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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
新・第1章 うさぎさんの妹、異世界に初陣する
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183話 うさぎさんの妹、素材調達に赴く

【ゲームの取説はちゃんは邪剣ちゃんと読もうね】


 言われた通り、サーセン博士が記してくれた地図の場所へと足を運ぶ。

 事前の準備をしよう……と言いたいところだけど、あいにく金欠だからなにも買えない。


 サーセン博士に少し硬貨を貸そうかと言われはしたけど、借りをつくるのは私の道理に反する行為だからやめた。

 姉さんなら躊躇わず、もらっておくみたいなことを軽薄に言い出しそうだけど私はそうではない。

 姉妹だからといって、必ずしも全て似ている偏見は持たないのを私からおすすめする。

 図々しく聞こえるかもしれないけれど、私はこういうタイプだという認識してもらって結構よ。


「ん? あれ、この前会ったうさぎの……」

「あぁその節はどうも。これからちょっと野暮用でして」

「そうか、中大陸はそこそこモンスターも強いから気をつけていけよ」

「はいはーい」


 街の門をくぐり抜けると、あのときの門番さんが立っていた。

 外へ行く私に反射的に声をかけてきたので、思わず私は会話を弾ませる。

 どこへいくのかは告げていないけど別にいいよね。

 だって他人事だし、端からいろんなことを詮索されたら非常に億劫だから。


「ぴょん!」

「それであなたもついてきたのね」


 私の後ろで飛び跳ねながら歩く子動物が1匹……いや厳密には1羽が正しいか。

 ぴょん吉は、いつもながら楽しそうに地面をジャンプする。

 野生の本質的な意思なのか、どうなのかは検討もつかないけれど元気そうでほっとした。


 博士に研究所で待つように言ったんだけど、聞いてくれず仕方なくつれてきた……ついてきたんだけど。


「いいぴょん吉? あまり私から離れないでね……ここは私たちの前いた世界とは少し違うから」

「ぴょん?」


 内容を上手く理解できていないのか、首を軽く捻らせるぴょん吉。

 獣医さんでもほしいところだ。私でも動物語はわからないよ。


「さて、モンスターはなにかいないかしら……左、右、上、下……うんあれは」


 少し寄り道にはなるものと知りながら敵を探す。

 この世界に来てから、まともに戦っていない。だからそのための試運転をしようかと。

 そんな風に立ち並ぶ木々を熟視していると、茂みの方にうごめく物を見つけた。


 流体をした奇妙な物体。

 その場を飛び跳ねながら、なにかやっているようだがあれはいったい。


 するとAIさんの図鑑機能が起動する。


【スライム 解説:水体の体が特徴なモンスター。特に問題となる注意点は特にないが、あなどると水死する可能性も0でないので要注意。大陸によって色が違う】


 あれスライムなんだ。

 でも、緑色をしているけど……なんでだろう。

 大陸によって色が違うってあれかな、生物の中にも変異種がいるみたいに、この世界にも地域や場所の違いで色や形が異なるのかしら。


 あまり生物学には詳しくないけど、解釈的にはだいたい合っているかな。


 ぴょこぴょこ。


 おや。

 スライムがこちらに気がついて寄ってくる。

 体をねじらせて攻撃態勢。

 おぉ、攻撃する気満々ねぇ。ならその期待に応えてやってやろうじゃないの。

 姉さんではないけれど、戦い押っ始めようかしら!


