188話 うさぎさんの妹、返済のため頑張ります その4
【社会見学はとても重要だと思う、だってほらにわかとか言われたら嫌じゃない】
「ご苦労だったな卯乃葉くん、まさかあっさりと依頼を1つ済ませてくるなんて」
「たいしたことはないですよ」
依頼を済ませ街へと戻った。
ギルドで報酬を受け取り、博士の待つ研究所へ。
ちなみに受け取った金額はだいたい50万――大金貨50枚相当の額である。
残りは半分の50万になったが、案外やってみると楽しいかも。
「どうだ、この世界には慣れたかね」
「そうですね、まだ実感は持てていませんけど馴染んできてはいると思います」
姉さんを探しに来たという目的を忘れそうになるか心配だが、今は博士の家に居候してもらっているしひとまずそれはおいておくけど。
机に座る博士は。
「あ、そうだ。君の姉……愛理くんの手がかりが少し掴めてな」
「なにか収穫あったんです?」
「あぁ。並大陸にいる私の友による情報だが」
遠い友達みたいな存在みたいな感じか?
「一行を連れてその友の邸宅に“また遊びに来た”と言っていた。1人がダンジョン系のゲームでぎゃーぎゃー叫んでいた……だとか」
「へぇ……そ……と今なんと? さらっと“また”って言いませんでした⁉」
なんで異世界にゲームがあるのよ。
ここってファンタジーの世界よね? 時代錯誤もいいところだけど姉さんはすでにパーティを組んでいるってわけね。何人なんだろう。ちゃんと職業は分担しているのかな。
「あぁ彼女らは常連だ。私の友は重度なゲームオタでな、愛理くんが前に住んでいた世界からこちらへ転生してきた人間だ、対話を交えて以降持ちつ持たれつといった関係柄だ」
「ゲームオタってSNSじゃあるまいし(小声) ……あいや活気が良さそうだな~ってあはは」
少し目を見張られているが、それっぽく誤魔化す。
というかなんでこの世界にオタクの概念が存在するのよ、聞いてないよ先生。
絶対その人、転生か転移経由で来た感じの人だ。それと重度なオタクとみた。
もうこの世界おわりだよ、サ終直前のクソゲーの類語だ、詫び石10万個でもいいからくれ。すりぬけは覚悟して天井はしたいから。
私と姉さん以外にもこっちの世界に来ている人がいるだなんて。
少々欠如してはいそうだけど人はよさそうなイメージ。オタクでも根はいい人多いイメージだし会ってみたい気持ちはあるわ。
デュフフ系の人だったらどうしよう。薄い本みたいになんか卑猥なプレイされたり……あの私触手プレイとか絶対だめだから。……他も嫌だけど!
「じ……時代錯誤……悪い人ではなさそうですね。それでそれ以外は?」
「ない」
「なにが?」
「悪いがそれだけだ、並大陸のリーベル・タウンに住んでいるいこと意外なにも」
ソースの出所よぉ!
どうやら先はまだ長いってことかしら。
私長いチュートリアルって苦手なんだけど! インストして始まったら即座にスキップ使う派、あと何日かかるだろうか。……リセマラしたい……。
【できませんって】
AIさんからの回答。あ、そうですか……諦め。
「そんな眉をひそめないでくれ、これでも精一杯だぞ?」
「拗ねてませんって、それにまだ返済が残っていますよね、今はそれを優先的に行いましょう」
「やはり卯乃葉くんは心強いな」
とは言うものの、次はいったいなにをすれば。
仕事をやり終えた社員が次の務めを探すような感じだが、はてさてどうしようか。
ギルドにも高い額のある報酬依頼もなかったしうーんこの。
「そういえば、村の人からグリモアって単語が聞こえましたけどあの人達って何者なんです? 聞いた感じ魔法を巧みに扱う種族らしいですけど」
昨日聞いたグリモア族の話題を持ちかける。
間接的ではあるものの、魔法を自由に扱える最強の種族だということは理解したけれど、彼らは何者だろうか。
これを期に聞き出すのも悪いことではないだろう。
この世界に何種の種族が存在しているかわからないけど、触れることによって見識を深めるのも悪くない気がする。
「グリモアか。この中大陸――ここより北部のエリアにある大都市に住む魔法の種族だよ。彼ら彼女は他の魔法使いとは違う秀逸の魔法使い族で地名度は世界的に高い。なんだ興味あるのか?」
「えぇ。この目で少し魔法使いって者を見ておきたくて」
少しの希望を抱きながらも勿体ぶる物言いをする。
べ、別に魔法が使いたいのような、過度な希望は抱いていないわよ?
小さい頃、よく魔法少女系のアニメを見ていたけど姉に馬鹿にされた記憶もある。
中にはPVがあまりにも詐欺すぎるアニメ――“鬱アニメ”も見たことある。ほら、実はもう魂を持っている変身アイテムに貯蔵されていて、それを壊したりなくすと本当に死ぬとか……。メリーバッドエンドとかおもんない。
正真正銘のファンタジー観点の魔法使いでこれはいいのよね? 半信半疑だけれども。
「……ならちょうどいい、少しこれを届けにいってくれないか」
「今度はなんですか?」
博士は宅配物の包み箱のような物を手渡す。
ネット注文でよく送られてきそうな物だが、中になにが入っているのよ。
エr……ごほんごほん、薄い本でもなさそうだけど発明品かしらね。触ってみた感じこわばってはいないけど卯乃葉さんはすごく気になります。
まさか爆弾とか……ありえないか。
「研究で作った品物なんだが、これをグリモアまで届けてほしいのだ。ギルドがそこにあるから話を通せばおのずとわかってくれるはずだ」
「は、はぁわかりました。これを届ければいいんですね?」
「うむ、報酬もきちんと払ってくれるよう私が頼んでおこう頼んだぞ」
これで返済額の足しになるかわからないけど、グリモア族を知る良い機会だし私は博士の依頼を断ることなく引き受けた。
お小遣いも少しもらい食料もある程度受け取ると、私とぴょん吉は再び街の外へ出て北部に存在する大都市、グリモアを目指すのだった。
魔法使いか知らないけど、このうさぎさんを見くびってもらっちゃ困るわね。
面倒事にならないといいけど。