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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第3章 うさぎさんと棺桶に眠る少女
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19話 うさぎさんと置き去りにされた少女 その1

【昔におけるRPGの蘇生代は高いから非常に面倒】


 ゾンビ。

 それはゲーム・アニメ・映画など、幅広いジャンルに出没している不死身の生命体である。

 恐ろしく醜悪(しゅうあく)な見た目から、子供達には怖がられているホラゲやゾンビゲーではメジャーなモンスターだ。

 私も小さい頃、人気映画で見たことあるが当時の私からしたら、それは刺激の強いもので心臓に悪かった記憶。

 今だと平気に見られるくらい、私の耐久力は上がったが昔だと普通に泣いていたと思う。


 して。


 先ほど入手した、謎棺桶を周りの人に注目を集め引きずりながら、私はシホさんと無事に水の都に着いたのだが。

 あのさ恥ずかしいからそんな怪しむような顔で私をみないでくれよ。


「そのなんていうか、大きな声では言えないけど、注目集めてない大丈夫?」

「……だ、大丈夫ですよ! ほ、ほら愛理さん海が綺麗ですよ!」

「な、なんなの今の間は。話逸らしているよねそれ、私をなんか適当に誤魔化そうとしているんじゃあないのかな?」

「さあなんの話のことやら」


 重厚感ある棺桶を引きずっていると周りから話し声、こちらを耳打ちする声が聞こえてくる。

 私を気遣おうと、シホさんはそんなことないと言い張っているけれど。シホさん、言いにくいんだけど隠せてないからねそれ。


 綺麗な水が流れる、水路の方へと話題を変えそちらの方へと指さしてくる彼女。

 私の話を蹴り視線は目映い水面へ。

 急に話を打ち切ったがここは一旦、気分転換でもしようぜと彼女がそのように促していると見て取れた。

 なんて気前がいいこと、私もこんな大人になりたいです。


~マリン・タウン~市街


 ここは通称、水の都と言われている街。

 正式名称はマリン・タウン。


 タウンハウスとテラスハウスが建ち並び、中心部に清い海が流れ、その海の向こうに違う家屋が見える。

 海面は、ゴンドラを漕げそうな面積があって、潮風により何隻かのボートが小さい波に吹かれ揺れていた。

 耳から聞こえてくる海の音色が気を和やかにさせてくれる。


 雰囲気はオランダみたいな感じがする。

 学校の教科書で網羅したくらいだけど、実物をこの異世界で堪能するとは夢にも思わなかったことだな。


 足を運んでいると、街を行き交う人々がわんさかといた。

 水の都という名に相応しいわけか、やたらと漁業人・漁師の姿がとても多い。

 競り売りだっけ、この世界でもそういうのやっているのかな。……ってマグロあるのかこの世界に。

 町の通りには、さまざまな屋台が並んでいる。……水揚げされた新鮮そうな魚が何匹かいるが私の知らない種がたくさんだ。


『水の都 マリン・タウンへようこそ』


 壁に1枚の張り紙が貼られていた。

 下の方には見所の紹介など、様々な観光案内的なことが綴られている。


『おいしいマリン・タウン特産の魚介料理こちら!』

『金のつりざお差し上げますお求めはこちらまで』


 ご丁寧に案内図まで提示されていた。

 一部胡散臭いようなチラシもあるがそれは放っておく。

 見た感じ至って普通だな。


「シホさん、ここって至って普通の町っぽい?」

「はい、なんでも水産が盛んな大都市だそうですよ。聞いた話によるとここの魚料理美味しいみたいです」


 水産の盛んな街ねぇ。

 まあ海に面している街だから盛んじゃない方がおかしいか。

 見た目がグロなものでないならオフコース。

 どれ、日本人の私に好ましい味なのかいちど試食してみようかな。

 だがその前にやるべきことがある。