「デビュー戦ってことね……ぴょん吉あなたはちょっと下がっていなさい」

「ぴょん……」


 私の指示を聞いてぴょん吉は後ろへと引き下がった。


 スライムは私に水玉を飛ばして攻撃。

 貧弱な水鉄砲。見るからに避けるまでもないとみた私は微動だにせず、

 その場に立ち止まってプロアクターMAXを取り出した。


「ふん、そんな貧弱な攻撃なんて恐るに足りないわ。このまま倒しちゃってもいいけどまずはパワーアップ素材がほしいからね……その成分もらうわ!」


 プロアクターMAXを差し出すと、スライムの飛ばしてきた水玉をことごとくと吸収させ、1つの凝縮された球体へと変化する。


 これがプロアクターMAXの拡張機能。


 触れた物の成分を吸収させアイテム化させる。

 別に倒す必要はないんだけど、これは最初の試し……つまり試用運転で使ってみたんだけど。

 上手くできたかな。


【抽出成功。スライムから水分と鉄を入手しました】


 うわぁ丸ごと入手できるんだ。

 そういえば、水の中に鉄も含まれていたわね。

 でも、このままの量だと心もとないから度量を変更してっと。


「プロアクターMAX起動。鉄の数値を10倍に」


 数値を自動的に変更させて、一部の水を使用し適量の鉄を入手し数値をも調整。


【転換完了:水500gを鉄500gへと変換しました】


 銀の塊が浮かび上がって完成。

 うわ、これ中途半端に、どんな物の量でも変えられるとか反則すぎない?


「……!」

「あ、忘れていたわ……そんじゃこれを返してっとはい!」


 水の一部のエネルギーを数十倍にして返した。とたんに洪水級の流体が発生しスライムへと直撃。

 先ほど放たれた水玉とは比べものにならないくらいに速球、加速度は桁違いであり肉眼では判断できない速さを出しながら直進。

 避ける暇もなく、スライムの体へと直撃すると瞬く間にその身に風穴を開ける。

 軽症だったのか、少しすると自己再生を始め、近くにちょうどあった岩の上に避難。だが治癒が不完全だったのか、体力に限界がきている様子が目でうかがえた。


「スライムのクセにこざかしいわね。でも……」


 シュン。


 加速度を急上昇させ、草地を駆ける。

 光速のごとくスライムの方へと距離を詰めると、腕を引いてアッパーを用いて宙へと放りなげた。

 回転するスライムの軌道を見計らいつつ、照準を1点に集中させ拳を握った。


「技を言えばいいのね……ラビット・パンチ!」


 本当はこの10乗のほうを使いたかったけど、まずは基本技からということで。

 私の放ったパンチは、見事スライムに直撃し反動によりさらに上へ上にと急上昇。

 そして広大な空の彼方で、小さな雨を作るようにして爆散。


「極端にやっぱり上げすぎたかなぁ。……でもいいかぁ今さら調整し直すのもあれだし」

「ぴょん!」


 初戦闘の戦利品は水と鉄。これを使用することでこのパーカーを強化できるようだ。

……あとでじっくりそれは試すとして、今は目的のところへ行かないとね。


 歩く途中で私は思った。

 このパーカー、私が思った以上に想像を凌駕するハイスペックな品物だと。

 通常フォームでこの強さだから、チェンジなんてしたらもっと強くなるに違いないわ。

 少々、不安を寄せながらも、ぴょん吉と共に目的の場所へと進む私だった。


☾ ☾ ☾


「あそこか」


 しばらく歩くと大きな一角が見えてきた。

 遠くにそびえ立つのが、この大陸一帯で鉱石がたくさん掘れると言われている山だ。

 こちらからはまだ遠くに位置するのだが、そう時間はかからないだろう。

 博士は、そんなに急がなくていいと伝えてくれたが……どのくらいの時間で帰ればいいだろうか。


 とりあえず目的地まで歩く。

 考えていてもしょうがない。立ち止まるぐらいだったら歩くのが私の性に合っている。


「にしても、あんな場所に大きな鉱山があるなんて意外ねぇ。というか鉱山をじかで見るのは初めてだけど実物ってあれほど大きいんだ。いいぴょん吉……暗いから危険だと思ったらすぐ私の傍に寄るのよ?」

