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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第1章 うさぎさんの妹、異世界に初陣する
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185話 うさぎさんの妹、返済のため頑張ります その1

【ほうれんそうって大事だと思うならちゃんとやるべき】


 急に入ってきたのは、ギルドの役員だった。

 見た目がいかにも厳粛な公務員といった感じだけど。

 ゴリ押すように、博士に請求額が見積もられた用紙を1枚押しつけている。


「ぐ、不覚だ、私とあろう者が」

「なにが私とあろう者が……よ(小声) いいですからいくら必要なんです?」

「ふむ……その」


 言い知れぬ様子だけど、それほどな額なのだろうか。

 一生かけても返済できない額だったり?

 私は渡された用紙を覗き込み内容を確認した。




『旧ブレイブ鉱山無断破壊での賠償について あなた様は事前にギルドの申し立てをせず、許可なく使われていない旧鉱山を破壊いたしました。よって、大金貨10枚を請求しますので1か月以内にお支払いを済まされるようお願いします』




 えぇと。

 金銭感覚がないけど。


(この世界の通貨ってどれぐらいの価値だっけ)


 この前、ギルドの張り紙で見た、通貨の表に書かれていた情報を想起してみる。


 たしか、100円が銅貨、1000円が銀貨、10000円が金貨。そしてその上をいく、大金貨が100000円。

 中には豪族だけが持てる高金貨――1000000円の物があるらしいけど。


 改めて現状の金額を照らし合わせ、金額を頭で換算してみる。


……。


って。


100万⁉


「ひゃひゃひゃ⁉」

「どうした卯乃葉くん、急に大声を出して」


 甲高い声を出すと、隣にいる博士は喫驚させ声をかけてくる。

 妙に詮索したがるような、視線を感じるのは気のせいだろうか。視線が一瞬ニヤリと微笑む様子が(うかが)えたが。


「いや、のんきに言っている場合ですか! 100万ですよ、100万! ミリオン! オリオン座じゃないですけど100万円です尋常じゃないですか!」


 100万って、高すぎるにもほどがあるわよ。

 大丈夫と言っていたじゃないこの人。まさか博士ってそういうの知ったこっちゃない系のキャラだった⁉️

 山ってそんなに重罪なの?


「えぇーそのサーセン博士? お支払い可能ですか?」

「そ、そうだな」

「なんで私の方を見るんですか?」


 助けを訴えるようにこっちを見る。

 どうしろと。

 


「言っておきますけど、頼んでもなにもやりませんよ」

「ちぇ。……その今金を切らしていてな。月を跨ぐがちゃんと返す」


 あ、これ絶対約束守らない系のやつだ。

 おざなりとした言葉としてそれを受け止めるべきか、はたまた建前的なものとして聞くべきか。

 訪問してきた、役職らしい意匠の目立つスーツが特徴な女性はまだかと腕を組みながらと待っていた。


 なら私が、この淀んだ空気を自ら率先してあげなくては。

 踏ん切りよく固唾を呑み込むと、博士と話す役員の人と会話を交えた。


「そのすみませんね、悪気はなかったんですけど知らなくて」

「あなたは? ……あぁ最近なったばかりのうさぎ冒険者さんでしたっけ」

「はい、でも決してこれは変な趣味を持っているわけでは」

「いえいえとんでもない、小耳に挟んだ程度ですけど知ってますよ非常に実力のある、うさぎを模倣した服を着た強い冒険者がこの街にいると。あなたのことでしたか」


 既にギルドに私の情報伝わってる⁉︎

 田舎の影響力みたいで末恐ろしいわね。

 怪訝すらさせないお姉さんは、上手く受け答えしてくれた。

 空気になりつつある、サーセン博士をよそに事を運んでいき。


「1人の冒険者が顔面酷い、打撲を受けた状態でギルドの者と話しているのが見えました。たまたまそこであなたの名前を聞いてしりましたが。盗み聞きではありましたが『変な卯乃葉とかいう、うさぎ野郎に飛ばされてきた』と」

「まさかあの時の…」

「? どうしました」


 絶対あの通せん坊してた男よね。

 というかどうして私の名を。


「あ、いやなんでもないです」

「そうですか。……えぇ話を戻しますけど卯乃葉さんに悪気がなくとも博士、願書は出してくださいと言ったはずですよ。……その卯乃葉さん、すみませんがお支払いは可能でしょうか? もしよろしければ手伝ってくださると、嬉しいのですが」


