと騙されちゃいました」
とスーちゃんに笑顔が戻ってくる。よかったよかった。
札が消えると、轟音と同時に通路が現れ先へと進んだ。
言われた通りに進んでいくと、2つの扉が。
「おい、ミヤリー今度は勝手に進むなよ」
「わ、わかってるわよ。看板の内容は中大陸に在する魔法大都市グリモアの建設者の名前は?1、グリモア、2、マギシアナ。……えぇと1番じゃないの?」
するとスーちゃんが答えてくれる。
「……いいえ、たしかに表面上はグリモア様という名前ですが、実際はマギシアナ様が本名です。よく間違えられるんですよこれ。……ですからここは2番が正解です」
「よし、それじゃスーちゃんに賛同して2番の扉開けるよ」
あれってそのグリモアという名前が本名じゃあないんだ。
本名は、マギシアナ……と。
多少の語感違いだと思うが、空耳で定着した名前とかそんな感じだろうか。
というかなんでここでグリモア関係の問題が?
関係ないけど、久々に各国の検証シリーズ動画久々に見たくなったわ。
あのずいぶん前にお気に入りに追加しておいた動画の主さん、垢BANされてないよな、ホタル流れてないよね?
ちなみに店内の閉店で流れるやつはワルツのほうらしいぞ奥さん。
どういう基準で問題が出るかはわからないが、名前からしてとても強そうな名前。
国を作った人みたいだから、仮に存命していたら指を1本弾くだけで敵が消滅しそうなくらいに強い印象。
なんなんだ、そのマギシアナとかいう強キャラ感極まりないそのネーミングセンスは。
出身である、スーちゃんの言葉を信じて2の扉を開ける。
「う、光がッ」
開けた瞬間、まばゆい光が私たちを包み込んだ。
視界が鮮明になっていくと。
「抜け……ましたか?」
「み、みたいね……てかデカ」
日の差す大陸。
広大な緑地がどうどうと広がり、自然豊かな香りが四方を伝うように漂ってきた。
幾多の山々がそびえ、向こうを見渡すと大きな街が左右上下どちらからも見えた。
どうやら無事、盤石を乗り越えることができたようだ。
初めて見る地形、生き物など目に映る物全てが初めてで目を見張る価値が十二分にある。
「ここが大大陸、近くに大きな街が見えるな。あそこに行ってみようぜ」
仲間を連れ、範囲は狭いが建物が全体的に大きい街へと向かう。
回復したとはいえ、長い戦いの疲労を癒やすためにそこへ駆け込むことにした。