「ぴょん!」


 暗いかどうかはわからないが。


 付いてくるぴょん吉は、重々承知に高らかに返事をする。

 できればこの子を戦闘へ巻き込まず、ぴょん吉には安全なところで私を見守ってほしいんだけどね。だって飼い主からすればとても心配だもの。


 さあ、あともう少し……もう? あれ誰かが道を隔てるように仁王立ちで立っている。

 白シャツを着ている、筋肉質な男性が1人。

 見るからに図々しそうね。


「待ちな、うさぎのねーちゃんよ」

「あ、はい。……とそこどいてくれませんか? 先を急いでいるんですけど」

「はぁ? 先に行くだと。……ぶっはははは! そんなふざけた格好でか? 冗談はよせ」


 なに私とぴょん吉の方をチラチラ見ているのよ。

 どうでもいいんだけど、唾が何滴か飛んできたんだけど汚いわよ。

 大人しく見送ってくれれば済んだものの、さすがにこれほどまで、指差され駄弁をとばされると頭にくるわよ。

 あまり感情的にならないように自分を制御はできるけど、無意識に拳へ力が入ってくる。


「からかうのやめてくれません? もしどかないって言うなら」


 身構えて戦闘態勢を取る。

 そんなにムキになってはいないけれど、自分にとっては大きな弊害――遮蔽物のように感じる。

 いいからどけと……本心的にはそのように告げたい。

 矜持というものがあるのだろうけど、戦闘は……避けられないのかしら。


「ふん、小さいうさぎも連れているようだが……その様子じゃ無理だね」


 なにが。

 驕るような態度が非常に腹立つ言動ね。


「ここは弱いヤツが来る場所じゃない。俺はこー見えてAランク冒険者だぞ? この前大きなモンスターを倒してギルドのヤツらから称賛された……そう俺は最強の冒険者としての素質があるんだ!」


 あーあこういう。

 これって、小説や漫画で数話でやられてしまうフラグ建築士じゃないの。

 そういうのは、何度も修羅場をくぐり抜けた者がやっとのことで言えるセリフ。


 見るからに、あくびが1つこぼれてきそうなくらい説得のきかない言葉である。

 このマウント厨が。


「へー」

「俺は天才だ! 誰にも俺の進化を止めることはできん……ここを通り通りたければそれ相応の……」


 言葉を遮るように、思いっきりはらわたに拳を叩き込んだ。


「せーの……10乗ラビットパンチ」

「ぐ……ぶぉぉぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉ⁉ な、なんだこれは……ぐごわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 キラン。

 空の彼方に一番星が瞬く。

 出オチ1コマのごとく姿を消す。

 おぉ哀れ哀れ。


「わかりやすい死亡フラグだというのに……なんて哀れな人なの」

「ぴょん」

「そうね、軽視するほうが悪いわよね。長丁場になりそうだったからパンチに使って正解だったわ」


 同時に、ちょうどいいサンドバッグになりそうだったから試運転したまで。

 10乗ってこんな威力なのね。……一瞬ロケットでも飛んだかと思ったわ。

 名前も聞かず、見る知らずの人を空彼方まで飛ばしたけど大丈夫かしら。

 

 まさにDQN。でも名乗らないほうが悪いでしょ。

 当たり前よねぇ。


 道が開けたので前進。

 雑草や木々が繁茂しているけど、所々小動物の姿も見える。

 私が視線を向け、軽く手を振ると動物達は危惧して私の前から姿を消す。

 嫌われているのかしら。


「ぴょん……」

「だ、大丈夫よ問題ないわ。ぜーんぜーん気にしてないんだからね!」


 自分でもこの“ツンデレさ”を克服しようとしているのだがいまだに進展なし。

 人は言ったこととは逆のことをする……言わばブーメランをする傾向にあるけど、どうしてかしら心が痛む。


「それはそうと、博士の試作機……これってその光電石を使って動くみたいだけど…………ちょっと説明書読もうかしら」


 たしか博士が取説が入っていると言っていた。

 私は姉とは違うから、ちゃんと説明書は読む派閥。じっくり目を通して物事を行動に移さないとね。


「えぇと。『注意! この試作機はまだ正規品ではありませんので、ご使用の場合は自己責任でお願いします』と。ふむふむなんでソシャゲの注意喚起みたいな説明なのかしら。まあいいわ」