「食べたいのは山々なんだけど、まずはこれを片付けないと……」

「歩いている途中、存在皆無でしたよね……忘れるところでしたあはは」


 私が後ろで引きずっている、通称呪われた棺桶。

 禍々しい見た目から、冒険者の間ではとても恐れられ。しまいには変な噂も出回るようになった。

 どうせ作り話でしょ、とツッコミたくなるのだが正直半信半疑。


「本当にこんなんが危険な棺桶なの? パンドラの箱みたいな認識されちゃっているのこれ」

「パンドラノハコ? まあいいです……それにしてもほんといつの物でしょうかね。とてもボロボロですが」


 時々、言われたようにうなり声が聞こえてくるし、まるで意思があるみたいに揺れたりもする。

 なんだこの胸騒ぎは。


 人々が私を訝しむ目線がとても気になる。

 あの私達そんな悪い人じゃないんだよ? 魔王の手先でも人間に化けている魔物とも違う。

 まあ、尋常ではない強さに『コイツにんげんじゃねーだろ』とか心の中で言われてそうだが。はいワロスワロス。

 とはいうものの。


「次から次へと変なことばかり」

「? 何か言いました」


 小声で愚痴を漏らしながら事を進める。


「あ、待ってくださいよ! 人多いんですから置いていかないでくれます⁉」


 人混みの中、早足で私を追いかけてくるシホさん。

 すたすたと小走りで、行き交う人による集まりを踏ん張りながら潜り抜ける。

 お、ほんの数秒で私に近づいてきたぞ。


 市場の通りに入ると、そこにも街に住む人々が群がっていた。

 食材を買う人から、日用品を買う人まで様々。

 店はどれもRPGでよくみるような、布を屋根代わりに伏せたお店や、木のテーブルで作られたお店など多様とあった。というか水産が盛んな街なだけあって街の規模でかすぎだって。



☾ ☾ ☾



 街中の、ぽつんと立つ道具屋に立ち寄った。

 開放感のある屋台で、店の奥には様々品々が並んでいる。

 薬草と……。なんだ、今でも折れ曲がりそうなこの厚みがない破格の剣って。

 紙で製造されたらしいが、何に使うんだよこの剣。誰得。


「すみませ~ん」

「はーい。おっとこれはまたなんか可愛い子がきたねぇ。お連れのお姉さん、非常に美人じゃないか」

「そんな大したことないですよ」


 誰もいない、店のカウンター越しで一声上げてみると奥から、二十代くらいの天然なお姉さんが出てきた。

 ……思った人となんか違って驚いた。てっきり小太りなおばさんが出てくるのかとばかりに。

 断髪としていて、疲れを取らず徹夜明けでそのまま出社したサラリーマン、そのように半目開きをしこちらの様子を伺っている。

 ちらちらと手元の薬草を整理しながら、こちらの方を見てまた手元の薬草を整理。交互に視線を変えながら応対。


……客って神様じゃなかったのか? おい、店員とはいえもう少しちゃんとやってください。お願いします(マジで)

 ボサボサと頭を掻きながら一拍おき。


「すみません、ここに蘇生薬あります?」

「……あれかー(ガサゴソガサゴソ) ……全然売れなくてー(ガサゴソガサゴソ)在庫処分しようとしていたんだけど、買ってくれるのか。ちょっと待っててね」


 謎のやる気のないような棒読みで答える店主。

 客からここクレームとかきてないよね? もとい、売れていない訳ってお店の店員による態度に問題があるのではと思うが、そこは言わない約束で。


 ガサゴソと後ろの箱から何やら漁る道具屋の店主。


きええええええええええええええええええ↑↑


「ふぁ⁉ 変な声聞こえてなかった? カニバニズム、グロは割と大丈夫だけどR18Gだけは絶対むりだぜ?」

「すみません、人を盾にしないでくれません? アールジュウハチジーという言葉がまた聞き慣れないのですが……大丈夫だと思いますよ」


 人の奇声かと勘違いするような音が、店の奥から響いてきた。反射的にシホさんの後ろにすがり身を隠す態勢をとったが心臓に悪すぎる。

 フリゲの音源素材を配布されているような断末魔だったが、このお店ってまさか売りなのか?



