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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第1章 うさぎさんの妹、異世界に初陣する
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199話 うさぎさんの妹、帰り道にて

【重いのか軽いのかそれは一旦置いといて】


 一路道を進み街へ戻る私とぴょん吉。

 偉大な魔法使い――マギシア先生との出会いは意外だったけど、これが続けざまに起こることを踏まえると……うーん考えたくもないようで……なりたいような。

 彼女のような大物がこの世界にあと何人いるかわからないけど、そういう人も中にはいるのだと頭に入れておくのが賢明かもしれない。


「この世界にあと……何人すごい人が出てくるんだろうねぴょん吉」

「ぴょん……?」


 頭をひねりながら、疑問を浮かべるぴょん吉。

 相変わらずぴょん吉がなにを考えているかはわからないが、なんとなく素振りで察しがつく。

 どうなんだろうね、と率直な気持ちを私に送っているように見える。


 向こう見ずといった度合いだけど。

 まだ物語は始まったばかりだし何が起こるかは私にはひとつも検討がつかないし、今は前進するのみね。

 決してフラグを立てにいってるわけじゃないので、それを予めここで断っておこう。


 草原。

 グリモア一帯から離れて数分が経過。

 昼食も済ませてあと少しすれば、ブレイブ・タウンの栄える地帯へと踏み入れることができる。

 来た道をもう一度回るのをわずらわしいと思った私は、アクターの機能を使って最短距離を計算で割り出し近道ルートを確保してもらった。

 おかげで大勢いるモンスターの道を戦闘せず突破し、街の近くまで足を踏み入れることができた。

 いや、厳密にはこれは帰ると表したほうがいいのか?

 まあいいや。


「ぴょん!」

「うん? どったの」


 私が考え事をしていると、ぴょん吉がまた敏感に反応。

 耳を逆立てて足音を感知してくる。

 ぴょん吉の耳はレーダーいらずの一品物。けっしてこの子を物扱いにしているわけではないけど、手間が省けてなにより。

 これでいつでも危険を感知してくれるから、事前の動きをこっちが先読みできる。

 うんとても便宜性がいい。


 指し示す方向を表すように、何度もそちら(歩いている方向のちょうど右側)で何度も叫ぶ。

 そこには。


「? 魔物ね。少し大きめの感じの」


 なんだろう。

 四足歩行の、馬ではない……これは。

 よく神話などで出てくるキマイラ……だっけそういう合成獣が地を踏み荒らしている。

 火で焼き尽くしたであろう焦土の跡もあり、遠くから見てもまがまがしい恐怖が伝わってくる。


 なんでこの世界に大型モンスターが多いんだろう。

 私は別に狩りゲーが苦手などと言ってるわけでは決してない。

 え……正直になったほうが気が楽ですって?

 しらんがな。


 でも弱いだけの世界だと逆にそれはやりがいがなくなるので、二次元的に考えればこれは十分にあり。いやそうでないと困るかな。

 ゲームでもあるでしょ? 倒したモンスターのEXPをn倍……こほん、モンスターのリセマラだとか周回プレイ、ゲリラなどあるよね? ようするに討伐するモンスターはそれなりに強いほうがレベル上げとしては効率がちょうどいいって話。

 だから大きい有無のことを今さら気にしていても、この世界では生きていけない気がする。

 二の足を踏むことを卯乃葉は考えるのをやめた……以上QED。


 さてと。


「ぴょん吉、肩に」

「ぴょん!」


 ぴょん吉を肩に乗せると、私は物怖じもせずそのいろんな生き物の部位が混在したモンスターの前に、堂々と出る。

 近くに立つと先ほどよりも雰囲気が増してくる。

 少々怖い気もするけど、意を決してそのモンスターに声をかけた。


「ふん、そこの暴君!」

「グッ?」


 頭が竜のような模様柄。

 巨大な尻尾を上下になぎ払うような動作は、まるで敵……もしくは獲物を待つような仕草に見えてくる。

 串刺しなんかにされないわよね、血が刺さった瞬間体から噴射と。いやまず考えなくていいでしょそういうことは。


 禍々しい感じが殺気を放っているが、卯乃葉さんはべ、別に怖がってなんかいないわ!