 試作とわかっているのなら、なぜあらかじめ使う前提の説明書を? 応急処置的なものなの……謎すぎる。


「続きは『光電石は内側に数億ボルトの含む電流が流れています。それを本機の装填箇所に入れることでセット完了です。後は撃つだけ!』……レンチンみたいなこと言うんじゃないわよ! で、それを使えばいいのね」


 見た感じ、レールガンのような見た目。

 巨大な銃口が際立っており、特徴的な角張った意匠も点々とある。


「ここかしら? 上の方にあきらか装填してくださいと言わんばかりの空洞があるけれど」


 本体を眺めていると、大きな筒が1本入りそうな空洞があった。

 固定するための溝もあり、これが動力源となることは間違いなさそうな感じね。


「ふむふむ」


 説明書を読み進めわかったことがある。


 やはりそこにある溝(箇所)へ光電石を使った物を換装させる。

 すると自動的に起動し、使用可能になるとのこと。

 威力も高く、火力的には安定しているみたい。

 だが1つ欠点が。


「要旨はだいたいわかった。……あとは……う、うん? 太字で大きく注意を促すようになにか書いてある」


 目を凝らしたくなるほどのものとは。




『注意、装填して間をおかず即座に放射できますが()()()()となります』




……。


「「って一発だけかあああああああああああああああぁぁいッ!」」


 そう、威力がどうあれ1発限りのポンコツ機なのだった。

 これに留まらず。


「え、まだなにかあるの? えぇと『まだ、不具合な部分があるため1度撃つと再発射まで1週間はかかります。1発を慎重に扱うようお願いします』。へ? なにそのとても長いラグは……じゃあ1発を慎重に使えってこと。こ、困ったわねぇ」


 後先を心配し当惑する私。明らかに設計ミスのようなお粗末な仕上がりのようにしかみえないのだが。


「せめてテストプレイぐらいしようよ」


 なぜこうなった。

 心配な面々もあったが、目的地はあと少しだ。


☾ ☾ ☾


 ~ブレイブ鉱山~


 山のふもとまでたどりつく。

 広々とした面積をとっているその山は、見るからに高く空高くまでそびえ立っていた。


「思ったより高いわねぇ」

「ぴょーん……」


 入り口は山2つの内、それぞれ1つある。

 私の前にあるのが最初に作られたもの。そして少し向こうにある入り口はというと数百年前、新たに作られたものみたいだ。

 それぞれ中腹部分に2つの山を繋ぐ吊り橋が架けてあり、2か所を行き来できるようになっている。

「ギィー」とか異音出ないわよね? ここで乙ったら姉さんに馬鹿にされそう。残機は999機貯蔵しておきたい。


「えぇと、目的の鉱石は地下にあるんだったわね。双方どちらもあるみたいだから心配はいらなさそうだわ」


 手前の入り口へと入り、いざ鉱山の中へ突入。

 整備も行ってあるみたいで、鉱山内の通りにはランプが連なるように続いている。

 これは電気かしら。少々強引だけどプロアクターMAXで抽出したいな。


【AIⅡ:……確認。これに使われている成分はA(アンペア数)です。軽微ではあるものの卯乃葉さんのパーカーを使えば十分に使用可能です】

「あ、そっか」


 電気はやはり含まれているようだ。

 プロアクターMAXを取り出して接続……とその前に改めて能力を再確認。

 あれ、新しい項目が追加されている。



【固】ラビット・アビリティ:知能によって能力・質量などを調整できる。知識が多ければ多いほ ど良質なものとなる。

【共】ラビット・カリキュレーター(道具・計算機)計算を自由に行える。さらに計算で算出した数値を物体・対象物A~Zまで結果を反映させる。

【固】ラビット・ビルド:素材を消費して特定の成分・物体を生成させる。知識がある程度備わっている場合には素材は不要とし代わりに知識を頼りに物を生成。




 あれもしかして、さっきの調子こいていた冒険者を倒したおかげで習得した感じ?

 どうやら持っている知識が正確なものなら、消費ゼロでそれを作り出すことができるみたいだが。

 コスパ最強実質節約機じゃない!


