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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第1章 うさぎさんの妹、異世界に初陣する
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189話 うさぎさんの妹、魔法の都市へ その1

【魔法がはびこる国、なんか憧れるわねぇ】


 博士に頼まれ次に目指した場所は魔法大都市グリモア。

 情報によればこの大陸で一番大きな国であり、魔法の文明が大きく発展した所で一般的な魔法使いとはひと味異なる者が多い模様。


「まだまだ先は長いわね」

「ぴょん」


 途上の険しい道のり。

 マップ機能を使って場所を確認しているが、目的地まで距離がまだまだある。

 本当に魔法の国なんてあるのかと、少々半信半疑。


 歩みを進めていると小さな林へと行き着いた。

 草木が繁茂するその場所へと踏み入れると、ひたすら道に沿いながら前に進む。

 やたらと切り倒された木くずや、よくわからない破片が散乱している。

 進みづらく歩一歩が重く感じなくも。


「く、草ばっかりで鬱陶しい」


 私が愚痴をこぼしていると。


「ブッシャャャャャャャャャャャャャャッ‼」

「うっさい!」


 無意識に声のしたほうへと強烈なパンチを放つ。


 ドスン!


「へ? あれ、さっきのモンスターだったの。……悪魔系のモンスターみたいだけど」


 足下を見ると、無残にも私のパンチによって倒された悪魔モンスターが横臥していた。

 得たいの知れない血痕が地面に散乱。どうやら倒してしまったみたい。あれそんなに力入れていないのになぁ。


「無意識に倒すとかなにこれ」


 ごめんね、私力の加減よくわかってないからさ。

 さてよくわからないその悪魔さん、あなたは運がなかった。


「やっぱり反則レベルね、このパーカーは」


 引き続き歩みを進める。


【この先、グリモア地帯。その先を進めば魔法大都市グリモア】


 立て札を確認すると目標はすぐだと確認。

 とグリモアとは別の方向に謎の遺跡のようなものが見える。


「なにあれ」


 陳腐で廃れた石の遺跡。

 神殿のような造りになっている。

 年月が相当経っているのか、所々コケが目立つ。

 誰も手入れしてないのかしら。


「趣向をずらすのはよくないわよね、早く目的地へと行かないと」


 帰りにもう一度来るかと考えた私は、ひとまずグリモア目がけて前進。

 林を抜け草原を抜ける、余分な遮蔽物はパンチで木っ端微塵に破壊したけど問題ないわよね。おっと一際目立つ大きな一角が。

 大きな近未来都市が私の目に飛び込んでくる。


「はへぇー。立派な国じゃないの。さっすが魔法の都市って言われているだけあるわぁ」


 聖堂のような建物がたくさん連なっている。

 金箔塗装もしっかりと丁寧に施されており、手入れはよくされている程度だった。

 上空を飛んでいるのは……魔法使い? ほうきに乗りながら飛んでいるけれど昔見た映画みたいに『飛べ』と言えばすんなり飛んでくれるのかしら。

 感慨深い。


「ま、魔法の知恵ってすごいわね。目を見張るものが……情報量が多すぎる」


 門前まで行くと、法衣を着た魔法使いが私に寄り添ってくる。

 こわばった顔でこちらを覗き込み、パーカーを見回したのち視線を合わせた。


「君は?」

「卯乃葉って言います。そのここの国へ入国したいんですけど」

「ランクは?」


 たしかグリモアってAランク必須だったわよね。

 でも、中大陸出身の冒険者かつカードを発行していた場合、その大陸に限りどの場所にも入れるという中大陸ならではの待遇があったはず。


「ブレイブ・タウンからです。と、通れますよね」


 ポケットの中にしまっておいた冒険者カードを手渡すと、まじまじと見て確認し始める。

 時々、唸るような声でいたが、また疑いでもかけられているのかしら。

 一通りに見終わると、私に冒険者カードを返し。


「……ふむ、確認した。確かに中大陸で発行された冒険者カードだな」

「よし……それじゃ」

「あと、君どこかで……あ、そうだ前に来たあの生意気な小っこいうさぎ小娘に似ているなぁ。身長はあんたのほうが高いが」


 あ、絶対姉さんのことだ。

 小さいって……でも実のところそうだもの。姉さんのコンプレックスだしね。

 姉のコンプレックスはこの世界でも万国共通……末恐ろしい。


「そ、そうなんですね。偶然じゃないですか? 世の中似た人って何人もいるって聞いたことありますし」

「た、確かに一理ある。でも他にいたかなそんな人は。まあいい、もし困り事でもあれば、グリモアの保安の者――グリモア協会を訪ねるといい。金のグリモア印のブローチがどこかに付いているはずだ」


 国の外壁で認知したけれど、星印の中に綺麗な三日月の形がありそれを取り囲むように複雑な魔法陣が描かれている。これがグリモアの国旗みたい。

 このグリモア協会というのは、私達の世界で言う警察や国の治安を守る――保守的な秩序を守る人たちのことだと思う。


 金のグリモア印……この門番さんにも付いている。よく見ると丁度腰回りに。

 実際のブローチは、三日月の部分は綺麗な宝石で覆われている。

(これがグリモアの紋章。独特な意匠ね……コスプレでもいいから1度付けてみたいかも)