 

「少し、私と戦いなさい…………って!」

「グゴオオオオオオオオオオオオオォ!」


 私のセリフも遮るように、手に持つ巨大な鈍器で叩いてきた。

 せっかく構えようとしていたのに……あーあ聞く耳を持たない系か。

 なら待つという言葉は知らないわけですねわかります。


「おっと!」


 ドスンと瓦礫が舞い上がったと同時に、鋭い反射神経で避ける。

 な、なんというDQN。

 パーカーの専売特許の1つである、跳躍能力を活かして瓦礫を反射角のごとく踏み台にして駆け上がっていく。


「これでも食らえ! とりゃあ」


 浮いている瓦礫の一部にパンチを入れて弾き飛ばすように敵の方へと攻撃。

 続いて違う瓦礫も今度は反対の手で


「とりゃ……とりゃとりゃとりゃとりゃ!」


 弾きに飛ばす部位を切り替えながら攻撃し続ける。

 その一片一片は、空から降り注ぐ刃。それが猛スピードで落下するわけだから1回ごとの攻撃が強烈だ。


「グゴゴゴゴゴゴッ!」


 大きな尻尾の振り払いで、真上から落下させた破片は全てかき消された。

 ち、単純にデカいだけってわけじゃないのね。


「……でも少し詰めが甘かったようね!」

「⁉」


 あの手この手はちゃんと考えておかないとね。

 瞬間移動を使って敵の腹部へと詰め寄る。

 そして先ほど予めポケットに収納しておいた、大きな瓦礫を取り出して攻撃に出た。


「吹っ飛べてやぁぁぁぁぁッ!」


 拳を引いて瓦礫ごと力を込めてパンチを入れる。

 高い圧力が働き、そのキメラは空中で転げ回るように飛んでいく。

 周りの木を何本も倒し、ドミノ状態に飛び回ったのち地面に落下。

 最終的に私の前にある、林の方に飛んでいったので即座に追いかけた。



「えぇと……あそこかな。荒い息が聞こえる。…………ってAIさん?」


 近づいた拍子に感知してきたけど、じゃあさっきはなんで反応なかったのって話だが。

 え、それは言わない約束? 気にしたら負けってことにして……よしそうしよう。


 AIさん起動。

 おっと今回の出番、意外と遅かったね。


 図鑑を見開き敵の詳細データを拾ってくれた。


【タイラント 説明:合成獣の1種。中大陸一帯に広く生息する人工生命体。多種に渡る生物の部位が組み合わさった個体が何種もいるので、1種には留まらない】


 うーん、つまりたくさんの種がいるってことね?

 この大陸全てに生息しているとか怖くない? ……生きて帰れるわよね。

 この大きさで群がる数がいるか。

 私に無双しろってことなの?

 特攻兵じゃないんだから。……愚かも承知のうえでこの仕様なのかしら。


 しばらく歩くと、木を払いのけ周りを見渡すタイラントの姿があった。

 何者かをくまなく探しているようだが。


「明らかに私を探してるわよね?」


 まず肉眼では見えない鬱蒼の中にある茂みへと身を移しているが、さてどのように攻撃をしかけるべきか。

 卑怯な手を使って勝ち逃げなんてことも、なきにしもあらずといった感じだが。

 そんなことしたら、勝ったという感覚が実感できないのでは?


 ままよ。

 首を横に振りながら考えを消し。


「ならここは正面から対面したほうがよさそうね」


 勝ち逃げというのも少しつまらない気がしたので、身を前に乗り出した。

 比重を置きながら、威嚇する敵の方へとゆっくり近づいていく。


「グググ……」


 歩一歩を慎重にと、息の荒さを目立たないように動き。

 距離を置きながら、相手の出方をみて体制を立て直す。

 さて、こんなデカブツが何匹もいるんじゃ、人は安心して暮らせないだろうしね。ここで私がとっちめてあげるわ。


「じゃあ行こうかしら……たあああああああああラビット・パーンチ!」


 超音速を越える速さで敵の背後に回り、地面を強く蹴り飛び上がった。

 拳に力を込めて渾身の一撃を敵の上半身部分へ。

 助走をつけて、空中で力強いキック。


「ラビットキック!」


ズドドドドドドドドドーンッ!