 扶助してください、と言わんばかりの頼みねぇ。

 私が考えておくと、言葉を返すと博士を一度、睥睨し再び私の方に振り返った。


「では、お願いしますよサーセン博士、期限守らなかったら免許剥奪することだってできますから……では」

「おいま、まて!」


 踵を返さずに女性は研究所を離れていく。

 それをただ、ひたすら見ることしかできなかった私たちは深刻な状況に陥っていた。

 『ほんとなんてこった』よね。


「その、博士返せるんですか?」

「返せるには返せる。が、食費が全てなくなる……よって断食を余儀なくされる」


 呆気に苛まれながらも、仕方なしに彼女の言葉に耳を傾けると仕方なしに答え。


「はぁ。なにかとにおいはしましたから……それで次は何をすれば?」


 迷っていてもしょうがない。

 執拗に云々とした張り合いは私にはそぐわないこと。

 ましてや口喧嘩などはもってのほかである。


 喧嘩という戯言には姉と来る日も行っていたので、こういうのには呆れるほど慣れている。なのでこのようにして先を催促させようと思考が働くのだ。


 さぁどんな下命をされるのか。あぁでも命を投げるような行為は避けたいわね。

 博士は私の肩にそっと手を乗せて言い。


「すまない、高難易度クエストでも受けてきてくれないか。たしか今ちょうど5つくらい出てたはずだ……可能か?」

「どれくらいの難易度かはわかりませんけど……やってみますよ、お金足りないんですよね。てきまーす!」

「う、卯乃葉くん!」


 もはや全ての運命は私に託された、みたいな王道展開になってきたけれど大丈夫かな。

 矮小になりそうな博士に背中を見せながらも、外へと颯爽と出向く私なのだった。


☾ ☾ ☾


 よくウェブ小説にある、異世界系におけるもので転生・転移系があるわよね。

 書き手によっていろんな描写がされるけど、ギルドってやはり鉄板中の鉄板。

 私も気分転換に度々読んでいたけれど、時間の余興になった記憶がある。


 それでも稚拙な文は、流し読みしていた悪い自分がいるけれど実際のギルドってこんなに。


「へーマンガや小説である光景をそのまま絵に描いたようなものねぇ」

「ぴょん!」


 (たむろ)する人──冒険者に気を取られていると、ぴょん吉が足のタイツを引っ張ってくる。

 危うく棒立ちするところだったわ。

 こういうのをアンカリングっていうのね。


「ごめんごめん、金欠気味なサーセン博士のために資金稼ぎしに来たって言うのに私がサボっちゃだめよね」


 ゲームでもよくありがちな話。

 冒険に夢中しすぎて、素材や所持金がなけなしの量となり貧しいプレイを余儀なくされることを。

 私はチートばかり使っていたから、これは間接的な意見になるけれど、これは事前に防ぐようにコツコツと稼ぐほうがいい。


 初めて来た私でもちょうどいいクエストないかな。

 サーセン博士によると、掲示板に貼り付いている紙を取りギルドの人に持っていけば受注できるらしい。


「えりすぐりしろって? 私満員電車苦手なほうなんですけど」


 しぶりながらも、歩一歩踏み込もうとするとAIさんが反応。


【AI:サーチ機能を使いますか? 遠くからの情報(用紙の中身・裏面の情報を閲覧する)が使えますがどうしましょう】


 それ、カードゲームでやったら絶対ヌルゲー化するやつ。

 インチキくさい機能だけどこれを使えば。


 その機能を使うと、遠くに貼られている無数の紙の情報がウィンドウのデータとなり反映される。

 数ある中から私は、じっくりと内容を確認し選ぶ。


「えぇとなにこれ『文句言われました、助けてください』って。豆腐メンタルすぎない? 気をもう少し強く持とうよ」


 しょうもない依頼を馬鹿にしながら眺める。

 数分、探しに目を動かしているとある一件の討伐依頼が。


「これだわ。どんなランクでも受けることできるらしいけど強いモンスター倒すだけで高金貨50枚だって。目標金額には程遠いけどやってみようっと」


 程よいクエストを見つけたので、それを選び受注。

 巨大な害悪モンスターが、村一帯で大暴れしているみたいだからそれを倒すことにした。


 さて、どんなモンスターなのかお手並み拝見といこうかしら。

 目的地である村を目指しながら、私は異世界初となるクエストを受け歩みを進めた。


「待ってなさいよ、必ず全部返済してやるんだから!」

 

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