 で、でも過信しすぎるのもよくないしね、最強生成マシンの実戦運用は追々にし、とりあえず今は後回しにしよう。


 試しに火を作ってみよう。

 知識を巡らせ燃えたぎるイメージを思い描いた。


「炎ってたしかこんな感じだったはず……! はっ」


 ボォォォォォォォォォッ!


【火を入手しました】


 おぉ。

 学校でかじった程度の知識を思い浮かべただけなのだが、目の前に立派な炎が生成された。

 ちゃんと温度さもある、自然の物と大して差はない。

 このようにして、素材を増やしていくことが可能みたいだが制約とかあるのかしら、最大~までみたいなものだったら……え、あぁない、なるほどやりたい放題できるってことね。(AIさんからの即答)


「ならこのまま…………とこの格好だと電気がきそうね。あ、そうだパーカーの変身機能をここで」


 ようやく出番がくる。

 たしか変身するパーカーの画面には、2つのスロットがある。

 単体での変身、2つ以上だと混合タイプでの変身。つまり最大2タイプ分の力を1度に習得できるというわけだ。


「じゃあ早速」


 変身の画面を開いて空いている2つのスペースに火、そしてスライムから入手した鉄を入れる。


【AIⅡ:火! 鉄!】

「なになに⁉ いきなりしゃべって」

【AIⅡ:いえ、私はこういう仕様ですので、装填した素材の名前を言う造りになっているんです】


 だしぬけに、なにを言い出すのかと思えば仕様だった。

 ヒーロー物でこういうのよくあった気がする。

 少し恥ずかしい気はするけど、こうやらないと取れないと言うのなら。


 私は2つの素材をスロットに装填させると、変身のボタンをタップした。

 そしてAIさんの指示通りに、高々言われた言葉を口にする。


「ラビット……パーカー……チェンジ?」


 疑問符が浮かびそうな覇気のない声調。

 にもかかわらず、私の着るパーカーが瞬く間に光り変色する。


【AIⅡ:チェンジラビット! フレアメタル・ラビットパーカー!】


 その服の色は、鉄のように輝く銀色と、燃えたぎるような濃い赤がそれぞれ色分けされた着色のパーカーになった。

 体中から火の力と、鉄の力を感じてくる。


「ぴょん?」

「なんだかよくわからないけど、こうしろってことね。よしそれじゃ気を取り直して」


 新たな力を手に入れた私は、先ほど取ろうとしていた電気の成分を採取を始め目的に沿って依頼をこなした。


☾ ☾ ☾


「さーて取らせてもらうわよ」

「ぴょん」


 鉄の方の腕で光電石に手を伸ばす。

 鉱石は目映く発光しており、あたりに点々とたくさん壁にのめり込んでいた。

 ファンタジーによく出てきそうな宝石。聞き慣れない音を発しながら暗い道を照らしている。

 一見、危険がなさそうに見えるが。


「危険だとわかっていたとしても私は触る……はぁ!」


 腕で近くにあった光電石に触れようとすると。


 ビリッ!


 瞬く間に強烈な電力が発生する。

 自然の物とは思えないほどの光度で、私が触れた瞬間電流が地面を伝った。


「……ッ! ぴょん吉!」

「ぴょん!」


 反射的にぴょん吉に声をかける。

 私は体が鉄と炎で覆われているためなんともないけど、ぴょん吉は生身。

 まともに食らえばただでは済まなさそうだ。


 ぴょん吉は高い跳躍力を駆使させ、流れた電流を回避。あんたそんなに運動神経よかったっけ。いつも公園で散歩している時は、体を曲げて寝ているのに。やる時はやる……そういう思考持っていたの?


 ふう。間一髪と言ったところね。


「おどかさないでよ。さーて抜くわよそーれ!」


 余さない持てる力を全て込め、光電石をもぎ取ろうとする。

 そうすると。


「え」


 ぽろ、ぽろぽろぽろぽろ……!