 四方、異なる方向から移動してはまた蹴りを入れ、また違う方向に移動しては蹴りを入れるという錯乱攻撃をしかける。

 敵は大きな体が災いしたのか、目はおろか体は私の移動速度についてこられない様子だった。

 ふん、そんな低ランカーがやりそうなマヌケな動き、私は死ぬほど見てきたから手に取るようにわかるわよ。


「これでどう!」


 最後に正面へと移動して。


「グゴォ!」

「遅い!」

「ッ⁉」


 竜と思わしき3本指で、向かってくるこちらの攻撃に応戦しようとするが。

 その攻撃を意図もたやすく掻い潜り、敵の腹部へと移動。そして上方に見えた敵の頭部にあたる顎に主眼をおいた。


「アッパーでも使うか。ふんぬ、とりゃあああああああああ!」


 速度を落とさず、空中を蹴って渾身の太もも蹴りから繰り出すアッパーで敵を殴る。


「グゴゴゴゴゴゴゴォォォ!」


 効果は抜群。 

 突き飛ばすと、木をドミノのようになぎ倒していき私から遠ざかっていく。

 これでもかと、飛んでいく敵に先回りで正面へ瞬間移動させ追加のパンチ、そして蹴りを入れる。

 力一杯にタイラントの体を地表にひきずるように転がすと、勢いよく飛び跳ねながら近くにあった平地に倒れ込む。


「やった?」

「ぴょん……」 


 さすが馬鹿力。これで仕留めただろうと敵の正面へと着地。

 最後まで気を抜かないように待っていると。


「ぐ、グゴォオ!」

「う、嘘でしょ……」


 ヤツは傷を負いながらも、まだ平然と動ける体力があり再び立ち上がった。

 不意を突くよう尻尾を私のいるところまで伸ばすと、私を巻き付け距離を縮めていく。

 あれだけ痛めたはずなのに、まだあり余った底力があるだなんて、敵のタフさには驚きを隠せないが。

 そのとき。


「ぴょん!」

「? ぴょん吉? ……ッしま!」


 思わずぴょん吉はそこから飛び降り危機を脱する。

 思いがけないことに私の後ろに近づいてきたのは、敵の長い尻尾だった。

 ぴょん吉の警告を聞いた時には既に遅く。


「くっしくじったッ‼ ……こんなデカブツに動きを封じられるだなんて」


 そして猛攻が始まる。


「ぐぁ!」


 ドスン!


 巻き付けられたまま、地面に強く何度も叩きつけられ強打。

 宙に振り回されると、鈍器で滅多打ちにされてしまう。


 くっ。でかいわりに頭が回るとか聞いてないわよ。

 並の人間だとまず即死であろう、深手を負ったけど十分……十二分にこれは痛い。

 無理に尻尾を解こうとするなら、尻尾は緩むどころかキツく縛られていく一方である。


 完全に詰みでしょこれ。

 ピンチになにのんきに考え事なんかしてるかって? ……いやだってさぁ。


 この状況下でパーカーを作れるようならもう既に……。


【できますよ】


 え、なんだって。

 閉められていて、上手く声が出せないけど目の前にAIさんからのメッセージが。

 なにが?