 騒音が落ち着くと、店主が奥から再び姿を表す。

 1本の至って普通な、いかにもザコモンスターが落としてきそうな雑草。どうも探し物は見つかったようだが。


 前触れもなく、私達の方へそれを手渡してくる。

 これが……え、蘇生させる薬草? イメージと違って高級感ないんだけど一応……そうらしい(困惑)


「これが蘇生薬だよ~」

「蘇生薬これが。……ちなみに薬草との違いはあるの?」


 瓜二つでどう見ても違いがよくわからない。普通のリンゴと蒼森リンゴ並に区別がつかない。

 すると店主はポケットから1本の違う薬草を取り出す。

 束に分かりやすく『薬草』と書かれたラベルが。


「妙に1段階暗い緑の違いだよ。でもなぜか他の人は、『分からないと』言うから束で分かりやすく名前で書いたんだけど」

「「分かるか!」」


 それに関しては激しく同意。色彩に詳しい大学卒の人でない限り分からないと思う。

 誤差という何階な壁が私の頭を狂わせるのだ。……どのように判別しているのだろうか。

 辛うじてとりま、売れ残っていたその蘇生薬を購入。


「まいどーまた来てね~」


 手を振りながら、見送る天然なそのお姉さん。

 見送った後、呑気に傍に置いてあった新聞を見開き読書を始める。

 中年のおっさんかよ。


 少し町中を歩きながら。


「それでどうします?」

「ここでは、目立ちそうだしね。街の外でやった方がいいんじゃあないかな」


 変な宗教と思われたら嫌な気分だし。『謎の宗教うさぎ教団にはご注意を』

なんて言われるようになれば、私は指名手配されるかもしれない。

 某ゲームならチートコードを使い手配度を0にして、やりたい放題できるが現状それらしきものは見当たらないので諦める。

 あっても使わないが。


「賛成です、それでは場所移しましょうか」


☾ ☾ ☾


【縛りプレイを続けるには根気が必要】


 というわけで再び外を出てきました。

 被害の及ばず何もない、平坦な場所にその棺桶を置いて。

 今更だが、こうしてみると焼却前の棺桶みたいだな。これでバチが当たっても私は反省しない。残念ながら私は我が道をいくスタイル。常識を弁えろという悪言は、私の固有結界で無効にするのでよろしく。

 そしてその蘇生薬を取り出し。


「後はそれを使うだけですね」

「そうだね、何が出るかわかんないけど」


 復活草の束を解く。

……使おうとしたがその結束束の裏面に何か書いてあった。

 えぇとなになに? なんじゃこの長ったらしい長文は。


『ご購入ありがとうございます。本商品の説明です。ちゃんと読んだ上でご使用ください。 使い方 この薬草はよく普通の薬草と違うご質問をお客様から声が寄せられるのですが、この答えは簡単です。1段階緑が暗いか暗くないかの誤差です。私のような玄人にでもなれば自然と分かるようになるのでご安心ください釣りではないですよ決して』


 はあ。下には長文がずらりと。

 厨二くせぇ変な単語も中に詰まれており正直、あくびが出そうなくらい目を細める羽目になった。

 あーあ読んでられるか、こんなもの日が暮れちまうよ!


『本題に戻りますがまず崇拝する神への祭壇ゴッド・エデンとの契約を交わし、常闇に封じ込められた神を現世に連れ戻します。そして最愛の女神エンプレスの加護の力を使い、薬草に念じます』


「長過ぎ簡潔にしてどぞ」

「目がチカチカしてきますね」


 変なゲームやりすぎなのでは。

 廃人な私がいえた筋ではないが、お経並になげえ。


『あ、ちなみにここで冥府のハデスに念じますと逆に効果は反転し死に直結してしまいますのでご注意を。さてそれから念じる言葉なんですが3秒で早口でこう言ってください“薬草よ 我が従者たる仲間を神聖なる力により目覚めさせたまえ”と。……まあ今言ったことは店主の単なる創作設定ですので真に受けないでくださいガセネタです。本題に戻りまして本商品の本当の使い方は……以下省略』