「ありがとうございます、ではそろそろいきますね」


 街中へと入る。


 街の中は中世の街並みが永遠と続いていた。

 上空には箒に乗りながら、仕事を行う魔法使いさんたちが。


「ガチの魔法使いじゃない。こんなにたくさんいると壮観ねぇ」


 ギルドまで街の景観を眺めながら物色する。

 鍛冶屋、魔導具店、喫茶店など多岐に渡る店が続いていた。


「そのギルドってどこにあります?」

「えぇとこの通りをまっすぐ行くと、グリモア様の石像がいくつも並ぶ大きな建物があるからそれを目印にするといいわよ」

「ありがとうございます、心の優しい魔法使いさん」


 試しに、空を飛ぶ魔法使いさんの1人に道を尋ねる。

 年端のいかない若そうな女性で、その人はしぶることなく快く受け答えしてくれた。


……グリモア様って誰かしら。

 崇拝する神様? 的な。道中図書館みたいな場所が見えたから時間があったら行ってみようかしら。


 それらしき威厳のありそうな、威風漂わせそうな魔法使いさんの石像を何台も見つける。


【こちら、グリモアギルド。グリモア教会が承っています】


「ここね」


 グリモア教会ってこの国を守る団体組織で、警備やら国の安全を見守っている特殊な団体って聞いたわね。

 どんな人達がいるかはまだ知らないけど、それはこの扉を開けてから。

 厄介事が起こるみたいなネガティブ思考はひとまず置いておき、まずは中に入らないと何も始まらない。


☾ ☾ ☾


 ギルドの内装へ入ると、厳粛な聖堂風の天井が広がり周囲にはギルドの光景が広がっていた。

 他のギルド同様、カウンター越しで受付けの人と話す人がちらほら。

 だが、やはり魔法の国なだけあって魔法使いばかりだ、外套を着る魔法使い多いわね。


 1着私にも! ……マジカル卯乃葉参上! ……なーんて言ってみたり。

 恥ずかしいからやめよう、自分でも恥ずかしくなるだけよ。しょんぼり。


「えぇと、どこかしら? これを届けるには」

「ぴょーん」


 辺りを一瞥し目的の趣旨にあった場所を見つける。

 すると中に配達物関連の受付けに目がとまった。


「えーと【宅配物はこちらへ ギルドグリモア部署配達委員】あそこか。よしそれじゃ行ってみようか」

「ぴょん!」


 屯する魔法使いさんの中を苦労しながらも進み、配達委員の所へと向かう。

 なんというか、夏イベによく見る満員電車の中みたいにしみじみと感じる。

 どうやらこの国だと、ギルドの人が仕切っているのではなく、グリモア協会という部署が担っているみたいね。


『店内ほうき飛行禁止』


 という注意喚起も。

 それはそうよね、ぶつかったりしたら大変だもの。

 さてさて。


 博士から聞いた話によれば、いろんな係があるみたいだけど何種類あるのかしら。


「すみません、ちょっといいですか?」

「あらこんにちは、かわいらしい服装で……こちらギルドグリモア部署配達委員ですご用件をどうぞ」

「えぇとこちらなんですけど」


 博士から預かった品を取り出し差し出す。


「これをここへ届けるように言われたんですけど」

「ふむふむ……あぁこれ」


 受付けの人が配達物を見回し始めると数秒で把握。

 納得がいったかのようにうなずくと、視線をこちらに向け応対する。


「あのサーセン博士ですね、なにが入っているかわかりませんけど宛先が」

「な、なにか問題でも?」

「いえ、問題はないんですけど……国の外にある民家に住んでいるお方でして」


 まさか遠回りさせられたやつ?


「そ、そんな苦い顔しないでくださいよ。おそらくあなたをここに来させたのはこれを渡すためでしょう……少々お待ちを」


 すると後ろの収納棚からある物を取り出したのち、再びこちらにやってくる。なにやら鍵のような物があるけれど。


「これは?」

「はい、その人の家は少し厳重でして……これがないと家のドアが開かないという特殊設計の家でして。」


 それどんな家よ。

 近づいたら灰になるとか厳重セキュリティでも施されているわけ?

 どうやら、街の外だから『私達は届けられない』みたいなことが前提に言いたいようだけど、はあ私が届ける側なのね、億劫。


「なぜそのような家なんです? あきらかにわずらわしいにおいしかしませんけど」

「えぇと家主の意向ですね、拘泥があるか知りませんけど、作る際、いくつも専門の者にオーダーメイドしまして……。その防犯がとても強固な家となっているんです。ひとつあげますと、異空間に飛ばされてしまう落とし穴が出てきたり……」


 怖すぎて声もでないわ。

 どうしてそうなった。用心深いという程度ではすまないように見えるけれど。

 でもどうして、街中ではなく郊外に?

 まるで、誰とも会いたくない引きこもりの陰キャね。


「じゃ、受け取ります」

「その……気をつけてください。えぇと」

「卯乃葉です、こっちは相棒のぴょん吉」

「……卯乃葉さん、この国でも威厳のある人なのであまり粗相のないようしてもらえると」

「わ、わかってますって。では行ってきますから」


 直接渡してこいみたいな言われ方したけれど、どんな人が住んでいるのかしら。

 なんでわざわざ国を離れ、隠居生活をしているのか意味不明だけど訳あり……案件なのか。

 国から少し出て私とぴょん吉は、協会の人が教えてくれた道を頼りに記された場所へと向かうのだった。

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