 1個に留まらず私が見渡せる範囲にある、壁に埋まっていた光電石が一瞬で地面に転げ落ちた。

 あまりの衝撃な展開に私は「は?」となる。

 もっと王道な主人公のように、苦労し手間暇かけて入手する展開を期待していたがこうもあっさりとは。


「ど、どうなっているのよ。鉱石が一瞬で秒で済んだじゃない!」

【AIⅡ:卯乃葉さん、安心して聞いてください落ち着いてきいてください……卯乃葉さんが尋常ではない力量を設定してしまったおかげで、鉱石があっさりと落ちてしまいました】

「褒めてるのそれ? それともディスっているの? ……つまりガバなステータスにしまったあげく能力も平均以上になってしまったと、なんてこったあんなこった」


 それに絶えられない鉱石が、強力な反動を受け一気に落ちた。そんなところだろうか。

 か、神でもなったのかな私は。……取りあえず採取を。

 あちこちに散らばった光電石を採取し、ラビット・ボックスへと収納。

 同時に光電石に含む成分――すなわち電力を抽出させた。


【AIⅡ:電気を入手しました ×50】

「よーしこれをもう少し多くして…………あ、ミスった」


 100ぐらいにしておこうと思った矢先、誤って尋常ではない量に設定してしまった。


【電気が100極個まで増えました!】

「いやいやいくらなんでも増えすぎよ! というかなにこの世界、数の上限が存在しないの⁉……100個に戻して」


 私が指定個数を口に出すと、すんなりと電気は100個まで減る。


「光電石は入手したけど……ちょっと説明でも」


【光電石:高い電力が凝縮された不思議な鉱石。発電機並みの電力があるので暗いところで使うととても明るく発光する。主に中大陸で多く取れ、ランプなどの原料として使われる】


 つまり、原子的な電気とな。

 わーいこれでゲームやり放題……なーんて言いたいところだがそれは後。


「ぴょん?」

「どこに移動しているかって? ぴょん吉覚えてる? 博士が入手したら中腹部分の人気(ひとけ)のないところで実験しろって。……今そこに向かってるの」

「ぴょんぴょん!」


 移動しながら指定された場所へと向かう。

 地図を頼りにして歩みを進めているけど……斜面多いわね。


 暗くはないかって? 大丈夫パーカーの効力で暗い場所は自動的に視界を明るくしてくれるの。

 連れている生物にもこれは影響して……つまりぴょん吉にも安全な恩恵が得られているってわけ。

 神がかった機能よね感服。


 移動しながら私は、光電石を鉄で生成したカプセルの中へと詰め指定個数を作る。

 そしてそれをサイズの合致したレールガン(仮)へと装填。

 箇所4つにちゃんと合ってくれた。


「よし、後は中腹にある場所へ行って、近くにそびえ立つ大きな山に向かってこれを放てば任務完了よ」


 なんだ簡単じゃん。

 と確信する私。


 人気のない中腹には近くにある別の山(使われていない山)があるらしいからそれに向かって撃ってくれとのこと。

 サーセン博士によると破壊しても問題ないらしく、近々壊す予定がギルド内で立っているようだ。


 よし、それじゃさっさと撃って帰ろうと意気込み中腹へと歩みを進めたのだが。


 その先は。


 私の想像を遙かに凌駕するものだった。




「「なんじゃこりゃあああああああああああああああああ⁉ 威力高杉でしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」


 素っ頓狂な声を高々にあげた。

 あまりにも衝撃的だったからつい。


 中腹に着いた私とぴょん吉は、指定された場所へ向かい射撃の準備した。

 滞りなく撃つまで至ったのだが、その結果はあまりにも異常すぎて言葉を失うことに。


 向かえにそびえ立つ山は、大きなクレーターができたかのようにふもとから上は抉られ山の面影もない形へとなり果てた。


「…………」


 どうしてこうなった。

 しぶりながらも私とぴょん吉は、撃った山から舞い上がる黒煙を、ひとしきり見つめながら観察するのだった。


「これなによ……ただの脳筋ゴリラあたおかメガティックキャノンじゃないの‼(語彙力崩壊)」

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