 画面上に表示された露骨な文面。

 これがいったいなにを示すのだろうと、AIさんに続きを詰問する。

 声を出さずとも会話を交わすことができるので、口を使わなくてもいいところが利点。

 でも体自体は振り回されているので微弱な痛みが体を伝う。

 辛抱、辛抱よ私。


 もしかして、私の考えていること? それを読み取った上で可能だということを言いたいのかしら。


【えぇそうです。このラビットパーカー(GEN2)は行動が抑制されている状況下でも、オブジェクトとして実行できます】


 ほう、おもろ。

 ならちょっと作ってくれるかしら。コイツを打ち負かせるパーカーを。

 いいかげん、このハメ攻撃にもうんざりしてきたところだし。


【承知しました】


 私はAIさんに、パーカー合成を代わりにやってもらうことにした。

 素材とするのは鉄、そして違う鉄を複製させて……重力ってどんなのだったっけ……ま、いっか。

 新たに作った鉄から成った砂鉄を合成の素材にして。

 いざ合成。


【合成完了 新たな素材を入手】


 アインド(成分:砂鉄)



 そしてこれと、鉄をスロットに装填させ変身。


【AIⅡ:鉄! アインド!】


「ラビット…………パーカーチェンジ!」


 苦し紛れのもかかわらず合言葉を口にする。


 パーカーの色が変わっていき、黒と灰色、そして白いラインの入ったパーカーになる。

 同時に尻尾が緩んだと感じた私は束縛から脱出し着地。


【AIⅡ;チェンジラビット! グラビティ・ラビットパーカー!】


 私は新しいパーカー。

 その名もグラビティ・ラビットパーカーこれを用いて反撃をしようと身構え。


「さて、少しいたぶることになるかもしれないけど」


 先ほど同様に地面を叩き、地を巻き上げられるが。


「ふん!」


 私が念じると、巻き上がった土は全て浮遊状態となり、落ちることなく念力でも受けたかのように固定化する。

 浮かび上がった瓦礫を増やすように、私は四方拳を叩き込んで瓦礫の数を増やす。


「オリャ!」


 ボドォォォォォォォォォ!


 それはまるで、幻想的な絵が実態化したようなありさまで、天高くまで数多におよぶ瓦礫が宙に浮かんだ。


「これを踏み台にして……ぴょん吉!」

「ぴょん!」


 かけ声に応じ現れたぴょん吉は私の肩に再び乗る。

 浮いた瓦礫を足場として、高く……またさらに高く登る。

 地上を見下ろせるぐらいの高低差まで、たどり着くと次の攻撃をどうするかと考えに浸った。


「さて、さっきのお返しをきっちりやらないとね」


 このグラビティ・ラビットパーカー。

 それは重力を自由自在に操る、強大な力を備えたパーカーであり。

 私はこれをどのように使って倒そうかと考えてにふけるのだった。



☾ ☾ ☾



 改めて能力を確認。


【グラビティ・ラビットパーカー 解説:重力を自由に操れるラビットパーカー。対する者(物にも)に莫大な重力を与え、鈍重にさせたりすることが可能】


補正: 防御50%↑ 攻撃20%↑ 素早さ30%↑


【固】反重力:対象物及び接触した物にかかっている重力を自由に変更させる。

【固】加速度を急激に上げる。

【固】元の重さより差が開いている相手に対して与えるダメージが、その差が開いているほど超増加する。

【技】ラビット・グラビティプレス:広範囲の超重力攻撃。敵を押しつぶしてしまうほどの透明な重力板を出現させる。

【技】ラビット・グラビジョン:数十秒だけ、超重力空間を展開させる。味方はこの干渉に引っかからない。



 とまあ、ハイスペックな重力もりもりなパーカーでして。

 先ほど、瓦礫が無重力を受けたのはこの能力が影響したもの。

 固有の技はともかく、どうやらこの重力を付与させる力という――反重力は私が指示しない限り解かれることなく、実質永久的に重さを変更している状態となる。

 この力、正気でそんなこと言っているの?