 蘇生させるだけでそんな変な呪文を…………ってただの作り話かい。

 さっきまでのガチそうなのなに。ただ言いたかった的なノリか⁉ 何がしたいんだよ全く。

 店主が中二病なんじゃないかと疑わしい変な謎の呪文。

 あんな大人絶対なりたくねえ。


 本題の使い方の説明、それを直訳すると。

 普通に使ってねと書いてあった。

 こんな説明要らないだろうと言いたいレベル。なんだろう店主変な宗教にでも入っているのだろうか。

 そして蘇生薬を私は、その棺桶に向かって放り投げる。

 すると棺桶が目映く光り出し、ガタガタと震え始める。発生した衝撃波が数秒続き、中から煙が吹き出る。



☾ ☾ ☾



【早寝早起き朝ご飯。寝る子は育つから夜更かしは厳禁】


「な、なんですかこれ!」


 目の前をさえぎるような突風。

 辺りに生える木々は激しく揺さぶり、その中身の恐ろしさを露わとしていた。

 

 一体何が出るんだ。

 私はパンドラの箱を開けてしまったんじゃないかと同時に、後の心配を予感させこの収まりそうにない胸騒ぎをなんとかしようと。

……だがもう遅い。


 このままでは。


【愛理の脳内イメージ】


(うがああああああ!)

(やっぱりゾンビだったじゃないですか……あの時棺桶なんて置いていくべきだったと思いますよ……ってわあああ シホ瀕死)

(シホさああああああああああん!)

(うがあああああああああああ!)

(こんなはず……では……ガクっ 愛理瀕死)


【留年になったので異世界生活することにしました ~完~】


 GAME OVER


 となってしまうかもしれない。

……いやそんなわけないか。


ガタッ。


 棺桶の中が開き、古めかしい物音が響いて。


ガタン。


 何やら生き物? が出てきた人型のシルエット……これは。

 もうゾンビでもなんでもきやがれ相手になってやる!

 と何やら人の声が。


「……むにゃむにゃ。あぁあ。やっと娑婆の空気を久々に吸えたわ。うーん……」

 

 金髪の、目をこすりながら背伸びをするがごとく現れたのは、黒いゴスロリファッションのような服を着た少女だった。

 だれぞこいつは。


 小手調べとして、試しにからかい挨拶してみる。


「え、あなた……がゾンビ?」

「失礼ね! ちゃんと生きているわよ!。……まあ100年間ずっと眠っていたけどね」


 バカにされ半ギレする謎の棺桶少女。

 その様子は、高校によくいそうなJKな口調だが何者よ。

 でもどうやらちゃんとした人間な模様。

 というか今、100年眠っていたとか言わなかった? 100年経っているのになんで老けてないの。


 棺桶ってそういう仕様なのか。

 あくびばかりしてるけど、死んでいるのにもかかわらず、なぜ眠くなるという矛盾に頭を悩まされる一方である。


 コールドスリープ的な仕様が、この世界の死亡という概念に備わっていたりするのか。

 なるほどわからん。

 この際だから死んでいる、あるいは眠っているのかの片方どちらかにしてくれよ。

 と思わんばかりの仕様っぷりであった。

 そして私は彼女に名を聞き。


「あなた名前は?」

「……あぁ私はミヤリーよ」


 その漆黒の身を包む少女は、自ら名をミヤリーと証言した。

 果たして、この少女と棺桶に一体どんな深い関係があるのか。

 100%深い事情があるとは考え難いけど、またフラグ立ったかなこれ。

実は人間でしたね、読んでくださりありがとうございます。

今日も1日始まりましたが皆様どうお過ごしでしょうか。

昨日と違い、空を見上げると晴れ渡る空が広がっていますが、絶好の外出日よりなんじゃないでしょうか。まあ私はこれと言って行く場所もなければ当てとなる場所のどこもないので暇な毎日ですね。

さてようやく新キャラを出しましたがいかがだったでしょうか。

最後辺りでちょろっと出しましたが外見も可愛いそんな設定です。

※この子にもちょっとした呪いがかかっています。

あ、因みにこの世界の教会は蘇生の概念がなく、基本的に魔法か道具で蘇生させる設定ですので大して冒険者が立ち寄る意味はあまりないです。

さてミヤリーその正体は如何に。後半は今晩にでも出す予定ですのでまた見てくださると嬉しいです。ではでは。

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