「これで、魔力の消費0っていう性能……ただのぶっ壊れじゃない」


 下にいるタイラントを見て私は。

 躊躇いもなく、宙に浮く瓦礫を蹴り高い反発力に変更させて移動。

 空中なのにもかかわらず、一瞬で目的の場所へ移動できるからとても楽。


「ふん、そらよーと! ラビット・パーンチ!」

「グゴォ⁉」


 飛躍して放ったラビット・パンチは敵の視角をとらえ、巨大な体に拳を力強くいれた。

 連続で拳を続けざまに与え敵を一方的に翻弄する。


「これでどうかしら!」


 最後の一発で敵を突き飛ばすと、勢いよく転げ込む。

 さきほどの二の舞にもなりそうだが。


 地上に降りた私は、立ち上がるタイラントを見ながら言う。


「さっさと来なさいよ。尻尾でも掴めるようもんならするといいわ」

「ぐ、グゴオオオオオオオオオオオオオォ!」


 人語伝わっているのかしら。

 こういうのをネットでやると、舐めプだとか言われそうだけどこれはちゃんとした敵への挑発。

 あえて怒らせてこちらに矛先を向けようという魂胆よ。


 長距離から放つ強烈な怪光線。

 おっと光線ときたか。少しは頭が切れているようだけどまだまだね。

 禍々しい色の砲撃がこちらに向かってくるが避けようとせず。

 その攻撃を直撃寸前までずっとその場から動こうともしなかった。


「そんな攻撃! もう策はちゃんとできてるのよっと!」


 地面を足で軽く踏み、いくつかの瓦礫の塊を浮かせる。そしてそれを結合させるように付けて巨大な盾へと形を変える。

 同時に固さも変えて強固な障壁に。

 地面にある土で作った物で、はたして強力なあの砲撃をこんなふざけた物で防ぎきることができるのだろうかと、少々愚鈍な気持ちにもなったが。


 しかし。


 接触した瞬間、盾はその光線を遮り全てかき消した。

 防ぎ終わったあと、即座にただの瓦礫となり地面へと落ちる。


「二度も食らうわけないでしょ」

「グゴゴゴゴォ!」


 また尻尾。

 先ほど私を巻き付けた尻尾が再びこっちに来る。

 螺旋を描きながら、何メートルあるのかと長いくらいの尻尾は、とても巨大でそれは私の体が小さいほどであった。

 でもまあ既にもう策はとってあるんだよね。


「さて、ちょっと空を飛ぶ遊びでもしましょうか(パチン)」


 指鳴らしをすると、敵の体が宙に浮かび空中へ。

 同時に尻尾の攻撃が遮断され、私を退いていく。


 先ほどパンチと同時に私の合図とともに、無重力が発生する時限式の仕掛けをつけておいた。

 単純に脳筋パンチしていたわけじゃないから。私は姉さんは違って少し頭は切れるタイプだから。これぐらいの仕込みなんて朝飯前。


「ぴょん!」


 今だ、とぴょん吉が合図してくる。

 寄り道もほどほどにしとかないとね。

 それじゃそろそろ終わらせよっか。


「うん、それじゃいこっか!」


 地面を軽く蹴り飛ばして、瓦礫を浮かす。

 足蹴りによって浮いた、瓦礫を足場にしてパルクール。

 拳に力を込めて……距離が狭まった今だ!


「うさぎなめんじゃないわよッ 10乗ラビット・パンチ!」


 超重力を受けていた拳をもろとも受けたタイラントは。

 宙に突き上げられたのち、火花のごとく爆散するのだった。


「やれやれねぇ。本当に」


☾ ☾ ☾


 寄り道を続け数分後。


「あ、ほらぴょん吉街が見えてきたよ」

「ぴょんぴょん!」


 久々(たかが3日だけど)に見慣れたブレイブ・タウンを一目すると、自ずと安心感がこみ上げてきた。

 長いようで短かったような感覚。まるでウラシマ効果でも味わったような気分ね。

 門番さんに帰ってきたことを報告し街の中へと入ると、私とぴょん吉は早々博士の待つ研究所へと向かい。


「はぁ博士今なにしてるんだろ」

「ぴょん?」

「あ、いやなんでもないわよ。……ていうかぴょん吉そんな遠い目で見るような顔やめてくれない?」

「ぴょ、ぴょん?」


 少々馬鹿にされているようにも、い、いやぴょん吉がそんながあるわけ。


 博士にいろいろ聞きたいことたくさんあるけど、まぁいいやと。

 軽い息を漏らしながらも、ひとときの安心感にふける私なのだった。

 

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